SAO~インフィニティ・ドリーム~   作:破壊光線

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 GW暇な人へ。だらだらと更新していこうと思います。今回は3話+エピローグ。
 短いけどお付き合いください。


リズとリリス
武器屋の亭主とお客さん


―――聞いたことがある、突如として現れたモンスターの話を。

 

―――容姿は妖艶な女性の姿、金色のかんざしに紫色と黒で彩られた和服、そこから伸びた長くてしなやかな手足。

 

―――美しいその姿とは反対に、見たものは誰もが死を覚悟したという。

 

―――炎を吐いて、氷を生み出し、暴風をまとって、闇を操った。

 

―――黄金の爪は剣を掴み、必殺の一撃は防御を貫通する。

 

―――戦場を支配して悠々と歩くその姿。

 

―――人数差、盾も剣もあざ笑うかのように大暴れした一人の女。

 

―――たった一人で最強のギルド≪血盟騎士団≫と戦い、SAOトッププレイヤー二人を圧倒した悪魔。

 

―――最後は二人の勇者の機転によって倒されたが、それまでは絶対優勢だった大魔王。

 かの王の名は―――

 

「リリスモン」

 

 76層にデジタルモンスターという新しい敵が現れた。この噂を聞いた、アタシ、リズベットは≪リズベット武具店≫を飛び出した。76層といえば攻略の最前線、親友のアスナとキリトがいる。≪転移結晶≫を使って、新しく追加された76層の街≪アークソフィア≫まで転移すると、早速キリトとアスナにメッセージを送った。

 

リズベット:あんたたち今どこにいるのよ

アスナ  :あ、リズ! 久しぶり。≪アークソフィア≫って街にある、エギルのお店にいるよ

リズベット:ちょっと待ってて、あたしもそこに行く

アスナ  :ええっ! 今こっちに来ない方が

 

 フレンド機能を頼りにアスナの場所を探しあてると、あたしはMAPを見ながらそこ、エギルのお店へ向かった。広い街だったけど、目的のお店はアスナと一緒にすぐに見つかった。

 たどり着くと、アスナがどこか怒った様子で出迎えてくれた。

 

「どうしてこっち来ちゃったの!?」

「どうしてって、アンタ、それが心配して駆け付けた友人に向かってい言う言葉!?」

「あー、もう! しょうがない。リズ、デジモンって知ってる?」

 

 リズ、アタシのあだ名みたいなものだ。アスナとか親しい人は大体そうやって読んでいる。

 

「デジモンが出てきちゃって、まだ分かってないことだらけだから、75層以下のプレイヤーは76層に来てほしくないの」

「そんなの、転移して戻れば……あれ? 転移できない」

「これも原因不明。はー、どうしようか……」

 

 アタシの親友はあちゃ~と頭を抱えくれた。容姿端麗のアスナだけど、その腕は確かもの。アタシと戦えば3秒も持たない自信がある。それくらいアスナは強い。

 そんな人たちがいる中でアタシはどうやって暮らしていこうか……。宿代、食費、衣服……お金を稼ぐ手段がない。戦闘は無理、他にアタシができることは……。

 

「鍛冶! ここって最前線だから職人プレイヤーは少ないでしょ、アタシがここで鍛冶屋を開けば」

「ふふ、たくましいね、リズ。ちょっと安心した」

 

 不安はあれ、競争相手のいないこのエリア。しかも相手は攻略組と呼ばれるトッププレイヤーたち。これは大稼ぎできるチャンスだ。今まで必死に鍛えてきた鍛冶スキルにまた救われるとは。芸は身を助けるとはこのことだ。

 よし、やるぞリズベット。……それに、アイツも、いるし。

 

 

 午後の時間を使って、アタシはアスナと一緒にお店を構える場所を探した。大通りからは外れるが、街の中心からほど遠くない、いい場所を見つけてそこを購入。釜戸や鍛冶道具などを一通りそろえて、これで鍛冶ができるようになった。お金のほとんどはアスナがカンパして、出してくれたけどね。

 

「いいのいいの。いい鍛冶屋が無いし、ちょうど困ってた頃なの。お金も素材も共有しているから、余ってたしね。それに、アイツがリズの刀を叩き割ったっていうのもあるから許してくれると思うよ」

 

 はは~と頭を下げて、ありがたくご厚意に甘えた。さて、後はお店に出す武器を打つだけだ。

 それからアタシは一心不乱にハンマーを振り下ろし、武器を量産した。≪インフェルモンの~≫という聞いたことのない素材ばかりで、変な武器ばかりできたけど性能には問題ない。これなら最前線でも戦っていけると思う。スキルに≪データドレイン≫っていう、攻撃すると回復するスキルもついていたし。

 

 こうしてアタシは何とか開業までこぎつけた。「アスナ行きつけの鍛冶屋ができた」という噂が広まっていたらしく、開店当時からお客さんは途切れることなく入ってくれて、順調な滑り出し。これなら≪アークソフィア≫でも暮らしていけそうだ。

 

 

   ●

 

 

 さて、そんなそこそこ忙しい新生活を始めたリズベットさん。アタシが注目した、面白いお客さんを三人ほど紹介しよう。

 まず一人目はこの人、白い騎士。

 

「いらっしゃいませ! リズベット武具店によう、こ……そ」

「……ここがアスナさん一押しのお店か。いろんなものがあるな」

 

 第一印象、白い巨人。

 生き物の顔を模したような両腕と、豪華なマント、あり得ないくらい細い腰が特徴的なプレイヤーでした。これほんとに人間?

 

「ここに素晴らしい武器があると聞いて来たのだが……」

 

 見た目にビビっている場合じゃない。素晴らしい武器屋だって、頑張らなきゃ。

 

「お任せください! 武器の種類は、何を……お探しでしょうか」

「ふむ≪オメガブレード≫、≪グレイソード≫あたりが欲しいな」

「オメ……? ぐれい?」

 

 聞いたことのない武器の名前を言われても……。オーダーメイドってことでいいのかな。

 

「オーダーメイドってことでよろしいでしょうか」

「何!? そんなこともできるのか。ぜひ頼む。武器の耐久値が不安でな、替えを用意したい」

 

 よかった~。話が通じそうな人で。それに丁寧だし、目もキリッとしててかっこいい。鎧で覆われているけど、もしかしてイケメンでは?

 

「はい! ちょっとお値段高くなってしまいますが、どんな武器を作りましょうか」

「ガルルキャノン!!」

「お帰りはあちらでーす」

 

 前言撤回、話し通じませんでした。

 ガルルキャノンってなんなの、剣の世界≪ソードアート・オンライン≫にサブマシンガンもキャノンも出てこないよ! 出てきたとしても、それ鍛冶じゃできないと思うから。

 例の白騎士にやんわりと説明して、武器の手入れの仕方と、その道具一式を売ってお帰り願った。すごくうれしそうな横顔が印象的でした。

 

 

 

 印象に残ったお客さん、その2。黒い騎士。

 

「いらっしゃいませ! リズベット武具店に、よう……こ、そ」

「亭主、初めまして。知人から親切丁寧な武器屋があると聞いたのだが」

 

 第一印象、黒い巨人。

 この前の白い騎士と同じくらい大きな人がやってきた。今度の人は全身黒い鎧で身を包んだ黒騎士だ。ゲームの黒幕で登場しそうな見た目のプレイヤーは、背中に翼のような装飾と、マントを身に着けていた。この人、本当に人間!?

 

「亭主、オーダーメイドとやらを頼みたい」

 

 オーダーメイド? この前の白い騎士と、アタシの刀を叩き負った黒い剣士。この二つを合体させたこの人からのオーダーメイド。嫌な予感しかしない。

 

「えっと、オーダーメイドですと……お値段が張ってしまいますというか。それと≪ガルルキャノン≫は作れませんので」

「ハッハッハ。ガルルキャノンか、面白いことを言う。私が欲しいのは大剣だよ」

 

 よかった~。この人はまだ常識が通じるかもしれない。

 

「≪聖王剣グレイダルファー≫というのだが、製法も分かっていてね」

 

 ちゃんと作り方も調べてきてくれた。それに剣。これならいけるかも。

 

「なるほど、それでレシピは」

「うむ、オウリュウモンというデジモンを使って鍛冶をするそうだ」

「お帰りはあちらでーす」

 

 アッ、ハイ、ダメでした。

 

「ふむ、なら仕方ない。せめて君の傑作を拝見したい」

「あ、ご自由にどうぞ。気に入ったお品がありましたら、またお声掛けください」

 

 私が営業スマイルで対応すると、その黒騎士は物色し始めた。そして、最近でき中で、一番できの良い武器を手に取ると。

 

「ふむ、私は刀鍛冶に疎いが、それでもよくできたものだと見てわかる」

「ありがとうございます」

「鉛筆とダイヤモンドの違いは判らないが、この武器ならステータスを見ただけで一目瞭然だ。実に興味深い、素晴らしい機能だ」

 

 あ、うん。住む世界が違う人だ。悪い人ではないと思うけど。

 その人も武器の手入れ道具が欲しいと言ったので、一式売ってあげた。嬉しそうに帰っていった。

 

 

   ●

 

 

 そして最後、三人目。この人が問題でした。

 

「いらっしゃいませ! リズベット武具店に、よう……こ、そ」

「ここが例の……。ふむ、噂通りの亭主じゃ」

 

 第一印象、綺麗な女性。

 SAOには珍しい、着物のような装備。紫色と黒で彩られた和服に金色のかんざし。それに似合う妖艶な女性。女のアタシでさえ、見ほれるような魔性の魅力があった。それを裏付けるように、悪魔の羽ような装飾が背中についている。

 武器らしい武器は見当たらないけど、きっと右腕の金色の爪がそれだと思う。≪ユニークスキル≫かな。爪なんて作ったことがないし、どうしよう。

 その女性はコツコツと足音を鳴らし、こっちに近づいてくる。

 

「これ亭主、”おーだーめいど”を作りたい」

「オーダーメイドですか? ガルルキャノンも聖王剣グレイダルファーも作れません。あと、爪の武器は作ったことが……」

 

 最悪の場合、武器の手入れセットを渡してお引き取り願おう。白い騎士も黒い騎士も喜んでくれたし、今回も大丈夫。

 そう思って提案したけど、帰ってきた言葉はそれ以上の物だった。

 

「いや、わらわが作る」

 

 これ、アタシに鍛冶教えろってことなの!? 一番のハズレくじを引いたかもしれない。最近ついてないなぁ~。

 

「……≪鍛冶スキル≫を上げていないと強い武器は作れませんよ」

「構わん。”すきる”とやらは上げればよい。それに、この店の亭主は業物を打てると知っておる」

 

 無茶苦茶な理論だけど、一理あるのよね。ま、ちゃんとした武器ができるまでどれだけの時間と素材がかかるかは別の話だけど。アタシ自身、意見交換とかもしたい訳で、鍛冶仲間ができることには歓迎しているし。

 なにより「業物を打てる」まで言われたらこちらも引き下がるわけにはいかない。特別に弟子にしてしんぜよう。

 

「えっと、鍛冶は初めてってことでいいのよね?」

「うむ」

「それじゃあ、アタシが簡単にやり方教えるから工房まで付いて来て」

 

 まだ名前を教えてもらっていないあの人と一緒に工房第二号へ。素材の入ったアイテムボックスとか、鍛冶道具を説明してさっそく打ってもらう。

 カーン、カーンと心地いい金属音が工房中に響き渡ると、≪ブロンズソード≫ができた。一番最初に装備できる片手剣だ。

 

「最初にしては上出来じゃない!」

「ふむ、この辺の敵をこれで倒すことはできるのかえ?」

「さすがにそれは無理かな」

 

 この人本当に攻略組なのだろうか。それとも、鍛冶で打った武器はすべて強いとでも思っているのかな。少し残念な彼女はさらに鍛冶を打ちたいとせがんでくる。

 

「あー、分かった。そしたらこの辺にある素材使っていいから」

 

 アタシが見ている範囲で、あのお姉さんがハンマーを振るう。カーンカーンカーンと一定のリズムを刻んで響きわたる作業音。

 思えばここのところ、レベル上げに鍛冶屋にずっと動きっぱなしだったっけ。なんだか眠く……。こうしてアタシは寝落ちした。これが人生最大の汚点になるとは知りもしないで。

 

「もし、もし。亭主よ、起きんか」

「うひゃい! りぃずべっと武具て、ん、にぃ……って。ああ、アタシ寝てたんだ」

 

 眠い目をこすってアタシが起きると、例の妖艶なお姉さんが視界に入る。

 

「起きたか。お客をほったらかしにしおって眠るとは」

「何か問題でも起きたんですか?」

「うむ、”そざい”とやらが無くなった」

 

 素材が、無くなった? アスナ達から分けてもらった、山のようにある素材が!?

 アイテムボックスをひっくり返しても、店中の資材置き場を探しても、どこにもない。アタシのアイテムストレージにはかろうじて残っていたけれど、こんなの雀の涙に等しいよ。

 

「ちょっと! 素材全部使っちゃったの!?」

「うむ、たくさん使った方がいいものができると思うてな」

「バッカじゃないの! さっき素材は必要数が決まっているって言ったのに! 戦艦でも作ろうとしたわけ!?」

「そう怒るな。また取りに行けばよい話じゃろうて。ならわらわと一緒に取りにいかんか?」

「当り前よ! アンタが使い切ったんだから、一緒に来てもらうからね」

 

 以前にも、こう自然な流れでパーティ組んで酷い目にあった気がする。前回は目玉商品折られて、今回は素材を溶かされた。どちらも攻略組。呪われてんのかな、アタシ。

 とはいえ、今後76層を拠点にやっていくなら、この辺のモンスターを倒せるようになっておかなくちゃいけない。これはいい機会だ。アスナ以外の攻略組の人と一緒にパーティ組めるなんて珍しい。プラスに考えるのよ、リズベット。

 いつまでアスナに頼ってばかりじゃいられない。ここでお店を構えたからには一人で素材を取るだけのプレイヤースキルがないと。

 

「よし!」

 

 気合を入れて営業モードからプレイヤーモードへチェンジ。

 

「アタシはリズベット、リズって呼んでもいいから」

「ふむ、リズか……。ならわらわは、そうじゃのう……。”リリス”とでも名乗ろうか」

 

 と優しく笑う女性プレイヤー。

 リリス、確かキリスト教の悪魔だっけ? 装備も見た目も、名前も気合入っているな。ここまでSAOを楽しんでいる人は珍しいと思うほどに。

 

「一応よろしくね、リリス」

「うむ」

 

 リリスから握手を求められた。パーティを組む儀式みたいなものなのかな。

 ちょっとだけ力を込めて握りかえす。

 

「よろしく頼むぞえ、リズ師匠」

 

 少しだけ力を緩めてあげた。




 リリスモン回
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