SAO~インフィニティ・ドリーム~   作:破壊光線

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 えっと、僕はこれが見たくてこの話を描きました まる


リズベットと大魔王

 スープを飲んで、仮眠をとるとアタシとリリスは出口を探してこの洞窟内を探索することにした。

 アタシは寒くて薄暗い洞窟の中、ランタンの灯りを頼りに歩いていく。

 リリスは……なんか特殊能力でもあるのか、平然と暗闇の中を歩いている。しかも途中でレアメタルを見つけて喜んでいた。この人ならきっと、例の黒騎士相手にダイヤモンドと鉛筆の違いを説明できると信じたい。

 

 しっかしまあ、よくもここまで長い洞窟を作ったものね。

 悪態付きながら進んでいくと、大きく開けた場所にでた。巨大な湖と、それを閉ざした厚い氷。

 そして、その向こう側に不気味に光る無数の何か。アタシの隣で目を細めていたリリスが鬼気迫った声を出した。

 

「リズ、気づかれた。デジモンの群れじゃ」

 

 デジモン!? SAOに現れた正体不明のモンスター。どうしてこんな場所に。

 それどころじゃない。あの光が目だとしたら、いったい何体の数のデジモンがいるのだろう。

 例の大魔王はSAOのトップギルドとトッププレイヤーを圧倒した実力を持っている。大魔王ほどではないにしろ、普通に考えてアタシとリリスの二人だけじゃ勝ち目はない。

 

「リズ、こっちにこよ」

 

 いつになく真剣なリリスに手を引かれ、アタシたちは氷の地底湖の先を目指して走り出した。

 

 

   ●

 

 

 どれくらい走っただろうか、アタシはリリスに手を引かれて暗い洞窟を駆け回った。入り組んで、暗い地形だというのに、リリスは迷うことなく進んでいく。マップはまだ未踏破。でも、敵に遭遇せず、行き止まりにもぶつからない。

 悪運が強いのか、ただ勘がいいのか、それさえも分からない。ただアタシはリリスに腕を引っ張られながら暗くて寒い洞窟を走り回った。

 

 だけど、それも長くは続かなかった。

 リリスが、立ち止まったから。

 

「……リリス、どうしたの?」

「すまぬ、リズ。囲まれた」

「え、だってまだ道は」

 

 暗いけど、まだ続いている。そう言おうとしたアタシを遮って、リリスがカンテラに火をともした。心細く、小さな灯りが照らした先には、氷漬けになった壁が現れた。

 後ろを振り向けば、不気味な光が集まっている。あれがすべてデジモンだとしたら、デジモンじゃなくモンスターだとしても、アタシたち二人じゃ勝ち目は無いと思う。

 これからどうすべきか、思考を巡らせているアタシの真横を、物体が通り過ぎた。次の瞬間、グシャっと鈍い音をたてて、リリスからうずくまっていた。

 

「リズ……足を、右足をやられた」

 

 リリスの右足は変な方向に曲がり、すぐそばに銀色の巨大なハンマーが落ちている。おそらくデジモンのハンマーだろう。

 SAOプレイヤーは剣技で戦う。ソードスキルを発動するには、踏み込みが必要だし、接近戦を強いられるため、足の動きは重要だ。いくら攻略組とはいえ、足が使えないのなら戦えるはずがない。

 

---詰んだ---

 

 悔しいけど、それしか言葉が見つからない。

 アタシは鍛冶スキルこそあるけど、最前線で戦うにはレベルが足りてないし、デジモンと戦って勝つだけの経験もない。頼みの綱のリリスは足を負傷して戦えないだろう。そして、敵の人数差からして逃がしてくれそうにもない。転移結晶は……輝きを失ったままだ。

 

「リズ、よく聞け。まだあやつらとわらわの間に間がある。だから敵はハンマーを投げてきおった。ゆえに、お主が逃げ切れるだけの時間と距離があるはずじゃ。それにわらわがここで朽ちても、この世界には大魔王を倒すだけの勇者がおる。じゃが、お主ほどの鍛冶屋をわらわは知らん。だから」

「うるさい。集中してるの!」

 

 その先は言わせない。アタシはリリスの前に陣取った。メイスを構えて、敵が来るのを待ち構える。

 デジモンがなんだ。あんな寂しそうな姿を見ておいて、それを見捨てて逃げるようなことはしたくない。

 やってやろうじゃないの。アタシだって、血盟騎士団アスナの友人なんだから。ちょっとは戦えるってとこ見せてやる。

 

「アタシが時間を稼ぐから、リリスは打開策を考えてて」

 

 逃げるという選択肢は無くなった。相手はおそらく群れ。でも、この狭い場所なら複数体同時に相手をしなくても済む。デジモンがどれくれい強いのか、分からないけど一対一ならアタシも戦えるかもしれない。

 絶え間なく鳴る足音が大きくなった。そして、アタシたちの前にそのデジモンの群れが現れた。

 大きな牙と、長いひげが生えたセイウチのような顔。熊みたいな身体は緑色の巨大な甲羅を背負って、その腕には巨大なハンマーを持っていた。……どうしよう相手のデジモン、思ってたより大きいんだけど。

 

「ズドモン、完全体の海獣型デジモンじゃ。見た目通り、パワー型で手に持ったハンマーからは電撃を放つ。リズ、本当に大丈夫かえ?」

「だだだ、大丈夫に決まっているでしょう!?」

 

 足が震えて言うことを聞かない。それでもアタシは我武者羅にメイスを振るって、ズドモン軍団と戦った。戦場が狭い通路で行き止まりだったため、背後を取られる心配も同時に何体も相手にすることもなかった。

 正面にいる2~3体のズドモンを相手に必死にメイスを振るう。だけど、それも長くは続かなかった。

 

「リズ危ない!」

 

 リリスが叫んだ。直後、近くの壁が破壊される。そして、ズドモン達よりひときわ大きなデジモンが現れた。

 

「ヴァイクモン、か。リズ、やつはデジモンの中でも最強の究極体。ズドモン達のリーダーじゃ。リズが地形を活かして戦うゆえに、それを破壊してきおった。このままでは多くのズドモン達に加え、ヴァイクモンまで戦うことになりおる。はよ逃げんか!」

「嫌だ!」

 

 状況は絶望的。どう考えたって、この群れをアタシ一人でどうにかするなんて無理。そんなのは分かってる。

 

「アンタを見捨てて一人で逃げるなんて、アタシにはできない」

 

 穴に落ちた時、アタシを助けてくれたアンタは、こんな気持ちだったんだね。……キリト。

 怪物に負けて死んでも、このゲーム、この世界に負けたくない。ってこういうことだったんだね。……アスナ。

 

「だって、アンタはアタシのお客さんで、弟子で、友達なんだから!」

 

 アタシも、二人みたいになれたかな。

 

「友達を見殺しにするくらいなら、一緒に死んだ方がずうっとマシよ!」

 

 その直後だった。アタシの後ろから巨大な火球が飛んできて、ズドモンの群れに大爆発する。鼻につく焦げたにおいと、氷点下だった洞窟に熱風が吹き荒れる。視界の黒い煙が晴れた時には、ズドモンが蒸発していた。

 

―――聞いたことがある、突如として現れたモンスターの話を。

 何が起きたのか、誰がやったのか。分からない。でも、アタシはこの状況を知っていた。

 

―――容姿は妖艶な女性の姿、金色のかんざしに紫色と黒で彩られた和服、そこから伸びた長くてしなやかな手足。

 アタシが後ろを振り向くと、和服の、妖艶な女性が壁に手をつきながら立っていた。

 

―――美しいその姿とは反対に、見たものは誰もが死を覚悟したという。

 殺意のオーラを放ち、端正な顔は冷酷な笑みを浮かべている。

 

―――炎を吐いて、氷を生み出し、暴風をまとって、闇を操った。

 腕を伸ばし呪文をつぶやくと、魔術と呼べる超常現象へと変わっていった。

 

―――黄金の爪は剣を掴み、必殺の一撃は防御を貫通する。

 鋼鉄のハンマーは黄金の爪で弾かれて、堅い自慢の甲羅は魔法で打ちぬかれた。

 

―――戦場を支配して悠々と歩くその姿。

 足を怪我し、引きずりながら歩いている。けど、この場にいる誰よりも強かった。

 

―――人数差、盾も剣もあざ笑うかのように大暴れした一人の女。

 数による有利は一瞬にして無くなり、地面には砕けたハンマーと甲羅が散らばっている。山のような死体を前に、笑う女性が一人。

 

―――たった一人で最強のギルド≪血盟騎士団≫と戦い、SAOトッププレイヤー二人を圧倒した悪魔。

 完全体の群れを蹴散らして、究極体をも圧倒する。その悪魔の名前をアタシは一人しか知らない。

 

―――最後は二人の勇者の機転によって倒されたが、それまでは絶対優勢だった大魔王。

 かつて二人の勇者によって倒された、あの魔王が名乗りを上げる。

 

―――かの王の名は

 わらわは色欲をつかさどる、七大魔王が一人。

 

「リリスモン」

 

 そこからは圧倒的だった。

 リリスモンが何かをするたびにズドモンの数が減る。アタシはただ見ているだけで何もしない。狭かった通路は見る見るうちに崩されて、大きな広間へと姿を変えた。

 

 敵だけじゃなくダンジョンすらも破壊する。リリスモンは文字通り、一歩も動かずにズドモンの群れを蹂躙し続けた。本当にリリスは大魔王リリスモンだったんだなって実感できる。

 思えばスキルを上手く使いこなせなかったり、スライムに打撃で攻撃したりと初心者のようなミスを多発していたのはそのせいだったんだろう。そもそも剣を使って戦う必要がないから。

 

「そっか……」

 

 アタシは気づいちゃった。どうしてリリスが、いやリリスモンが本名を隠して力を使わなかったのか。恐れていたんだ。一人ぼっちになることに。

 かつて、黒の剣士がその強さからビーターと呼ばれて忌み嫌われたことがある。リリスモンもそれと一緒。圧倒的な力を持つから誰ともパーティを組めずにいた。だけど、リリスモンは圧倒的な力を持っていたから、SAOのモンスターでは相手にならなかった。

 

 最強の名を欲しいままに手に入れたリリスモンは大魔王らしくSAOの世界を手に入れようとしたんだと思う。いや、誰かを自分のそばに置きたかったのかな。そして、力を過信してアスナたちと戦い、敗れた。強さを欲しいままに手に入れてきたリリスモンは、唯一手に入れることができなかった愛の前に負けたんだと思う。

 

「リリス……モン」

 

 大爆発が起こって、ヴァイクモンが吹き飛ばされた。

 リリスモンが振り返る。リリスと名乗った、あの優しい笑みを浮かべて。

 

「騙すつもりはなかった。正体を明かせば怯えると思うての。これで安心したじゃろ、わらわは強い。さ、お主は逃げよ」

 

 そんなこと言ったってさ、一人ぼっちが嫌なんでしょ?

 だから人の作った武器を求めたんだよね。大魔王って名乗ると怖がられちゃうから、今まで正体を隠していたんだよね。

 

「バッカじゃないの! アンタね、強いなら強いってちゃんと言いなさいよ。それにね、足も怪我してるんだから、無理しないで」

「な、何を言っておる?!」

 

 うろたえるリリスの前に、ヴァイクモンから守るように、アタシは立つ。

 

「戦士が敵の攻撃を引き付けて、魔法使いは後ろから攻撃するのはセオリーでしょ?」

「戦士? どこにおる」

 

 だってさ、もう、放っておけないじゃん。

 

「目の前に、アタシがいるじゃない」

 

 最後まで一緒に戦うんだ。

 リリスはきょとんとアタシを見つめていたけど、理解できたのか、お腹を抱えて笑い出した。

 

「カッカッカッカ! これは傑作じゃ、愉快……愉快」

「何が面白いのよ」

 

 リリスはよほど笑ったのか、目尻に浮かべた涙を拭って敵を見る。

 

「ぶー垂れるでない。魔王と勇者の最強タッグじゃ。ゆくぞリズ師匠」

「はいはい、間違えてアタシを攻撃しないでね」

 

 ヴァイクモンが起き上がる。配下を倒され、一撃を見舞われ、怒り心頭って感じ。でも、怖くない。だってアタシには最強の魔法使いがいるんだから。

 

「今までの、お返しっ」

 

 吠えるヴァイクモンの横顔をメイスで思いっきりぶん殴る。あらわになった首筋にリリスモンから魔法の追撃が入った。ヴァイクモンがアタシを無視してリリスモンを攻撃しようとしたら、すぐさまアタシが後ろから殴る。

 

 ヴァイクモンの態勢が前傾になるけど、ダメージは今一つ伸びない。アタシの武器が弱いのかな。とどめを刺すには一つ足りない。そんな状況で、アタシの視界にヴァイクモンの背中から使われていない武器が目に入った。おっと、一目でわかる、業物じゃん。

 

「ステール」

 

 素材集め用のスキル。アタシの腕が光り輝くと、ヴァイクモンと同じメイスが握られいた。≪ミョルニル≫なるモーニングスターはアタシの愛用武器、メイスにカテゴリーされ、必要筋力値も十分足りていた。

 

「やりぃ!」

 

 背中の武器が無くなったと、驚愕するヴァイクモン。がら空きとなった横っ腹にリリスモンの特大魔法が炸裂する。その一撃でヴァイクモンが大きく怯んだ。

 

「リズ今じゃ、ヤツの牙を狙え!」

「でやぁあああっ!」

 

 ありったけの力を込めて、ヴァイクモンの顔面を叩きつける。棘のついたメイスはデジモンの顔面を的確にとらえ、地面に叩きつけ、牙をへし折った。そして、ヴァイクモンがポリゴンに変わる。

 

「……や、やった、の?」

「カッカッカッカ! やりおった! この娘、本当にやりおった! リズ、リズベット。お主は究極体デジモンを倒したんじゃ。攻略組でさえ手こずる強敵を、倒したんじゃよ!」

 

 リリスモンがよろよろと歩いて来て、アタシに向かって倒れた。

 血の凍るようなオーラをまとっていたはずの大魔王は暖かく、その顔は満面の笑みであふれいた。

 

「リリスモーン! 勝った、勝ったよ」

「よしよし、よう頑張った。よう頑張った」

 

 アタシとリリスの冒険は、絶体絶命のピンチから一転。大魔王リリスモンの登場と新しい武器≪ミョルニル≫、素材をたくさん手に入れて、大満足の結果に終わった。

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