モスティマさんといっしょ!!!   作:にゃんこぱん

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A year:八月──上

「順調なようで何よりです。期待以上の成果ですよ」

「皮肉か?」

「いいえ、本心です。モスティマの変化は一目瞭然です、よくやってくれましたと、褒めてあげたい程に」

「……そんなか?」

「すっかりモスティマと仲良しですね。半年前の態度は一体どこへいってしまったのやら。知っていますか? モスティマにその話をすると、彼女怒るんですよ。正直目を疑いました」

「……想像もつかん」

「このまま一年が過ぎれば、おそらく彼女は自分というものを見つけられるかもしれない。私はそれを期待しています。もちろん、あなたの働きにも」

「……。なあ、お前はなんだってそこまでするんだ?」

 

ノエルは何も言わず、一つのカードを差し出した。

 

「あなたの身分証、やっと作成できたのでお渡しします。苦労しました。サルカズの身元をラテラーノが保証するなど、前代未聞ですから」

「やっとか。助かる、これで俺も身分持ちか……。感慨深いな」

「来週には収穫祭が迫っています。楽しみにしておくといいでしょう。きっと面白いものが見られます」

「面白いものだと?」

「ええ。エクシアも、毎年楽しみにしていましてね。姉として、準備に力が入ります」

「お姉ちゃんは大変だな」

「まったくです。ですが──これが、私があの子に残してあげられる最後の思い出になりますからね」

 

ノエルは朝の司令室で、窓の外を眺めた。その先には訓練場と、そのもっと奥にはラテラーノ市街が広がっている。

 

「俺はずっと、お前が何かしらの企みをしてんじゃねえかと疑ってる。正直お前には世話になってる、疑いたくなんてねえが……その言葉がどういう意味かってのは、聞かないでいてやる。義理と恩があるからな」

「変わらずにいられる存在など、この世に一つたりとも存在しません。ましてや変わらずにいられる関係など、夢物語です。我々は変わっていくものです。いいえ、変わらなければならないのです。前へ進むということは、今まで見てきた景色を全て過去にすることです。アルク、分かっていますね」

「……ま、いいさ。もともと一年って分かってたことだしな。なあノエル、お前にとってモスティマとエクシアってのは何者なんだ?」

 

ノエルは悩みもせずに答えた。

 

「私の全てです」

「そうか──、ならいい。話は終わりか?」

「ええ。下がって結構です」

「じゃあな。また」

「ええ、また」

 

 

A year:八月

 

 

 

俺の一日の大半は、トランスポーターの実習だ。モスティマと組んだり、別の人と組んだりしながらトランスポーターの仕事を学んでいく。給料も出てる。仕事前や仕事後には射撃訓練やら資格勉強やら。

 

たまに親衛隊の訓練で体を動かしたり、任務に参加したり。

 

フロストリーフは学校に通っている。朝は俺と模擬戦したり、走ったり。顔色や体の細さを改善されてきて、だいぶまともなガキになった。

 

実際のとこ、充実していた。最近ではちゃんとバイクの免許などを取りに教習所へ出かけることも多い。めんどくせえな交通ルールってのは。

 

収穫祭に向け、町全体が活気付いているのが肌で分かった。この祭りはラテラーノにとって結構なものらしく、それこそ国を挙げての祭りだって話が信憑性を帯びてきた。

 

「……え? 誰?」

「失礼だねアルク。私のことを忘れたのかな」

「……え? なんだ、天使か?」

「天使だけど」

 

俺とて色々な準備に駆り出されていた。大抵はもの運んだり運んだり運んだり。運ぶばっかりかよ。

 

その途中、法王親衛隊のアーツ部隊のとこに顔を出す機会があった。

 

「え、いや──え……。モスティマお前……すげえな」

「面倒なだけなんだけどね。私って結構重要な役職らしくてね、実はこれでも主天使(ドミニオン)の役を授かっているのさ」

「それはよくわからんが……”それ”、祭りで着るのか?」

「まあね。パレードでこれ着て立ってなきゃいけなくてさ……。私はそういうの、あまり感じない性質だと思っていたけど、面倒くさいって思うよ」

「いやいいじゃねえか、それ──すげえ似合ってる」

「え? そ、そうかい……? なんだかむず痒いね、正面から褒められると」

 

モスティマは荘厳な儀式で着るような、白い衣装を着ていた。*1 衣装合わせの途中らしく、たまたま会ったのだが……。

 

「ああ、マジで誰か分からなかった。……そっちの杖も衣装の一部か?」

「ああ、そうだね。これは”鍵”と”錠”……のレプリカさ」

「鍵と錠? なんかアレか? 宗教的な意味を持つアレか?」

「そうだね。時を司る獣を封じ込めた扉、その鍵と錠さ。もっともこれはレプリカだけどね」

「時を司る獣ねえ……。ただの神話だろ?」

「そうだね。あくまで聖書は物語でフィクション、”そういうことになっている”ね」

「……なんだ? 含みがあるな……。マジでいるってのか」

「さあ?」

「さあってお前な……」

「それは誰も知らないんだ。本物の”鍵”と”錠”があるのは本当さ。でも中に何が入っているかなんて、誰も知らないんだ」

「鍵も錠もあんのなら、開けれるんじゃねえのか?」

「いいや。誰も開けられない。だから伝説なのさ」

 

そう言ってモスティマは微笑んだ。まるで全能の神の如く。

 

俺はこいつだけは全てを知っているんじゃないかと思った。

 

「……。ま、俺は次の雑用に行く。やることが山積みだからな」

「はいはい。お仕事頑張ってね」

 

次の仕事は親衛隊の連中と重たい機材なんぞを運ぶことだ。最初こそ、サルカズとサンクタで、受け入れられはしないだろうと思っていたが、結局仲良くなってしまった。まあキツい訓練一緒にやったしな……。

 

「隊長、これはどこだ?」

「それはそっちに積んでおけ。ああ、それはこっち……もっと丁寧に置け、レンタル品だ。壊したら面倒になる」

「祭りってのはこんな色々準備すんのか……」

「何万人の客が来ると思っている。これはラテラーノの繁栄を示す機会でもあるからな。力を入れて当然だ」

「俺はてっきり、ラテラーノはもっとお堅い国だと勘違いしてた。誤解だったのか?」

「いいや、誤解ではない。この国は神に選ばれし国だ。我々天使は、神の忠実な僕とならねばならん。もっとも、この現代においては難しいことだがな」

「信仰か。俺にはわかんねえな──っと」

 

トラックから荷物を運び入れる。いくつ持っていくんだこれ。出店の骨組みやら、大量だ。

 

「当日はアルク、貴様にも神の僕となって働いてもらう」

「はいはい、わかりましたよ。何やるんだ?」

「焼きそば屋だ」

「……うーん。なんだ、神様の好物とかか?」

「いいや。親衛隊の収入源の一つだ。それなりの収益が見込めるのでな、毎年の恒例だ」

「法王親衛隊が聞いて呆れるぜ……。法王サマの護衛はいいのかよ……。大体俺ら、法王サマに会ったこととかねえよな」

「我々は隊全体で言えば、もっとも下の階級だからな。謁見など夢のまた夢だ。もっと階級が上がって、能天使(エクスシア)にでもなれば、ようやく法王邸での警護が任される」

「大変なんだな……」

「だが、主に市街の治安維持を任されるのは我々だ。誇りあるラテラーノの、偉大な仕事なのだぞ」

「はいはい、偉大な天の導きに感謝いたします……我らが神よ、って感じか……。なんだってサルカズの俺が神に祈らなきゃいけねえんだ……悪魔だぞ、悪魔……」

「ふん、この世に本当の天使も悪魔も居るものか」

「隊長殿!? お前それ言っていいやつか!? 信仰心疑われるぞ!?」

「構わん。私の部隊に、告げ口をする者などいないからな。この世にいるのは天使ではなく、サンクタというただの種族だ。同様にサルカズは悪魔などではなく、ただのサルカズだ。私はお前に出会ってそれを知った」

 

流石に照れるな。隊長殿は厳しくてお堅いが、フロストリーフが学校に通うために色々面倒を通してくれた。感謝してる。

 

「我らが神は目に見えない。故に、信じるしかない。それは私たちサンクタ族の拠り所であり、種族的なアイデンティティーとも言える。神とはそういうものだ」

「それ他のやつに聞かれたらやべえよな……」

「時々、それが行き過ぎた連中がいることは知っているか? ラテラーノ原理主義の連中のことなんだが──」

「ああ、あのイカれた連中のことだろ? 世の中いろんなヤツがいるもんだな……」

 

部隊総がかりで運べば、トラックの何台か分はすぐに運び終える。あとは当日の朝組み上げる手筈だ。

 

「収穫祭当日は忙しいが、それぞれに休憩時間は作る。フロストリーフと回ってみるのもいいだろう。我がラテラーノの活気をその目に焼き付けるのもいい。見ものだ、実際」

「楽しみにしてるよ。それで、今日の仕事はこれでおしまいか?」

「ああ、安心しろ。まだまだ飽きるほどある──」

 

このあとめちゃくちゃ仕事した。

 

 

 

 

「で、原理主義ってのはなんなんだ?」

「まあ──聖書の内容は全て真実だ、って捉える人たちのことかな。そう信じている。それが高まるとちょっとテロリズム気味になったりして、時々国際問題に発展する。サルカズ人との対立が高まったりね」

「へえ。何するにしたってサルカズか。大変だな」

「歴史的な背景も強いよ。僕はそこら辺はあまり詳しくないんだけど、衝突は繰り返されてきた。例えば、ラテラーノの聖地にサルカズ人が住んでたりね。まあ色々あったのさ」

「ふうん……。そういや気になってたんだが、学者ってのは何で生計を立ててんだ?」

「うーん、人によってそれぞれだろうけど……僕は出版かなあ。改めて聖書の内容を問うことで、ラテラーノ人としての生き方だとか、哲学だとかを啓発するって感じの本を書いて、出版してる。こういうのしてると、所詮学者って言っても売り方なんだなってしみじみ感じるよ」

「へえ。そういや前聖堂からの依頼とか言ってたな」

「ああ、その話なんだけど──モスティマさんに会わせてくれて、改めて感謝するよ。やっとラテラーノに伝わってきた伝説が解けそうなんだ」

「伝説?」

「まあ、一般にはあまり広まってなくて、知る人ぞ知るって感じの伝説なんだけど……。あのね、ラテラーノには聖書の内容を裏付けるいくつかのオーパーツが眠っているんだ。現代の知識と技術を持ってしても明かせない謎の遺物……どうだい、興味をそそられるだろう?」

「導入としては悪くねえ。で、それが?」

「ラテラーノ聖堂としては、早くその謎を解き明かしたいからさ。僕らみたいな学者や、考古学者にたまに依頼するんだ。まあ一度としてその依頼が完遂されたことはないんだけどね……。僕が受けたのは、その中の一つ──”鍵”と”錠”……時間に住む獣の話だ」

 

エリエルは蒸留酒をちびちび飲みながら話す。俺はちょっと聞いたことがある話が出てきて驚いた。

 

「昔々とあるところに、強大な力を持つ獣が暴れていたんだって。それで困った人々はどうにかして獣を檻に閉じ込めようとしたんだ。その時に作ったのが、鍵と錠。人々はこれを利用して、見事獣を檻に封じ込めた、という話さ」

「檻?」

「現代の解釈では、この檻とは時間のことさ。つまり、寿命という生物の限界を持って、獣を殺そうとしたということになる。それが鍵と錠の伝説。──そして、鍵と錠は現存する」

「そりゃ……ロマンある話だ。まさか実話だってのか?」

「僕はそう信じてるよ。それが考古学ってものだし……本当の話だったら、すごい話だ。時間を操るなんて、まさに神の所業だろ?」

「ああ……そうだな。しかし、その鍵と錠が本物だってどうして分かったんだ?」

「うーん……。情けない話だけど、それが本物かどうかまでは、正直確信が持てない。ただとてつもなく堅く、未知の素材で出来ていて、特殊なアーツ波形が検出されて、その形が聖書に伝わる通りだから、本物なんじゃないかって言われているだけでね」

「なるほどな……。そりゃ、確かに本物かもしれないな」

「そう。そして本物なら、中にはまだ獣がいるかもしれない。もしかしたら、時間を操る術を手に入れられるかもしれないんだ」

 

エリエルの声は、当然学者らしい期待を込めたものだが、何か別の感情を感じた。

 

「今でこそ僕は独り身の学者だけどね、昔は娘がいたんだ」

「え? そうなの?」

「ああ。エイミーっていってね、とても可愛い娘だった。昔、五年ほど前シエスタへ家族で旅行へ行ったんだ。妻と、僕と、娘で。その帰り、ウルサスを経由したんだけど、その時に娘はさらわれたんだ」

「──それは」

 

記憶にある。五年ほど前、確かウルサスのスラムで人さらいビジネスが活発になっていた時期が有った。ターゲットになるのは警戒心の薄い観光客で、特にその子供が狙い目だった。

 

「一瞬だった……。僕は必死になって駆け回って、警察にも通報した。でも見つからなかった……。その後市街で、僕はたまたま見てしまった。サルカズが、多分僕の娘をさらったのと同じように、小さな子供を一瞬で誘拐して行ったところを目撃したんだ」

「当時ウルサスはこの世でもっとも治安の悪い地域だったはずだ……。確かに、そんな真似が横行してても不思議じゃねえ」

「僕は直感的に、サルカズの仕業だと思った。娘をさらったのはサルカズだって。……今となっては真偽はわからないけどね、僕はその怒りを何かにぶつけないと正気じゃいられなかったんだ。妻とはその後離婚した。帰りのルートを設定したのは僕だったからね、ひどく詰られたよ。僕は家族を全て無くして、だんだん聖書にのめり込んでいった。そして今に至るという訳さ」

「なるほどな……」

「僕は時間を操れるなら、あの時に戻りたいとずっと考えている。やり直せるんじゃないかってね……。もう少しで、それが現実になるかもしれない……」

「サルカズが憎いか?」

「……。さっきの話の続きさ。妻と離婚した後、僕の家にある荷物が届いた。大型の、覚えがない荷物だった。送り元はカズデルでね……。今でもはっきり覚えてる。中に入ってたのは、エイミーの頭だった。その時から、僕の頭にはあの子の表情が張り付いて離れないんだ。……連中は悪魔だ。嬉々として感染者になるような種族だ、歪んでる……! 僕はあいつらを許せないッ……。悪魔共を絶対に許さないと、その時決意したんだッ!」

カズデルはサルカズの主な出身地だ。

 

つまりは、娘であるエイミーがサルカズに殺されたことを裏付ける証拠となった。

 

サルカズはもともと感染しやすい種族だ。そのため社会から排斥されやすく、またそのことが種族そのものに悪印象を植え付ける。

その繰り返しで、サルカズはいつしか本当の悪魔になった……らしい。俺はサルカズだが、別にそんなんじゃないし。

 

「……すまない、変な話になっちゃったね。それで、獣の話に戻るけど、まだ獣が時間の中で寿命に殺されていなければ、鍵を開けた時におそらく獣が現れるはずなんだ」

「それが時間を司る獣ってわけか?」

「ああ、そうだね……。一部では神格化されているし、強大な存在であることは確かなんだ。もちろん、全ては仮説に過ぎないけどね」

「ほぉん。ああ、そういやなんでモスティマがそこに関わってくるんだ?」

「モスティマさんはおそらく、サンクタとサルカズのハーフだ。どういった経緯で生まれたかは語らなかったけど……僕の考えが正しければ、モスティマさんには”鍵”を開けられるはずなんだ」

「……なんだと?」

 

そりゃ面白いことになってきたな。エリエルの語り口が熱を持ち始めた。

 

「サルカズはアーツ適正がもともと高い種族だろう? 鍵からはアーツ波形が検出されたから、高いアーツ適正を得ているのであればクリアできると考えていた。でも実際に試してみたところ、開けられなかったんだ。どの種族でもね。これは実際に、過去の研究者が検証済みの事実だ。でも──各種族のハーフは試していなかった」

「サンクタでもあり、サルカズとしての高いアーツ適正を持つモスティマなら、可能性があるって?」

「彼女、法王親衛隊のアーツ部隊の隊長だろう? 十分に可能性はある。そして彼女の役職は主天使(ドミニオン)だ、これはもう神の采配としか言いようがない! 運命なんだ! 彼女こそが!」

「落ち着け……。なあ、お前的にサルカズのハーフってのはセーフなの?」

「うーん、セーフだね。天使の輪があるし、彼女はとても悪辣には見えないだろう? それに何より、初めて出会った時、彼女はまさに天の使わした”本物”の天使のように見えてしまった」

「本物の天使ねえ」

 

そんなものはいないはずだ。

 

あいつはただのサンクタのはず……。いや、明らかにただのサンクタじゃないだろうけども。それにしたって”本物”の天使だって?

 

「知っているかい? 彼女、来週の収穫祭で奉納の儀を務めるんだ」

「奉納の儀? なんだそりゃ」

「古くは農産物とかを神に捧げる儀式だったんだけど、最近では次代の枢機卿を指名する儀式になってるのさ。つまり、彼女は次の枢機卿──教会の重役ってことになる。そりゃそうだよ、彼女の雰囲気は他を圧倒していた。納得さ」

「ハーフがなっていいもんなのかよそれ」

「問題はない……とは言い切れないけどね。もちろんカトリック派からの反発は激しいだろうけど、おそらく彼女が”鍵”を開けてしまえば、もう誰も彼女の歩く道を遮ることはできない。それは”奇跡”と言っていい、教会の重役が大好きなものだ。きっと彼女は、ラテラーノを導く光になるだろう」

「……まるで、あいつが神になったみたいな言い草だ」

「実際そういうものだからね。……所詮宗教だ。それが人の心を救うというものなら、僕は彼女の中に光を見た。きっと、大勢の人々が彼女に祈りを捧げる」

 

エリエルは酔いのせいか、かすかに陶酔しているかのように見えた。

 

いつだかノエルが言っていた言葉を思い出して、俺はようやくその意味を理解した。

 

──そこにあいつ自身の幸せはあるのか、なんて。

 

一丁前にそんなこと、人のことより気にすることがあるだろうに。

 

 

 

 

斯くして収穫祭が始まった。

 

バチくそ忙しい。死にそう。

 

今日ばっかりはニット帽をハチマキに変えてえっさほいさ焼きそばを焼いて焼いて……。もう何人分作ったか分からない。

 

「中二つ、急げよアルク! 行列が消えるまで休憩は無しだ!」

「おま、それじゃ俺に休みはねえってことかよ……!」

 

俺含め数人で調理を並行しているのだが、人の波が減らない。

 

「く……なぜ私まで、手伝わなければならないんだ……」

「そりゃお前もこの部隊の一人だからな! 倒れんなよフロストリーフ! 後暑いからちょっと冷やしてくんねえ!?」

「馬鹿を言うな……どうせ焼け石に水だ、大して効果はないだろう……」

 

はいいらっしゃいいらっしゃい! 法王親衛隊特製の焼きそばだよ〜! とか叫ぶ隊員たちも、なかなか笑顔で楽しそうだ。俺の目にはあまりの忙しさにヤケになっているように見えるが。

 

「クソが、なんでこんだけ出店があんのにこんな客が来るんだよ……!」

「運営に掛け合っていい立地をもらったからな!」

「隊長の馬鹿野郎!」

 

死ぬ。いやマジで死ぬ。

 

ああ食材の山が消えない。客も消えない。

 

これ一日中か──とか思いつつ、俺はひたすら手を動かし続けた。

 

「あ! アルクだ、やっほ〜!」

「やあ、やってるね。差し入れだよ」

 

エクシアとモスティマが来た。ビニール袋にいろいろ食べ物が入っている。食べ歩きをしているらしい、羨ましい話だ……。

 

モスティマはホッドドッグやらが大量に入ったビニールを机に置いた。

 

「差し入れは、助かるが……ッ」

「忙しそうだね。大変かい?」

「見てわからねーのか!? もう手が勝手に動く領域まで来てるからな、やばいからなこれ」

「あ、せっかくだから私も一個買ってこ〜!」

「やめろぉ! 仕事が増えるだろうが!」

 

隊長も忙しく動き回りながらこっちに叫んだ。

 

「アルク! 客を逃すな、至急作れ!」

「俺が作るんじゃねーか! クソが、ちょっとそこで座ってろ! すぐ作ってやる!」

「ありがと〜。いやー、やっぱり人が頑張ってるところを見ると気分がいいね〜!」

「エクシアお前えええええ!」

 

モスティマはその光景を見て微笑んでいた。

 

「てかお前、出番はいいのかよ!」

「私の本番は夜だからね。今はいいのさ」

「クソが! ああもうやってやろうじゃねえか、俺はトランスポーターだ!」

「え、関係あるのかい?」

「ねえよ!」

 

昼ごろを過ぎればさすがにピークは終わる。

 

俺はラッシュを耐えきり生存した。

 

エクシアたちは焼きそばを受け取り、またどこか人混みに消えていった。

 

「ご苦労だったアルク、君の働きはなかなか目覚しかったぞ」

「……報酬を要求する。いつもの給料じゃ割りに合わねえぞ」

「ではこれをやろう」

 

隊長はプラスチックパックを俺に手渡した。俺は叫んだ。

 

「焼きそばじゃねーか!」

「腹が減っているだろう。食うといい」

「……まあ、食うけどよ。フロストリーフ、お前も食えよ」

「ああ、そうさせてもらおう……。さすがに、疲れたな……」

 

ぐったりして机に倒れ込んだ。

 

「午後からは別の人員が回ってくる、よって午後は貴様らはフリーだ、祭りを回ってくるといいだろう」

「そりゃどうも……。お、なかなか旨えな……」

「祭りのメインは夜だ、食べすぎて動けない、などとならんように気を付けろよ。何せ夜のパレードは一見の価値がある」

「分かってるよ。あんたらは見ねえのか?」

「私たちは見慣れているからな。それにまた来年もある」

「そうか。じゃあ遠慮なく。もぐ……やっぱ旨えな……」

 

ぐいっと水を飲み込んで立ち上がった。食べ終えたフロストリーフを連れて、俺たちは祭りの人混みへと向かっていった。

 

いや想像以上にやばいな。人が多すぎる、ストリートを埋め尽くさん限りの人々だ。

 

うーん……。やばいな、などと考えていると、フロストリーフが俺の手を握ってきた。どうした、って感じでそっちを見ると、フロストリーフが答えた。

 

「アルクが逸れたら面倒だ」

「お前が逸れたら、の間違いだ。全く……。お、生ビール売ってるぜ。一杯いっとくか!」

「悪くないな。行こう」

「っしゃあ祭りだ! 楽しまなきゃな──!」

 

祭りなんて初めてで、さらにガキ一人連れてってのはもっと初めてだったが、なかなか──悪くなかった。

 

「乾杯!」

「乾杯」

 

うん、なかなか……悪くないと。そう思った。

 

いやフロストリーフお前、マジで治安隊に見つかったらヤバいからな? って治安隊は俺たちだったわ。ハハハ。おもろ。

 

 

 

*1
モスティマのコーデを参照。早く日本でも実装しろ




・ノエル
明らかに黒幕の匂いがする。
エクシアの姉。容姿はご想像にお任せします。めっちゃ大人になったエクシアのイメージで書いてる。

・モスティマさん
お前いつの間にかデレはじめてんな。
かわいい。

・鍵と錠
元ネタはモスティマさんのスキル2と3。
ほぼオリジナル設定。今後も出てきます

・エリエル
研究者の男性。バツイチ。アルクの友人。フラグが立っている

・サルカズ
めっちゃ極悪非道の種族。たぶん。ロドスのサルカズは例外らしい。
だから早く設定集を出せほんとかわかんねえだろうが

・焼きそば
隊長の好物。

・隊長
シンプルにいい人。サンクタの女性。結構強いという裏設定があるが、活かされなかった。

・フロストリーフ
かわいすぎる。コーデ早くしろ

・どうでもいい裏設定
能天使(エクスシア)とか出てきますが、エクシアのことではないです。なんかラテラーノでの階級的なアレです。でも大陸版だとエクシアの表記は能天使だったりします。それが名前の由来ってことです。ややこしいね。
別にエクシアのことではないってことだけわかっていただければ。
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