全体的にエモいんすよね〜
行動予備隊はエモの塊、間違いない(確信)
休憩所でコーヒー片手にバイク雑誌なんぞを読んでいると、コップの持ち手が割れて、カップが机に落ちた。コーヒーが机に広がる。
俺はそれで、フロストリーフが感染者だと暴かれたことが分かった。
A year:十二月
「で、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねえか。お前の企みってヤツをよ」
「はて? 企みとは一体なんのことでしょうか」
「……俺には、お前が何しようが干渉する理由はねえ。それがモスティマやガキを傷つけようよするもんじゃなけりゃな。ラテラーノでのゴタゴタなんてわざわざ飛び込んでく理由はねえ」
「私は常に、モスティマのために行動しています」
「どうだかな。お前、何かしら怪しい部分がある」
「認めます。ラテラーノ法王親衛隊の最終的な指揮系統は法王に帰属しますが、一枚岩ではありません。私も、隊長とは言え名ばかりのものです。上にはまだ多くの老人が睨み合っていて、私は老人の手駒と言うわけです」
「お前がか? 笑わせんな、そんなキャラかよ」
「そんな立場です。私は命令に従うことで、多くの特権を得ています。その中には、エクシアを守る力も含まれている。モスティマかエクシア、どちらかを選べと言われれば、私はエクシアを取ります。それは、エクシアがまだ子供だからです」
「モスティマは一人でも大丈夫だって?」
「彼女が助けを必要とするタイプに見えますか? あなたもご存知のはずでしょう」
「ま、確かにそりゃそうだ。あいつがピンチに陥る場面なんか想像もつかねえが」
揃って笑いをこぼした。
モスティマはそう簡単にはくたばらないだろう。傷を負うところさえ想像もつかない。
「だから、私は一定の安心を得ています。モスティマが例え私の敵に回ろうと、彼女なら生き残ってくれると」
「……お前、やっぱり」
「私とモスティマはいずれ殺し合う運命にあります。だからこそ私はあなたに依頼をした」
「呆れた野郎だ。俺みたいな流れ者に運命任せたのか?」
「ですが、うまく行きました。……本来の狙いは、私とモスティマが争う前に、彼女をラテラーノから連れ出してもらうことでした。実際、先月の時点であなたなら可能でした。でも気が変わりました」
「お前、やっぱり天使向いてねえな」
「彼女と戦ってみたくなってしまいました。彼女は変わりました。彼女は恋をした。あなたという悪魔に心を奪われて、見事に変わった」
「……ノーコメントで」
「天使が悪魔に恋をするなど笑い事です。実際、私は嬉しかった。彼女はようやく歩き出す決意を固めた。なら、私は安心して彼女と殺し合える」
「ノエルさんさあ……。お前、やっぱりサルカズの方が向いてるよ」
「ええ。自分でも、よく考えます。あなたの方が、よっぽどサンクタに向いていると思いますよ。アルク、あなたに出会えてよかった。きっとこれは、神の導きですよ」
「くく、神か──」
「ふふふ、ええ。我らが神に祈りを」
「ああ、祈りを」
祈りを。
願いでもなく、ただの祈りを。
俺はすっかり慣れ親しんだノエルの執務室を去った。
次に来るときは、きっともう俺たちは敵同士だと分かっていた。
「聖誕祭の日、パーティーやろうよ!」
「聖誕祭……? なんだそれ」
「え? クリスマスって聞いたことない?」
「……あー、なんか、風の噂で聞いたことはあるが……」
「難しいこと言ってもわかんないと思うから、簡単に説明するよ。クリスマスっていうのは──パーティーの日だよ!」
「なるほどな……。よーく分かったぜ」
「あと、プレゼントをお互いに渡し合う習慣があるよ。みんなで集まってプレゼントの交換とかしようよ。準備しておいてね!」
「まあ、分かったが……」
依頼は警備の仕事だった。めっちゃ暇だ。
どこの警備かって? ラテラーノ国立大学の警備だよ。クリスマス前後はちょっとヒャッハーする学生が多いため、腕っ節のある警備員が欲しかったそうだ。傭兵とは……でも給料いいからこうやって暇そうに座ってる。
エクシアは楽しそうな顔を浮かべた。
「アップルパイなんか焼いちゃってさ、きっとノエル姉喜ぶだろうな〜!」
「……なんか、宗教的なアレじゃねえのか? それ。そんなはしゃぐイベントなの?」
「我が家ではそうなの! いっつもモスティマとノエル姉と私で、夜通し飲むのが習慣なんだ〜!」
「……そうか。じゃあガキ一人連れて行くわ」
「いいよ、連れてきて! パーティーは多ければ多いほど楽しいからね〜!」
クリスマスの夜ってのはどうにもそういうことらしい。
……あんまり遠い話じゃねえな。プレゼント、探してみるか。必要になるかどうかはわかんねえけどな。
「アルク。並びにフロストリーフ。貴様らに出頭命令が出ている。今すぐ総隊長の部屋へ向かえ」
「……おいおい、今日はクリスマスだぜ? 平和な一日にしようって気はないのかよ」
「全く……それは私のセリフだ。貴様らにはある犯罪の容疑がかけられている。なんだと思う?」
「容疑〜? 俺たちに? なんだってんだ一体」
「国家反逆罪だぞ、国家反逆罪。一体何をした?」
「いやなんだそれ。もう訳わかんねえよ」
「それからアルク、貴様にはロリコン罪の容疑もかかっている。覚悟しておけ」
「アルク、ロリコンなのか」
「ちげえよなんでお前ちょっと嬉しそうなんだよ。……てかマジでそんなふざけた罪状があるってのかよ、勘弁しろってんだ」
「国家反逆罪だぞ? 特級犯罪だ、分かっているのか? この聖誕祭に一体何をするつもりだ? テロでも行うつもりか?」
「おいおいおい……俺たちだってパーティーの予定が入ってんだ、今夜までには間に合うんだろうな」
「ふむ。ではその予定はキャンセルだな。アルク。これはパーティーへの招待状らしいぞ」
「おいおいマジかよ……」
「これは私の勘なのだが……武装をしていけ。何か大きいことが起きるぞ」
「教官殿さあ。俺たちがいうのもなんだが、入れ込みすぎだぜ?」
「何、かまわんさ。おそらく、今日で貴様らとはお別れだ。私の勘がそう言っている」
「そうか……。隊の奴らに別れぐらい言っときてえな」
「そうだな。世話になったと伝えておいてくれ」
「私から伝えておこう。さて、早くしろ。時間があまりない。そして、あからさまな武装は控えろ。反逆の意思があると見做されれば、何をされるかわからん」
武装──仕込みナイフ、ハンドガン。このくらいでいいか。あとはこの身一つで。
「フロストリーフ、お前は」
「この戦斧を持っていってはダメか?」
「さすがにダメだろう……」
「そうか」
しょんぼりしたフロストリーフは戦斧を分解した。出来んのかよ。
「ではアーツユニットだけにしておこう。これも戦場における条件の一つか」
「マジで戦いに行くってのか。大体なぜ俺たちを?」
「さてな。逃げようとは思うなよ」
「思わねえよ。この一年を締めくくるにふさわしい戦いを期待するとするか」
ノエルの執務室。
隊長を残して、俺たちは入室した。
「よく来てくれましたね、アルク。それにフロストリーフ。ご苦労でした」
「……なあ。その男たちは」
ノエルの横に、ずらりと男たちが並んでいる。手にはマシンガンを構えて。
「気にしなくて構いません。それより、もう一人来る予定です。それまで話でもしましょうか」
「ああそうだな。なあ、俺たちが国家反逆罪だって? 冗談キツいぜ」
「その容疑が掛けられています。本来、サルカズはそのくらいの認識です。それに──改革派とのつながりが疑われています。アルク、エリエルという名前に心当たりはありますね」
「友達だった。確かにあいつは過激派原理主義のリーダーっぽかったが……俺はそれを知らなかった。本当だ」
「嘘か本当かはあなたが決めることではありません。それは、この国を牛耳る臆病な老人たちが決めるのです」
「おいおい……ノエル、確かにお前は言っていたが……お前がそいつらに素直に従うキャラかよ。本気か、お前はマジで本気なのか?」
「私には、あなた方を即刻処分する権利が与えられています。私が撃てと命令すれば、すぐにあなたたちは蜂の巣です」
「脅し方が下手だ。お前……誰を待ってる」
「決まっています。モスティマですよ」
扉が開いた。
「呼んだかな?」
「ええ、待っていましたよ。モスティマ」
「ここがパーティー会場かい?」
「ええ。残念ながら、エクシアは欠席ですが」
「よお、モスティマ」
「やあ。アルク、フロストリーフ。君たちも?」
「残念ながらな」
「ああ、残念ながら。ノエル、揃った」
「これで主役は全員登場ですか。それではこれより裁判を始めましょう。ここにいる全員には、国家反逆罪、うち一名には並びにロリコン罪の容疑が掛けられています」
「シリアスに行こうぜ。なあ。モスティマ、そんな顔すんなって。違うんだって」
「これに関して、何か釈明は」
「俺から言わせてもらうけどな、俺はロリコンじゃねえし、ラテラーノに対して害意も悪意もない。全部誤解だ、俺は何も知らないしやってない」
「大体右に同じだが、アルクはロリコンだ。だが許してやってほしい。どうにもならないことなんだ」
「私も大体アルクと一緒かな。でもロリコンは病気さ、しっかりと治療するべきだね。私が治療に協力するよ」
この、なんだろうか。
黒服たちの表情がピクリともしないのが印象的だった。なんなら睨まれているまである。
「ふむ、ではあなた方がそう判断されるに至った理由を明示しましょう。もっとも大きなものが、アルクとエリエルという過激派のリーターのつながり。そしてアルクの種族です。そのアルクと特に親しいあなた方にも、その可能性が認められました」
「特に親しいだってさ。照れるね、アルク」
「お前無敵か何かか?」
「ラテラーノに対して革命を起こす気がありますね?」
「ねえよ。お前だって分かってんだろ。そんなことしてなんになる」
「モスティマ、あなたに”鍵”と”錠”の適正が認められました。あなたを担ぎ上げ、このラテラーノに革命を起こすつもりなのでしょう?」
「お前な、いい加減にしろよ。こいつは神様でも神輿でもねえ」
「まあ建前としてはこんなところです。カトリック派は、あなた方を十分な危険因子と見做して排除する決断を下しました。ですがモスティマ、あなたは例外です。あなたがこれまで通り敬虔な信者であり、また勤勉なラテラーノ公民であるならば、あなたは革命などに手を貸すことを止め、その奇跡をラテラーノ聖堂の元で存分に振るうべきです」
どうやら聖堂ってのはやりたい放題らしい。
俺たちが怖いが、モスティマは欲しい。
その尖兵が、ノエルということ。
「……アルク。君に委ねてみようか。もっとも、答えなど分かっているんだけどね」
「答えは”ノー”だ。モスティマは聖堂の都合のいい道具でもなんでもない。ましてモスティマが”本当の天使”であるなら、てめえらみてえな腐った組織に扱え切れる訳がねえ。どっちにしろ、俺たちの向かうべき道は一つだ」
「そうですか。安心しました。では──殺しなさい。彼らに神の裁きを」
「来るぞ!」
とっさにデスクを盾にした。
フロストリーフが氷結のアーツを発動し、氷の刃を飛ばす。アーツは自由度が高い。そのため、銃弾から隠れながらでも発動できる。
「どうしようか、アルク」
「モスティマ、床に穴ブチ開けろ。確か地下があるだろ。そっちに逃げるぞ」
「はいはい、分かったよ。巻き込まれないように注意してね」
モスティマが手を翳した一瞬後、巨大な穴が開いた。なんだこれ冗談か。
「先に降りる。受け止めるからすぐ降りてこい」
「お、それは悪くない」
飛び降りると、地下はどうやら開発室のようだった。様々な工具が散らばった薄暗い部屋。
「降りてこい!」
モスティマとフロストリーフを順番に受け止める。男たちが続こうとするが、ハンドガンで応戦。
「これからどうする?」
「モスティマ。お前、ノエルを殺せっつったら殺せるか」
「どうだろう。正直自信がないかな。殺す必要があるのかい?」
「分からねえ。あいつがどういうつもりか読めねえ。あいつが上層部の言いなりになるようなタマかよ」
「ではどうする。数が多い」
「モスティマ、戦えるか?」
「任せなよ。だが……殺してしまうかもしれないね」
「……それは俺たちの役目だ。お前に殺人はさせねえ。その輪っかは白い方がいいだろ」
周囲の確認。ハンドガンで応戦しているが、限界がある。
──人がいる。
「おいそこの! 起きて避難しろ、何寝てやがる!」
「……アルク? なぜ君がここに」
「お前、エリエル!? こんなとこで何してやがる!」
「それにモスティマさん……。そうだ、あれを」
エリエルがなぜこんな場所にいる? だがその疑問は後回しになる。
エリエルが二つの杖を持ってきた。
「モスティマさん。これを」
「これは?」
「”鍵”と”錠”。それを組み込んだモスティマさん専用のアーツユニットさ。……見せてくれ、どうか、僕に光を」
なぜ、とか。疑問はもう全部後回しだ。そこにそれがあるんだから、仕方ないだろう。
部屋のドアが開き、部隊が突入してくる。同時にマシンガンを乱射してくる──俺たちは回避なり防御なりしたが、エリエルはそんなことはできない。血飛沫が散る。
「エリエル!」
「……最後に、お願いだ。神よ……」
モスティマは機材を盾にしながら、アーツユニットを握った。
「……悪くない、か。これなら出来るかな」
モスティマが杖を振るった。
同時に、モスティマの動きが早送りになったように──いや、違う。
俺たちが遅くなったのか。時間を──操ったのか。
それじゃまるで、モスティマは本当の──。
銃弾の雨の中をモスティマはまるで散歩でもするように潜り抜け、白い、鍵を模した杖を振るうのを、俺はぼんやりとした時間感覚の中でみた。
それで、終わった。
突撃してきた部隊の全員が吹き飛ばされ、倒れていた。
ただの人にできることじゃないと思った。
「……神、よ……。あなたこそ、僕の……」
「なるほどな。エリエル。お前が望んだのが、これか」
「ねえアルク……。この世の中には、神様が確かに、いるんだよ……。どこにだって、誰にだって神は宿るんだ……。エイミー、僕の神よ……救いを……」
「救いをもたらせば、誰でも神か。エリエル、お前はそれが欲しかったんだな」
「そうさ……。君も求めてる……、分かってるだろう、誰だって救ってほしい……。だから、僕は祈ったんだ……。もう一度だけ、エイミーに会いたかった……。それだけさ……」
「どうしようもねえヤツだ。お前は」
「そうだ……。せっかくだ、とどめは君に刺してもらおう……。下らない僕のことを、どうか忘れないでくれ……」
「クズ野郎が。人に殺人させるなんざクズの所業だ……が。まあいいさ。お前は死んだって娘に出会えはしねえ。お前はきっと地獄行きさ」
「……まあ、仕方ないさ。でも、きっと許してくれるよ。だって、エイミーはとても優しい子だからね……。パパ、しょうがないなって──」
俺は銃口を構えた。
「許してあげる、ってさ──笑って──ばいばいパパって──手を振って──ああ。僕の、神よ────」
「じゃあな、エリエル。地獄でも、また友達になろうぜ」
エリエルは笑った。
俺は引き金を引いた。
歩き出す。振り向くことはできなかった。
・エルエル
フラグを回収した。
モスティマのアーツユニットをえっさほいさと作らされていた。無事死亡。
・ノエル
こいつが全ての黒幕だったんだよ!
な、なんだって!?
・聖堂
宗教組織ってロクなイメージありませんね。とりあえず上層部の権力者腐らせとけばそれっぽくなるやんけ
いっつも悪者にされてかわいそう。
・エクシア
あっ(察し)