モスティマさんといっしょ!!!   作:にゃんこぱん

16 / 30
午後の逸話良かったですね。いろいろ新しい情報が盛り沢山でした。
全体的にエモいんすよね〜
行動予備隊はエモの塊、間違いない(確信)


A year:十二月──上

休憩所でコーヒー片手にバイク雑誌なんぞを読んでいると、コップの持ち手が割れて、カップが机に落ちた。コーヒーが机に広がる。

 

俺はそれで、フロストリーフが感染者だと暴かれたことが分かった。

 

 

 

A year:十二月

 

 

「で、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねえか。お前の企みってヤツをよ」

「はて? 企みとは一体なんのことでしょうか」

「……俺には、お前が何しようが干渉する理由はねえ。それがモスティマやガキを傷つけようよするもんじゃなけりゃな。ラテラーノでのゴタゴタなんてわざわざ飛び込んでく理由はねえ」

「私は常に、モスティマのために行動しています」

「どうだかな。お前、何かしら怪しい部分がある」

「認めます。ラテラーノ法王親衛隊の最終的な指揮系統は法王に帰属しますが、一枚岩ではありません。私も、隊長とは言え名ばかりのものです。上にはまだ多くの老人が睨み合っていて、私は老人の手駒と言うわけです」

「お前がか? 笑わせんな、そんなキャラかよ」

「そんな立場です。私は命令に従うことで、多くの特権を得ています。その中には、エクシアを守る力も含まれている。モスティマかエクシア、どちらかを選べと言われれば、私はエクシアを取ります。それは、エクシアがまだ子供だからです」

「モスティマは一人でも大丈夫だって?」

「彼女が助けを必要とするタイプに見えますか? あなたもご存知のはずでしょう」

「ま、確かにそりゃそうだ。あいつがピンチに陥る場面なんか想像もつかねえが」

 

揃って笑いをこぼした。

 

モスティマはそう簡単にはくたばらないだろう。傷を負うところさえ想像もつかない。

 

「だから、私は一定の安心を得ています。モスティマが例え私の敵に回ろうと、彼女なら生き残ってくれると」

「……お前、やっぱり」

「私とモスティマはいずれ殺し合う運命にあります。だからこそ私はあなたに依頼をした」

「呆れた野郎だ。俺みたいな流れ者に運命任せたのか?」

「ですが、うまく行きました。……本来の狙いは、私とモスティマが争う前に、彼女をラテラーノから連れ出してもらうことでした。実際、先月の時点であなたなら可能でした。でも気が変わりました」

「お前、やっぱり天使向いてねえな」

「彼女と戦ってみたくなってしまいました。彼女は変わりました。彼女は恋をした。あなたという悪魔に心を奪われて、見事に変わった」

「……ノーコメントで」

「天使が悪魔に恋をするなど笑い事です。実際、私は嬉しかった。彼女はようやく歩き出す決意を固めた。なら、私は安心して彼女と殺し合える」

「ノエルさんさあ……。お前、やっぱりサルカズの方が向いてるよ」

「ええ。自分でも、よく考えます。あなたの方が、よっぽどサンクタに向いていると思いますよ。アルク、あなたに出会えてよかった。きっとこれは、神の導きですよ」

「くく、神か──」

「ふふふ、ええ。我らが神に祈りを」

「ああ、祈りを」

 

祈りを。

 

願いでもなく、ただの祈りを。

 

俺はすっかり慣れ親しんだノエルの執務室を去った。

 

次に来るときは、きっともう俺たちは敵同士だと分かっていた。

 

 

 

 

 

「聖誕祭の日、パーティーやろうよ!」

「聖誕祭……? なんだそれ」

「え? クリスマスって聞いたことない?」

「……あー、なんか、風の噂で聞いたことはあるが……」

「難しいこと言ってもわかんないと思うから、簡単に説明するよ。クリスマスっていうのは──パーティーの日だよ!」

「なるほどな……。よーく分かったぜ」

「あと、プレゼントをお互いに渡し合う習慣があるよ。みんなで集まってプレゼントの交換とかしようよ。準備しておいてね!」

「まあ、分かったが……」

 

依頼は警備の仕事だった。めっちゃ暇だ。

 

どこの警備かって? ラテラーノ国立大学の警備だよ。クリスマス前後はちょっとヒャッハーする学生が多いため、腕っ節のある警備員が欲しかったそうだ。傭兵とは……でも給料いいからこうやって暇そうに座ってる。

 

エクシアは楽しそうな顔を浮かべた。

 

「アップルパイなんか焼いちゃってさ、きっとノエル姉喜ぶだろうな〜!」

「……なんか、宗教的なアレじゃねえのか? それ。そんなはしゃぐイベントなの?」

「我が家ではそうなの! いっつもモスティマとノエル姉と私で、夜通し飲むのが習慣なんだ〜!」

「……そうか。じゃあガキ一人連れて行くわ」

「いいよ、連れてきて! パーティーは多ければ多いほど楽しいからね〜!」

 

クリスマスの夜ってのはどうにもそういうことらしい。

 

……あんまり遠い話じゃねえな。プレゼント、探してみるか。必要になるかどうかはわかんねえけどな。

 

 

 

 

 

「アルク。並びにフロストリーフ。貴様らに出頭命令が出ている。今すぐ総隊長の部屋へ向かえ」

「……おいおい、今日はクリスマスだぜ? 平和な一日にしようって気はないのかよ」

「全く……それは私のセリフだ。貴様らにはある犯罪の容疑がかけられている。なんだと思う?」

「容疑〜? 俺たちに? なんだってんだ一体」

「国家反逆罪だぞ、国家反逆罪。一体何をした?」

「いやなんだそれ。もう訳わかんねえよ」

「それからアルク、貴様にはロリコン罪の容疑もかかっている。覚悟しておけ」

「アルク、ロリコンなのか」

「ちげえよなんでお前ちょっと嬉しそうなんだよ。……てかマジでそんなふざけた罪状があるってのかよ、勘弁しろってんだ」

「国家反逆罪だぞ? 特級犯罪だ、分かっているのか? この聖誕祭に一体何をするつもりだ? テロでも行うつもりか?」

「おいおいおい……俺たちだってパーティーの予定が入ってんだ、今夜までには間に合うんだろうな」

「ふむ。ではその予定はキャンセルだな。アルク。これはパーティーへの招待状らしいぞ」

「おいおいマジかよ……」

「これは私の勘なのだが……武装をしていけ。何か大きいことが起きるぞ」

「教官殿さあ。俺たちがいうのもなんだが、入れ込みすぎだぜ?」

「何、かまわんさ。おそらく、今日で貴様らとはお別れだ。私の勘がそう言っている」

「そうか……。隊の奴らに別れぐらい言っときてえな」

「そうだな。世話になったと伝えておいてくれ」

「私から伝えておこう。さて、早くしろ。時間があまりない。そして、あからさまな武装は控えろ。反逆の意思があると見做されれば、何をされるかわからん」

 

武装──仕込みナイフ、ハンドガン。このくらいでいいか。あとはこの身一つで。

 

「フロストリーフ、お前は」

「この戦斧を持っていってはダメか?」

「さすがにダメだろう……」

「そうか」

 

しょんぼりしたフロストリーフは戦斧を分解した。出来んのかよ。

 

「ではアーツユニットだけにしておこう。これも戦場における条件の一つか」

「マジで戦いに行くってのか。大体なぜ俺たちを?」

「さてな。逃げようとは思うなよ」

「思わねえよ。この一年を締めくくるにふさわしい戦いを期待するとするか」

 

 

 

 

ノエルの執務室。

 

隊長を残して、俺たちは入室した。

 

「よく来てくれましたね、アルク。それにフロストリーフ。ご苦労でした」

「……なあ。その男たちは」

 

ノエルの横に、ずらりと男たちが並んでいる。手にはマシンガンを構えて。

 

「気にしなくて構いません。それより、もう一人来る予定です。それまで話でもしましょうか」

「ああそうだな。なあ、俺たちが国家反逆罪だって? 冗談キツいぜ」

「その容疑が掛けられています。本来、サルカズはそのくらいの認識です。それに──改革派とのつながりが疑われています。アルク、エリエルという名前に心当たりはありますね」

「友達だった。確かにあいつは過激派原理主義のリーダーっぽかったが……俺はそれを知らなかった。本当だ」

「嘘か本当かはあなたが決めることではありません。それは、この国を牛耳る臆病な老人たちが決めるのです」

「おいおい……ノエル、確かにお前は言っていたが……お前がそいつらに素直に従うキャラかよ。本気か、お前はマジで本気なのか?」

「私には、あなた方を即刻処分する権利が与えられています。私が撃てと命令すれば、すぐにあなたたちは蜂の巣です」

「脅し方が下手だ。お前……誰を待ってる」

「決まっています。モスティマですよ」

 

扉が開いた。

 

「呼んだかな?」

「ええ、待っていましたよ。モスティマ」

「ここがパーティー会場かい?」

「ええ。残念ながら、エクシアは欠席ですが」

「よお、モスティマ」

「やあ。アルク、フロストリーフ。君たちも?」

「残念ながらな」

「ああ、残念ながら。ノエル、揃った」

「これで主役は全員登場ですか。それではこれより裁判を始めましょう。ここにいる全員には、国家反逆罪、うち一名には並びにロリコン罪の容疑が掛けられています」

「シリアスに行こうぜ。なあ。モスティマ、そんな顔すんなって。違うんだって」

「これに関して、何か釈明は」

「俺から言わせてもらうけどな、俺はロリコンじゃねえし、ラテラーノに対して害意も悪意もない。全部誤解だ、俺は何も知らないしやってない」

「大体右に同じだが、アルクはロリコンだ。だが許してやってほしい。どうにもならないことなんだ」

「私も大体アルクと一緒かな。でもロリコンは病気さ、しっかりと治療するべきだね。私が治療に協力するよ」

 

この、なんだろうか。

 

黒服たちの表情がピクリともしないのが印象的だった。なんなら睨まれているまである。

 

「ふむ、ではあなた方がそう判断されるに至った理由を明示しましょう。もっとも大きなものが、アルクとエリエルという過激派のリーターのつながり。そしてアルクの種族です。そのアルクと特に親しいあなた方にも、その可能性が認められました」

「特に親しいだってさ。照れるね、アルク」

「お前無敵か何かか?」

「ラテラーノに対して革命を起こす気がありますね?」

「ねえよ。お前だって分かってんだろ。そんなことしてなんになる」

「モスティマ、あなたに”鍵”と”錠”の適正が認められました。あなたを担ぎ上げ、このラテラーノに革命を起こすつもりなのでしょう?」

「お前な、いい加減にしろよ。こいつは神様でも神輿でもねえ」

「まあ建前としてはこんなところです。カトリック派は、あなた方を十分な危険因子と見做して排除する決断を下しました。ですがモスティマ、あなたは例外です。あなたがこれまで通り敬虔な信者であり、また勤勉なラテラーノ公民であるならば、あなたは革命などに手を貸すことを止め、その奇跡をラテラーノ聖堂の元で存分に振るうべきです」

 

どうやら聖堂ってのはやりたい放題らしい。

俺たちが怖いが、モスティマは欲しい。

 

その尖兵が、ノエルということ。

 

「……アルク。君に委ねてみようか。もっとも、答えなど分かっているんだけどね」

「答えは”ノー”だ。モスティマは聖堂の都合のいい道具でもなんでもない。ましてモスティマが”本当の天使”であるなら、てめえらみてえな腐った組織に扱え切れる訳がねえ。どっちにしろ、俺たちの向かうべき道は一つだ」

「そうですか。安心しました。では──殺しなさい。彼らに神の裁きを」

「来るぞ!」

 

とっさにデスクを盾にした。

 

フロストリーフが氷結のアーツを発動し、氷の刃を飛ばす。アーツは自由度が高い。そのため、銃弾から隠れながらでも発動できる。

 

「どうしようか、アルク」

「モスティマ、床に穴ブチ開けろ。確か地下があるだろ。そっちに逃げるぞ」

「はいはい、分かったよ。巻き込まれないように注意してね」

 

モスティマが手を翳した一瞬後、巨大な穴が開いた。なんだこれ冗談か。

 

「先に降りる。受け止めるからすぐ降りてこい」

「お、それは悪くない」

 

飛び降りると、地下はどうやら開発室のようだった。様々な工具が散らばった薄暗い部屋。

 

「降りてこい!」

 

モスティマとフロストリーフを順番に受け止める。男たちが続こうとするが、ハンドガンで応戦。

 

「これからどうする?」

「モスティマ。お前、ノエルを殺せっつったら殺せるか」

「どうだろう。正直自信がないかな。殺す必要があるのかい?」

「分からねえ。あいつがどういうつもりか読めねえ。あいつが上層部の言いなりになるようなタマかよ」

「ではどうする。数が多い」

「モスティマ、戦えるか?」

「任せなよ。だが……殺してしまうかもしれないね」

「……それは俺たちの役目だ。お前に殺人はさせねえ。その輪っかは白い方がいいだろ」

 

周囲の確認。ハンドガンで応戦しているが、限界がある。

 

──人がいる。

 

「おいそこの! 起きて避難しろ、何寝てやがる!」

「……アルク? なぜ君がここに」

「お前、エリエル!? こんなとこで何してやがる!」

「それにモスティマさん……。そうだ、あれを」

 

エリエルがなぜこんな場所にいる? だがその疑問は後回しになる。

エリエルが二つの杖を持ってきた。

 

「モスティマさん。これを」

「これは?」

「”鍵”と”錠”。それを組み込んだモスティマさん専用のアーツユニットさ。……見せてくれ、どうか、僕に光を」

 

なぜ、とか。疑問はもう全部後回しだ。そこにそれがあるんだから、仕方ないだろう。

 

部屋のドアが開き、部隊が突入してくる。同時にマシンガンを乱射してくる──俺たちは回避なり防御なりしたが、エリエルはそんなことはできない。血飛沫が散る。

 

「エリエル!」

「……最後に、お願いだ。神よ……」

 

モスティマは機材を盾にしながら、アーツユニットを握った。

 

「……悪くない、か。これなら出来るかな」

 

モスティマが杖を振るった。

 

同時に、モスティマの動きが早送りになったように──いや、違う。

 

俺たちが遅くなったのか。時間を──操ったのか。

 

それじゃまるで、モスティマは本当の──。

 

銃弾の雨の中をモスティマはまるで散歩でもするように潜り抜け、白い、鍵を模した杖を振るうのを、俺はぼんやりとした時間感覚の中でみた。

 

それで、終わった。

 

突撃してきた部隊の全員が吹き飛ばされ、倒れていた。

 

ただの人にできることじゃないと思った。

 

「……神、よ……。あなたこそ、僕の……」

「なるほどな。エリエル。お前が望んだのが、これか」

「ねえアルク……。この世の中には、神様が確かに、いるんだよ……。どこにだって、誰にだって神は宿るんだ……。エイミー、僕の神よ……救いを……」

「救いをもたらせば、誰でも神か。エリエル、お前はそれが欲しかったんだな」

「そうさ……。君も求めてる……、分かってるだろう、誰だって救ってほしい……。だから、僕は祈ったんだ……。もう一度だけ、エイミーに会いたかった……。それだけさ……」

「どうしようもねえヤツだ。お前は」

「そうだ……。せっかくだ、とどめは君に刺してもらおう……。下らない僕のことを、どうか忘れないでくれ……」

「クズ野郎が。人に殺人させるなんざクズの所業だ……が。まあいいさ。お前は死んだって娘に出会えはしねえ。お前はきっと地獄行きさ」

「……まあ、仕方ないさ。でも、きっと許してくれるよ。だって、エイミーはとても優しい子だからね……。パパ、しょうがないなって──」

 

俺は銃口を構えた。

 

「許してあげる、ってさ──笑って──ばいばいパパって──手を振って──ああ。僕の、神よ────」

「じゃあな、エリエル。地獄でも、また友達になろうぜ」

 

エリエルは笑った。

 

俺は引き金を引いた。

 

歩き出す。振り向くことはできなかった。

 

 

 

 




・エルエル
フラグを回収した。
モスティマのアーツユニットをえっさほいさと作らされていた。無事死亡。

・ノエル
こいつが全ての黒幕だったんだよ!
な、なんだって!?

・聖堂
宗教組織ってロクなイメージありませんね。とりあえず上層部の権力者腐らせとけばそれっぽくなるやんけ
いっつも悪者にされてかわいそう。

・エクシア
あっ(察し)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。