フロストリーフさんとモスティマさんは出ません。多分
アンケートの結果を加味して修羅場(物理)多めでお届けします。
キャッキャウフフ修羅場(地獄篇)はやりません。ごめんね。
エクシアの天使の輪っかは汚れてない。
それはまあ、俺たち全員の総意だったのだろう。
Day 1 / May the Load be with you - 1
俺は龍門に来ていた。いつもの、トランスポーターのお仕事ってヤツだ。
この仕事は嫌いじゃない。いろんな景色が見られるし、いろんな人々と出会える。悪くなかったし、嫌いじゃない。それほど稼げるってわけでもないってのが唯一の欠点ではあるが……。
そもそも割を考えるなら傭兵の方が金払いはいい印象を受けた。やっぱり荒事が絡むと金払いが良くなる。それは俺の経験則だ。
俺はトランスポーターを名乗ってはいるが、結構な割合で傭兵まがいの依頼が来る。そういう評判なのだ。ラテラーノの一件で随分有名になっちまったもんだぜ、やれやれ。あれからもう三年も経つんだぜ?
龍門で仕事を終えた俺の元に、一つの依頼が届いた。
やけに高額な依頼だった。それはつまり、荒事ってことだ。
Day 1 / May the Load be with you
「……俺がトランスポーターだって分かって、その話をしてんのか?」
「ああいえ、誤解されないでください。貴方の実力を見込んでお話をさせていただいているのですから」
「それでこの報酬額って訳か……」
俺は目の前の高級そうな机に広がった資料を眺めてつぶやいた。
スーツを着た男が冷静に説明を続ける。
「戦闘に秀でているとの評判ですから。是非とも引き受けていただきたい。もちろん、必ずしも武力が必要になる場面があるとは言い切れませんし──」
「おいおいおい……。あのなぁ、天下の近衛局サマが、なんだって外側へ依頼すんだよ。
「こちらにも事情があるのです。全てをお話することはできませんが──背後にいる組織が探り切れていない現状、龍門の組織が動くことがなんらかの不利益を生む可能性がありますから」
「ち……。面倒な話だ……」
つまり、背後にデカい組織があった場合、龍門はその組織と直接的に対立することになる。それを避けたい訳だ──俺を身代わりにして。
俺はため息を吐いた。
……悪い話じゃない。金がないのはいつものことだ。
「分かった、引き受ける。ほら、サインしたぜ」
「感謝致します。それでは協働組織に関しての説明をさせて頂きますね。今回依頼させていただいた、あなたの協働相手の名前は──ペンギン急便です」
…………おいおいおいおい。
おいおいおいおい……。
え? いや──もしかしたら、俺やばいの受けちゃった?
「……やっぱりその依頼、なしじゃダメか?」
「サインは受け取りました。何か都合の悪いことでも?」
「いや、なんだってペンギン急便なんだよ……。もっとなんかあるだろ……」
「ペンギン急便と何かトラブルが? そのような話は聞いておりませんが」
「……いや、こっちの話だ。もしかしたらっつーだけの、ただの心配だ」
「それなら、特段何か問題があるようには思えませんが」
「一ついいことを教えておいてやる。トランスポーターの嫌な予感ってのは──的中率がクソほど高い。まあ、アンタには関係のない話だろうが」
「左様ですか。いずれにせよ、あなたは依頼を引き受けました。すでにあなたの依頼主は我々龍門近衛局です。くれぐれも、どうかこちらの信頼を裏切らぬよう」
「くっそ……。いや大丈夫だろ、そんな訳ねえ……たぶん”あいつ”はいねえだろ……」
いくつかの連絡事項を交わして俺は龍門近衛局を後にした。
いや、いる訳ねえ……だって三年も経ってんだぞ? そんな訳ねえって……。大丈夫だろ……?
地図を頼りに、俺はペンギン急便を訪ねた。
協働相手がペンギン急便で、つまり俺はそいつらと一緒に依頼をすることになるらしい。
都市の一角にあるオフィスだった。酒場の二階にあるらしく、俺は階段を上ってインターホンを押した。
すぐに人が出てくる。
「はいはーい、どちらさまですか──、……」
「…………マジかよ」
「え……? アルク……なの……?」
長かった髪を切って、制服を着ていたが、すぐに分かった。天使の輪っかと、真っ白い羽は特徴的だ。
「お、お久しぶりですね……エクシアさん……」
「いや……なんで敬語?」
「まあ、コーヒーでも飲みなよ」
「おう、サンキュ……」
俺は重苦しくソファーに座りながら缶コーヒーを受け取った。
「で……その、ここに何か……用、なの?」
「……龍門近衛局から、俺の依頼の協働組織がここだって聞いてな。まさか──お前がいるとは、想像もしてなかったっつーか、迂闊だったっつーか」
「えーっと。協働組織……? 何の話だろ……」
知らないらしい。俺たち以外誰もいないオフィスに沈黙が苦しい。俺は今すぐ依頼を投げ出して逃げたかった。
缶コーヒーを開けて飲む間、エクシアは見たこともないような複雑な顔で俺を見た。
「……やめろって、そんな目で俺を見ないでくれ。飲みづれえ……」
「あのさ……。あたし、君に聞きたいことが山ほどあるし、言いたいことも山ほどあるんだ。でも、多すぎてつっかえちゃってるのかな」
「いや──俺も、まさかもう一度会うことになるなんて思ってなかった……。そりゃ、ペンギン急便を当たれとは言ったのは俺だけどよ……。社員なのか、お前」
「まあ、うん……。他に行くあても無かったし……一応モスティマも、ここで働いているらいしから」
「モスティマが? ……ほーん、あいつがねぇ」
「会ってないの?」
「前に会ったのは半年くらい前だっけな。まあ確かに会社に所属したとは聞いたが……」
モスティマとは再会しないつもりで別れた。でもまた会った。運命ってのは厄介だ。
そしてまた再会した。今度はエクシアだ。マジで会いたくなかった。
「お前こそ、モスティマには会ったのかよ?」
「ううん、ボスからここの社員だ──とは聞いたんだけど、それ以外のことは教えてくれないし、全然帰ってこないし……連絡もさっぱりつかない」
「だろうな。俺もあいつに連絡する手段は持ってねえし」
「アルクでもダメなの? ちょっと期待してたのに……まあでも、ようやく会えたよアルク。──全部、話してもらうから。あの時のこと」
「俺の口からは話せねえよ……。あれは、モスティマがお前に伝えるべきだと俺は思ってる。だから無理だ。むーりー」
「アルク、それ本気で言ってるの?」
「……正直わからん。お前に伝えていいもんなのか、俺には判断がつかん」
ノエルのことだ。
誰かに口止めされている訳じゃない。あれ以来、モスティマとそのことについて話したことはない。
ただ、俺がそうするべきだと思っているだけだ。
「だからまあ、当面は諦めてくれ。もし機会があれば教えてやるかもしれんし」
「その言葉、忘れないでよ」
「分かってるって。それより依頼の話がしたい。ボス──あのペンギンはいねえのか?」
「あ、いるよ。ちょっと待ってて──ボスー! お客さんだよー!」
エクシアが叫ぶと、俺からは死角になってて見えなかったが奥のソファーからペンギンが起き上がった。え? ペンギンお前そこで寝てたの?
「なんだようるせえな、俺様の優雅な昼寝を邪魔しやがって。どうした」
「お客さんだって、ボス。アルクっていうの」
「ああ? 誰だって? ……お前、どっかで会ったことあるな。どこだ?」
ペンギンがペタペタ歩いてきた。破壊的なビジュアルだ。一回会ったらそうそう忘れない。
「久しぶりだなペンギン。三年とちょっと前くらいに一回会ったことがある、覚えてっか?」
「三年だと? そんなもん俺が覚えている訳──いや待て、お前サルカズか? ……あー、あん時の……。モスティマを紹介したヤツか」
「おう。で、近衛局からの依頼で、お前らと協働して依頼に当たるらしいんだが……聞いてねえか?」
「近衛局……なんだっけか。あの文句ばっか言ってくる連中だな。あー、なんだっけ……あー、待て待て、忘れてる訳じゃねえ。忘れてる訳じゃねえが──」
ペンギンはサングラスの奥で考え込んだ。……いや、忘れてね?
「……まあアレだ、よく分からんが──エクシア。ついて行ってやれ。それでいいだろ」
「あたし? まあいいけど──なんであたし?」
「他の連中は今仕事してんだろ? 俺様が暇そうなお前に仕事をやる」
「分かった。でも今月のボーナス弾んでよね、ボス」
「アレでも足りないってのか? 我が社員どもはどいつもこいつも本当に欲深えな。毎月一台新車のバイクでも買うつもりかよ」
どんだけもらってんだよ。やべえよ。
「アルクっつったっけな。そういう訳だ、こいつ連れてけ」
「いいのか?」
「腕は確かだ。ウチのプロフェッショナルだからな」
「そうだよー! なんてったって、先月やっとアップルパイコンテストで優勝したんだからね! あ、まだそのパーティーやってない!」
「……うん。すごいね。行くか」
俺は一切のツッコミを放棄してオフィスを出た。エクシアが付いてくる。
「それで、依頼って結局なんなの? ボスも忘れてるみたいだしさー」
「やっぱ忘れてんのかあのペンギン。脳容量が人と違うと記憶力も違うみたいだな」
「まあボスは適当だからね。でも最後にはなんとかしちゃうんだよねー。さっすがボスって感じで」
「さすがペンギンやってるだけはあるな……。まあ、一応説明をしとく」
不審な金の流れがあったらしい。
というのも、龍門の複数のペーパーカンパニーにまとまった金の入金があったらしい。別にそう珍しい話でもないが──何やら事件性があるらしく、具体的な調査を外部の傭兵に委託することにした。
「どういうこと?」
「事情があるらしいぜ。怪しいところがあるのなら、普通に近衛局が動いて調査すればいいだけの話だ。だがそれができない理由がある……らしい。俺も詳しいことは説明されなかった」
「ふーん。……いや、怪しくない?」
「怪しい。報酬金も明らかに多すぎた。戦闘が予想されるってことだ。エクシア、お前……戦えるか?」
「もっちろん! あたしの射撃の腕は、アルクだって知ってるでしょ?」
「よろしく頼むぜ、
「まっかせて〜! で、どこへ向かってるの?」
「ペーパーカンパニーの事業所だ。もちろん書類上だけの住所だろうが……とりあえずここを当たってみる」
「まあ、面倒くさそうなのは全部任せるよ! 歩いてくの?」
「俺のバイクがある。そいつだ」
ペーパーカンパニー。つまり、書類上だけの会社ってことだ。
会社っつったら社員なりがいて、きっちり毎日仕事しているイメージだが、会社ってのは実は紙切れ一枚で設立が可能だ。個人事業主は会社作って法人化した方が色々楽な場合もある。俺みたいなトランスポーターも、場合によっちゃあ法人化した方がいい場合もあって……ってのは別に必要のない情報だな。
だからこそ、たまに妙な会社が設立されることがある。
何をしているのか、一体どういう会社なのか。
情報のない、不透明な、目的のわからない会社ってのが存在する。そういうのの大部分はペーパーカンパニーであることが多い。
で、そういうのは後ろ暗い、アンダーグラウンドな連中にとってとても都合がいい。ギャングとかな。
俺たちの依頼は、つまりはそういうことなのだろう。
「おじゃましまーす、誰かいるかー」
ドアをノックしてみるが、当然反応はない。とあるマンションの一部屋だ。ごく普通の、ありふれた住居。
「留守なんじゃないの?」
「だな。よし、じゃあドアぶっ壊すぞ。離れてろ」
「え? いいの?」
「今回の件に関して、依頼主から一定の許可は得てる。もし間違って、何も怪しいところがなかったとしても、こういうのの修繕費は近衛局が持ってくれるってよ」
指向性爆弾を仕掛けて、俺はボタンを押した。ドアノブ部分がきれいに吹き飛ぶ。
「うわー、アルクって本当にトランスポーターなの?」
「最近は自信がねえ。傭兵かなんかだと勘違いされててな。それじゃ、おじゃましまーすっと」
部屋には、一切の家具がなかった。
締め切ったカーテンに、埃の積もったキッチン。エクシアが先に進んでいく。
俺は視界の端に、ドアからの日光に反射したピアノ線を捉えて叫んだ。
「止まれ、トラップだ──ッ!」
「ほえ?」
エクシアを掴んで咄嗟に地面に伏せる。爆発音が響いた。
キッチンのほうに掴み込んだのが良かった。おかげで障害物を盾にすることが出来た。
「……生きてっか」
「うん、まあ」
「いや、平気そうだな。今お前死にかけたのわかってんのか?」
「生きてるからオッケー!」
「イカれてやがる……。まあいい、大体クロだってことがわかったな」
「クロ?」
「ああ。トラップってことは、誰かがここを調べに来ることを想定してたんだ。そして割と殺す気のトラップを仕掛けてやがった」
「っていうことは……?」
「遠慮は要らねえってことだ。エクシア、分かるな」
「うーん。まあ、とりあえずやり返せばいいの?」
「正解」
部屋の中は何もなかった。トラップも一つだけ、後は完全に何もない。一つとして。
「次を当たる。行こう」
「はーい。あ、そういえばアルクって強いの?」
「俺はトランスポーターだ。傭兵じゃねえ……多分」
近衛局から渡されたリストを当たっていくが、大体ハズレだ。そもそもそんな住所は存在しない場合も多かった。
「……ここで最後だな。一応武器構えとけ」
「またハズレじゃない?」
「さあな。……だが、明らかに怪しそうなんだよな」
工場跡。すでに使われなくなって、塗装の剥がれ始めた無人の倉庫。
ドアを乱暴に蹴り破って入る。
「誰かいるかー。おーい」
「いないんじゃない? そもそもほんとにここで合ってるの?」
「住所はここで合ってる……はずなんだが、なんだってこんなとこに──」
悪寒が走った。
俺は咄嗟にハンドガンと木刀を構え──上から降ってきた人物の一撃を弾いた。
ハンドガンを構えて──その人物を捉えて俺は叫んだ。
「てめえラップランド! 何してやがる!」
「アッハハハハ! アルク、キミだったのかい! また会ったねえ!」
遠慮はしない。襲いかかってきたからには敵だ。どうせそう簡単にくたばりはしない。
ハンドガンを片手で撃ちまくるが、当たらない。未来予知でもしてんのかって感じで避ける。
「エクシア、ぶっ放せ」
「よぉ〜っし!」
マシンガンの連射からラップランドは逃れるように走り、積み上げられたコンテナへ隠れた。
「ラップランド! お前今度は何してんだ」
「アハハ、ボクは今、キミの敵ってことさぁ! 存分に殺し合おうじゃないか!」
「イカれ野郎が……。エクシア、援護頼む」
「いいけど……倒しちゃっていいの?」
「どうせ簡単には行かねえよ。殺す気でやれ」
「分かった!」
突っ込む。ハンドガンと木刀の変則戦闘だが、ラップランドは難なくついてくる。
「でッ、お前はどこに雇われてんだよッ!」
「知りたいのかい? アハハハ、でもダメさ、教えられないんだ──だってその方が面白いからねえ!」
「お前ほんとさぁ……ッ」
エクシアの射撃支援。実質的に二対一だってのにラップランドは狂気的な笑顔を一向に崩そうとしない。
「ところでさ、アルク……」
「なんだよッ」
「──そっちの子、誰だい?」
ひっ。
ラップランドの口元から笑みが消えた。怖い……目が怖い。さっきと何も変わってないはずなのに、非常に怖い。なんでだ……?
「し、知り合いの妹ですけど何かッ!?」
「ああそう──じゃあ、そうだね……殺しちゃおっかな」
ラップランドが動いた。このクソサイコパスがッ!
卓越した戦闘技術で俺をすり抜けてエクシアへ向かう。俺は追いながらハンドガンを撃つが、背中に目でもついているのか全部避けられる。どうなってんだ。
「やっば……! 助けてアルク……なんちゃって〜!」
エクシアが何挺かのマシンガンを展開してめちゃくちゃな弾幕を張った。人間業じゃない。マシンガンなんて同時に幾つも扱えるはずがない、反動で照準がめちゃくちゃになるはず……なのだが、エクシアは当然のようにやってのける。化け物が。
「
改造しているのか、明らかに連射速度のおかしい銃を何挺も展開し、クソみたいな精度の弾幕を貼る。あんなんじゃ銃身がすぐ過熱して使えなくなる──いや、だから何挺も取替えながら撃ってんのか?
あのラップランドが近づけない。なんなら俺も近づけない。暴風の中に飛び込んでいくようなものだ。
「ふふ──やるじゃないか! 侮っていたよ……仕方ないなあ、こんなことしたくなかったんだけど……それじゃ、また会おうよアルク! アハハハハ!」
ラップランドはエクシアの射撃から逃れつつ逃走した。驚いた、あいつが尻尾巻いて逃げるなんて。
……いや、ラップランドの言葉はどういう意味だ──と考えて、天井が爆発したことで俺は全てを理解した。
駆ける──途中エクシアを乱暴に抱える。
「ちょっとアルク!」
「俺が走った方が速い。大人しくしてろ」
「そうじゃなくて、銃を回収しきれてないんだけど!」
「……命の方が大事だろ」
崩壊していく工場から俺たちは辛うじて脱出した。エクシアを下ろす。
「あーあ、せっかく改造してもらったのにな」
「いやお前アレ……まあなんでもいいか。安心しろ、諸経費は龍門が持ってくれる」
「あ、ならいいや。せっかくだし新しいの欲しかったんだよね〜」
「強かだな……」
一丁だけ、エクシアが使っておらず、背中に背負ったままのマシンガンがあることに気がついた。
それはいつだか、俺がエクシアに届けた守護銃だった。
・エクシア
ペンギン急便所属のトランスポーター。この章でのヒロイン(?)
かわいい。アップルパイ!
・ラップランド
物理的に強い。ケオべピックアップガチャではこっそりピックアップされていた。おかげでやっと来てくれた……。ありがとう……ありがとう……。
・近衛局の人
龍門近衛局諜報部の特殊エージェントという裏設定がある。暗躍してそうなエージェントのイメージで書いてみたはいいものの今後出番があるかは不明。
・アルク
いつもの。死亡フラグが立っている
・フロストリーフさん
出 番 な し 確 定 演 出
すまぬ
章が終わるまでは毎日投稿したいです(出来るとは言ってない)