なんでクリアファイル扱ってない……?
フロストリーフさんのクリアファイルどこ……? ここ……?
しかし参った、せっかくの手がかりが消滅してしまった。
「──ああそうだ。廃工場でな、ああ。……知り合いだ、多分どこかに雇われたんだろうな。ああ。……了解」
電話を切った。
「話は終わり?」
「ああ。一応依頼主への報告は終わりだ。これからの方針だが……どうすっか」
「結局、なんであたしたちは襲われたの?」
「まあ、つまり俺らに探られて困る連中がいるんだ。そいつらが仕掛けたトラップってところだろうな。ぶっ潰せば問題ない」
「それもそっか。よーっし! アルク、新しい銃を買いに行こう!」
「……あのね。任務中だけど」
「だって全部瓦礫の下に埋まっちゃったじゃん」
「お前……一つ残ってんだろ」
「ああ、このノエル姉の守護銃? これはダメだよ、設定があたしには合わなくて使いにくいし」
「じゃあなんで持ち歩いてる?」
「守護銃は、いざというときのためのものなの。だからだよ〜」
俺は特に何も言わなかった。
……今日はもう終わりだな。疲れたし腹減った。
「飯食ってこう。ハンバーガーでいいよな」
「うーん……いいね!」
いいのかよ。俺はまたバイクを走らせた。
ファストフードに並んで、俺は適当なセットを注文。すぐにコーラとバーガーが作られる。
「しかし面倒なことになったな……。つかお前、結構こういう荒事に慣れてんのな」
「まあ、これでもペンギン急便に入って二年も経つからさー。慣れちゃった、それに面白いし」
「……運送会社、だよな?」
「運送会社だよ?」
「なんでドンパチやることに慣れるんだ?」
「え? トランスポーターってそういうのじゃないの?」
俺は言葉を失った。同時に、何も言い返せなかった。
「……。おう。そうだな」
「え、アルクだってそんな感じじゃん。ほら、さっきだって……ていうかあの襲ってきた女の人、知り合い?」
「知り合いっつーか、腐れ縁っつーか……。分かると思うが、あいつかなり強えぞ。前より強くなってる気がするわ」
「へーえ、そういうの好きかも! やっぱこうでなくちゃね〜!」
「……どいつもこいつも、戦うことばっかしか頭にねえのか?」
「そんなことないって。でもまあ──派手にパーッとやるのが好きなんだよね、知ってるでしょ?」
「ああ、よーく知ってる」
パーティーばっかしやがって。俺はその度に二日酔いだったわアホが。
「それで、明日はどうするの?」
「奴らを調べる。お礼をしてやらなくちゃな」
「そうこなくっちゃ!」
「だが手がかりがねえ。一応いくつかの情報は貰っちゃいるが……あ?」
近衛局から渡されていた紙の資料を眺めていると、ヤバい見落としを発見した。
「待て、この口座への送金元──ラテラーノだと?」
「え?」
なんかやばいかもしれない。ラテラーノが関わっている……?
やばい気配を感じて俺は顔を上げた。
テーブルの先に居たのは、どす黒い天使の輪っかと羽を持つサンクタの男だった。
ショットガンの銃口を俺に突きつけている──。
「あなたはアルク・ブルズで間違いありませんね」
「……お前、誰だ」
「あなたには現在、ラテラーノにおいて特級犯罪者としての手配がかけられています。ご存知ですね」
「それがどうした、ここは龍門だろ? ラテラーノの法は通じねえはずだ……」
店内が騒然とし始める。誰だって銃を突きつけてる場面を見ればそうなる。
「私は公証人役場の執行人です。現在は、あなたをラテラーノ本国へ送還する任務についています。抵抗しても構いませんが、その場合は──あなたの身柄を、生死不問とさせていただきます」
「おいおいおいおい、ここでやろうってのか? 大体なんで今更。もう三年も経ってんだ、時効でいいだろうがよ」
「ラテラーノの時効は二十年です。戦闘の意思はありますか?」
「……待てよ、まあ座れ。俺たちはまだ夜飯を食い切ってねえ」
「あ、そういえばアルクってラテラーノで手配されてたね」
三年前のクリスマス。ノエルが死んだあの夜、俺たちは聖堂をぶっ壊した。そのまま逃走したせいで、俺はラテラーノで手配され、ラテラーノと引き渡し条約を結んでいる国での活動ができなくなった。……俺だけ。モスティマはお咎めなしだ。ひでえ。
「私としては、ここで戦闘を始めても構いませんが」
「大した自信だ。俺に勝てるって?」
「その確率が高いでしょう」
俺はハンバーガーに齧り付いた。もぐもぐ……ごっくん。
「お前、名前は?」
「名前が必要でしたら……イグゼキュターとでも」
「そうか。まあ表出ろや──面倒だが、殺しはしねえ」
俺はテーブルを立ち上がり店を出た。男──イグゼキュターも続く。
すでに暗くなった龍門の通りで、俺は武器を構える。エクシアがそれを眺めている。
「エクシア、手ぇ出すんじゃねえぞ。黙って見てろ」
「ラテラーノまで同行を願います。もっとも、少々手荒になってしまうことは否定できませんが」
「おいおい……やたら乗り気だな。公証人役場ってのはもっとお堅いイメージがあったが」
「ええ、その通りです」
──視界の端で、エクシアがマシンガンを構えるのが見えた。え?
待て、お前何してんの──と叫ぶ前に、マシンガンが乱射された。ガラスが大量に割れる音がした。民間への被害──やばい。マジでやばい。
「あ”あ”あ”あ”あ”!!! お前何してんのぉおおお!?」
「ごめん、ついやっちゃった」
「逃げるぞ、近衛局が来る!」
銃弾の雨を掻い潜ったイグゼキュターがショットガンを構える。俺は逃走した。
速攻でバイクに跨り、エクシアを乗せて逃亡。ショットガンがコンマ一秒前の俺たちに向けて放たれた。
だが逃走は成功。
「お前何してんだ!? どういうつもりだ、市民に被害出すとやべえぞ!?」
「いやー……だって、今アルクが連れてかれたら、あたしだって困るもん」
「お前なあ……」
背後からパトカーが追いかけてくる。俺は赤信号を無視して突っ走った。青信号で走っていた車をギリギリで躱す。
バックミラーを確認して俺は戦慄した。
……あの男、追いかけてきている。あいつもバイクかよ。嫌だぁ……。
男、イグゼキュターは片手で運転しながら、片手でショットガンを構えた。
「エクシア!」
「はいよ〜」
銃撃戦が開始された。不安定な足場だ、当たりにくいし、牽制目的だ。
「でもなんで逃げてるの?」
「……嫌な予感がするんだよ。なんか、やべえ気がする」
「どうして?」
「公証人役場がなんだってこんな場所にいんのかが分からねえ。……嫌な予感だ、言っとくが当たるぞ」
「うーん、そうかな……」
「──やべえ、包囲網敷かれてる。突っ込むぞ、捕まれ」
近衛局は有能だ。スピード違反に信号無視に市街での無許可発砲を繰り返すバカどもを捕らえようとしている。
最近購入した靴仕込みのアーツユニットを介してアーツ力場を形成、ジャンプ台を道路に作り出し、バイクは宙を舞う。見事包囲網を飛び越え、俺たちは龍門の外壁へ迫っていく。
「どうするの?」
「……龍門から脱出する。ぜってえやべえ」
「え、検問所をバイクで抜ける気? アルク頭大丈夫?」
「ごちゃごちゃ言うな。それとも前科持ちになりてえのか?」
「もっと罪重くなると思うけどなあ──」
検閲所には銃を構えた近衛局の人たちがいっぱい待ち構えていた。有能すぎワロタ。笑えねえ。
検閲所は外壁の一部に開いた穴のような場所だ。そこで入国審査などをしている。つまり一定の隙間がある。
そこにバイクで突っ込むのは無謀だ。どうやったって突破はできない。ではどうするか──。
「行くぞぉぉぉぉおお!」
「おお、いえーい!」
バイクで重装備の近衛兵に突っ込み、ギリギリのタイミングでバイクから跳ぶ。するとちょうど近衛兵の上を体一つで通過することになる。バイクは廃車だ。
俺たちは検閲所を突破し、外側のトラックの一台をかっぱらって逃亡。また罪状が一つ増えた。
「あれー、もう広域指名手配犯になっちゃってるね。あはは、あたしの顔写真まで載っちゃってる」
「……何か妙なことは書いてねえか」
「特記条約により、身柄はラテラーノに引き渡すものとする、だってさ」
「クソが。有り得ねえ……龍門とラテラーノ間に条約だって? ある訳がねえ……どう考えたって普通じゃねえだろ……」
「あ、電話だ。はいもしもし、テキサス? うん、……ええ? そんな〜、あたし何も悪いことしてないって〜。そうそう、うん、……分かった。じゃあね〜」
「なんだって?」
「ペンギン急便クビだって。酷いよね〜」
「おいおい……。もうどうなってんだ、処理が追いつかねえ……。現状を整理するぞ」
まず、現状。
俺がラテラーノの公証人役場から追われている。イクゼキュターって名乗ったあいつに仲間がいるかは不明。
次、龍門近衛局が俺らを指名手配した。街中でどんぱちしたのは悪かったと思う。近衛局からの依頼がどういう扱いになったかは不明。また、俺らの身柄をラテラーノに引き渡す条約がある……らしい。俺はそんな話は聞いたことがない。
近衛局からの依頼で、ラテラーノが関連する可能性が見えてきた。背後組織にラテラーノが関わっている可能性が高い。ラップランドもそこに雇われているのかもしれない。詳細不明。また、これが公証人役場に関連するかどうかも不明。
次、エクシアがペンギン急便をクビになった。おもろ。
「訳が分からねえ……」
夜の荒野を、盗んだトラックで走りながら俺は呟いた。
トラックを見つかりにくい岩陰に隠す。ギリギリ龍門からの電波が届く距離だ。
「……これからどうする?」
「いや〜……どうしよう?」
「元々の依頼は、龍門での怪しい金の流れを探ることだった。バックに犯罪組織がいる可能性がわかったから、その調査だ。……まあ、これも俺みたいな外部のトランスポーターに依頼する時点でそもそも怪しい依頼だったが……これがまだ続行してるのか分からねえ。近衛局に連絡なんて取る気になれねえし……」
「あたしはクビになったし。あーあ、これからどうすればいいの〜? もう龍門に帰れないってことだよね〜」
「お前な、ずいぶん気楽だな」
「まあ、なんとかなるでしょ。ね、アルク」
俺はため息を吐いた。この気楽さは昔から変わらないらしい。
「……行動方針だけ決める。いくつか候補がある。一つは、このままどっか別の国に逃亡すること」
「うーん、悪くないね。放浪の旅っていうのにも興味あるし」
「もう一つは──このまま引き下がらず、全部の真相を明らかにするまで戦い続ける。俺はこっちだな。やられっぱなしで終れるかよ」
「ペンギン急便の社訓その一は、やられたら三倍返しだよ。あたしもそっち」
「じゃあ決まりだ。……戦うぜ、覚悟はいいな?」
「もっちろん。あ、一つ約束して欲しいんだけど、これが終わったらノエル姉のこと全部教えてね」
「生きて終われれば、な。とりあえず今日はもう寝る。疲れた」
「だね。そうだ、変なことしないでよ」
「するかアホ」
トラックの荷台に寝っ転がって寝た。荒野はいい感じの気温で、星ばっかり綺麗だった。
隣でエクシアがダンボールを下敷きに寝ながら聞いてきた。
「あのさ、アルクってなんでトランスポーターやってるの?」
「生きるためだ。……ああ、誤解すんなよ。生きるってのはな、ただ金稼いで飯食ってりゃできるってもんじゃない。そんな簡単じゃねえんだよ、実はな」
「……ノエル姉はさ、なんで私に何も伝えてくれないまま死んじゃったのかな」
「難しいな。俺もそれはずっと疑問だった。あいつのことだから、もっとちゃんとした遺言を残してるもんだとばかり思っていた」
だが残したのは守護銃を一丁と、一言だけ。”あなたを愛しています”と。それだけ。
「やっぱり? モスティマなら何か知ってるかな……」
「さあな。あいつだって、ノエルの死を知っていた訳じゃねえ。あれは完全に成り行きっつーか……予想できたりするもんじゃなかった。ま、なんだってそうだがな」
「確かに。今だってそうだね。でもあたしは案外楽しいよ」
「この状況でよくそんなことが言ってられるもんだな……。絶望的だぜ、状況は」
「だいじょーぶ、あたしが本気になればできないことなんてないからね〜」
「やれやれ……」
そうして寝た。
だがまあ、それは俺も同じだった。──この状況に対して、楽観的だった。
これフラグだ、と気付けなかった。まあいつものことだ。
俺は、俺を起こそうとする誰かによって起こされた。
「……誰だ」
薄暗い夜を月明かりが照らして、そいつを映し出す。
「はろーアルク。久しぶり」
「……!? モスティマッ、お前なんでここにッ」
「しーっ。静かに、エクシアが起きちゃう」
モスティマがトラックの側に立っていて、俺は慌てて体を起こした。
「……疑問点が山ほどあるが、まあ久しぶりだな。どうした」
一応小声で話すことにした。エクシアは隣でぐっすりだ。
「君に近衛局からの伝言を頼まれてね。それじゃあ伝えるよ──近衛局はアルクとエクシアを指名手配し、逮捕に動くものとするが、アルクへの依頼は依然として有効である……とのこと。あ、報酬額を倍にするって言ってたかな」
「……寝る。今日はもう何も考えたくねえ」
「待ってよ。もう一個いいニュースがあるんだ」
「なんだよ……」
「龍門への秘密の侵入ルートがあるんだって。そのデータを持ってきたよ」
「なんだってわざわざ……」
通信機器を繋いでデータを受け取る。テキストと画像データだ。
「じゃあはい、これで私の依頼は完了だ。それじゃあね」
「エクシアを起こさなくていいのか?」
「うーん、今じゃないかなぁ」
「俺が言えた義理じゃねえが……お前も大概だ」
「君もね。それじゃあ──あ、今度一緒にご飯食べに行こうよ。龍門で美味しいところを見つけたんだ」
「無事生きてりゃな。ま、久しぶりに顔見れてよかったよ」
「──うん。私も、同じ気持ちさ」
モスティマは去っていった。
……いや、あいつ一体どうやってここまで来たんだ、とか。どうやってこの場所を見つけたんだ、とか。もう色々と──それはもう色々とあったが。
あいつはそういうヤツだということを、久しぶりに思い出した。
で、俺は状況がさらに複雑化したことを悟り空を仰いだ。
星ばっか綺麗で俺は笑った。
ははは、もうわけわかんね。寝よ。
・イグゼキューター
ラテラーノ公証人役場の執行人。
顔が良すぎる。イケメン過ぎ……あと声もいい。性能も良くよく見てみたらかなりやばい。日本未実装のスキンが良すぎる。いつか育てたい(遺言)
・エクシア
ペンギン急便をクビになった天使。フリーター天使。かわいい。うっかりアップルパイしてしまった。
・モスティマさん
ついうっかり登場させてしまった。後悔はしていない
・話がややこしいぞボケ
すみません許してください、なんでもしますから!(なんでもするとは言ってない)