モスティマさんといっしょ!!!   作:にゃんこぱん

23 / 30
Day 2 / Love your neighbor, Vengeance is mine - 2

結局ファーストフードかよっつーね。でも相性がいいのは確かだった。トランスポーターに上品な店は似合わない。俺の主観で偏見だが。

 

ピザを食いながらエクシアと話す。

 

「だがどうすっか……。あの組織、結局潰れたのか?」

「なんか変なこと言ってたよね。ラテラーノから流れた資金の回収って」

「らしいな。資金ねえ……悪い、電話だ」

 

応答する。

 

「はいはい、トランスポーターアルクだ。どうした」

『近衛局です。ご無事で何より』

「ああ、あんたか。よく分からんが、連中は全員潰されてた。公証人役場だ」

『やはりですか。執行人、厄介ですね……』

「あんた、知らなかったのか?」

『詳細はさっき把握したばかりです。ラテラーノから急に特記条約を求められた時から、嫌な予感はしていましたが、執行人が出張ってくるとは予想外でした』

「いいから全部話せ。もしくは依頼はこれでおしまいだって言え」

『残念ながら、依頼は続行です』

「なんでだ? すでに調査は完了している、これ以上は契約の範囲外だ」

『そうも言ってられない状況なのです。近衛局の立場は複雑です──ことの発端は、龍門での緩いビジネスルールを利用したマネーロンダリングの可能性が発覚したことです。説明が必要ですか?』

「……全部聞くと長そうだな。必要なところだけ話せ」

『了解しました。その調査をあなたがたに依頼したのは、更にラテラーノから特記条約の承認を求められたからです。詳しい説明は省きますが、誰が事件を解決するのか、という一点においてラテラーノと龍門の対立が発生する可能性がありました。直接的な対立を避けるため、あなたという代理人を立てた。ここまではいいですね?』

 

コーラを一口。

 

ロクな話じゃなさそうだ。

 

「で、俺にどうしろって?」

『我々には龍門の誇りがあります。人の家の庭に勝手に入ってきて、好き勝手荒らされたまま黙ってそれを見送るなど、できるはずがないでしょう』

「プライドかよ……。まあ、金払ってくれるんならなんでもいい」

『おそらく、ラテラーノから流れ出た資金というのは盗み出されたものでしょう。そのためマネーロンダリングが必要になりました。その回収を公証人役場が担当するのは筋が通った話です。ですが、龍門で起こった事件に対し、黙って見ていろ、などと言われて黙っていられるほど我々は誇りがない訳でも、優しくもない。──その資金は、我々が回収します』

「そうか。頑張れよ」

『それがあなたの仕事です』

「クソが! 自分でやれや!」

『ラテラーノとの直接的な対立は、我々の望むところではない。ですが、このままでは我々近衛局の面子が丸潰れになってしまう。警察組織の面子が大事であることは理解できるでしょう』

「そりゃ舐められたら終わりってのはわかる。じゃあ俺らの手配を取り消してくれよ。それぐらいはやってくれ、あと報酬三倍にしろ」

『市街への被害が出ています。それに、ラテラーノからあなたの身柄を要求されています。これは最低限度の、ラテラーノへの顔立てです。すでに、形だけのものとして捉えていただいて結構。それと、報酬の件は承りました』

「その言葉が聞きたかった。そしてもう今後は近衛局からの依頼は受けねえ、絶対だ」

『今後とも良い関係を築き上げていきたいものですね』

 

近衛局の男は笑ってそう言った。電話越しでも笑顔が見えるほどだった。

 

「あのさあ……。まあいい、指示を寄越せ。何をすればいい」

『実は、資金は口座にはすでに無く、なんらかの方法で現金化されているものと推測されます。執行人が回収したかは不明です、すでに壊滅した犯罪組織ですが、彼らの残党が先んじて資金を持ち出している可能性もあります。検閲を敷いていますので、その場合は残党が龍門の外へ資金を持ち出すのは不可能でしょう。なんとかして資金を探してください。場合によっては、執行人から取り返してもらうこともあるでしょう』

「無茶言うぜ」

『トランスポーターでしょう。そのぐらいなんとかしてもらわないと、あなたのコストに見合いません。何せ当初の三倍ですから、三倍の働きをしてもらわなくては。こちらでも何かわかったら連絡します。また、諸費用はこちらで負担します。その場合は領収書をとっておいてください。では』

「クソったれ、あんた最高だ」

 

最後の一切れを乱暴に口に詰め込んで飲み込む。

 

「どうするって?」

「とびきり面倒なことになった。エクシア、今できる中で一番強い装備を揃えろ。時間がかかってもいい、執行人二人が束になって襲いかかってきても余裕でブチのめす銃を用意するんだ」

「え、じゃあちょうど欲しかったヤツがあるんだよね! それにあたしが手を加えれば、最高の装備が出来るよ!」

「改造にどんだけ時間がかかる?」

「明日まではかかるかな!」

「ダメだぁ……。いや、まだ可能性はあるか……? エクシア、俺のカードだ。好きなだけ使え」

「え、いいの!? 本当に好きなの買っちゃうよ!」

「領収書は取っとけ。で、買い次第できるだけ早く改造しろ。……明日、決着をつける」

「領収書? 宛先は?」

「くくく、聞いて驚け──龍門近衛局だ」

 

うそー! と驚くエクシアを放って、俺は立ち上がる。

 

「どこ行くの?」

「時間を稼ぐ。確認するが、いい銃があれば執行人どもに勝てるんだな?」

「まあ、負けたのを武器のせいにするつもりはないけど──あたしの腕前についてこれる銃があれば100%、あたしの勝ちだね!」

「いいぞ、ツキが巡ってきやがった……。ここからは一旦別行動だ、また連絡する」

「了解! それじゃあね──よーっし! 融合剤にD32鋼に、あ! せっかくなら上級合成コールも買っちゃお! それに上級エステルも六個ぐらい買っちゃって──あー! 楽しみになってきたなぁ、もう!」

「……ほどほどにな。マジで」

 

聞こえてきた素材は、目玉が飛び出るほど高い素材ばかりだ。近衛局の財政が心配になるが、諸経費を持つったのは近衛局だ、せいぜい後悔してもらおう。せっかくだしバイクも買っちまおう。よっしゃぁ!

 

 

 

 

 

どうなろうと、流れ出た資金を回収するには執行人どもをぶちのめす必要がある。あいつらは手練れだ、エクシアの強化無しでは勝てるか分からない。──エクシアを信頼するとしよう。そのために、釣り出す。

 

場所は……わかりやすい場所がいい。龍門を出てもいいが……検閲所をもう一回越えるのも面倒だし、それだと見つけてもらえないかもしれない。

 

市街地に被害が出ると面倒だし、どんぱちやっても大丈夫な場所がいい。広いところがいいな、障害物もあるとなおよし。でもとりあえずは見つけてもらうことが先決。

 

「そうだろ?」

「やあアルク、そんなところで何をしているんだい?」

「やっぱ高い場所がいいと思ってな。人混みの中じゃ見つけづらいだろうし、俺の親切心だ。見つけてくれてよかったよ、モスティマ」

「私が君を見失うわけがないじゃないか。それで、エクシアと何をしているんだい?」

「──お前、公証人役場サイドだな?」

「よく分かったね。そう、私は今、諸事情により執行人補佐をしているんだ。つまり、君と敵対している……ってことになるのかな?」

「……じゃあなんで、昨日俺に情報を届けに来てたんだよ……」

「いや、まさか私も君が近衛局からの依頼を受けてるなんて思ってなくてさ。びっくりしちゃったよ」

「そうか。で、金は回収したのか?」

「んー、内緒。ところでアルク、その資金っていくらぐらいだと思う?」

「知らねえな……八百万龍門幣くらいか?」

「残念、不正解。正解は八億」

「……マジかよ。執行人が動くわけだ」

 

途方もない金額だ。

 

「今は貴金属とか、そういうのにしてあるよ。札束で運ぼうとしたらトラックが必要になっちゃうからね」

「なあ、それどこにあるか教えてくれねえか?」

「んー……。そうだなあ、──私に勝てたら、教えてあげてもいいかな」

「お前とは長い付き合いだが、戦ったことって一回もねえな」

「じゃあ、これが記念すべき初の戦い?」

「記念すべき、な。本気で行くぜ、お前なら死にはしねえだろ」

「うん。それは君も一緒でしょ? ま、やろっか。……ふふ、私ともあろう者が──楽しみなんてね。行くよ」

「やな感じだ……が。まあ依頼だ。恨むなよ」

 

衝突。

 

 

 

 

「よぉ、出来たか?」

「アルク!? ボロボロじゃん、どうしたの?」

「いや、ちょっとな。それより進捗はどうだ?」

「うん、いい感じだよ。これなら明日までには仕上がりそう!」

 

ペンギン急便の宿舎、エクシアの部屋。

 

正直立っているのもやっとだが。

 

「決着は明日、龍門郊外の廃棄されたブロックでつける。そういう風に話付けてきたから安心しろ」

「……アルク、大丈夫? 今にも倒れそうだよ?」

「心配いらねえ。自分のことに集中してりゃいい……悪い、ちょっとソファー借りる」

「あ、うん……」

 

倒れるように座り込む。死にそう。

 

「明日のことだが、お前は全力で執行人どもを狙い撃て。俺は全力でお前を守る。それで終わりだ、俺たちの勝ちってことで、この騒動はおしまいにしよう」

「うまく行くかな?」

「問題ねえさ。エクシア、俺はお前を信頼する。大丈夫だってな」

「……うん。あたしに任せて」

 

長く息を吐く。きちい。

 

「……お前さ、復讐とか、考えたことあるか?」

「え? 復讐って……」

「ノエルのことだよ。三年前のクリスマス……正直、お前には悪いことしたと思ってる。だが俺はお前にしてやれることなんぞ何もねえ」

「もう三年も経つんだよ? ……ちゃんと心の整理はついてるって」

「そうか、ならいい……。あのな、ノエルを殺したのはモスティマだ」

「え────」

「だがどうしようもないことだった。ノエルな、重度の鉱石病(オリパシー)だったんだよ。おそらくあの半年内には死んでただろうな」

「あの、アルク? 突然そんなこと言われても、困るっていうか──」

「どうせ死ぬんなら、モスティマに殺してもらいたかったのかもな。そういう風に仕向けて、一騎討ちでノエルは死んだ。それが、お前が知りたがっていた真相だ」

「………………えーっと」

 

疲れからか、俺は口が緩くなっていた。だがどの道知ることになっていた。

 

「だからって訳じゃねえが──エクシア。俺はお前がここでちゃんと働いてんの見れて嬉しかったんだぜ。やべー会社だし、ノエルが生きてりゃ小言の一つも言っていただろうが……」

「えっと……あたしがモスティマに復讐するかも、とか思ってる? もしかして」

「可能性はいつも考えてたさ。エクシア、もしモスティマをぶっ殺したいと思ってんなら、悪いがそれはやめてくれ。だが代わりに、お前は今すぐ俺を撃ち抜いていい」

「しないよ、そんなこと……。アルク、今だから言うんだけど、あたし君のこと、嫌いじゃないからね」

「……嫌いじゃない、か。くく……。嫌われたもんだ。なあ、あの一年間、ずっとサルカズだってこと隠してて悪かったな」

「半年経つ頃には気付いてたよ。アルク、たまに尻尾、服から出てたんだから」

「え? マジで?」

「そうそう、パーティーとかで酔っ払って、暑いとか言ってニット帽投げ捨てた時とか、流石のあたしもフォローのしようがなかったんだよ? 酔ってて覚えてないだろうけど」

「……マジか。俺、今まで結構罪悪感あったんだけど」

「あはは、バカだねアルク。結構アルクってバカだよ」

 

そう言ってエクシアは笑った。

 

Love your neighbor(汝隣人を愛せ)Vengeance is mine(復讐するは我にあり)……知ってる?」

「いや、初耳だ」

「復讐とかは、我らが主があたしたちの代わりに行ってくれるの。だから恨まないで、ただ近くの人を愛せっていう教え」

「……耳が痛いな」

 

昔の俺に言って聞かせてやりたい言葉だ。

 

「ホントはね、ずっとラテラーノにいて欲しかった。あたしね、あの時が楽しかった。あの時間が好きだった。モスティマがいて、ノエル姉がいて、アルクと遊んで、パーティーして。それでいつか、一緒に親衛隊で働くのが夢だった。誰にも言ったことは、なかったんだけどね」

「……意外だ、お前がそんな風に思ってたとはな」

「やっぱりさ、ペンギン急便に入ってよ、アルク」

 

エクシアが隣に座った。

 

「みんないい人ばっかだから、アルクもすぐ馴染めると思う。きっと楽しいだろうなぁ。アルクって、トラブルとか運んできそうだし、そしたら毎日パーティーだよ。最高の日々になると思うんだ」

「……バカ野郎、今お前クビだろうが」

「ボスがあたしを本気でクビにする訳ないって、大丈夫。それに……俺と来いって言ったの、アルクだからね」

 

そうだった。

 

エクシアが俺の方にもたれてきた。──あれ? 今そういう雰囲気なの? え? なんで?

 

「あたしと一緒にいて欲しい。……その、ダメかな」

「……」

 

内心、とても焦っていた。何か極めて、ここで返答を誤ればまずいことになると理解した。

 

「あたしね、今すごいドキドキしてる」

 

俺もね、今すごいドキドキしてる。おそらく種類は全く別物だろうが。

 

「エクシア」

「うん」

「……悪い、そりゃ無理だ」

「そっか。……どうしてもダメ?」

「俺は……フリーのトランスポーターだ。どっかに所属すんのは、性に合わねえよ。悪いな」

「えー、きっと楽しいのにな〜」

「だが、俺はお前の頼みならなるべく聞いてやりたいとも思ってる。だから……なんだろうな、なるべく善処するよ。業務提携ぐらいなら、まあやらなくもないかもな」

「言ったね? あたし忘れないからね」

「やらなくもない、だ。だが……もしも面倒なこととか、俺の助けが必要なら、いつでも言えよ」

「あれ、なんか優しいね」

「俺にだってたまにはそんな時があんだよ……」

 

俺はモスティマとの戦闘で疲労困憊の体に鞭打って立ち上がった。玄関まで歩いて行く。

 

「明日までにきっちり銃を仕上げといてくれよ。お前に懸ってる」

「うん。あ、そうだ。明日の夜、パーティーしようよ。大丈夫、アップルパイは大盤振る舞いしちゃうし、ボス秘蔵のレコードとかも流しちゃってさぁ。どうかな、アルク」

「やれやれだ。ま、冷えたビールでも用意しといてくれよ。そんじゃな、また連絡する」

「うん。じゃあね」

 

……少し寂しそうなエクシアのことは考えないようにした。これやばいかもな。なんか……何か、やばいことになりそうな予感がするんだが。

 

だがそれ以上に、モスティマとの戦闘がキツすぎたせいで、俺はそれ以上の思考をやめた。

 

どうせフラグさ。俺はいつもそうだ、あからさまなフラグに気がつけない。悪癖だ。あーやだやだ、執行人どもをぶちのめしておしまいだ。それで依頼は終わり、その後のことはその時考えればいいんだよ。

 

──とか考えるから俺は俺なのだ、と気がつけない。いつものことすぎて笑える。ははは、おもろ。

 




・近衛局の人
優秀すぎる人。多分苦労しているんだろうなぁ。
今更ですが、近衛局だからってチェンさんとかホシグマさんとかも出ません。かなしい

・マネーロンダリング
資金洗浄のこと。正直ボロが出るからこういう設定は使いたくなかったが、話のネタとして使いやすかったため採用。そこらへんでなんかここおかしくね? ってところあっても見逃してください

・上級エステル
素材周回がつらい

・融合剤
やめて

・D32鋼
やめて。やめろ

・上級合成コール
RMA落ちない。なんで?

・岩
登場させ忘れた。1−7から逃げるな

・中級装置
こないで
たりない
きて

・モスティマさん
今回は敵サイドで登場。
執行人補佐がてら副業感覚で近衛局からの依頼を受けたが、届け先がアルクだったことは本当に予想外だった。

・エクシア
特 化 3
戦友のエクシアスキル3特化を初めて使ったときの衝撃が忘れられない。初めて真銀斬使ったときの感情に似ていました
かわいい。

・アルク
主人公。反省と改善ができない男
多分星五くらいです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。