モスティマさんといっしょ!!!   作:にゃんこぱん

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忙しくて定時投稿できなかった定期
最終話予定です
雑ですが許してください、なんでもしますから! 後なぜかシリアスが多めになりました。なんでだろう?


男たちと話す話 5 トランスポーターよ永遠なれ

「アハハハ、でも危なかったねえ──。ボクが来なかったらどうなってたかなぁ」

「……。龍門に入ってくれ。あいつらを撒く……。ついでに手錠(これ)斬ってくれ」

「はいはい、分かったよ。アッハハ、でもその後はどうするんだい? ちゃんと全員殺しちゃうんだよねぇ?」

「やめろラップランド。殺す必要あるのか?」

「ダメだよ、アルク。君が彼女たちに始末をつけられるなら別だけどさ──もう無理じゃないかな? だったらもう殺しちゃったほうがいいよ。君が選んだのはボクなんだからさぁ! アハハハ!」

「それ以上余計なことを言うんじゃねえ」

「嫌だね。だったらちゃんと彼女たちをどうにかしてあげなよ。ボクが言うのもなんだけど、ちゃんと責任は取らないといけないんじゃないかなぁ」

「お前に言われちゃお終いだ……。どうにかってなんだよ、どうにかなんのかよ……。どうにもならねえだろ……」

「それじゃあ君の取る選択肢は一つさ。ボクと一緒にロドスを抜けて、彼女たちから逃げ続ける。これだけさ、君に残された道は。さあどうするんだい、アルク。ボクは君と一緒ならどこでも構わないよ?」

「……。どうしようもない。こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかったんだよな。なんつーか……俺、割と一生懸命やってきただけなんだよな」

 

こんなはずじゃなかった──。

 

紛れもない本音がこれだった。俺は何も、こんな泥沼の恐ろしい何かを望んだわけじゃなかった。

 

ただ──何と言うか……。

 

苦しんでいたあいつらを放っておけなかった、とか。救いたかったとか。そういうのじゃなかった。そんなこと思ってなかった。

 

なんというか……。本当になんというか……。

 

成り行き……なのかもしれない。

 

きっと人生をもう一度やり直してみても、きっと俺は同じ選択をするだろう。ラップランドと出会っていて、アメリアがあの場所にいた以上、どう足掻いたって先生は死んでたし俺は復讐をしていただろう。

 

その後は……どうなるだろう。フロストリーフを拾ったのなんて偶然だし、そこからラテラーノを目指した理由だってあやふやだった。だが出会った。

 

出会ってしまった。ノエルとモスティマにあの時出会ってしまった。

 

それが全てだ。偶然だ。だが事実で、そうなった。

 

俺はあのままフロストリーフを助けないわけには行かなかっただろうし、モスティマと一緒に、ノエルを殺さないわけには行かなかったんだろう。

 

すると何だ……。

 

どうしようもなかったってことになるのか?

 

「俺は……幸せを願った。そんだけのはずだ。俺やお前みたいなクズでも、幸せになったっていいし……フロストリーフみたいなガキは尚更そうだ。別に笑顔になったっていいだろって、幸せになったっていいだろって……。そう思っただけだ」

「君もどうしようもないねえアルク。それは無責任だ」

「……人の幸せにまでいちいち責任取れるかよ。勝手に幸せになってりゃいい。どこにだって行っていいし、何したっていいよ。勝手に救われてろよ……俺は……」

 

龍門の空を見上げると、星は見えない。強すぎる街の光が星の光をかき消すから、見えない。

 

「そんなもんに責任は取れねえ。俺は俺自身に対したって責任なんて取れちゃいねえのに、何だって他人まで背負える? どうしようもねえよ、どうしようもねえ……」

「ボクが君を必要としていたとしてもかい?」

「お前の幸せには俺が必要なのか?」

「何を今更。最初から──もう六年くらい前になるのかな。あの日からとっくに分かっていたことさ。どうせ長くない者同士、ボクたちは同じものを背負っている。違うのかい?」

「分からねえよそんなこと。俺はな、別にお前の全てを知っている訳じゃねえ。そしてラップランド、お前も俺の全てなんて知らない。そんなことは誰にも分からない」

「おやおや、これは冷たいなあ。ボクのこの感情はね、この狂った世の中で、たった一つだけ間違いのない唯一さ。それが本物だってボクだけが知っていてねぇ。是非とも君にも教えてあげたいなあ。君にも分かってほしい」

「無理さ。分からねえ──お前は結局解放されないままだ。お前はずっと過去に縛り付けられて動けやしない。錯覚してる。俺を誰かと重ねて見てる。俺はテキサスじゃない」

「アッハハハハ、嫌だなぁ──なら証明しようじゃないか。ほら! ボク達が出来るのはそれだけだっていうのならさぁッ!」

 

バイクから跳躍して──龍門の大通りの、大量の交通が行き交う中で。

 

結局こうなる。どうしようもない。

 

クラクションの音が響くが、そんなことは気にしない。

 

俺が持つ武装全てでラップランドを否定する。

 

それが俺がラップランドにしてやれるたった一つの救いだと信じて。

 

夜の龍門の中、俺たちは大通りの中で相対し──また、殺し合いが始まった。

 

しょうがないよな。どうしようもないよな。その苦しみは──ただ生きてりゃなくなる物じゃないなら。

 

なあ。

 

 

 

 

すでに幾つもの車両が爆煙を上げて光を放っていた。炎上だ。被害総額なんて知ったこっちゃないが──まあ、誰も死なないようにしてるし問題ないだろ。サイレンの音がうるさいのが難点だが。

 

剣の代わりにしてるのは道路標識だ。適度に重さとリーチがあっていい。この無骨さは悪くない。

 

「いいかげん俺に執着するのはやめた方がいいぜ、本心だッ」

「キミこそ諦めたらいいんじゃないかな? いいかげん年貢の納め時さぁ、ねえそうだろうッ! 分かってるくせにさぁ!」

「知るかよ! 大体なんで全員ヤンデレなんだよッ! まともなヤツは居ねえのかよ!」

 

鉄パイプを乱暴に叩きつける──地面が砕ける。全力を出して──、殺す気で。

 

俺はラップランドを殺す気だった。

 

「キミにこんな言葉を教えてあげるよ──類は友を呼ぶってさぁ! キミだって同類なんだよ、ボクと同じだ!」

 

二刀流を弾く、躱して──薄皮一枚を隔てて。多少の傷は──仕方ない。こいつ相手に無傷なんて無理だ。

 

「違います──! 俺は違うし! 俺はヤンデレでもメンヘラでもねえ、俺は多分まともだッ!」

「アッハハハッ! じゃあきっとそういう運命に生まれたんだよッ! ボク達は運命から逃れられないんだからさぁ、ボク達は変わることなんて出来ないんだよ、だったら楽しいほうがいいじゃないかッ! 違うのかい!?」

「うるっせえなてめえ!」

 

また車が火を吹いた。すまん、ラップランドがそこにいたのが悪かったんだ。俺は悪くない。

 

「何でヤンデレなんだよッ! 何でそうなったんだよッ!? 普通でいいじゃねえか、もっと普通のさ──」

「普通の人なんてこの世の中に一人だっていないのにかいッ!?」

「──ッ!」

 

弾かれる──俺が? 腕力で俺はラップランドに勝っているはずなのに……?

 

ラップランドは笑っていたが……その目つきは……。

 

「あのさあアルク。いいかげんにしなよ──いい加減にボクを見ろよッ! 今ここにいるボクを見ろよッ!」

「ぐッ、い──っつ、クソがッ!」

 

血が舞い散る──。

 

乱暴に鉄パイプを振るうが、そんなものが当たるはずがない。

 

「──怒ってんのか……?」

「ボクを見ろ、ボクを認めろよッ! 今ボクはここにいるのにさぁ、どうしてボクを見ようとしないんだよッ! アルク、今ボクはここにいるんだよッ!?」

「いッ、クソが、急に強くなりやがって……!」

 

あと急にシリアスになりやがってッ! 何でお前だけシリアスなんだよ!

 

猛攻を凌ぐ──防ぎ切れずに血飛沫が散る。めっちゃ痛い……が、負けるわけにはいかない。負けたら……認めてしまうことになってしまうだろ。

 

それはダメだ、そんなことは俺には出来ない。

 

他人の人生なんて背負えない、俺はそんな大層なことなんて出来ない。

 

道路標識の先端、重りになった部分で薙ぎ払うが──上に跳んだ。そのまま二刀を構えて、空から落ちてくる──。

 

ダメだ、しくじった。パイプを手放して──クソが間に合わねえ!

 

「ボクの勝ち、さ」

「……お前、やっぱり強えな」

 

喉元にかかった切っ先。失った獲物。

 

終わり……。

 

「だが悪いな」

 

姿勢を崩す。コンマ一秒前の頭に狙撃弾が突き刺さった。龍門近衛局による鎮圧が始まったんだ。そりゃそうだろ、道路で警告無視して暴れ回り続けてりゃそうなる。途中から聞こえてなかったし。

 

同様に反応したラップランドだが、あらかじめ予見していた俺のほうが早い。

 

腕を引いて地面に叩きつける。車が影になって狙撃から身を隠す。

 

人差し指でラップランドの喉を指した。

 

「これならどうだ?」

「いいねぇ、そうでなくっちゃ……」

 

狂気的に……楽しそうにラップランドは笑った。俺の腕を掴む。そのまま地面に引き摺り込んだ。

 

倒れ込んだラップランドに、俺が覆いかぶさる形になる。何のつもりだ?

 

「アッハハハ……。いいなぁ、ボクを抱きしめてくれよアルク」

「やだね。怖い」

 

体を起こすが──ラップランドがそうはさせまいと腕を回す。顔が近い。

 

ラップランドの目の奥に俺が見えた。笑えるような面をしていた。

 

「楽しいなぁ。キミといつまでもこうやって戦っていたいよ、それだけが……」

 

一斉に体を起こして散る──近衛局の強襲部隊による掃射。

 

「ボクの望みだ」

「──ああもうこれどうすんだよ! やっちまった──近衛局敵に回しちまったよ俺のバカ野郎がッ!」

「いいねえ、面白くなってきた……! ほら、切り抜けようよ! 大丈夫さ、キミとボクなら誰一人だって勝てやしないんだからねぇ! アハハ……アッハハハハッ!」

「絶対に殺すんじゃねえぞッ! いいなッ!」

「本当にどうしようもないねえアルク。変わってないのはキミも同じじゃないか。まあいいさ。行こうか」

 

ごめん近衛局の人達。本当にお前らは何一つ悪くないし、お前らに恨みは──まあ、ないとは言い切れないけど一般隊員に恨みはない。

 

でもすまん。本当にすまん。

 

ぶっ倒れてくれ。悪いな──。

 

「ぐ、増援を要請する! クソ、たった二人だぞ!? なぜ──」

「ごめんほんとごめん! すまん!」

「アッハハハハ! 抗ってみなよ!」

 

この後の処遇はもう知らない。きっと怒られる程度じゃ済まないだろう。ロドスと龍門の関係にヒビが入ることは間違い無いだろうし──。

考えたくない。どうせもうどうしようもない。

 

どうしようもないなら暴れよう。すまん。

 

だけど──。

 

「だが悪いな、生きるためなんでねッ! 好きに恨めよ、生きるってそういうことだからなッ!」

 

なんか吹っ切れたような気がした。

 

なんか──救われたような、そんな気がした。

 

ヘリコプターの音が聞こえてきた。アレは──ロドスの。

 

俺の端末に通信。応戦しながら対応。

 

『聞こえてるかアルク! お前やべえことになってんな、とにかく逃げるぞ!』

「の……ノイルホーンッ!? お前──」

『ロドスはお前を見捨てねえよ!』

 

──救援に来てくれたのか……?

 

希望が……俺の希望が──! 希望が見えたッ!

 

『ところでどういう状況だ!? 何で近衛局の連中が出張ってきてんだよ!?』

「すまん完全に俺たちが悪い!」

『平和的に終わらせる気があるか?』

「全面的に平和を望んでる! てかこれどうやって収集つけよう──」

 

近衛局隊員をいなしながらぼやいた。

 

本当にどうしよう……。

 

そんなことを考えていると、一台の車が止まって人が出てくる──やべえ。

 

「また貴様か……、アルク・ブルズッ! 貴様余程龍門を舐めていると見えるなッ!」

「いやマジで今回は違うんだよ。すまん、あんたら近衛局は今回何一つとして悪くない。ごめん」

「話の続きは牢屋の中で聞く。もうそれ以上話さなくていいぞ」

 

近衛局特別督察隊隊長、チェンが青筋を浮かべて武器を突きつけていた。完全に殺す気だ。俺は思ったが──今回ばかりはこっちが悪い。

 

「本当にすまん。でも捕まりたくはねえな。見逃してくれ、今後しばらく大人しくするからさ」

「余程私に殺されたいらしいな。ならば──そのようにしてやるッ!」

「アッハハハハッ! ならボクが相手をしようじゃないか!」

「どこまで私の邪魔を──ッ! 貴様ら血祭りにあげてやる、覚悟しろッ!」

 

鍔迫り合いが始まった。巻き込まれたくねぇ──割って入れるほど俺は戦いが上手い訳じゃない。

 

その景色を眺めながらこれからのことをぼんやりと考えていた。

 

やばいよな。これどうなるんだろうな。被害額いくらになるんだろう……。俺が払うのかなぁ。だよなぁ。ロドスから追い出されたりしないよなぁ……いや、追い出されたほうがいいよな。

 

「……ヤベぇ。どーっすっかな──」

「何の話だい? これからの話かな」

「────。ああ。そうか。お前……そりゃそうか。追いついてくるよな。何でそんな当たり前のことも分かんなかったんだろうな」

 

モスティマがにっこりとした笑顔で俺の後ろにいた。

 

「君をロドスに連れ帰りに来たんだ。そうだなぁ──。私も迷ったんだけどさ。しばらく自由はないと思ってもらおうかな」

「……。俺は自由だ」

 

逃走した。すぐに捕まった。

 

「や……やめろ、離せッ! 嫌だぁ──ッ! 俺は人としての尊厳を失いたくねえ、頼むよモスティマ!」

「無理だね。もう──絶対に逃さない(死ぬまで一緒さ)。いい加減終わりがくるものだろう? 変わるものさ。変わらなければならない」

「いい事風に言ってるけどな! 俺はどうなるッ!?」

「うーん……。まあ……。しばらくベッドの上から動けないんじゃないかなぁ」

「殺される、絶対殺されるッ……! お前は──お前らは、なんで俺……なんで俺なんだよッ!? 勝手に幸せになればいいじゃねえかよッ!」

「寂しいなぁ。それじゃダメだよ。アルク、君じゃないといけない。私には君が必要なんだよ。一緒に居てくれ」

「殺さない……よな……?」

「保証はできないけど……まあ大丈夫。そうなったら、すぐに後を追うよ」

「そういうところだよォ──ッ! 俺は逃げる、俺は──ッ」

 

一筋の光が──。

 

それはクモの糸だった。地獄に垂らされた一筋の光が。

 

走り出した俺の目の前に、文字通りの糸──ロープが垂らされてきたのだ。

 

ノイルホーンの仕業だ、と直感的に思った。俺はそれに捕まり上がっていって──通信が入った。

 

『ダメだアルクッ! 来るんじゃねえ、上は危険だ、今すぐ降りろ──やめ、うあああああああああッ!』

「の、ノイルホーン……? おいノイルホーン!? 何が有った──」

 

ヘリが急激に上昇していく。俺は振り落とされまいとガッチリとロープを掴んで──目線の先に見えたフロストリーフを見て全てを悟った。

 

下を見る。

 

眼下の龍門が遠い。上空百メートルはあるだろう。落ちたら死ぬ。怖いが──上も怖い。

 

ニコニコとしたフロストリーフがこっちに手を差し出している。

 

詰みだ──俺はもう、どっちに転んでも死ぬしかない。俺は全てを諦めてロープを登って、冷たいフロストリーフの手を握った。

 

また振り出しだ。

 

「何でお前がここにいる──?」

「忍び込んだんだ。アルクを助けに行くと聞いたからな。ふふ、全く……。ダメなアルクだ、私から逃げようとするなんてな」

「……お前にはな、俺抜きで幸せになって欲しかった。俺がいないと笑えないんなら、どうにもならねえ。俺はお前より早く死ぬからな。心配してたんだ」

「心配いらない。私はな、お前が思っているより強い。大丈夫だ、ちゃんと友達だって居るんだ。知ってるだろう?」

「──ああ。知ってるよ……。ところで何で凍らせようとしてくるの?」

「逃げ出したら大変だからな」

「こんな空から逃げられるかよ……。ノイルホーンは生きてんのか?」

「眠っているだけだ、心配いらない」

 

ロドスに着いた。

 

甲板に着陸して俺は外に出た。

 

ケルシー先生がいた……。冷たい目だった……。

 

「すんませんでした──ッ!」

「……。ふん、まあ……状況は理解している。多少の考慮はするが──……」

 

ケルシー先生はふっ、と笑った。

 

「まあ安心するといい。……やれやれ、手間を取らせてくれる。精神ケアが必要なオペレーターがこんなにいたとはな。驚きだ。フロストリーフ、私についてくるように」

「私か──?」

「これ以上問題を起こされる訳にはいかない。ただでさえ龍門で暴れてくれたというのに……。しばらく大人しくしていろ」

「先生、俺は?」

「……ふん。とりあえず今は、問題をこれ以上起こすな。追って指示を出す。当分ロドスから出られるとは思わないことだ」

「先生……あんた最高だ、一生ついてくよ……」

 

ケルシー先生は去っていった。

 

俺はとりあえず自室に戻ろうと足を動かした。

 

生き残った。死んでない──ロドス上層部がちゃんと動いてくれた以上、俺が殺されるような事態にはならないはずだ。

 

問題は山積みだが──生き残っている。

 

「生きてる……のか……」

「お? アルクやん、生きとる」

「クロワッサン……。よぉ」

「まさか生きとるとは思わんかったわ。せや、ちょうどええし……ついてきてや」

「どこに行くんだ?」

「朝話しとったやん。飲むんやって──ちゃんと賭けの内容、覚えとるな?」

「奢りか。まあいいぜ、今の俺は清々しい……。誰がくるんだ?」

「ペンギン急便のみんなと、後ニェンも来るゆーとったな。適当に集めたメンバーやけど、エクシアはんとモスティマはんは欠席やわ」

「はは……ならいいよな。そうか、俺は今……自由なのか。そうか──」

「大袈裟やな、そんな大変なことあったんか?」

「聞いてくれよ、マジでやばかったんだって──」

 

のんびりと歩いた。クロワッサンは大体笑っていた。人が死にかけたってのに──。

 

「お、ここやな」

「あん? ここか」

「せや、一部屋借りたんやわ。人集まってもええようになあ。ほな、ちゃんと全部奢ってやー」

「任せとけ。ま、多分足りるだろ。部屋戻ればあるはずだし──」

 

ドアを開いて、上機嫌に俺は言った。

 

「……アルクか。よく生きているな」

「よおテキサス。お前の仲間が大変だったんだぜ。あいつらやべえぞ」

 

すでに始まっていた。大体五名前後のオペレーターが集まって騒いでいた。一人で飲んでいたらしいテキサスの隣に座る。クロワッサンも酒を持って来て座った。

 

「みんなー、今日の財布がきたでぇー! じゃんじゃん飲みや!」

「どっから酒買って来てんだ?」

「クロージャはんのとこから買っとるんや。足りんくなったら注文すれば来るんやと」

「謎のシステムあるな……。まあいいや、乾杯」

「かんぱーい! タダ酒や〜!」

「乾杯。エクシアたちがいないのが残念だ」

「いやあいつらがいたら俺は逃げるぞ──」

 

その日の酒は美味かった。特別美味かった、どうしようもなく美味かった。

 

結局ベロベロになった。クロワッサンが赤い顔で俺と肩を組んで歩いている──部屋まで俺を送るらしいが、これじゃどっちが送ろうとしているのか分からない。

 

「お、そっちやそっちー! そっち行こや!」

「お前な、そっち物置だろうが、俺の部屋はこっち──」

「ええから行くんや! なんかあるかもしれんやん!」

「酔ってんな。そういや聞いたことあるか、この辺りの怪談なんだが──」

「え、お化けでるん!? ええやん行こや、楽しみなってきたわ!」

「何も言ってねえ。だが──いよっしゃあ! 今更幽霊にびびる俺かよ!」

「あ、そっちの部屋や! いっつも暗いし、なんかおるでー!」

「いたらやべえだろうが」

 

フラフラのままドアを開けた。暗い物置で、よく見えない。

 

中に入る。

 

「誰もいねえだろ? 電気どこだ──」

 

背後でクロワッサンが申し訳なさそうに呟いた。

 

「堪忍な。アルクはん、自分──もう部屋には戻れへんわ」

「? あんだよ──」

 

振り向くと、クロワッサンは苦くて──どこかゾッとさせるような笑みを浮かべた。さっきまでの赤い顔は見る影もない。冷たい──笑みを。

額に冷たい感触がした。銃口だった。酔いがすっと覚めていった。浮遊感すら感じるような。

 

「やっぱり戻ってきたね、アルク。さっきぶり」

「エク……シア……? なん、で……?」

 

思考が追いつかない。

 

なんでだ?

 

クロワッサン……お前──。

 

「売った……のか? お前、俺を──」

「やから、堪忍やってな。それにな、アルクはんも悪いんやで? うちのこと、見ようとせんなら──こうするしかないんやって」

 

クロワッサンは俺の目を覗き込んだ。

 

その目の先に、光は灯っていなかった。冷たく冷たく──凍えるような双眸の先に、ドス黒い感情が見えた気がして──。

 

「ほな、やろうか。エクシアはん」

「だいじょーぶ、アルク。じっとしてれば大丈夫だからね!」

「あ、あ、あ……。な、何で……? 何で、何で何で、何でお前まで、何で……ッ」

「嫌やなあ、うちとのこと──忘れたとは言わせんで? うちずっと待っとったんよ? でもなあ、全然来おへんし──見ようともせん。それでこれや。間違っとったんやな。ぎょーさんおるもんな、アルクはんの周りには──」

「まだ、まだ……まだ居るのかよ、まだ──。終わったはずなのにさ、だって……ケルシー先生が動いてんだぞ? なんで、なんで……」

「先生やって完璧やないんやって。龍門との方に手ぇ取られとるんや。やからな、先生には悪いんやけどな?」

「もう終わりだよ、アルク。ずーっと言ってるじゃん、逃さないってね!」

「あ、あああ……。う、うああああああああああああッ!?」

 

逃げ出した──。気が狂う。もうダメだ、俺は──逃げられないのか?

 

「あ、逃げた」

「いや、無駄やろ。どうせそこら中に──」

 

聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない何も聞こえない──。

 

走るが──本能がブレーキを掛けた。アーツがロドスの廊下を破壊した。

 

「全くもう、逃げるのは上手だよね。やっぱりトランスポーターだ、君は」

「またかよぉぉぉおおおおおお!?」

「もう詰みだよ。私から逃げられたとしても、君の撒いた種は、君を逃しはしない」

 

聞こえないフリをして逃げた。

 

ロドスから逃げないと、最初の時点で逃げないとダメだったんだ。どうにもならないじゃないか、なんで気がつかなかった。なんで、なんでなんでなんで……。

 

なんで。

 

前へ跳ぶ。二刀流が顔を掠める。

 

「今度はお前かよ、ケルシー先生が押さえててくれるはずじゃッ!」

「だからもう観念しなよ。いい加減しつこいんじゃないかなあ。追いかけっこにもいい加減飽き飽きさ。アハハ、もっと別の遊びをしようよぉ、アルク……。この熱を──ボクを鎮めてくれないかなあ、アハハハハハッ!」

 

逃げた、逃げた、逃げた。

 

冷たい冷気から、飛び交う剣戟から、銃弾の雨から、時間の流れから──。

 

ロドスをバイクで脱出した。夜の冷気なんて、全く気にも止まらない。それよりも早く──。

 

狙撃がバイクに命中して、俺は荒野に投げ出された。

 

暗闇だ、月明かりは何者も照らさず、誰も見えない──。

 

誰が、誰が──誰の仕業だ、誰が……。

 

じり、と。

 

誰かの足音が聞こえた。

 

見えない。見えない──。

 

「やめろ」

 

足音が近づいてくる。

 

「来るな、俺は」

 

足音が増えた。じり、じり……。

 

「くッ……来るなッ! 近寄るな、来るんじゃねえッ! やめろッ!」

 

じり。

 

じりじり。

 

じりじりじり──。

 

「俺は遠い場所で暮らすッ! 俺は自由だ、俺はトランスポーターなんだぞッ!? 俺は、俺は──ッ!? やめろ、来るなッ!」

 

次は、次は──どこだ、どこから来る。逃げ場所は、どこに逃げれば。

 

気がついた。

 

逃げ場所はもうとっくになかった。

 

「お、俺は、後何度逃げ出せば!? 次はど……どこから『襲って』くるんだッ!? 俺はッ、オレはあッ!」

 

来るな、来るなやめろ、俺は、オレは──!

 

「オレのそばに近寄るなああ──────────────ッ!!!」

 

 

 

 

「ケルシー先生、良かったんですか」

「どうにもならん。対処療法ではなく、根本的な解決が必要だ。オペレーターアルクにはちょうどいい薬だろう。それより龍門だ、本当に面倒なことになったが──」

「ですが、ロドスは仲間を見捨てません。そうですよね、ケルシー先生」

「何、ちょうどいいさ。アルクが周囲に与える影響は無視できないほどだし、うまく使えばロドス全体の強化にも繋がる。悪い話ばかりではない。アーミヤ、ドクターに伝言を」

「伝言ですか?」

「当分アルクのヤツを部屋にぶち込んでおけ、と。一ヶ月も放っておけば治るだろう」

「……何だかかわいそうです」

「ヤツの撒いた種だ。──責任は、取らなければな」

「まあ、そうですよね……。わかりました、伝えておきます」

 

アーミヤは去っていった。

 

ケルシーはこれからのアルクの未来を思ってため息を吐いた。面倒ごとばかりだが、理想主義は誰しもを救わなくてはならない。

 

ロドスはそういう場所だ。

 

日付が変わった。

 

また一日が始まる。

 




・ラップランド
純粋。別にヤンデレっていうか……なんというか狂ってるだけで、純粋ではあると思いました(小並感)

・ノイルホーン兄貴
被害者。がんばれ……。

・チェン
来ない。来て
一瞬しか出番がなかった……。

・みんな
平常運転

・クロワッサン
おや、 クロワッサンの様子が……?
こんな風になる予定はなかった。
エクシアに買収されたっていうのでも良かったんですが、こっちの方が面白いなって思ってしまった
かわいい。こい。きて

・ケルシー先生
なんだかんだ優しい先生だと思います
えっちい

・アーミヤ
逆によくここまで登場しなかったよなお前な

・アルク
ディアボロエンドを迎えた。ジョジョ五部面白いよね……
無事死亡。今後の展開はご想像にお任せします


後日談完結ッッッ!
ここまで読んでくださってありがとうございました。ついでに評価とか感想ください(乞食)
クロワッサンの話を書くか迷い中です。多分やりません、ごめんね
そろそろ次のアークナイツの二次創作を書きたいと思い始めています。懲りないからね、仕方ないね
さらば!

フロストリーフさんのIFルートをnoteにて掲載中。全編シリアスです。よろしければどうぞ
https://note.com/nyancopan/n/n4b64bb14d8ee

あとがきをnoteにて掲載中。よろしければこちらもご一緒にどうぞ
https://syosetu.org/?mode=url_jump&url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnyancopan%2Fn%2Fn3bab401bb47a
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