モスティマさんといっしょ!!!   作:にゃんこぱん

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ラップランド早く資格交換所来い。来て♡

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ラップランドとの出会い、あるいはアルク・ブルズの復讐──中

俺はそれから、奴らのことを探し回ったが、何一つ得られた手がかりはなかった。少なくとも、奴らはスラムのどこかにいることは分かったが、それだけだ。スラムがどれほど広いか、俺は分かっていた。

 

ウルサス帝国は感染者を迫害する。感染者はやがてスラムにたどり着き、またスラムは巨大化していく。

スラムの組織なんて、それこそ数え切れないほどある。

 

俺はそのうち疲れてきて、酒を睡眠薬がわりにして毎日路地に倒れる様に寝ていた。その間に襲ってきた奴は全員半殺しにした。そのうち誰も襲ってこなくなった。サルカズで、俺は強かった。

 

金が尽きかけて、俺は用心棒をやることにした。

 

それはそのうち傭兵崩れに変わって行き、俺は誰かしらのところへ行ってはそいつを殴ったり半殺しにしたり殺したりする日々を送る様になった。そして俺の名前は、だんだんと広がっていった。

 

先生に鍛えてもらった剣術で広がったネームバリューは、俺を少しばかり慰めた。だがその程度だ。その日飲む酒の量は、これっぽっちも減りはしなかった。

 

ある日、依頼を受けた。

 

依頼主はジュアリー・カンパニーという会社。俺は指定された場所まで、二日酔いのままバイクで突っ走っていった。

 

「いいか。てめえの仕事はここでバカみたいに突っ立って、誰一人としてここを通さねえことだ。誰が来ようともだ。分かったか」

「……この扉の向こうには何があるんだ?」

「てめえみてえなクズがそれを知る必要はねえ。中に入ったらぶっ殺すからな」

「分かった」

 

とある一軒家。やけに頑丈な玄関の前で突っ立って、その扉を誰にも開けさせないこと。それが俺の任務。

 

どっちにしろ、扉の向こうなんて興味もなかった。二日酔いが酷くて気持ち悪い。帰りたいが、今日の酒代を稼がないといけない。この復讐を、過去を忘れるぐらい飲まないと、俺はどうにもできなくなる。忘れたかった。疲れた。

 

日がな、一日中突っ立っていた。家の中からは何一つ音はしなくて不気味だったが、別に俺はそんなものを気にすることはなかった。

地面に座り込んで寝ていると、不意に人の気配を察知して俺は顔を上げた。

 

ラップランドがそこにいた。

 

「やあアルク。また会うとは思ってなかったよ。アハハ、それにしてもひどい顔だ」

「ラップランド……? 何でここにいる」

「ボクは殺し屋だからね、殺しに来たんだ」

「俺をか?」

「アハハハハ、面白い冗談だ! アハハ、違う違う……。この家の中にいる人を皆殺しにすること。それが今のボクの任務さ!」

「……その扉を開けんなよ。悪いが、中に人は入れちゃいけねえんだ」

「へえ、そうなんだ。まあ入れてくれよ、知り合いのよしみでさ」

「誰一人として通すなっつーオーダーだ。悪いが帰ってくれねえか」

「そうはいかない。何たってボクは殺し屋だからね! そこをどいてくれよアルク! さもなきゃボクは君を殺さなきゃいけなくなるんだからね!」

 

別にそれでも良かった。

 

「帰れ」

「断るさ! こう言ったら君は何をするんだい? ──ボクと戦うのかい? いいよ、存分に殺し合おうじゃないか!」

「……帰れっつってんのが聞こえねえのか、狂犬が!」

 

鞘から刀を取り出して、俺は力任せに回し蹴りを放った。バックステップで避けられる。

 

「いいよ、いいじゃないか! 君とは本気でやったことはなかったねえ! あの時よりは強くなっているんだろうね! ボクを失望させないでくれよ!」

「黙れ……うるせえんだよッ!」

 

先生の教えは、俺には合っていなかったのだろうか。

 

力任せに剣を打ち付ける。ラップランドが驚いた顔でステップ。

 

蹴りを交えて応戦。

 

先生が教えたのは、剣術の王道だ。正しい型と、合理的な動き。極めれば、完成した強さを得られる。ラップランドと試合をしたときは、いつもそれに則っていた。

俺が傭兵崩れになってから、そんな動きは一度もしていなかった。力任せにぶった斬れば、大体それで片はついた。強敵と戦うこともあった。もっと本能的で、野性的に戦った方が俺は強かったとその時気がついた。

 

「アハハ、それが君本来の戦い方なんだねえ! いいよ、そっちの方が面白いじゃないか! アハハハハ、期待以上だ!」

「うるせえんだよ──ぎゃあぎゃあと! 沈めよ!」

 

上段からの叩き割り。切るのではなく、叩きつける様な、乱暴な暴力。俺に剣術は向いていなかったのかもしれない。剣の重さも、先生に教えてもらっていた頃の様な軽い剣ではなく、重たいものに変えた。

 

ラップランドは片方の剣でいなして踏み込む。もう片方で首を狙ってくる。

 

俺は剣の腹を腕の甲で殴った。剣を手放したのだ。空いた右手でストレートを見舞う。

 

「アハハハ、アッハハハハハ! なんだいそのめちゃくちゃな動きは! 面白いねえ!」

 

ラップランドはトリッキーに避ける。

その間に、落とした剣を拾う。

 

先生に教えてもらったことを、何一つ生かせないのが情けなかった。何年習ってきたと思っているんだ。

 

「いい加減、帰れよ……。俺だって、お前を殺したいわけじゃねえ……。これ以上は、もう冗談じゃ済まなねえんだぞ……!」

「何を言っているんだい、アルク? まだまだこれからさ!」

 

そう言った矢先、俺たちの方向に向かって大量の矢が飛んできた。揃って躱す。

──どこからだ?

 

気がつけば、物陰から何人もの男がボウガンを構えていた。俺の雇い主のジュアリー・カンパニーの制服だ。

おそらく、ラップランドを狙っているのだろうが……。

 

「クソが、俺ごとやろうってのか!?」

 

男の一人が大声で嘲笑った。

 

「てめえみてえなサルカズのクズ野郎なんざ消耗品なんだよ! スラムにはいくらだって転がってんだからな! せいぜいそいつを引きつけといてくれよ!」

 

もう一度一斉掃射が放たれる。辛うじて交し、ラップランドに話しかける。

 

「ラップランド、協力だ」

「いいのかい?」

「殺しに来る様な輩は雇い主じゃねえ。全員後悔させてやる」

 

すぐさま俺は誰も通さない様言われていた鉄の扉を蹴り飛ばして、家の中に飛び込んだ。ボウガンから身を守るためだ。

 

家の中は、ゴミが散乱していた。レトルトや菓子のゴミがそこら中に散らばっていて汚い。

 

外から男たちの怒号が聞こえる。

 

すぐさま階段を上り、二階へ上がる。ラップランドも俺に続いた。

 

「どこへ行くつもりだい?」

「上から一旦逃げるぞ。分が悪い」

 

家は他の家と連なっていた。窓から屋根に上がれれば、逃走は可能だろう。

 

二階は壁やらがとっぱらわれて、広いスペースになっていた。

 

妙な機材やら、小さな鋼材やらが大量に散らばっていて──そのすみで、子供が膝を抱えて俯いていた。子供が顔を上げる──見間違えはしない。子供はアメリアだった。

 

「おにいちゃん……、おねえちゃん……?」

「アメリア……だよな? 生きてたのか……てか、何でこんな場所に」

「おっと、そういうのは後にしよう。アルク、下の連中はどうするんだい?」

「……片付けるぞ。そうか、あいつらがアメリアをさらって、先生と子供たちをぶっ殺した連中か……。全員ぶっ殺してやる」

「復讐かい? 飽きないねえ、君も」

「黙れよ。行くぞ、話は連中を殺してからだ」

「はいはい、分かったよ」

 

カウントと共に階段から飛び出す。

 

男たちはすぐそこに入ってきていた。俺は宙を舞いながら男の一人を殺した。ラップランドは笑いながら男の首を捌いた。

 

地に足をつけて、驚愕している男の顔面を思いっきりぶん殴る。吹っ飛んで壁にぶつかった。ラップランドが最後の一人の片腕を切り落とした。

 

「い、腕が、俺の腕がぁああああああ──ッ!」

「うるさいな、死ぬときくらいは静かに出来ないのかい?」

 

ラップランドはつまらなさそうに鼻を鳴らして男を袈裟斬りにした。すぐに断末魔は止んだ。

 

吹き飛ばした男に近づく。まだ意識があって、緩慢な動きでボウガンへと手を伸ばす。俺はその腕を踏みつけ、気晴らしに男の顔面を蹴り飛ばした。

 

「てめえ、タダで済むと──」

「ああ、はいはい分かってるよ。タダで済むと思うな、とか。こんなことしてどうなるか分かってんだろうな、とか言うんだろ。──こっちのセリフだ」

 

俺は男が死ぬまで殴った。死ぬまで殴ると、男は死んだ。

 

ほんの少し、これまでずっと虚しかった胸の奥が、満たされた気がした。

 

「復讐した気分はどうだい?」

「まだ終わってねえよ。だが……悪くねえな」

「ふうん、そうかい」

 

俺たちはアメリアのところへ戻った。アメリアは俺たちの返り血や、俺の両手にこびりついた血を見て言葉を失っていた。

そして、嬉しそうに笑う俺とラップランドを見て、悲しそうな顔をした。

 

「さて……このあとどうしよっか?」

 

 

傭兵崩れになってからは、俺はスラムの家に帰ることはなかったが、久しぶりに帰ってきていた。もちろん家の中は漁られていたが、厳重な鍵をかけていたガレージは無事だったから、俺にとってはほとんどどうでもいいことだった。

自分がバイクを好きだったことを、今更ながら思い出していた。

 

アメリアはこれまでのことをポツリと語りだした。

 

いきなり怖い人たちがやって来て、自分を探し出したこと。それを止めた先生が殺されたこと。子供たちがみんな殺されたこと。逃げたけど捕まったこと。

 

ペンダントを作ることを強要されたこと。作らないと殴られたこと。

家の外に出してもらえなかったこと。叫んでも泣いても誰も助けてくれなかったこと。

 

俺たちが助けに来てくれたこと。

 

でも、あの黒服の人たちと同じ様に、人を殺したのが悲しかったこと。

 

「ボクはね、実はアメリアを殺す依頼を受けていたんた」

 

俺は流石にぎょっとした。そんなこと本人の前で言うか?

 

「あの会社……なんて言ったかな、忘れたけどね。君の作るペンダントを邪魔に思う組織があってね。邪魔だから殺すか、もしくはこっち側にさらってくるかっていう指令だったんだ。まあボクはさらうなんて面倒なことしたくなかったから、殺すつもりだったんだけどね、アハハ!」

「どうしてアメリアはそんな連中から狙われてんだ……」

「アメリアのペンダントが都市のお金持ちの耳に入ったらしくてね、大層高値で売れたらしいんだ。スラムから流れていったのかな。まあそれで、そんなペンダントを作る子供がスラムにいるらしいって噂が流れた。まあ、スラムの誰かが情報を売ったのかもしれないけどね」

「金か」

「まあそうだね。実際、評判になっているらしいよ? アルク、君が雇われたところもそれで随分利益を上げていたらしいし」

「……クソが」

 

アメリアが不安そうにこちらを見ている。

 

「……心配すんじゃねえ。アメリアは俺が守る。ラップランド、お前も協力しろよ」

「勝手だねえ。まあいいさ」

「……いや、言っといて何だが、別にいいのか? 依頼とか……」

「そんなもの、ボクにはもう関係がないよ。ボクは誰にも縛られることはないし、本質的には誰の言う事だって従うことはないからね」

「そうか。そんなら別にいいか。当面の目標は、アメリアを守ることだ」

 

アメリアが不安そうに聞く。

 

「おにいちゃん……。また、殺しちゃうの?」

「──。ああ。殺すよ。子供たちを、先生を殺されたからな。一人残らず、殺してやる」

「いやだよ。そんなことしたって、先生は生き返らないよ」

「──ぷ、くくく……アハハハハ! 子供とみくびっていたけど、アメリア! 君はなかなか賢いじゃないか! アハハハハ! だってさアルク! どうするんだい! そうさ、その通りさ! 死んだ人間は蘇らないんだよ!」

「うるせえな……」

 

今更、復讐をやめる気にはならない。

 

「先生は、俺の親代わりだった。8歳で鉱石病に感染して、スラムに捨てられてから俺を育ててくれたのは先生だ。……今更、やめられるか」

「お手本の様な復讐だねえ、それはあんまり面白くもないんだけどね」

「……お前は、先生とは三ヶ月程度の付き合いだからそんなことが言える。お前も、俺と同じことを体験すれば、分かるはずだ……」

「いやいや、分かってるさ。君のことは」

「知ったふうな口を利くな」

「知ってるのさ。ボクも家族を滅ぼされたからね」

「──ああそう。それで、復讐はしたのか?」

「ああ、とっくの昔にね」

 

ラップランドは平然と答えた。

 

「……おねえちゃん、まだそのこと、忘れられないんだね」

 

子供は純粋で、見る目がある。アメリアはそうこぼした。ラップランドの反応は劇的だった。

 

「──へえ。アメリア……一ついいことを教えておいてあげるけどね。口は災いの元っていうんだ。今後、ボクの前で迂闊なことを言わない方がいいよ。手元が滑っちゃいそうだ」

「ラップランド。アメリアに手え出せば、俺かお前のどっちかが死ぬまで戦うハメになっちまう。やめろ」

「はいはい、冗談さ──だから、そんな不安そうな顔をするなよアメリア。殺したくなっちゃうじゃないか」

「ラップランド!」

俺が叫んだところで、ラップランドは顔色一つ変えない。アメリアはびくっと身を震わせた。

 

「アハハ、全くアルクは真っ当だねえ。死んじゃわないか心配になっちゃうじゃないか」

「ラップランド……。お前は本当にやかましい野郎だ」

「野郎とは失礼だねえ。ボクはちゃんとした女の子だよ?」

「ああ……そうだったな。普段が酷すぎて忘れてたよ」

「ボクだってショックを受けることぐらいあるんだよ? 酷いなあ」

 

結局、ラップランドが本心からそれを思っているかなんて誰にもわからない。本当のことを言っている様にも見えるし、別に全く気にしていない様にも聞こえる。

 

俺はラップランドが何者なのか知らない。本人は殺し屋だと名乗っていたが、そんなものではないと俺は直感的に思った。

 

「……これからの方針を決めよう。なあラップランド。お前は本当に”こっち”側か?」

「もちろんアルク、君の味方さ。まあ、気が変わっちゃうことはあるかもしれないけどね」

「まあいい……。状況を整理しよう。あの連中……ジュアリー・カンパニーはアメリアのアクセサリーの利権を狙って、アメリアを監禁してやがった……。それで、ラップランド。お前はどこで雇われたんだ」

「うーん、なんだったかな……。別に興味もなかったし、忘れちゃったね。ああそうだ、そのジュアリー・カンパニーって言うの? 分かってると思うけど、カンパニーとは名ばかりの暴力組織さ。ギャングに近いかな?」

「なら、遠慮は要らねえってことだな。あいつらが死んで、誰か困る人間はいると思うか?」

「さあ、いないんじゃない? ──まあ、居ても居なくても、やることなんて変わらないのにさ! アルク、君はいちいちそんなことを確認しないと気が済まないのかい」

「うるせえな……」

 

アメリアは所在なさげに荒らされた部屋をキョロキョロと眺めていた。俺はそれに軽く目をやってから話を続けた。

 

「で、ジュアリー・カンパニーには対立組織がいるって考えていいのか?」

「ああ、間違い無いとは思うよ? 何人殺しても構わないし、何ならそのままその……、何だっけ……ああ、ジュアリー・カンパニーっていうのを潰してきても全然構わないって言っていただからね」

「そうか……。じゃあそこも潰しとくか? 今後、アメリアを狙うかもしれない」

「血気盛んだねえ。まあジュアリー・カンパニーを潰してまだ君が生きていればやってみてもいいんじゃないかな」

 

アメリアが不安そうに俺を見つめてきた。

 

「おにいちゃん、怖いよ……」

「────。ああ……そうか……。悪い、ラップランド。アメリアが精神的に安定するまで、連中は後回しで構わねえか?」

「別にいいけど、ボクは子守なんか勘弁してほしいね」

「……、いや──頼む。数日の間で構わない、連中を潰すが……アメリアの気持ちも、分かってやってほしい」

 

この数ヶ月、アメリアはずっと監禁されていたはずだ。

傷が残っていて、当然なんだ。

 

アメリアはあの場所の、最後の生き残りだ。先生の形見とも呼べるかもしれない。

 

「はいはい、でもボクは子供が苦手なんだ。せいぜい護衛程度さ」

「構わねえ。……助かる」

 

本音は、真っ先にジュアリー・カンパニーを潰すべきだと思っている。

 

だが……。アメリアをこのままほったらかして、剣を握るのも、少し違うと思った。

 

 




・アルク
なんならこの章でフルネームは出てこない。語感がいいのでサブタイトルに採用。

・ラップランド
子供が苦手。異論は認める。

・アメリア
死亡フラグが乱立している。

・ジュアリー・カンパニー
みんなは 「復讐」って 知ってるかな?

「復讐」っていうのはね

たとえば いやなことをされたりして やりかえすと 気持ちがいい

あるいは みじかなひとをころされたりして やりかえすと 気持ちがいい

といったことを 「復讐」というんだ

やめようね!(聖人並の感想)
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