☆西方ウラル大陸・キテンの街
「ううう、どうしてこんな事に・・・?」
レイド帝国軍の詰め所。
その牢屋に露崎まひるは囚われていた。
「あ、お隣さん起きた?
どう?、牢屋での目覚めの気分!
固いし狭いしカビ臭くって最悪っしょ☆」
「え?、だ、誰・・・?」
「あえて言うなら君のセンパイかなぁ☆
敬ってくれて構わんよ、新入りクン?
最も、お互いいつまでここに居られるかわかんないけど!」
「!、出られるんですか!?」
「見せしめに街のド真ん中で削除される時になればイヤでも出されるって!
いやぁ、レイド帝国らしいやり方だよねぇ☆」
「削除?、レイド帝国?」
「・・・・・・・・・ねぇ、新入りクン
君、何モン?」
「私は、露崎まひる
聖翔音楽学園の生徒、なんですけど・・・
あの、ここはいったいどこなんですか?
レイド帝国ってなんなんですか?」
「えっと、あっと!、チョイタンマ!
オジサンにシンキングタイムさせてチョ☆。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやねぇわマジありえねぇ、あの朽木っ
今更何しようってんだよ、クソ!」
「?」
それっきり隣の牢からの会話が途絶えてしまい
まひるが困惑していると・・・
「出ろニンゲン」
「「!」」
青い人型ロボットがゴムで出来た兵隊を引き連れ現れた。
「(なんなんだろ?、この、人?
!、それにあれって私の!)」
「おい、さっさと出せ」
『了解』
「!?、痛っ!!」
「ワォッ!、問答無用の力ずくなんてリンクモン隊長ったらダイターン☆」
「黙れ不穏分子、この場で削除されたいのか?」
「いいよ、別に
こんなクソッタレな世界に未練なんてないし」
「え?」
「止まるナ、動ケ」
兵隊に引き摺られていたまひるは漸く気づいた
『削除』という言葉の持つ意味に。
「我々の治世になんと不敬な・・・!
《クアドルぷふぅっ!!?」
気がつけば彼女は兵隊を振り切り
リンクモンに体当たりを仕掛け
その手にあった己のキラめきをもぎ取っていた。
「君・・・」
「(思ったより、かわいい顔してたんだ)」
「お、のれぇニンゲン!、何をしている!?
とっとと取り押さえろ!」
『了解』
「!」
青紫色の毛並みをした犬科の仔獣人が囚われた牢屋の前でまひるは奪還したLove Judgementを軽やかに回してみせる。
「(なんだよ アレ
どうやればあの固くて重そうなモンを
あんな風に柔らかくて軽そうに扱える?)」
帝国の雑兵を次々に打ちのめす舞台少女。
彼女の独擅場を最前列で観賞していた仔獣人
ストラビモンは思わず目を奪われ・・・
奪われながらも、しっかりソレに気づいた。
「後ろだ!!!」
「!?、きゃっ!」
「チィイイイ!、どこまでも邪魔を!
だが、そんな鈍重な武器では我が動きはとらえられまいて!」
「~~~ッ~~~!!」
狭い通路内を縦横無尽に駆け回り、目にも止まらぬ光速で腕の刃をまひるへと叩きつけるリンクモン。
「(確かに、上手く防いでいなしてはいるけど
このままじゃ押し負ける
そう、このままじゃ)
ね☆
《リヒト・ナーゲル》」
ストラビモンの光輝く爪は眼前の鉄格子
そして
「カッ、ハ・・・・・・・・・ァ」
「え?、ええええええ!?
た、卵になっちゃったぁ!!?」
ニンゲンばかりを狙うあまり隙だらけだった青い背中を斬り裂いた。
「ほら!、急いだ急いだ☆
早くしないと他の連中に気づかれるって!」
「わ、わかったよ・・・!」
戸惑いながらも先行するストラビモンの後に続くまひる。
「ねぇ、あなた 」
「ストラビモン」
「・・・・・・・・・ストラビモンはいつでも外に出られたのにどうして 」
「出なかったのかって?
そりゃ外もここと似たり寄ったりだからさ☆
ま、それでもなんかワンチャンありそうだし?
オジサンもはしゃいじゃおっかなって☆
ホラ!、丁度イイカンジの乗り物発見!
いやぁ、波きちゃってるね☆
マヒルチャンも乗った乗った!」
「車!?、ストラビモン運転出来るの!?
免許は!?」
「メンキョ?、なにソレ?、美味しいの?」
「え"」
ブロロロロロロロロ!!!
「ヒャッハァアアアアアア☆☆☆」
「い~~~や~~~!!!!」
「(何でかわかんない内に手に入った命って奴
その使い道がやっとわかったよ
炎の)」
・・・・・・・・・何はともあれ、無事(?)1人と1体は街を脱出出来たのだった。
『・・・・・・・・・』
カシャッ カシャッ
☆西方ウラル大陸・はげ山
「頼む!、どうかオレと共にこの世界
デジタルワールドを救って欲しい!!!」
「お、おぅ・・・?」
浅黒い肌で額に角の生えた子供が土下座で頼み込んでいる相手・・・石動双葉は困惑していた。
それもその筈、突然デジタルワールドという異世界に問答無用で引きずり込まれ
いつも一緒の幼馴染みの行方がわからない最中にこんな頼みをされては
怒りを通り越して呆れるばかりだ。
「あー、つまり
そのレイド帝国とかいう奴らのせいで滅茶苦茶になってるこの世界に人間が現れたらそいつが救世主、なんだよな?」
「その通り!」
「ならさ、別にアタシじゃなくても良くね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ!?」
「人間なら誰でもいいんだろ?
だったら他を当たってくれ、あたしにはやらなきゃいけない事がある」
「・・・・・・・・・!」
「それじゃあなー
ったく、香子の奴どこいきやがっ 」
ドスンッ!
「うおっ!?、なんだぁ!?
!、いや本当になんなんだよ!!?」
「~~~~~~・・・・・・・・・!!!」
突然の轟音に振り返れば・・・件の子供が土下座の体勢のまま地面に頭をメリ込ませていた。
「オレは、オレは何て不義理な真似を!」
「は?」
「相手の事情も鑑みずに己の欲求を押し通す等!
帝国が如き所業に他ならない!
そんな事にも気づけないとは!
やはりオレは!、生まれるべきではなかった!」
「いや待ってて、何もそこまで言わなくても」
「もとはと言えば!
オレ達祭具を用いて召喚された創世神が敗れた為に起きた災い!
その尻拭いを全く関係のないニンゲンに擦り付けようとする等!
あってはならないだろう!?
何故それに気づけなかった!?」
「と、とにかく一旦落ち着け!
あたしはあんま気にしてないから!」
「し、しかし!」
「ほら、こっち向けって
顔面砂まみれになってんぞ?」
「!」
双葉は子供の元に出戻り
その顔をレヴュー衣装の袖で拭ってやる。
「えっと、確かフレイモンだったっか?
お前にとってあたしら人間は伝説の生き物なんだろ?
なら、ああいうこと頼みたくなる気持ちもわからなくねぇよ
そんだけこの世界がヤバイってのはあの空とかこの山見れば大体想像つくしさ」
「ここなどは!、まだ!、まだマシだッ!
帝国に支配された街のデジモン達は!
いつ削除されるかの恐怖に脅えながら暮らし!
自分がそうならない為に自分より弱い物に犠牲を強いる!
そんな不条理がさも当然とばかり行われているのに!
オレは!、何も出来ない!、出来なかったんだ!!」
「フレイモン・・・」
「創世神が討たれた時、何の因果かモノであった筈のこの身にデジモンとしての生命が宿った!
それはきっと!、レイド帝国からデジタルワールドを取り戻せという世界樹の意思に他ならないというのに!
オレは!、オレは・・・ッ!」
「もういい、もういいよ
お前、ずっと頑張ってたんだな
そっちの事情全然気にしないで自分の事しか考えてなかったのはあたしも同じだよ
だから、泣くなって」
「ぐう"う"う"ぅ!、ずま"な"い"!!」
双葉は泣きじゃくる子供・・・フレイモンの体を優しく抱きしめ、真っ赤な髪を撫でてやった。
「落ち着いたか?」
「あ、ああ!
君の、フタバのお陰だ!」
「そっか」
「・・・・・・・・・!、フタバ!!」
「うおっ!?」
「フタバの言っていた通り、ニンゲンならば誰でもこのデジタルワールドでは救世主になれる!
でも!、それでも!、オレは!
フタバのように自分の意思を貫く強さと他人を許し励ませる優しさを持ったニンゲンこそがこの混迷と化したデジタルワールドの救世主足り得るのだと思う!!」
「え?、えっと 」
「だが!、それを理由にして無理矢理やらせる訳にはいかない!
何より!、フタバの成すべき事を邪魔するなんてオレには出来ない!
ではな!、フタバ!
君の目的が果たされる事を切に願 」
「ちょっと待てよ!!!」
「!?」
「ったく!、あたしが言えた義理じゃないけど言いたい事だけ言って勝手に離れようとすんなって
・・・・・・・・・なぁ、フレイモンあたしと取引しないか?」
「と!、取!、引!?」
「あたしはお前を手伝う
だから、お前もあたしを手伝って欲しいんだ
よく考えたらこの世界の事何にも知らねえしさ
だから、お前が一緒に居てくれるなら助かる」
「ッ!、確かに!!
レイド帝国とて伝承については把握している筈!
フタバが狙われる可能性だって大いに有り得る!
そんな事にも気づけないとはやはりオレは」
「だぁー!、そういうのもういいって!!
ったく!、ひねくれてる奴も手がかかるけどお前みたいに真面目過ぎんのも考えもんだな」
「す、すまない!」
「で?、どうすんだ?」
「無論!、その取引乗らせて貰う!
君の力になれないようではデジタルワールドを救う等は夢のまた夢!
このフレイモン!、全力でフタバを手伝おう!
その為にも!」
宣言と共に右手を紋様が刻まれた左胸に当てたかと思えば
そこから虹色の鉱石が取り出す。
「君には!、オレのパートナーになって欲しいんだ!」
「いや、なんでそうなんだ!?
ってか、それなんだよ!?、どっから出した!?」
「オレが全身全霊を賭すにはニンゲンとの契約が必要だ!
そして、これはその為に必要な神機!
創世神が敗れた折にオレの中に宿った!」
「・・・・・・・・・ほんっとにさぁ馬鹿真面目だなー、お前
言ったろ?、あたしは手伝うだけだって!
下手すりゃデジタルワールドなんて放って逃げるかも 」
「構わない!!!」
「!?」
「フタバは成すべき事をやればいい!
オレはオレの成すべき事をする!
その上でフタバの力となる!
これは!、その誓いの証だ!」
「
ははっ!、その言葉後悔すんなよ?」
どこまでも熱く真っ直ぐな想い。
それに押し負ける形で困り顔の双葉が虹色の鉱石を受け取れば
紫がベースで装飾が藤色の神機となって彼女の手首に巻き付いた。
「いつまでになるかわかんねーけど
それまではよろしくな、相棒」
「ああ!
(光の!
君の分もオレはレイド帝国と戦う!
そして!、必ずや!
フタバの成すべき事を果たしてみせる!)」
※ストラビモンの言う炎のがフレイモンで
フレイモンの言う光のがストラビモンです
この2体はスピリットそのものがデジモン化した所謂付喪神的な存在です
なので、スピリットエボリューションは無しです