かつてのデジタルワールドの・・・
世界樹の根幹を成す天界。
そこに存在する幻の里は
希少な古代種たるブイドラモン族の隠れ里だ。
その里の中で
聖騎士を創設した偉大なる御先祖を象った
インペリアルドラモンの像から発生する結界や
大人のブイドラモン達に護られて暮らしていた
ぼくことブイモンと もうひとりのブイモン。
これは、そんなぼくらの小さな冒険
そして・・・・・・・・・
僕ことドボカゲが
忘れてしまっていた 僕の起源の物語。
「ね、ねぇ・・・ほ、ほんとにいくの・・・?」
「あたりまえだろ!?、こんなチャンス!、めったにないんだから!」
ブイモンに手を引いて貰いながらやって来たのは
里を囲う結界の、ほんの僅かな切れ目。
ソレを偶然見つけたことをきみに伝えた時
すごく興奮しながら、こう言ってくれた。
「やっぱり!、おまえ!、すごいな!」
そして、今、ブイモンは
大人達の言い付けを破るのに尻込みしている
ぼくを引っ張って、励ましてくれている。
「(きみのほうがよっぽどすごいよ)」
外の世界は危険だ
他のデジモンに見つかればタダでは済まない
ブイドラモン達にそう何度も教えられているのに
きみは全然怖がっていない
それがぼくにはとてもまぶしくみえたんだ。
「だいじょぶだって!、気づかれるまえにかえってくればぜったいバレない!」
「う、うん・・・そう、だね・・・!」
「そう!、そう!、ほら!、いくぞ!」
未知なる世界に薄紅色の瞳をキラキラさせて
ぼくの手を取ってズンズン隙間を進んでいく。
「「うわぁぁぁあああ・・・・・・・・・!!!」」
そうやって、結界を抜けたぼくらが見たのは
燃え盛る大地 七色に輝く空 天に逆巻く滝
そこで生きる
ブイドラモンよりもずっと大きなデジモン達。
「すっげぇーーーーーー・・・・・・・・・!!!
あ!、あいつ!、そら!、そらとんでる!」
「ふぇ!!?、ま、まってよぉー・・・!」
駆け出すきみに置いて行かれないようにするのにぼくは必死だった。
だって、きみは産まれた日も進化するのも同じなのにぼくよりもずっと足が速かったから。
「いいなぁ、いいなぁ
おれも!、はやく!、そら!、とびたい!」
「き、きみならきっとしんかできるよ・・・!エアロブイドラモンにだって・・・!」
「そう、だよな!?
よし!、おれ!、ぜったい、しんかする!
ゴルたちよりも!、はやく!」
「う、うん・・・!、うん!!」
ぼくはきみを誰よりも信じていた。
同世代の・・・・・・・・・ううん、里の誰よりも。
実際、君は僕が知る限りで唯一エアロブイドラモンに進化出来たブイドラモンだった
いや、それどころ更にその先
予言上の存在【アルフォース】にまで至った。
ぼくはまちがっていなかった
それでも間違えたのは
他ならぬこの僕なんだ・・・・・・・・・。
「ヴォオオオオオオオ!!!!!!」
「「ふぇえ"え"ええ"んっっっ!!??」」
産まれて初めて目の当たりにした光景に見とれていたぼくらに襲い掛かってきたのは
完全体の火山竜・ヴォルクドラモン。
本来は見た目とは裏腹な温厚な種族なんだけど
この時は余程気が立っていたのか
問答無用でぼくらにマグマを吹きつけてきた。
「うえだ!、うえのぼれ!、はやく!!」
「う、うん・・・!
!?な!!なにやってるんだよぉ!!?」
「こっちだ!!、こっち!!
とっととこいよ!!、ノロマやろう!!」
「ヴォオオオオオオンっっっ!!!」
ブイモンはぼくをマグマの届かない大岩の上に押し上げた後
ヴォルクドラモンの注意を引き付けて囮になった。
自分を犠牲にして ぼくを、たすけるために。
「ヴォォォオオオ・・・!!!」
「ぁ"!?、っつく!!、ない!!
おれは!、おまえなんかに!、まけない!」
周囲をマグマで埋め尽くされて
格上の竜族に追い詰められても
きみはやっぱり全然怖がっていなかった。
「!!!
ぅぅっ!!!、ぁぁぁああああああ!!!
うわぁぁぁああああああーーーっ!!!」
そんなきみをぼくはうしないたくなかった。
だから、形振り構わず自分が乗っていた大岩を
ヴォルクドラモン目掛けて蹴り飛ばした。
「ヴォ"ッ!?!!・・・・・・・・・・・・・・・ォ・・・」
「ふえ?」
「だいじょうぶ!!?」
「ぇ、ぁ、うん・・・だいじょぶ・・・・・・・・・」
ソレは偶々
・・・・・・・・・『奇跡』的に急所に当たり
里のブイドラモン達の何倍も大きな体躯が燃え盛る大地に沈んだのだが
ぼくはこのとききみのことしかみてなかった。
「よ、よかったぁ・・・!、よかったよぉ・・・!
ふえええぇぇぇ~~~~~~ん・・・・・・!!!」
「な、なくなよ!!
おれよりすごいことしたくせにッ」
「ふえ?」
「な、なんでもない!
って、なんだ?、アレ??」
割れた大岩の中からブイモンが見つけたのは
1振りのロングソード。
「すっっっげぇ!!!、かっこいい!!!
なんだ!?、コレ!?」
「ぼ、ぼくには・・・わかんない・・・けど・・・
き、きみにピッタリだとおもう!!」
「!、そう
だよな!!!」
「うん!、うん!!」
剣なんて持つのは初めてな筈なのに
蒼く輝く刃を構えるきみは
このせかいのだれよりもかっこよかった。
『ヴォルルルルルルルル・・・!!!』
「「 あ" 」」
思わぬ収穫に浮かれるぼくらを取り囲んでいたのは
ヴォルクドラモンの群れ。
見知らぬデジモンに縄張りを荒らされ
挙げ句、同胞を害されては
いくら温厚なデジモンでも機嫌を損ねるだろう。
『《ヴォルカニックフォーン!!!》』
火山竜達の怒りを現したかのような灼熱攻撃が
ぼくらを飲み込む
「《ブイブレスアローー!!》」
「「!、ゴル!?」」
寸前、黄金の熱線がその全てを吹っ飛ばした。
「お前らうちのチビ達に何しやがる!!?」
『ヴォ!!?』
燃え盛る大地にその目映い姿を現したのは
ぼくとブイモンが憧れて止まない
幻の里唯一のゴールドブイドラモンのゴル。
「す、すっげ」「す、すごい・・・ね・・・」
呆けるぼくらを余所にゴルは完全体の群れを相手に大暴れした。
『ヴオーォーーーン・・・!!』
「へっ、おとといきやがれってんだ!!」
「「ゴ~~~ル~~~!!!!」」
「お前ら
自分らが何やったかわかってんのか?」
「「!」」
ヴォルクドラモン達を撃退した後、ゴルは駆け寄ってきたぼくとブイモンに厳しい眼差しを向けて
「俺ら何度も言ったよな?、里の外は危険だって
なのに、どうしてお前らここに居るんだ?
俺が間に合わなかったらさっきの連中に消されてたんだぞ?
それとも、消えたかったのか?
だったらこのままここにいろ!!」
「う、うう・・・!」
「ご、ごめんなさ・・・ぃ・・・」
「お、おれも!、ごめん、ゴル
ごめんなさい!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なーーんて偉そうに言っても!!
俺もブイモンの頃に里を抜け出してるんだよなーー!!」
「「ふえ?」」
「やっぱさーー!!、里の外どうなってんのか気になるよなーー!!
でもさ、これでよーーくわかったろ?
お前らみたいな弱いモンじゃ、ここから先を生きていけないんだってことは」
「「・・・・・・・・・」」
「今回は俺でも頑張れば何とかなった
でもな、デジタルワールドには俺がどれだけ頑張っても勝てないモンなんていっぱい居るんだよ
だから、もし、お前らがまだ
外の世界を見たいって気持ちがあるんならさ
俺なんかよりも、強くなってみせろよチビ達
それこそ、御先祖様みたいにな!!」
その後にいつもの優しい顔で笑いかけてくれた。
「う、うん!
おれ!、ぜったい!、エアロブイドラモンに!
それよりも!、もっと!、すごくなって!
デジタルワールドぜんぶのそら!、とぶ!」
「ぼ、ぼくは・・・ぼくは・・・・・・・・・」
「ハハ!、そーーか!、そーーか!
それならまずは
里のみんなに謝んないとなーー
ホラ乗れチビ達、超特急で帰るぞーー!!」
ゴルがそう言いながらどもるばかりなぼくをグリグリ撫でてくれたのは
きっと、気を使ってくれたからだと思う。
それから何日か経って
ゴルの寿命が尽きた。
良く晴れた日だった。
里の結界がもたらす蒼い空の下
いつも通りにみんなと食べて、遊んだ後に
「いい天気だなーー」
こう言い残してゴルは デジタマに還った。
「ぁぁぁああああああーーー!!!
ぅぅぁぁぁああああああーーーーーー!!!」
「ーーーーーーッッッ、なくな!!!」
「だ!ってぇ!ゴル!きえたの!ぼく!
ぼくの!!ぼくのせいだろ!!??」
この時に他のブイドラモン達から教えられた
オーバーライトのことやぼくらの種族のことを。
ゴルはあの時、ヴォルクドラモン達と戦った時に
残りの時間の殆どを使ってしまった
ぼくがつかわせてしまったんだ。
「ないたって!、なんも!、かわんねぇ!
だろ!?」
「ぶぇ!」
ゴルのデジタマを抱いたまま
みっともなく泣きじゃくるぼくをブイモンは
思いっきり殴り飛ばすと
「ゴルはおしえてくれたんだ!!
つよくなれって!!、チビたちまもれって!!
じぶんのいのちぜんぶつかって!!
だから!、こんどは!、おれたちのばん!」
「!!」
偉大なる御先祖様を象った
インペリアルドラモンの像と同じように
地面に剣を突き立て
「だろ!?」
「・・・・・・・・・う"ん!うん!!、そうだね!」
そして、ぼくにむかって手をのばしてくれた。
これが僕の起源。
あの日のゴルの生命に恥じないように
きみと一緒に強くなろうと誓い合った。
「・・・ぁ・・・・・・ぅ・・・・・・・・・」
焼け焦げた喉の奥から声にならない音が漏れる。
今の僕【ドボカゲ】が居るのは
幻の里のぼくときみの・・・・・・・・・
僕しか居ない住み拠。
「・・・・・・・・・ぁ・・・・・・ぁ」
きみといっしょだったときはあんなにひろかったこのばしょは今の僕にはどうしょうもなく窮屈で
何より、壁に立て掛けられた
刀身が『黄金』に輝くロングソードが目に痛い
・・・・・・・・・コレをやったのは僕自身の癖にだ。
「ぁっ、ぁ"」
辛うじて焼き付くのだけは免れた瞼の隙間から零れ落ちた涙が火傷しかない顔の上を、溶けたゴールドデジゾイドが一体化した体の上を流れて地面に小汚ないシミを
・・・・・・・・・まるで今の僕のようなモンを造る。
『アル』を、僕の全部をメチャクチャにした?
違うよドボカゲ【僕】
それをやったのはアイツらじゃない
アイツらは関係ない、ってか関係あってたまるか
護らなきゃいけないモン全部蔑ろにして
挙げ句、自分で消そうとしたのは
自分の起源を穢したのは お前【僕】だよ。
だから拒絶されてんだよ
今も。
「ぅ"!!ぅーーー!!うーーー!"!"!」
里のすぐ近くに君は居る、居るのに
僕の前には来てくれない
・・・・・・・・・当然だよね。
だって、今の僕と今の君はもう
真っ青な他モン・・・なん・・・だから、さ。
でも、せめてここで
ぼくのともだちの
アルの残り香を感じることだけはゆるして
おねがいだよ アルフォースブイドラモン。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねーー!!、ねーー!!
アルフォースブイドラモーーン!!」
「!」
幻の里上空を浮遊する最速の聖騎士に地上から声を掛けるのは1体の幼竜。
「マグナモンにあいにきたんだよねーー?
なら、はやくあってあげてーー!!」
「・・・・・・・・・違うよ」
「えーー?、ちがうのーー?」
「うん、違うんだ」
「じゃーー、どうしてきたのーー?」
「どうして、だろう?」
「うーーん・・・うーーん・・・わかんなーーい!!」
「そっか」
「でもねーーでもねーー
アルフォースブイドラモンもーー
マグナモンもーー
おれよりずーーっとつよいよーー!!」
「ッ」
「だからーーだいじょーーぶーー!!
やりたいことぜんぶできるよーー!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、ありがとう
ゴル」
小さな存在の大きな言葉に天を仰いだアルフォースブイドラモンの目に涙が浮かぶのを
知っているのは白亜の皇帝竜の像だけだった。