副題:ワタクシの中のスペース
外界からの光が殆ど入らない地下工場に
ソレは音も無く降り立った。
「・・・・・・・・・」
『!?』
ソレはトップであるデビタマモンや下働きのデジタマモン達の横をすり抜け、我がモン顔で工場内を闊歩する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ソレは工場を動かす為の『加工前の部品』を収めた箱の前に立つと、誰からも了承を得ないまま
手首のブレスレットから伸びる光の剣を一閃させ
上部分を斬り捨てた。
「ーーーーーー!!!」
横暴だ!!!
デビタマモンはそう言いたかったが
声が出せない。
何故ならば、ソレはその存在自体が絶対的な秩序
逆らえば消されるだけなのだから。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「!!!」
ソレは無言のまま『部品』が大量に詰まった箱を抱えると、背中の翼を広げて地上へと飛んでいった。
好機!!!
即座にそう判断したデビタマモンは、自分の周りをたむろするデビタマモン達を撥ね除け
「逃げられるとでも思ったのか?」
「あ・・・!・・・・・・!?」
ようとした手がぶつかったのは
Vの字型の装飾が施された蒼の鎧。
「この、アルフォースブイドラモンから 」
「待つのデシテ最速よ」
『!?!』
聖騎士の名の元に振り下ろされる光の刃は
三日月の鎌により間一髪の所で止められた。
「月光、ディアナモン」
「気にいらんからと自分より弱きモンを消していってはレイド帝国と何も変わらないのデシテ
奴らを打倒したモンとして、自分自身がそうならないように心得るべきだとは思わんか?」
「・・・・・・・・・」
「それにこいつらにこのような真似をさせてしまったのはワタクシの不徳の為す所デシテ
どうかここはワタクシに免じて見逃して欲しい」
「・・・・・・・・・」
「頼む、アルフォースブイドラモン」
「次は無い」
そう吐き捨てるのと同時に最速の聖騎士の姿は薄暗い工場内から掻き消えていく。
「さて、災難であったなデビタマモン」
「で、ディアナモン!・・・・・・・・・さ、ま!」
「そう畏まる必要はない
貴様はワタクシの信者ではないのだからな
とはいえ、デジタルワールドの神としては
労働力が足らず困っているデジモンを見過ごす訳にはいかないのデシテ」
「!?、あ、いえ!、そ!、そんな!」
「遠慮は要らん
セイレーンモンよ、今後はこの工場で働き
デビタマモンの力となれ」
「ディアナモン様の御心のままに」
「!!」
頭上から自分を見下ろすセイレーンの冷たい視線から、すぐにデビタマモンは気づいた
「(この!、このぉおおお!!
竜の威を借る兎めがぁあああ!!!)」
かつて、デジタルワールドの頂点に至った
レイド帝国の『ノウハウ』を利用し
自分こそが次の支配者となる野望が挫かれ
周りのデジタマモン達と変わらない
ただのデジモンとして生きることを
最弱なんかに強いられたのだということに。
「(やれやれ、案の定バカが出たのデシテ)」
後のことは信者に任せ、地上へと帰還する最中
月光の神は思案に耽っていた。
「(これではアルフォースブイドラモンが下界でどういう生を送ったのか流布した甲斐がないのデシテ・・・)」
信者を使いデジタルワールド全土にこの情報を広めることで
レイド帝国と同じ行いをするモンなんて
最速の聖騎士に斬り捨てられても文句は言えない
と、言外に警告を発していたのである。
・・・・・・・・・余談だが、その結果
某里は阿鼻叫喚の地獄絵図に陥り、引きこもり聖騎士(元も含む)達は余計に精神が追い詰められたのだが
神のみぞ知る、ならぬ
神にとっちゃ知ったこっちゃないのデシテ。
「(しかも、やはりというか何というか
山姥に懐柔されたモンの手下とは・・・)
どうせ間引くのならば根こそぎやれデシテ」
現状のデジタルワールドでは、アヌビモンのような一部の例外はあるとはいえ究極体への進化には多大な時間が必要とされる。
しかし、何事にも抜け道はあるというもの・・・
データを多く含んだ希少なアイテムやサーバーなどをその身に取り込むという【ロード】の技術を応用した裏技は
かの麗将による甘い誘惑の一端。
コレを得る為、あるいはレイド帝国での地位を確立すべく保身や力に目が眩んだモン達は彼女に跪き
ある程度の『成果』を示した所で
死神の風に刈り取られていったのだ。
「(だが、一度広まった知識は容易く消せない
結果、残されたデータを元に大異変後から暗躍してたモン達が力をつけレイド帝国の猿真似を )
ん?」
「・・・・・・・・・」
「何だ、まだ居たのデシテ?」
地上へと降り立つディアナモンを待ち受けていたのは、先程別れたばかりのアルフォースブイドラモン。
その足元には大量のデジタマが詰められた箱がセイレーンモン達によって守られていた。
「早くそいつらをはじまりの街に届けろ
運んでいる途中に孵りでもしたら困るのは貴様デシテ」
「その前にきみに訊きたいことがある、デス」
「・・・・・・・・・信者達よ、耳を塞げ」
『はっ!!』
「それで?、ワタクシに何を訊きたいと?
ああ、あのデビタマモンのことか?
安心しろ、奴は近い内にアホのコロシアムへ送り込んで 」
「あんなのがどうなろうがブイ興味ないデス
それよりきみの方が心配、デス」
「心配?、フッ、笑わせるなよ最速
ケレスモンから聞いたぞ?
貴様、飛行中に居眠りした挙げ句
奴の森に突っ込んだらしいではないか
あの手の輩の監視や後進の育成も大切だが、ちゃんと休めデシテ」
「ぶ!、ブイの話はいい!、デス!
・・・・・・・・・ディアナモン、きみ
何がそんなに怖い、デス?」
「・・・・・・・・・そう、見えるか?」
「はいデス
今回だって、君自ら出なくたって信者だけで
過去の傷を抉られて暴走する最速の聖騎士を見事諌めた月光の神の威光は充分示せたのに」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「最近、きみ
無駄に動き回ってる気がする、デス
まるで、本当に向き合わなきゃいけないモンから必死に目を反らしてた
前の、俺、みたい、デス」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今のデジタルワールドできみがそこまで脅えるようなことがあるんデス?
なら 」
「言えば貴様も背負うことになるぞ?
この、手の施しようがない恐怖と絶望を」
「!!?」
「その勇気が貴様にあるというのか?
ワタクシと同類の臆病モンな貴様に」
「ーーーーーー・・・・・・・・・ッ
そう、デス、ね、『ブイ』には、無理、デス」
「そうだ、それでいい
信者達よ、これより神殿へと帰還する
ゲート内でも警戒を怠るな」
『はっ!!』
「ではな、アルフォースブイドラモン
そのデジタマ達を、かつての貴様の救済は頼んだのデシテ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
セイレーンモン達を引き連れ、遠ざかるディアナモンの背中を見つめながらアルフォースブイドラモンは・・・
「ワー爺、マルスモンに通信を繋げて欲しい
デス」
Vブレスレットの側に収まる桜色の神機を通じ
神頼みをするのであった。
「(言える訳がないだろう・・・・・・・・・)」
月食の神殿。
大異変後、十二の神々のサーバーが統一されたことで産まれた昼と夜両方の性質を持つ神殿にて
光源を欠いた月はデジタルワールド全域のチェックを行っていた
「(いくらデータを解析しても原因がまるでわからない以上他のモンに話した所で無駄でしかない
幸いこの異常が起きているのはワタクシだけ
現在のデジタルワールドの円滑な運行には
何の、支障も・・・ない・・・・・・・・・デシ、テ)」
胸中に広がる寂しさから目を背け
「ジャ!!」
「へ?」
「ジャ!!」
「え」
「ジャ!!」
「ま!!」
「ジャーーーーーーン!!!!!!」
「ぐぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あああ!!?」
・・・・・・・・・てたら
闘争の神の燃える拳が顔面にメリ込んだ。
「?、??、??????、!
ディアナモン!!、お前どうした!?」
「・・・・・・ッ・・・!゙・・・・・・・・・!!!」
き・さ・ま・の!、せい!
デシテーーーーーー!!!
そう言いたかったが、声が出せない
主に物理的な理由で。
「そっちじゃねぇよ!!!
おまっ、お前!、なんで!
どうしてテンドーのこと忘れてんジャン!?
おかしいだろ!!?、そんなの!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そういう名前だったのか
ワタクシのパートナーだった 舞台少女は」
拳が離された後、凹んだ顔に浮かんでいたのは
冷えきった無表情。
「おま!!、本当の本当にいい加減しろ!!
ウチ怒るぞ!!、殴るぞ!!」
「もう既に怒っているし、殴っているだろう」
「だって!、お前!
テンドーだぞ!?、あのテンドーだぞ!?
あんなハデハデ忘れられるモンかよ!!?」
「そいつはそんなに派手だったのか?
あのクロディーヌや他の7人よりも?」
「ッッ!!?」
「ハッ、そうも情けない顔を晒すなよ闘争
貴様やどこぞの色ボケ共、それに山賊あがりの教祖がその舞台少女を覚えている
ワタクシにはそれだけで充分だ」
「何が充分ジャン!?
全然全然充分じゃないジャン!?」
「充分デシテ、絶対神たる世界樹無き
今のデジタルワールドの円滑な運行にはな」
「ーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ディアナモンのその言葉を聞いた途端、取り乱していたマルスモンの顔からも表情が抜け落ちる。
「なぁ、ディアナモン
ソレ、ウチのせい?」
「藪から棒に今更何デシテ・・・」
「前のウチが泣いてたお前をバカにしたから
だから、今のお前はそんなに辛くても苦しくても
泣けないし、誰にも頼れないジャン?」
「そうだとして、今のお前に何が出来る?
どれだけ謝られようがかつてのワタクシの心は晴れないし、この異常が治る訳でもない
そんな無駄なことをする時間があるのなら、アルフォースブイドラモンのようにデジタルワールド中を飛び回っていろ
それだけで馬鹿げた真似をするモン達への牽制になるのデシテ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっ、か
お前の言う通り、ウチ、難しいこと考えたり
アポロモンやウェヌスモンみたいに励ましたりとか出来ねー」
「だろう?、だから 」
「だから
とりあえず お前をブッ飛ばすジャン」
「!!?、くっ!?、んぎ!」
宣言と共に再び唸る豪腕を三日月の鎌で受け止めれば、容易くヘシ折られる。
「ウチ、コレしか出来ないから
お前みたいに難しいこといっぱい考えて
バッチャンに勝つ方法見つけらんない」
「な!、にを!?」
「それでもウチはバッチャンに勝ちたい
ってか!!、勝つ!!
バッチャンがやったことよりも、やろうとしたことよりももっと
もっと、もっともっともっともっとぉ!!」
「ぐぎ!、ぅぐ!」
「テッペン行くんだろ!?、ウチらは!!
クロ公達が、舞台少女が日々進化してんなら!
なのにッ、前のお前より弱くなんなー!!」
「さ・い・じゃ・く・がハッ?!
ソレ以上弱くなる訳が、ない!、デシテ!」
炎を纏ったラッシュを折れたクレセントハーケンで必死に捌くディアナモン。
「・・・・・・・・・やっぱ弱くなってる
でも、そんなの当然ジャン
だって今のお前、お前の中からテンドーが
お前のパートナー【全て】が消えてんだから
オウリュウモンだってラセンモンだって
バンチョーレオモンだって
エンシェントグレイモンだって
エンシェントガルルモンだって
アルフォースブイドラモンだって
アルファモンだって
ウチ、だって 絶対の絶対に弱くなる」
「ーーー!?、ッーーー~~~!!」
その華奢な体躯が徐々に浮かび上がり
ロープ際ならぬ天井へと追い込まれていく
闘争神マルスモンの必殺技たる空中殺法だ。
「お前のことだからやれること全部やってる
それならウチがやってやれることなんて無い」
頭を腿で挟み 逆さの状態でガッチリホールド
更に、天井を思い切り蹴り上げて!
「だから!!!、お前ブッ飛ばして!!!」
「ぐ?!、ぎゃあ~~あ~~あ~~?!!」
回転を加えながらのぉ!! 急速落下ぁ!!
「無理矢理にでも寝台にブチ込んでやる!!
ジャンッッ!!!」
「ぎ゙ゃぶっ!!!・・・ッ・・・゙・・・・・・・・・」
パイルドライバー決まったぁーーー!!!。
「うっし!」
「何が『うっし!』だぁーーー!?
おのれェよくも姉様をーーーーーー!!!」
「あ、オロチモン
今、そうゆうのいいから」
「シュウぅうンッッ!゙!?」
『オロチモーーーン!!!』
「セイレーンモン、ディアナモン運ぶジャン
ウチ、これからケレスモン所から
毒林檎いっぱい採って
こいつに食わせなくちゃいけないから
クロ公がテンドー奪い返すまで!!!」
「って、ワケジャン!」
〔『~ー~ー~ーッッッ!!!』〕
事の顛末を神機を通じて知ったパートナーデジモン達+『明けの遠吠え』は一斉に頭を抱える。
〔「う、うん・・・
とりあえず、まぁ、言いたいことは色々あるけど
ソレ絶対キリンのせいだよッッ!!!」〕
〔「だろうなァ」〕〔「「うんうん!!」」〕
〔「だから☆ちょっと☆待って☆みんな☆
アレって本当にキリンなの!?、オジサンの検索に出てくるキリンの鳴き声と全っ然違ったけど!?
というか月光チャン大丈夫!?
心は勿論、体の方もオレ超心配!!」〕
〔「あ、あいぼうが、き、きえる?
おれの、なかから?、き、きえ、きえっ
きキキきェッッキエきえェェええええ 」〕
〔「エンシェントグレイモンッ」〕
〔「ハッ!!、す、すまない!!
アルフォースブイドラモン!!
相変わらずお前の拳はよく効くな!!」〕
〔「あ、最速殿お久
実際に顔合わせんの何年ぶり?
・・・・・・・・・じゃなくて
そこん所どうなの?、闘争チャン?」〕
「大丈夫ジャン!
口いっぱいに毒林檎詰め込んだから!
暫くは何があっても起きないジャン!!」
「ソレ!、全然!、大丈夫!、じゃ!、ない!
デスぅうううううううーーー!!!」
「うお!?」
「ぉぶぇ!!?」
「?、???、??????
!、アルフォースブイドラモン!?
お前もお前でどうしたジャン!?、ディアナモン程じゃないけどお前も何か弱くなってっぞ!?」
光の速度で神殿へと飛び込んできた最速の聖騎士の腹筋にカウンターを食らわせ、床に沈める闘争の神。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな光景を通信越しに察して、孤高の隠士は眉をひそめるながら目的地へと飛ぶ。
「(この状況はやっぱり良くないな、うん)」
アルフォースブイドラモンとディアナモン。
現在のデジカメワールドの治安維持の要と呼べる2体
故に、そのプレッシャーがあの臆病モン達を
必要以上に追い詰めている。
「(パートナーの記憶だけが消えるなんて
生きる為に必要な臓器を丸々失ったも同然なのに
それでもディアナモンは働き続けてたのは
きっと、そのせいで・・・・・・・・・
なのに、あいつらがあんなに頑張っても
ボクらは多くを取り零してるんだ)」
大異変以降、パートナーデジモンだった9体は
各々の立場から世界の平定に死力を尽くしている
尽くしていても尚、この混迷を止められない。
「君が今の世界を見たら、どう思う?
オメガモン かつてのボクの唯一の友よ」
目的地へと到達したアルファモンの眼前に聳え立つのは、地面を無理矢理くり貫いたような形状の台座に突き刺さった一振りの白い剣。
〔〔『ォ』〕『オオ・・・ゥ・・・・・・!!!』〕
「!、来たかッ」
その下に山積みとなった
世界を護るという固い決意【鎧と盾】と
侵略者を打倒せんとする鋭い戦意【剣】の
残骸が蠢き出した。
〔『カ』〕〔〔『ン、ジゥ!』〕〕
〔〔『『レイ!ドテイコク!』』〕〕
〔『削除セヨ!!』〕〔『ヤツ!ラ!』〕
〔〔『デ!タ!』〕〕〔『イッペン』〕〔〔『ノココァズズー!ゥゥ!!!』〕〕
「何度も言わせるなよ、うん・・・
ソレはもうレイド帝国じゃない
君達の戦いは終わって 」
〔〔〔『『『否!!!』否!!!
ワタシ!!タチハマダ!!戦エル』』〕〕〕
『〔世界ヲトリモドセ
アル!ベキ姿ニ・・・ーーーィーー!!!』〕〕
「・・・・・・・・・ッ」
肉体や生命を失っても尚、決して止まらない強い意思の群れを前に電脳世界の抑止力は聖剣を構える。
「(今の世界はとても平和とは言えない
もしかしたら、レイド帝国に支配されていた時より酷くなっているのかもしれない
それでも、デジタルワールドの問題はボクらデジモン自身が解決しなくちゃいけないんだ、うん)
もう二度とニンゲンの手を煩わせない為にッ」
己が掴み、そして手放した
あの星のキラめきを胸に秘めて。
その後ディアナモンは、数ヶ月間もの昏睡状態に陥り生死の境を彷徨いましたが・・・
無事パートナーの記憶は戻りました
尚
ディアナモンがこの異常の原因を突き止めた場合
『元凶』に対し『あの』オロチモンの派遣を
わりと本気で画策します。
最も、当のオロチモンからしたら
「対象年齢外です、今後の成長に期待します」
なんですけれどね・・・・・・・・・。