私がとある世界に召喚するのはこの人さ!
1
十月某日。学園都市第七学区のとある高校では、いつも通りの日常……とは、一般的には少し表現し難い乱痴気騒ぎが起こっていた。
「テメェ土御門!! 今更白とかトンチキなことぶっ込んでんじゃねぇよ! 空気読めよ! ぶっ殺されたいのか!?」
「カミやんの言う通りや!! こっちはもうトップ争いは黒か赤かのどっちかってことで纏まっとんねん! これから朝まで生討論始めようって時に余計な横槍入れるとか無粋もエエとこやで!?」
「にゃっはっはー! ふざけろ!! 黒だの赤だの低次元なところで争ってるから態々世界の真実を伝えてやってんだよこっちは!! 純粋無垢な白ウサギこそ究極にして絶対!! 無垢の象徴たるロリに映える白スーツが第一位の座を得るに相応しいに決まってるぜよ!!!!」
「「テメェ結局ロリじゃねぇか!!!! ぶっ殺す!!!!」」
学び舎たる高校の教室で、クラスきっての不良男児である上条当麻、土御門元春、青髪ピアスのずっこけ三人組が、ハリウッドアクションスターもかくやのごとく大乱闘の殴り合いをかまし合っている。何をそんなに熱くなっているのかとよくよく耳を傾ければ何のことはない。『バニーガールは赤と黒と白どれが最強か』等という、端から見れば至極どうでもいい論争をヒートアップさせた結果の惨状のようだ。他のクラスメイトからしてみれば、「なんだ。いつも通りの
「ねぇねぇ。聖歌は今回誰に賭ける? 土御門? 上条?」
中央二列目の席に座る女子の一人、カチューシャをつけたボブカットの女子生徒が、前の席に座って乱闘を眺めている上条当麻のようなツンツン頭をした眼鏡の女子生徒、
「えーっと、じゃあ、青髪ピアスくんかな」
「えー。青ピ? 大穴狙いすぎじゃない? 聖歌ったら勝つ気無いの? てっきり聖歌は上条推しだと思ってたのに」
「上条くんはいざってときはとっても頼りになるけど、こういう乱痴気騒ぎだと勝率は青髪ピアスくんとどっこいくらいだもん。土御門くんも確かに色々凄いけど、正直あの三人の喧嘩に優劣みたいなものはそんなに無いと思う。2対1の状況と上条くんの不幸属性を加味すれば、青髪ピアスくんも十分勝ちを狙えると思うな」
「うわ。意外と考えてた。まったくもー抜け目無いですなー聖歌は。まーでもそれなら賭けは私の勝ちだ」
「え? どうして?」
首を傾げる西条に、カチューシャボブの女子生徒はキランと目を輝かせる。
「私が勝利に賭けている、勝率百パーセントの女帝様が動き出したからね」
「あ」
思わず声を上げてしまった西条の眼前では、クラスで唯一、三バカを一瞬で制圧できる最終防衛殲滅兵器こと吹寄整理が乱闘に介入。一瞬の内に土御門にヘッドロックをかけ、青髪ピアスを蹴り倒し、上条当麻に硬いおでこを叩きつけて昏倒させていた。カチューシャボブの女子生徒はその光景を見ながらガッツポーズを取るが、しかし事態はそれだけでは終わらない。偶然その時教室の外を通り掛かった数学女教師、親船素甘がまさにその現場を見咎めるや、ほのぼのクラスを部分的に世紀末へと変貌させている四人を拘束。見る見る内に四人は職員室へと連行されてしまったのだった。
「あーあー」
「えっと、これは、つまり……」
「全滅……かな」
職員室のお世話になることとなった四人の後ろ姿を哀れみの視線で見守りつつ、クラスメイト達は落胆に肩を落とす。教師介入による全滅。完全なるドローゲームを前に、賭けに勝利した生徒は誰一人としておらず、『バニーガール最強決定戦トトカルチョ』は、本当に勝者のいない戦争として幕を下ろしてしまったのだった。
残念な雰囲気を纏わせつつも、その雰囲気を特に引きずることもなく、クラスメイト達は普段の日常へと戻っていく。西条とカチューシャボブの女子二人にしてもそれは同じで、二人ともすぐに各々の活動へと行動を移していった。
西条は、最後にポツリと呟く。
「青髪ピアスくん、約束の時間に来れると良いんだけど……」
2
放課後。登下校路の途中にある小さな公園のベンチに、二人の男女が座っていた。
ツンツン頭の女子高生、西条聖歌と、青髪ピアスの二人だった。
「それで? 西条ちゃんは、このボクに親船センセイから押し付けられた体育館裏の草むしりをサボらせてまでして、一体どんなご用がお有りなん?」
「いや、別に罰当番があるなら私的にはそっちを優先してくれて全然良かったんだけど」
「あはっはー! 冗談やって! それっぽいこと言ってみたかっただけや。堪忍してくださいなー。土御門の奴もさっさと消え失せとったし、あーゆー面倒なだけでなんの見返りもない仕事はカミやんにでも押し付けとくんがちょうどええねん。どうせカミやんは今ごろ吹寄ちゃんと仲良くいちゃこら草むしりしとるやろ。ボカァそれを邪魔したくなかったんや」
胡散臭いエセ関西弁でそれっぽいことを捲し立てる青髪ピアスに若干辟易しながらも、自分が青髪ピアスに用事があって放課後呼びつけたのは事実なので、西条はため息一つとともに首肯し、内心で取り残された上条と吹寄に謝りながら話を切り出す。
「青髪ピアスくんは、私の持つ『
「ん? ああ。確か部分的な『
『
「まぁ、それこそ人の声真似をするくらいにしか使えない一発芸みたいな能力なんだけどね。いろんな声を出す練習はしてるけど、どう伸ばせば良いのかすらよくわからないし」
西条は自虐風にまとめて肩をすくめる。
「いやいや。ボクは十分すごい能力やと思うでそれ。正直西条ちゃん十八番の『偶然街で見かけた学園都市第一位の物真似』は眉唾やったけど、クラスメイトの声真似は全部本当にそっくりそのままやったし、小萌センセーの声で罵って貰ったんはボクの一生もんの思い出やもん」
「うん。そんなこと言われてもそれは二度としないよ?」
慰めつつもさりげなく(?)自身の欲望を吐露しやがる青髪ピアスを軽くあしらい、「そんな殺生な!?」と、大袈裟に戯ける青髪ピアスに苦笑いを返しながら、西条は話を進める。
「とにかく、私の能力なんだけどさ。なんか、おかしなことが起きたんだよね」
「うん? おかしなこと?」
「そ。おかしなこと」
首を傾げる青髪ピアスの言葉をオウムのごとくそのまま返した西条は、そのまま口を開いて、言葉を発する。
否。
それは言葉ではなく、音と表現すべきものだった。何故なら彼女の口から発せられたその言葉は──
「──―br変plw?」
──言葉としての体を成していなかったからだ。
「え? なんて?」
謎の音を聞かされた青髪ピアスが聞き返すと、西条はすぐに声を元に戻して
「ほら変でしょ? って、言ったつもりだったの」
と答えた。
「だけど、この声で発音するとうまく声が言葉にならないの。発音ができてないとは思えないのに、何故か意味不明な音声になってしまう。しかも──」
つ……。と、西条の鼻から、赤い液体が零れ落ちる。
「さ……西条ちゃん。鼻血出とるで」
「うん。この声出すと、なんか鼻血が出るんだよね」
ケロリした表情でそんなことを言いながら、西条は手の甲で鼻血を拭う。
「いや、出るんだよねやなくて、それ、なんか危ないんとちゃうん? 能力の過剰行使とかしてへん?」
「どうなんだろうね? でも、鼻血は能力を酷使したときに希に見られる現象だって、小萌先生も能力開発の授業で言ってたっけ」
「言ってた。ちゅうか、相談事って、それについてなん?」
「うん。これについて。青髪ピアスくんなら、なんかいい解決法というか、この現象に対する知識というか、そんな感じの都合のいいものを知ってないかなーって思って」
西条が適当な感じで述べるのを聞いて、青髪ピアスは呆れたように肩を落とす。
「いや、なんでやねん。知るわけないやないのそんなの。なんでボクがキミの能力の異常事態についての知識を持ってるなんて思ったの。普通に小萌センセに訊くか、病院行くかした方がええって。なんなら良いお医者さん紹介するで? 最近カミやんがめっちゃお世話になってるおじいちゃん先生がなんか能力関係の疾患にも詳しいらしくて──」
「ほら知ってた」
「うぇ?」
突然話を遮られ狼狽える青髪ピアスに、西条は、ぱぁっと、花咲く笑顔で両手を合わせる。
「青髪ピアスくんは意外と顔が広いし何にでもすぐ手を出すから、そういうことにも詳しいんじゃないかって思ってたんだよねー。そしたら案の定、詳しいお医者さんの情報を持ってたんだから、私の目に狂いはなかったよ! 流石クラス委員長! 頼りになるぅ!」
「そ……そうかなぁ……! はっはっは! 言われてみたらそうかもしれへんなぁ! ボク、意外と情報通なんかな!」
「そうそう! 小萌先生の授業にしたって、一番熱心に話を聞いているのは実は青髪ピアスくんだってもっぱらの噂だしね!」
「それはそうやね! ボクは大好きな小萌先生の声は一言一句聞き漏らさず息遣いまで精密に脳の奥に刻み込んどるからね!」
「いよっ! ド変態!」
「あははのはー! いやー! やっぱりボクってば結構凄いヤツなんかな!」
「そうだよ! キミは凄いヤツだよ!」
「そっかー! じゃあ、情報提供報酬と言ったらなんやけど、良いお医者さん教えるお礼にもう一度だけ小萌センセーの声でどエロい放送禁止用語をですね」
「gejv5乗ttm? k殺wqb」
「え? なんて?」
「調子乗んな殺すゾ? って、言ってみました」
「あ、はい」
煽て上げられて調子付いた青髪ピアスの要求は呆気なく砕け散る。予想外に辛辣な言葉で返されたショックで顔を青くする青髪ピアスだったが、瞬間、表情が一変する。
「さ、西条ちゃん!?」
「え? ……あ」
ブシッ! と、突然西条の腕から血が噴き出した。一瞬、二人は噴き出す血を呆然と見つめる。あまりに急な現象に二人とも反応が遅れるが、しかし刹那の先に、西条の全身に激痛が襲う。
「ひ、……ぎゃああああァあアあアアアぁあ唖アァア!!??」
絹を裂いたような甲高い悲鳴と共に、彼女のあらゆる箇所の筋肉や血管が断裂し、西条の全身から血液が溢れ出す。
何が起こっているのか、その場の誰も分からなかった。
青髪ピアスと西条聖歌の二人には、起こった現象を理解するための知識が圧倒的に足りていなかった。
身も蓋もなく結論から言えば、彼女はこの時、相談相手を間違えていたのだ。
もし彼女が悩んだ末に青髪ピアスではなく、同じクラスメイトの一人である土御門元春を頼っていたなら、こんな結末には至らなかった。
もし彼女が土御門に相談してさえいれば、彼は彼女に起きた異変の正体をその場で正確に看破することができただろう。
だけど、そうはならなかった。土御門元春のクラスメイトである西条聖歌は、クラスメイトの持つ「もう一つの顔」をまったく知らなかったから。
無知は時に、人から適切な選択の機会を奪う。
そして適切な選択の機会が奪われた西条聖歌は取り返しのつかない失敗を重ね、血の海に沈むことになる。
視界がぼやける。見える景色全てが赤に染められていく。
青髪ピアスがスマホを取り出し、119番通報を掛けて大声で何かを捲し立てている様子が辛うじて確認できるが、最早そんなことを気にしていられる余裕もない。
わたし、しんじゃうのかな。
そんな思考が脳内を支配する。
なんでこうなったんだろう。なにがいけなかったんだろう。なにがわたしをころすのだろう。
なにも、わからない。
なんだろう……。なにかきこえてくる……。
この……こえは……。
だれ?
朦朧とした感覚の中、そこまで思考して、
西条の意識は、プツリと途切れる。
救急車のサイレンが鳴り響く学園都市の一角で起こったこの騒動。それを把握している者は、現時点においてほんの一握り。
いつもならこういった事件の中心に何故か駆けつける筈のクラスのヒーローは、世界全土を巻き込む事件の渦中に追いやられ参戦不能。こんなときに本来なら頼りになった筈のクラスメイトも、その渦にヒーローを巻き込むための下拵えの真っ最中。
西条聖歌に、救いの手は伸びない。
現状をリアルタイムで把握している数少ない人物の一人である学園都市の統括理事長は、イレギュラーとしてその存在を検知したものの、死に行く彼女の映像に一瞬目を移しただけで、すぐに興味を失ってしまう。
彼女に都合良く救いの手が齎される可能性は、万に一つも有り得ない。
だからもし、この時彼女に伸ばされる手があるのだとしたら、
それはきっと、救いから最もかけ離れた代物だ。
彼女の都合になど、一切関与しない。
一方的に、向こうからの都合を押し付けられるだけの、悪魔の取引。
故に、例え彼女が一命を取り留めたとしても、それが救いだとは言い難い。何故なら西条がその手を取った瞬間、彼女の人生は大きく狂わされることになったのだから。
そして、全ての始まりはひっそりと幕を開ける。しかし、この物語の幕が開いたという事実を知る者は、彼女を含めこの学園都市には一人もいなかった。それは学園都市の王を含めてさえ、誰一人。
この物語の幕開けを知る者は、この物語の幕を上げた張本人の一人のみ。
死にかけの女子高生の声にビジネスチャンスを見出だした酔狂な
3
「……と、こんなところかしらね」
学園都市から遠く離れた異国の地、アメリカ。ニューヨークにある本屋の一階、「マクナリー・ジャクソン・ブックス・カフェ」と呼ばれる喫茶店の席に座る少女が、今時滅多に見ない骨董品のようなタイプライターを打ち込みながらポツリと呟く。
黒を基調としたミニワンピースの上にマントを羽織っているにも関わらず肩を大きく露出したその姿は、生粋のニューヨーカーからしても奇異に映るファッションだったが、しかし彼女は不思議と周囲の背景に溶け込んでいた。
「レディ。さっきからそれは何をしているのかね?」
テーブルを挟んだ向かいに座り、ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでいたスーツ姿の紳士が、少しドイツ語訛りのあるアメリカンイングリッシュで語り掛ける。
「開幕のベルを鳴らした。と言ったところかしら? まぁ、うら若き少女の命を散らせずに済んだのだから中々上々な駆け出しよね?」
対して、紫がかったストレートヘアーを右手で摘まみながら不敵な笑みを浮かべて返答した少女の言葉は、流暢なクイーンズ=イングリッシュだ。
「ベル? あぁ、その『通信機』のことか。その機械、まさか本当に機能したとは……」
何か気に食わないことでもあったのか少し複雑な表情になりながら、紳士はコツコツと指でタイプライターを叩く。『通信機』と呼ばれたこの機械、基盤がタイプライターであることは間違いなさそうだが、よく見ればあちこちにアンテナがついていたりイヤホンジャックが取り付けられていたり、およそタイプライターでは有り得ないようなおかしな改造が施されている。
「ええ。今回の『通信機』は本当に優秀なのよ? 貴方は認めたがらないかも知れないけど」
「認めない、なんてことはないですとも。使えるというならそれに越したことはない。──ただ、直流だけを利用した情報伝送というものが未だに理解できないだけでね」
「それは……仕方のないことだわ。これは科学的な交流信号を用いた通信では無いんですもの。通常と違って、
タイプライターの後ろに取り付けられた獅子の意匠を見ながら、少女の説明を聞いた紳士はいよいよ苦い顔を隠そうともしなくなった。
「あの凡骨らしい脳筋な直結だな。しかしゼウスの雷霆が必要だったのなら私でも代わりが──」
「うーん、そうね。でも、雷は直流でしょう? 交流電気はとっても素晴らしい発明だし、ゼウスに成り代わるだけの象徴性は有るかもしれないけど、概念が新しすぎて照応魔術に向かないのが唯一の難点よね。でも、気にする必要は無いのよ? 貴方の強みは、もっと別の場所にあるのだから」
「……気にしてなどいませんとも。ええ。まったく!」
言葉とは裏腹に、悔しそうに顔を反らす紳士。あらあら。と、それを見て、微笑ましく子どもを見守る母親のように笑いながら、少女は『通信機』を鞄に仕舞い、席を立つ。
「行くのかい? 日本に」
紳士の投げ掛けた問いに、少女は強気な笑みを浮かべたまま応じた。
「ええ。霊性進化論の極致。第七根源人種を目指す『人生の学校』へと変貌しつつある学園都市。アレイスター風に言えば『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』だったかしら? フフ、
彼女は興奮した様子で目的地へと足を運ぶ。自分の目指した極点に辿り着こうとする
少女の名前はエレナ。エレナ=ペトロヴナ=ブラヴァツキー。
〈神智学〉提唱者にして、世界の裏表問わず広く影響を及ぼした近代オカルティズムの母。
勢力圏を西洋諸国のみならず、アメリカや東洋諸国にまで伸ばしたその活動範囲は、人々に『世界をおおうバニヤンの木』とまで称されるほど。神智学が世界に知らしめたマハトマの思想は、かの『黄金の夜明け団』の思想にさえ大きな影響を与えたとされている。
オルコット大佐と共に神智学協会を立ち上げ、ダーウィンとほぼ同時期に進化論を提唱したアルフレッド=ウォレス、発明家のトーマス=エジソン、野球の発案者のアブナー=ダブルディー、ノーベル文学賞受賞詩人のガブリエラ=ミストラル等、錚々たる文化人達を協会員に迎え、交流電気の発明者であるニコラ=テスラや作家のアーサー=コナン=ドイル、果ては魔術師サミュエル=リデル=マグレガー=メイザースを始めとする『黄金の夜明け団』の団員とも親交が深かったオカルト界の奇才。世界を又に掛け、科学としての魔術を最初に提唱し、人の身を神に近づけることを至上の目標に掲げた『神を知る者』。
1891年5月8日に、病に倒れ死亡した筈の故人。
神智学者にして、近現代魔術界において最も多大な影響力を誇る、
彼女は学者である。神智学という科学を追求する、学問の徒。魔術はその片手間に、彼女の
だが、彼女が片手間で手に入れた小手先の技術は、近現代における凡そ全ての魔術の基盤となり、メイザースやクロウリーが作り上げた工作キットにも、全て彼女のエッセンスが封入されることになる。
例えメイザースが彼女の西洋と東洋の融和思想に反発し、魔術の洋の東西を切り分けようとも、彼の魔術体系には神智学の思想が色濃く残っている。神智学協会設立年に生を受け、その思想を受け継いだと豪語したクロウリーに至っては、最早語るまでもない。
過去を知り、現在を知り、未来を知る。
彼女はマハトマを通した数多くの神秘体験により数多の隠された知識を獲得し、多くの霊界文書を残した魔導師でもある。
エレナ=ブラヴァツキーはそういう意味では、クロウリーやメイザースを遥かに越える天才と言えるのかもしれない。彼女が神秘の探索に費やした時間を全て魔術に注ぎ込んでいたなら、間違いなく現代魔術の世界は彼女のものになっていただろう。
しかし彼女は己の知識欲の赴くまま、神秘の探求とマハトマとの接触にその生涯を費やした。彼女は学問の徒であり、魔導師でありながら、また科学者だった。
そして学問の徒は、学問の街を目指し動き出す。
学園都市に、マハトマを求めて。
はい。というわけで序章、いかがでしたでしょうか。とあるシリーズにこの人が出てこないのはまあ多分、史実のこの人が別に魔術師では無いからだと思いますけど。それでもこの人がオカルト界に残した爪痕を思うと、どう考えても出てこないのはおかしいと思ってしまいます。もし創約がアンナ=シュプレンゲルで終わらなかったら個人的に、この人がワンチャン出てくるまであります。出て(願望)。
このお話の時系列は、皆さんご存知の通り、禁書アニメの三期(があったなら)、その始まりとなるC文書事件の時系列。上条さんが不在になる頃を狙い済ましたように事件が起こりました。
どうして彼女はあんなことになってしまったのか。なぜ死んだ筈の神智学者が現代まで生きているのか。そしてなぜ彼女は学園都市に目をつけたのか。考察してみるのも面白いと思います。
実は皆さんの考察も作者の楽しみの一つなので、続きを書くかどうかは、皆さんの反応次第だったりします。ぶっちゃけ忙しいので、余程のモチベーションがないと続ける気は起きません。別の作品も書かなきゃいけないので。
というわけで、感想ご指摘考察、どしどしお寄せください。