ヒロアカ×Fate   作:トラッキング

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04 入学編

 すっと、意識が覚醒する。濃霧が晴れるように目が覚めるのは、いつもの癖……というか、訓練の賜だった。起きがけに髪をなで、寝癖を確かめるのも習慣の一つである。

 体を起こして、胸元を確かめる。シーツも一緒に。とりあえず、そこに切り裂いた跡と血だまりがない事に安堵する。どうやら昨晩は何事もなかったらしい。予定された襲撃から、突発的なサーヴァントの暴走まで含めて。

 とりあえず、彼は安堵の息を吐いた。後者はともかく、前者に気づかなかった、というのはぞっとしない。訓練の一環で行われた襲撃に気づけないのは、控えめに言っても不首尾である。久しくそんな間抜けな真似は晒していなかったのに、今更みっともない姿は見せられない。後が怖いとかではない。単純にプライドの問題だ。

 平穏は尊い。そのことを、彼はよく知っている。日常的に混沌と狂乱に巻き込まれていればなおさらだ。

 と同時に、物足りなさも感じた。何かが起きないと、どうにも落ち着かない。

 これはもう病気のようなものなのだろうな、と少年――魂魄現輪は苦笑した。どんな非日常も、繰り返せばそれは日常だ。どれほど不格好な当たり前でも、違えれば動揺もする。人間とはそういうものだ。

 ベッドから出て、現輪は一つ伸びをした。すがすがしい朝……かどうかは知らないが。窓から外を覗けば、天気は晴天ではある。

 その部屋は、八畳程度の空間だった。子供の私室としてはやや大きめだろう。物が少ないからなおさら広く感じられる。

 人一人が使うには贅沢と言っていいのだろうが、現輪にはあまりその手の感情はなかった。私生活が忙しいため、訪ねたことある友人の部屋なんて数えるほどで、比較対象が少ないというのもある。が、一番の理由は、自分の家にあった。

 彼には家族が多い。別段血がつながっているというわけではない。むしろ現在、同居している者に、血のつながりがある者は一人も居ない。大体が過去の英雄――彼らが自称する言葉を使えば、サーヴァントと呼ばれる存在だ。あるいはもっと端的に、しつこく現世にしがみついた亡霊と言ってもいい。本当に言ったら怒られるだろうが。

 とにかくそんな人間が何十人といるものだから、家は物理的に拡大し続けた。ある者は生まれ持った金回りで、ある者は天才的な頭脳で金を稼ぎ、それで土地を買収。借家は正式に魂魄家のものとなり、程なく解体され、周囲の家に相場の数倍金を払って立ち退かせ、今や屋敷と言える規模まで拡大した。当然金を出した者たちは自分好みに部屋を作り、それらは現輪の部屋の数倍もある。そもそも客間だけで三部屋あり、その調度品一つだけでも、現輪の部屋にある品全てを合わせても桁が足りない。感覚も狂おうというものだ。

 軽く体をほぐし、クローゼットの戸を開ける。

 開いてすぐ目に入ってきたものを見て、現輪はしばしきょとんとした。いつもの黒い制服がない。その代わりに、真新しい白い制服一式が目に入った。

(ああ……そういや今日から高校生か)

 ぼんやりと考える。今日まで忙しく(もしくは騒がしく)、考える間がなかった事を。

 雄英高校。それこそ日本中に響き渡る名門校だ。大学の東大に高校の英雄とまで言われる事もある(雄英の教育方針から、東大進学者はさほど多くないのだが)。

 そんなところに通うというのは、なんとなくピンとこないものがあった。それも元々希望していた特進科より大分偏差値の高いヒーロー科になど。

 自分が馬鹿だとは思っていない。人類史に燦然と輝く天才に直接教育されているのだ。が、勉学方面に冷淡である自覚もあった。自分が天才集団に混ざるというのは、なんとなく想像がつかない事であった。どこかこそばゆくもある。

 着慣れない制服に、とりあえず袖を通す。

 ネクタイを締め、軽く制服を羽織った時点で、彼は鏡の前に移動した。中学ではネクタイなどなかったため、形に少々自信がなかったが、上手く台形ができていた。まあ、付け焼き刃にしては上出来と言った所だろう。

 と、ふと現輪は、鏡で全身を確認した。

 中学校の制服は、濃紺だった。それは大抵の中学がそうだし、高校もだ。雄英の、白に近い灰色の制服はかなり珍しい。目立つためにわざわざこんな姿にしているのではないか、と勘ぐらせるような色合いだ。もっとも、言いデザイナーに作られただけあって、全体のバランスは悪くない。

 180センチ後半の長身を治めるため、スタンドミラーは不格好に傾いている。

 黒目黒髪の、ごく一般的な日本人の容姿。ただその顔立ちは、普通とは違っていた。控えめに言っても、容姿は優れている。少しばかり癖の強い容貌だが、眉目秀麗である事をあえて否定する者もいない、そんな顔だ。難点と言えば、やや目つきが鋭い所だろう。師匠曰く、それは強くなっている証らしいのだが……なぜ強さと目つきが悪いのがつながるのか、その謎は未だ持って解けていない。

 いかにも新入生然とはしていたが、着付けは悪くなかった。

 鞄を持って、ドアノブをそっと回し……そして一気に蹴り開け、同時に彼も後ろに引いた。

 しん……と当たりが静まりかえる。時折小鳥の囀る音だけが、朝の静けさを告げていた。

 現輪は腰を落として、あたりを油断なく見回す。が、いつまで経っても槍の一つも襲ってこないと知ると、あくまで油断はせずに、構えを解いた。

 それから廊下に出て、角を曲がり、などと一カ所一カ所で似たような動作を繰り返す。最終的に何事もなくリビングについて、やっと彼は気を抜いた(リビングでだけは暴れないという協定が結ばれているのだ)。

 リビングでは一人の女性が、食後のコーヒーを飲んでいた。

 現輪も容姿端麗であるが、その女性は彼を鼻で笑うレベルの美形だった。顔立ちだけではない、体のパーツ一つ一つに至るまで、まるで黄金比で正確に量ったかのような形状。指先の一つに至るまで、この上ないと思わせる完璧さだった。

 彼女は現輪が入ってくるのに気づくと、あくまで優雅にカップをソーサーに置き、唇を開いた。

「やあ、現輪くん。今日は早いねえ」

「入学初日から遅刻はできないからな。それより今日はあんた一人だけか? ダ・ヴィンチちゃん」

 問うと、彼女――ダ・ヴィンチは、肩をすくめた。

「というより、きみが今日早いだけさ。もう来たのはシロウくんだけで、他は寝てるなり朝の鍛錬なりじゃないかな」

「そっか」

 小さく答える。

 テーブルには既に、現輪の分の朝食が用意されていた。シロウが登校時間の違いを考えて、あらかじめ用意してくれていたらしい。

 料理はできたてだ。ありがたいことに、作ったのは本当につい先ほどらしい。パンにスクランブルエッグをのせてかじりついた。

「さえない表情だがどうしたんだい?」

 ダ・ヴィンチが聞いてくる。現輪は表情を曇らせながら、答えた。

「今日は夜中の暗殺も朝の奇襲もなかったんだよ」

「いいことじゃないか」

 何が悪いのか、という風に、ダ・ヴィンチ。コーヒーに角砂糖を足して、再び一口飲んでいた。

「いや、なきゃないでどうもこう……違和感というか、調子が出ないというか……」

「毒されてるねぇ」

 ダ・ヴィンチの苦笑に、まあ、頷くしかなかった。

 12年間、ずっと毒されてきたのだ。それだけの年月巡れば、もう血と変わりない。滞れば調子を崩す、という点まで含めて。

「じゃ、行ってくる」

 手早く朝食を済ませ、鞄を手に取る。時間にはまだ多少余裕があり、食後のコーヒーを楽しむくらいはできただろうが。現輪は早めに出て、通学路を確かめる事を優先した。

「私もそのうち学校に行くから、その時はよろしくね」

「そう? まあ、ほどほどに」

 現輪は少しばかり考えたが、肩をすくめて軽く答えた。彼女は(突拍子もないが)サーヴァントの中では良識がある方だ。来たところで、まあ無茶はすまい。

 もっとも、歓迎するしないにかかわらず、誰が来たところで止めようもない事ではあったが。

「ああ、現輪くん!」

 玄関に向かったところで、ふいに声を掛けられた。

 肩越しに振り向くと、ダ・ヴィンチが静かに笑いながら手を振っている。

「良き青春を!」

「……ありがとう」

 現輪も薄く笑って手を振り返すと、今度こそ登校する。

 玄関を出ると、相変わらずの、やや小洒落た町並みが映る。もうほとんど記憶にないが、10年ほど前はそうでもなかったらしい。今ではすっかりこのあたりも高級住宅街だ。

 まあ、その原因は魂魄邸にあるのだが。現輪は振り返って、自宅を見た。家は、和風なもの、洋風なもの、エスニックなもの、様々な様式を一緒くたに混ぜればこういう風になるのかと思わせる、混沌とした姿だった。無駄に装飾されている塔のようなものは、外見からは分からないが倉庫になっている。車庫も驚くべき事に、4カ所数十台を収容できるようになっている。ほぼ区画一つが家であるというのは伊達ではない。いい意味でも悪い意味でも。文化も時代も違う数十人が好き勝手に改築したら、こうなるのは仕方がないのだろうか。

 世界中の建築物が暗黒融合したらこうなるかもしれない、みたいなのが自宅というのは、いつ見ても奇妙な気分にさせられる。

 現輪は小さく息を吐いて、通学路を確かめた。

 特に高校進学や雄英に思い入れがない。だが、それでも制服姿で学校へ向かうのは、なんとなく感慨深かった。自然と歩調が早まる……

 と、そこで彼は気がついた。なんだかんだ、自分も学校が楽しみだったのだ。

 

 

 

 雄英高校の稼働は早い、と言っていいのかどうかは分からない。

 なにせ雄英高校は、日本屈指の名門校であると同時に、日本でもっともヴィランから疎まれている学校である。当たり前のように攻撃の的になるし、これまた当たり前に、それに対する防備もある。夜になったら入り込まれました、では済まない。必然的に、夜間警備員の数もかなりのものになる。

 敷地外周に至っては、むしろ夜の方が活発なのではないか。とは、識者の弁である、らしい。なんにしろ、雄英は隙のない警備を敷いているという事だ。

「でけぇ」

 呟きながら、現輪は雄英高校を見上げた。

 敷地を区切る壁も高いのだが、校舎はそれが小さく見えるくらい高い。校舎の壁面がガラス張りなのも相まって、学校というよりは、都会のデザイナーズ高層ビルといった風体だ。

 その意匠は門にも共通しており、ストレートに言って、風変わりだった。もっとも、これは俗に『雄英バリヤー』などと言われている警備機構らしいのだが。なお、正式名称はないらしい。一部からはダサいからなんとか正式名称を、と文句もあるが、今のところ改善される見込みはないとか。

 現輪は、ほんの少しだけ胸元を意識した。正確には、そこに入っている生徒手帳を。パンフレットによれば、生徒手帳に仕込まれているIDに門のセンサーが反応する。これがないと、侵入者として閉じてしまうんだとか。

 まばらに通る生徒に混ざって歩いていると、ふと気配を感じて道から逸れた。歩いて行くと、木陰に隠れるようにして、男が生徒をのぞき見していた。

 男は、長身である現輪よりも背が高いが、そういう印象を全く与えなかった。男は恐ろしいまでの痩身で、誰が見ても明らかに病的な細さだ。それこそ、異形型という個性が蔓延した世の中でなければ、見ただけで救急車を呼ばれそうなほどに。現輪も、骸骨に直接皮を張ったらこんな感じになるのか、と思ったものだ。

「八木さん」

「やあ、魂魄少年。入学おめでとう」

「ありがとうございます」

 隠れる八木に配慮し、彼も木陰に潜り込む位置取りをして、挨拶をする。

(痩せた……いや、窶れたな)

 現輪は過去を想う。

 初めて会ったときは、怪我人ではあっても、病人然としてはいなかった。まだ肉付きはよく、トゥルーフォームでも、服の下に筋肉がついているのが分かった。オールマイトの正体と言われれば、まだ納得できる程度には。今ではもう、いつ死んでもおかしくない末期患者にすら思えた。

 痛々しさから目をそらし、話を続ける。

「こんなところで何をしてるんです?」

「いやねえ。生徒の初々しい姿を少し見ようと思ってたら、なんとなく自分の入学当初を思い出してしまってね。いやあ、私も年を取ったものだと思うよ」

 ははは、と彼は恥ずかしそうに笑った。

 しばらくその場で話し込んだ。内容は他愛ないもので、内容は主にサーヴァントの近況だ。これはオールマイトを通してヒーロー公安などに情報を渡し、少しでも脅威論を収めようという目的もあった。公安に直接話しが通るサーヴァントもいるが、これはさほど信用されていない。

 数分ほど話し合い、生徒の数が少しばかり増えたところで、ふと現輪が言った。

「ところで八木さん、ここだと八木さんをどう呼べばいいんです?」

「どうって、普通にオールマイトと呼んでくれよ」

「トゥルーフォームの時にそう呼ぶ訳にはいかないでしょう。先生とか、用務員とか、そういうのです」

「ああ。表向きこの状態の私は、非ヒーローの臨時講師になってる。だから学校内で会ったら、八木先生と呼んでくれ」

「了解です、八木先生」

「さ、もう行きなさい。私も職員室に戻るから」

「ええ。また今度」

 小さく頭を下げて、八木と別れる。

 校舎の中は、異様に広かった。巨大な異形型個性持ちも受け入れるためだろう。入り組んではいないが、部屋ごとの作りが均一なせいで、返って迷いやすい。現輪も案内がなければ迷っていたかも知れない。

 A組の教室について、彼は戸を開けた。教室には半分ほどの生徒がいるようだった。その中で一人、知り合いを見つけ、そちらに向かった。

「よっ、峰田。一緒のクラスだな」

「魂魄じゃんかよー! また一緒だな!」

 いえーい、といいながら、二人で手をたたき合った。身長差約80センチで、何かとアンバランスな二人だったが、不思議に仲は良かった。

「魂魄! こっちは上鳴電気。んで上鳴、こっちが魂魄現輪。オイラと同中の友達だ!」

「魂魄現輪だ、よろしく」

「おう、俺は上鳴電気だ。知ってるぜ、世界初の共有型個性!」

 早速峰田と友達になっていた上鳴と握手する。

「しかし、このクラス有名人多いよなあ」

「そうなのか?」

 首をかしげると、上鳴はしゃあねえと呟きながら、指を指した。軽い性格という印象だが、面倒見はいいらしい。

「あっちにいるのが『ヘドロ事件』の強個性持ち。爆破で並のヒーローを寄せ付けなかった強え奴だ」

 指の先には、金髪のツンツン頭がいた。机に脚をのせて、椅子を傾けている。眼光は鋭く、目つきの悪さがさらにそれを際立たせている。ナチュラルに目が鋭い現輪と違い、わざとしかめているといった風だった。とにかく全体の雰囲気が威圧的だ。

「んであっちが、音楽界期待の新鋭、耳郎響香。セミプロのシンガーソングライターで、数多くの音楽を動画サイトに投稿して評価を得てる」

 次に指したのは、女子の一団だった。三人で(うち一人は制服が浮いているようにしか見えないが)話している。指を信じるならば、黒髪ショートで、耳からイヤホンジャックを垂らしている女子がそうなのだろう。

「おっぱいもシリも薄い。オイラは興味ねえ」

 峰田が余計なことを言うと、とんでもなく鋭い眼光で、耳郎が睨んできた。視線に貫かれるより前に、彼は現輪の背後に隠れていたが。

 逃げるくらいなら言わなきゃいいのにと思うが、これで言わなかったら峰田ではない。そう思える程度には、まあ、峰田を知っているし、仲も良かった。

 耳郎の視線が元に戻ると、峰田も背後から恐る恐る出てきた。心なしか顔色が悪い。

「で、三人目がお前だ。古今東西問わず、世界中の有名人を侍らせる共有型個性の持ち主! いいねえ、俺も一度でいいから世界最高レベルの美女に囲まれてみてえよ! 男の夢だよなあ」

「あーダメダメ。こいつにゃその手の話通じねえよ」

 上鳴が唸っている所に、水を差す峰田。彼は否定の言葉に、指をさまよわせた。

「なんだよ、女に興味ねえぜ的なあれか? そういうのよくないぜ! やっぱ男なら女にガッツカねえと」

「じゃなくて、超がつく片思い中なんだ。他の女に見向きもしねえんだよ」

 峰田はどこか納得いかなそうに、そう吐き捨てる。というか実際にケッと

 まあそれも仕方ない、と現輪は思った。彼が超のつく片思い中であるのと同様に、峰田は超がつく女好きだ。それは中学内では有名な話であり、同時に女子全員が彼に怒っていた理由でもある。僅か108センチの低身長にベビーフェイスなのだから、おとなしくしていれば相応にもてていたろうに。思うが、それができないのも、峰田実という男の特徴だった。

 そうなの? と問いたそうな上鳴に、現輪は肩をすくめた。

「まあそうだよ」

「もったいねえなあ。あれだろ、有名動画投稿者の刑部姫ちゃんとかと一つ屋根の下なんだろ。俺なら何を置いても口説くのに」

「それもどうかと思うが……まあ、片思いってそんなもんだよ。相手にまいっちまって、他の相手が目に入らない。自分でもどうしようもないんだ」

「そんなもんかぁ」

 納得したのかしないのか、呟く上鳴。

 と、

 いつの間にか、人がよってきていた。見ると、先ほど話しに上がった耳郎響香だ。なぜか目が据わっており、その視線はまっすぐ現輪を刺している。

 現輪がばっと振り向く。峰田と上鳴は、ただならぬものを感じたのか、いつの間にか距離を取っていた。

(こいつら友達と考えて本当にいいのか?)

 全くもって頼りにならない二人に、ひっそり自問する。

 僅かに迷う。なにしろ怒らせる思えもないし、そもそも初対面の相手だ。できれば、このまま収まって欲しいが。耳郎の強い怒気の気配が勝手に引く様子もなく、仕方なく現輪は、彼女へと向き直った。

「それで、おれに何か用?」

「……ああうん、ごめん。あんたに怒っても仕方ないよね。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 口調こそ問いかけていたが、その様子は、答えないことなど許さないとはっきり言っていた。

「あんたの仲間の、ええと……」

「サーヴァント?」

「そう、それ。サーヴァントの中に、桑我町を炎上させた奴いるでしょ? 肌も髪も真っ白で、黒いスーツを着て、赤いもさもさしたやつを背負ってる」

「またカルナか……」

 現輪はうんざりしてかぶりを振った。オールマイトと戦いだした時といい、そろそろ彼を良識あるサーヴァントに分類するのは辞めた方がいいかもしれない。

 少しばかり目を閉じて、意識を集中する。幸いと言っていいのか、彼は近くに居た。

 すっと目を開けて、魔術を発動する。強力な術を使うのでもなければ、詠唱するほどでもない。師からは極めても二流止まりと言われているが、これでも真面目に魔術を習っていたのだ。念話程度であれば、なんてことはない。

 ほんの少しばかり間を置いて、現輪の隣にすっと人影が現れた。彼より頭半分ほど背が低い、インドの大英雄。

「お前に用事だって」

「そうか」

 どこか冷めた現輪の言葉に、カルナは言葉少なだった。

「おれさぁー、お前のこと結構信用してたんだがなー。そうそう問題起こさないだろうってなー。それがなー、ご覧の有様だよ」

「……、すまない。本当にそう思っている」

 カルナはしゅんとして、少しだけ頭の位置が下がった。

 外側からは感情のわかりにくい男であるが、仕草はどことなく犬と似ている。慣れてしまうと、まあ、反省しているだろうという事くらいは分かった。なお、それが生かされた事は、今のところない。

 で、呼んだけど。そう言おうとしたが、現輪は思わず口を閉じた。

 目の前の耳郎は、ぎりぎりと歯ぎしりをしている。今にも噛みつきそうな形相で、カルナを思い切り睨んでいた。それこそ、先ほど現輪にしていたそれとは比較にならない。

「久しぶりだよねぇ……会いたかったわ」

 言葉と感情が、全く合っていない。いやまあ、会いたかったという言葉自体は嘘ではないのだろうが。

 あまりの様子に、現輪は一歩引いていた。

「カルナ、何やったらこうなるわけ?」

「こいつはさぁ――」

 答えたのは耳郎だった。カルナが口を開くより早く(カルナにしゃべらせないというのは極めて正しい行為ではある)口を挟んで、頬を引きつらせていた。

「昔ウチがヒーロー目指すかミュージシャン目指すか悩んでる時に、言ってくれた訳よ。今でも一言一句覚えてるわ。「英雄である事と音にて名声を得ること、双方を本気で望むとは欲深いこと甚だしい。不器用ゆえ武芸にしか走らずにいたオレには全く理解の及ばない強欲さだ。あまつさえ道に思い悩み、どちらへの道も疎かにするとは無為という言葉すら生ぬるい。二兎を追う者よ、お前はどこに行こうとしている?」って馬鹿にしてくれたっけ? ほんともう……あのときは死ぬほど悔しくて恥ずかしくて、しばらく泣いててさ、両親にもすっごい心配掛けたわ」

 一気にまくし立てた後、彼女は深く呼吸し、長く長く息を吐き出した。その嘆息からは、火でも吐き出しそうなほどの熱があった。

 キレてる――この上なく――。それは、今まで見ても居なかった周囲も感じたのだろう。教室に居たほぼ全員が、さっと距離を取った。それに失敗したのは、最初から気にしていない爆豪と、なし崩しに巻き込まれた現輪だけだ。

 カルナは言われても、涼しい顔だ――見た目だけは。頬に一筋汗を流しているのに、現輪だけが気がついた。そんなつもりではないと言いたいのだろうが、言葉にした瞬間何が飛んでくるか分からない。

 一応カルナも、現世で何年も生活し、成長はしている。空気を読める事もあるようになったのだ。ただし、大抵は手遅れになった後に。

「おかげでウチはヒーローもミュージシャンもどっちもやることに決めました。それでまあ、一応両方とも一定の成果は出たよ。ありがとう」

「皮肉だな」

「皮肉じゃない理由があるとでも思ったの? んん?」

 耳郎は下からすくい上げるようにガン垂れていた。もはや眼光はヤクザのそれだったが、指摘するほど無謀な人間はここにはいなかった。

 カルナも余計なことを言ったと気がついたのだが、後の祭りだった。まあ、これはいつものことだ。

 耳郎の視線に乗った怒りに晒されるたび、カルナの冷や汗が増える。

 しばらくそんな時間が続いたが、やがて彼女はふっと短く息を吐いた。怒らせていた肩を落とし、目を閉じて、開く。その時には、少なくとも外見上は怒りが消えていた。

「あんたの事ははっきり言ってめちゃくちゃムカつくし気に入らないけど、まあ、ありがと。本当に、ほんっとうに気に入らないけど、お礼だけは言っておく。あんたの言葉のおかげで、ウチはヒーローもロックも、どっちも極める覚悟がついた」

 言った彼女の様子は、どこか憑きものが落ちたようだった。

「でもやっぱ腹立つから一発殴らせろ」

 言うが早い、右腕を振りかぶって、カルナの顔に思い切りたたき込む。

「ッたぁ~!」

 そして、痛む右手を抱え込んだ。

 彼女は知らぬ話だが、サーヴァントという存在はただそれだけで強度が高い。生前、ただの一般人であっても、ライフルくらいではびくともしないのだ。加えてカルナは日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)という規格外の防御手段を持っている。下手に殴れば、ダメージを受けるのは攻撃した側だ。

 ひりひりと痛む手を振りながら、耳郎はきっとカルナを睨んだ。ただし、今までのような険はない。

「これで許してあげるわよ」

 カルナは殴られた顔を小さくなでると、ふっと笑みを浮かべた。

「そうか、オレは昔、一言多いのではなく一言足りないと言われた、そんな気がするが。こういう事もあるのか。なるほど……なるほど……これは、悪くない」

 彼は満足げに、満願の思いで言い、なでていた手を握った。

 ただし、それは様子を冷めた目で見ていた現輪に遮られたが。

「いやお前、思いっきり言葉がコミュニケーションツールとして成立してないんだからそこはしっかり直せよ」

「…………、善処する」

 長い沈黙の後、カルナは絞り出すように答えた。

 そして、未だ手をさすっていた耳郎に向き返る。顔を凜々しく、それこそ英雄と飛ばれるのにふさわしく直し、言った。

「お前のことはよく覚えている。図星を突かれたからとて、オレに対する怒りはもっともだ。どんな叱責でも受け取ろヅッ」

「ふンッッッ!」

 言葉は最後まで待たずして、耳郎の鋭い左アッパーで遮られた。勢いに、カルナは思わず舌を噛んだ。

 彼女は下ろした肩を再び怒らせて、ずんずんと自分の席へ戻っていった。静まりかえっていた教室は少しずつ喧噪を取り戻し、平常まで戻った。

 いつも通りに戻った空間から、カルナと現輪だけが取り残される。現輪が隣を見ると、彼は今までになくしょんぼりしていた。現輪は思わずといった調子で、へこんでいる子犬に告げる。

「一言多いんだか少ないんだか、それはおれの知った話じゃないが……言葉ってのは相手に正しく伝わるように言わなきゃ意味ないんだぞ?」

「痛感した……」

 現輪が半眼で告げると。

 カルナは(痛くもないだろうに)顎をそっとなでながら、様子に等しい語句の弱さで呟いた。

 施しの英雄カルナ。メンタルが強い中で弱い、よく分からない男だった。まあ、英雄だ何だと言ったところで、所詮は人間だと言うことなのだろう。

 担任が入ってきたのは、カルナが消えてしばらくの事だった。

 

 

 

 現輪は今、グラウンドに居た。

 雄英には無数のグラウンドがある。これはグラウンドに限った話ではなく、大抵の施設が複数あるのだが。今居るのは、後者から出てすぐの、第一グラウンドと呼ばれる場所だった。

 担任の相澤は、ホームルームをものの数分で終わらせると、ガイダンスもなしにA組生徒全員をこの場に出した。今は整列している最中である。

「諸君らにはこれから体力テストをして貰うわけだが……」

 首を捻ってどこか気怠げに告げる。生徒の質問、もとい苦情は、最初の二つ三つだけ答えると、後は無視していた。

「この個性が蔓延するご時世、文部科学省は未だに個性禁止のテストデータを記録してる。非合理的な事にな。これから行うのは、個性把握テストだ。個性を存分に使え。頭を使って個性を全力で生かせ。まずは自分の能力を知る。そこがスタートだ」

 言って、相澤は現輪に向かい、ちょいちょいと指でこっちに来るよう指示した。

 言われたとおりに近づくと、ソフトボール投げの円の中に入るよう指示される。

「魂魄、個性なしのソフトボール投げの記録は?」

「3キロです」

「……なに?」

「だから3キロ、3000メートルちょいです」

 相澤は思わず沈黙し、浮かせていた手を落とす。

 峰田が挙手をして、声を上げた。

「センセー、魂魄は全ての中学記録を大幅に更新してます。学校じゃ個性の影響って事でノーデータになってますけど」

「……そうか。まあ、いいか。魂魄、ボール投げてみろ」

 ソフトボールを投げ渡される。

 なんだかなーと思いながら、現輪は円の縁ぎりぎりに位置取り、体を思い切り沈めた。助走をつけられるほどスペースがないため、そのまま一気に跳躍。ボールを鷲掴みにすると、小指球を進行方向に揃えて、まっすぐ投げ飛ばす。

 相澤の手元のデバイスから、小さな電子音がする。それで距離を測定したのだろうが、彼はそれを見てもいなかった。

「お前、なんでそんな変な投げ方なんだ」

「ボール投げの訓練なんて受けてませんよ。俺は槍投げしかしらないし、ボールでもそっちのほうが距離でますから。そもそもただ長距離放るだけの投げ方だって知らないし」

「あー、いや、すまん。そこじゃない。なんで個性使って投げないんだ。もう一度、今度は個性使ってやれ」

「えぇー……まあ、やってはみますけど」

 再びボールを受け取ると、今度は円の脇に位置取った。

 個性である程度言うことを聞いてくれる相手は少ない。単純に、相手に意思があるからだ。逆に言えば、意思のない相手ならある程度思い通りにできる、という意味でもある。もっとも、サーヴァントの対になるマスターという存在ではないため、その制御も申し訳程度のものだが。

 頭の中で綱引きを始める。目に見えない、レイラインと呼ばれる糸を引っ張る行為。呼び出したのは、灰色の巨漢だった。

 身長にして250センチ超。異形系でもまず見ない巨漢だ。が、間近で見た者は、実際のそれより遙かに高く感じただろう。なにせ、押さえようとも抑えきれない暴力性が、周囲にまき散らされているのだから。実際、A組生徒の大半は、体を抱くなり腰が引けるなりして、その脅威を感じ怯えている。

 ヘラクレス――それがサーヴァントの、暴力装置の名前だった。

 大雑把に命令を伝える。つまり、ボールをぶん投げろ、だ。

 その結果は、まあ分かりきっていた。ヘラクレスはボールを握りつぶし、そのまま水平にぶん投げて破片を風に乗せた。ついでに円からも踏み出しており、どこをどう見てもノーデータである。

 役割を追えたヘラクレスは、今度は綱引きを拒絶することによって霊体化した。驚異がなくなったことに安堵する生徒達に、ただただ呆然としている相澤。

「とまあ、こんな感じになりましたが」

「お前……」

 いち早く立ち直った相澤が呆れながらぼやく。

「今のはバーサーカーっていうクラスだったか? もうちょっとなんとかならんのか。例えばバーサーカー以外を使うとか」

「先生は「超速集合っす。はい来たらボールなるべく遠くに投げてオナシャス。あ、投げたら帰っていいっすわ。サイナラー」とか言う奴がいたらどうします?」

 相澤と現輪は、昔に一度だけ会ったことがある。それはヒーロー公安立ち会いの下、彼の個性で現輪の個性を無力化できるかという実験だったが。その時に、クラスとサーヴァント達の人権については話したはずなのだが……どうもあまり上手く理解されなかったらしい。

 指摘され、彼は深く嘆息した。

「分かった。まあ、二投目はいらないだろう。爆豪、お前代わりに個性でやってみろ」

 爆豪はすたすたと(なぜが現輪を睨みながら)円の中に入る。そして「死ね」という絶叫を発しながら、ボールを投げた。

 記録は705メートル。客観的に見て、かなりの大記録である。のだが、彼は悔しそうにほぞを噛んだ後、再び現輪を睨みやった。今度は殺意すら感じられる眼光である。

「すげーよこれ! 個性思いっきり使えるのか! ヤベェ、マジ面白そう!」

「面白そう、か……」

 誰かが叫んだ言葉に、相澤はぽつりと呟いた。

 あ、と現輪は呟いた。過去数時間、それも事務的に顔を合わせただけだが、それでも分かる。この教師は今、不機嫌になった。

「未だに学生気分、お客様気分か。よし、なら成績最下位は除籍処分にしよう。ヒーロー科はお遊戯のためにあるんじゃない。これだけのプレッシャーがあれば、お前ら、必死にならざるを得ないだろう?」

「ちょ、ちょっとお待ちください! それはあまりにも横暴では!?」

「横暴だろうが何だろうか、俺がそうすると言ったらそうなる。いい加減自覚しろよ、ここは雄英高校ヒーロー科なんだよ」

 その男は。髪をかき上げ、凶暴に笑いながら言った。

「“Plus Ultra”さあ諸君、最初の試練だ。このなんてことない問題くらい乗り越えて見せろ。それでこそヒーローなんだよ。自覚しろ、お前達は既に進むしかないんだ」

 生徒の目が、一瞬にして変わった。A組とは仲間であり、同時にライバルなのだと強く印象づけられた。

 体力テストは、概ね問題なく進んでいった。誰もが上手い具合に個性を使い、中学時の記録を更新していく。それは現輪も同じだった。大体の種目は中学時と変わらない。個性を活かせる種目は少なかったが、生かせる科目は大幅に記録が伸びた。握力はヘラクレスが計器を握り潰したし、50メートル走と立ち幅跳びはヘラクレスに自分をぶん投げさせる事で大幅に記録更新した(なお着地は痛かった。全身に擦り傷ができた)。

 ここまでぱっとしない記録なのは、やはりこういった事に生かせない個性の持ち主達だった。こればかりは仕方ない。不平等は、世界中どこにでもある。個性把握テストがたまたまそうだったというだけだ。

 が、その中でも特に、くせっ毛の少年――たしか名前を緑谷出久と言ったか――は振るわなかった。元々フィジカル面で劣っているというのもあるだろうが、それ以上に焦りすぎている。単純作業ばかりだからまだ救われているが、それでも焦燥の差がじりじりと出てきている。

 今も、ハンドボール投の成績が振るわなかった。どうしてか知らないが、投げる腕に意識を集中しすぎて、フォームがめちゃくちゃだった。あれでは下半身の力を上手く使えない。

 そして二投目、急に指が爆発したかと思うと、ボールは700メートル超えという、クラス上位になる大記録を出していた。

 だが、現輪が注目していたのはそこではなかった。

(あれってオールマイトの個性じゃないか?)

 彼は、瞬時にそう判断した。

 オールマイトはまだそこまで知られてないと思い込んでおり、現輪もあえて指摘はしなかったが。彼の個性が『ウイルスのように他者に相続され、体内の個性因子そのものを作り替える』ものだとは、キャスターの一部が既に解析していた。

 どういった経緯で緑谷に伝わったのかは知らないが……とにかく、あれがオールマイトの個性である事は間違いない。

 と、いきなり爆豪が、怒声をあげて緑谷に突撃していた。明らかに自制心を失っており、手の中で連続して爆発を起こしている。

 まずい。現輪は瞬時に判断して、二人の間に潜り込んだ。爆豪は現輪が見えていない。いや、視界に入っていることは間違いないが、まるでいないもののように無視している。

 ならば返ってやりやすいと、現輪は踏み込んだ。そして爆豪の反応速度を超えて、右腕を一閃。拳は彼の顎をかすめて、そして彼は崩れ落ちた。

「てっ、んめぇ……!」

「さすがに個性つかってまで殴り込むのはやり過ぎでしょ」

 冷ややかに言い捨て、担任に視線を向ける。すると、彼は首に巻いている捕縛武器を投げるところだった。現輪が止めたと分かると、それを再びまき直す。

「早い対応だ。よくやった」

「放置してたら危なそうでしたから」

「クソが! 邪魔すんじゃねえ! おいデク! 無個性のはずのテメェがどういうことだ! どんな不正しやがったコラ!」

「……彼、いきり立ってますけど」

「暴れなきゃなんでもいい。ほっとけ」

 ならいいかと思い、爆豪の近くを離れた。

 その光景は他の生徒からも注目されていたが、相澤の一喝で全員体力テストに戻っていった。

 残りの種目は(爆豪の再度の暴走も含め)問題なく進んでいった。その間、現輪はなんとなく緑谷出久に注目していた。今のところ関わりのない相手だが、どうもオールマイトの個性を持っている点が気になった。

 最後の長距離走、緑谷の記録は散々なものだった。上手く走ろうとはしているのは分かるのだが。明らかに右腕を引きずっているし、走るたびに指の傷が痛むのだろう、そのたびに歩調が鈍っていた。

 全てのテストが終わり――

 最下位には案の定というか、緑谷出久の名前が載っていた。彼はそれを青ざめた、絶望の視線で呆然としている。

「ちなみに除籍はウソな」

 投射した順位表を消しながら、相澤。

「諸君らの最大値を引き出す合理的虚偽だ」

 にやりと笑いながら、彼はそう言ってのけた。あからさまな作り笑い。

 反応は様々だった。ただただ声を上げる者、怒りに絶叫する者、当然だと言う者。その中で、現輪だけは違う感想を持っていた。

(嘘つき)

 心の中でだけ、断言する。

 相澤消太という男を深く知っているわけではない。それでも、他の生徒達よりは詳しい自信があった。

 彼は合理的という言葉が口癖――というほどでもないが、多用はする。そして、無用な虚飾を嫌うたちでもあった。

 そう、無用な虚飾だ。彼は彼は合理的だと判断したから全員残したのだし、見込みなしだと判断すれば()()()()除籍にするつもりだっただろう。一切の躊躇なくだ。その除籍というのが、退学か転科かまでは計れないが。

 現輪の視線に気づいたのか、相澤と視線が交わる。すると、彼は顔色も変えず、そっと人差し指を口元にやった。

 相澤は手早く後処理を済ませると、最後に緑谷に保健室利用書を渡し、足早に去って行った。

 ぽつんと残される生徒達。しばらく唖然としていたが。

 やがてぽつぽつと、教室に戻っていく。口数は少ない。誰も彼もが、少なくない疲労を感じているようだった。それは、必ずしも肉体的なものだけではない。除籍のプレッシャーは、成績が振るわなかった者ほど大きい。

 とりあえず現輪が思ったのは、大変だという事だ。教師も、生徒も。この雄英高校でやっていくのは。

 少々の精神的な疲れを感じながら、とりあえず現輪は、生徒達の流れに身を任せることにした。

 

 

 

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