主人公side
『つーわけで、俺のレンタル彼女の件、柊にも手伝って欲しい!頼む!』
「レンタル彼女ねぇ…」
和也から最近、再び相談されている。何しろ【レンタル彼女】の【水原千鶴】という人と、ばぁちゃんの為に偽の恋人をするらしい。
「で?その水原って子は彼女を容認してくれるのか?」
『ばぁちゃんと水原のばぁちゃんが知り合いらしくてさ。毎週水曜日に一時間だけレンタル彼女として彼女になってくれるって。』
「本当かよ…木部と栗林、それに麻美ちゃんとかにはバレないようにしとけよ?多くの人にバレる程苦しくなるからな。」
『お、おう、分かった。』
ホントに分かってんのかよ……
しかし、【水原 千鶴】ねぇ……。そんな子はどんな顔してんだろうか。
「ん?この顔…それに和也のばぁちゃんの病院…まさか…な。」
本人に聞くのが早いが、はぐらかされると困るし1度会ってみるしかないな…
「さて、話を聞かせて貰うぞ?千鶴さん……いや、ちづる」
日付は変わって、火曜日の昼過ぎ。
俺は運良くレンタル出来た千鶴、もといちづるに話を聞くために待ち合わせをしていた。本人は俺がレンタルすると思っておらず、
「し、柊!どーして此処に!?てゆうか、その髪!」
と、面白い反応をしている。それもそのハズ、俺は黒髪をウィッグで金髪にしている。
「ん、これか。お前、俺だと分かったら何かと理由つけて断るだろ?その対策だ。」
俺にバレたのを察すると諦めたのか、
「はぁ……分かったわ。全て話すわ。」
「じゃあ、レンタル代の支払いも含めたいからカフェに寄るぞ。」
めちゃくちゃ注目されているし、早く店に入りたい。と考えながらちづるの手を引いて歩き出す。ちづるの奴、スカートだったしバイクで来なくて良かった…。
「ちょ、ちょっと!?」
麻美と来たカフェに来て、飲み物だけ注文する。
「ふーん。レンタル彼女で演技力を鍛える…か。まぁ、良いんじゃねぇの?」
「え?」
ちづるは驚きの表情を浮かべる。ん?なんか変な事言ったか?
「否定されるとでも思ったのか?もう大学生だし、お前が選んだバイトだろ。俺が口出しして良い問題じゃない。」
「それにお前の性格からして片手間に始めたって訳じゃなくてさ、得るものがあったから続けていったんだろ?それを幼馴染である俺の意見で曲げる必要なんかねぇよ。」
「そ、そう……だよね…」
俺の意見を聞いて安心したちづる。そんなに俺から否定されるのが心配だったのか?
「それと和也から聞いたけどよ。お前のばぁちゃんと和也のばぁちゃんの為に和也の彼女やろうとしてんだろ?偉いじゃねーか」
そう言ってちづるの頭を撫でる。コイツは頼られる事はあっても自分から頼る事をしない。だから幼馴染の俺がその分甘やかさないといけないな。
「や、やめてよ……恥ずかしい…」
「子供の時から強気なお前も遂に羞恥心ってのを覚えたか……俺は幼馴染として嬉しいよ…」
「からかわないで!もう…………ともかく、私はおばぁちゃんに内緒でレンタル彼女をしてるの。だから、おばぁちゃんには内緒にしといて。」
まぁ、伝える理由は無いし。
「ああ、了解した。で、何時まで和也の彼女になってるんだ?」
「直ぐに別れるわよ。アイツとは客との関係だし。」
「そうか…。じゃ、これがレンタル料金な。」
と言って諭吉を3枚ちづるに渡す。それを渡されたちづるは、
「ちょっと、多過ぎるわよ!」
「良いんだよ、取っておけば。もし少しでも申し訳なく思うんなら、今からのデートで満足させてくれよ、【水原千鶴】さん?」
そう言って突き返されたお金をそのまま返す。すると、ずっと渋っていたちづるだったが、やがて諦めたのか
「はぁ、分かったわよ。それなら今日は人生で1番良い日にしてあげるわ。黒木柊くん?」
と言って、子供の時と同じような笑顔で笑った。
………………もう既に1番良い日だよ。まったく。
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一ノ瀬ちづるside
私は先日受けた【KURO】さんのレンタル彼女をするために、駅近くの時計台に待ち合わせをしている。
服はジーンズに白いシャツ、黒のカーディガンと至って普通な格好。でも金髪らしいから、直ぐに見つかる見つかるんじゃないかしら。どんな人なんだろう…
そう思いつつ、5分前に約束の時計台に着く。すると、時計台付近の女性達が騒いでいる。耳を澄ますと、
『ねぇ、あの金髪の男の人カッコよくない?』
『ホントだ!着てる服は目立たないけど、着る人がイケメンだと何でも様になるのね…』
金髪。目立ちにくい格好。その言葉を聞いてその人を見てみると…
メールで届いた服装と同じだし、こっちを見て手を振ってる。無表情で。
無表情という点から私は幼馴染の顔を思い浮かべながら金髪の男の人に近づいていく。近づくにつれてその無表情な顔に見覚えがある事に気づく。
「し、柊!どーして此処に!?てゆうか、その髪!」
思わず私は大きな声で叫んでしまった。金髪にしてたの!?
「ん、これか。お前、俺だと分かったら何かと理由つけて断るだろ?その対策だ。」
と言ってウィッグを外す。それ、わざわざ買ったのかしら…
にしても…バレちゃったのか…なるようになるのかな…
「はぁ……分かったわ。全て話すわ。」
と私が言うと、注目されているのに気づいたのか、
「じゃあ、レンタル代の支払いも含めたいからカフェに寄るぞ。」
と、言いながら私の手を取って歩き出した柊。…って!?
「ちょ、ちょっと!?」
柊と手を繋ぐなんて……て、てか見ない内に結構身体が逞しく…って何ジロジロ見てんのよ私!?
私が平静を保つのに必死になっているのを、柊は気づいてるのかしら…
「ふーん。レンタル彼女で演技力を鍛える…か。まぁ、良いんじゃねぇの?」
「え?」
私は驚いた。てっきり、辞めた方がいいと言うだろうと思っていたのに。
「否定されるとでも思ったのか?もう大学生だし、お前の選んだバイトだろ。俺が口出しする問題じゃない。」
「それにお前の性格からして片手間に始めたって訳じゃなくてさ、得るものがあったから続けていったんだろ?それを幼馴染である俺の意見で曲げる必要なんかねぇよ。」
無表情に見えて少し心配している顔で言われても説得力ないよ…
でも、柊に言われると凄く安心する。
「それと和也から聞いたけどよ。お前のばぁちゃんと和也のばぁちゃんの為に和也の彼女やろうとしてんだろ?偉いじゃねーか」
「や、やめてよ……恥ずかしい…」
柊は何時も私が何か小さな事でも達成すると頭を撫でてくれる。今はもう大学生だし、人の目もあるし…うぅ。
「子供の時から強気なお前も遂に羞恥心ってのを覚えたか……俺は幼馴染として嬉しいよ…」
そう言って見え見えの嘘泣きを無表情でする柊。めちゃくちゃからかわれてる…
「からかわないで!もう…………ともかく、私はおばぁちゃんに内緒でレンタル彼女をしてるの。だから、おばぁちゃんには内緒にしといて。」
「ああ、了解した。で、何時まで和也の彼女になってるんだ?」
無表情から、若干の迷いが見えた。何を迷ってるんだろう…
でも、アイツは…
「直ぐに別れるわよ。アイツとは客との関係だし。」
「そうか…。じゃ、これがレンタル料金な。」
私の言葉に何か思ったのか分からない表情をすると、3万円を渡してくる…って!?2倍近くの料金じゃない!
「ちょっと、多過ぎるわよ!」
「良いんだよ、取っておけば。少しでも申し訳なく思うんなら、今からのデートで満足させてくれよ、【水原千鶴】さん?」
柊は突き返されたお金をそのまま返しながら言う。こうなると、てこでも動かないのよね……
「はぁ、分かったわよ。それなら今日は人生で1番良い日にしてあげるわ。黒木柊くん?」
その言葉を聞いて柊が無表情から少し笑った。久々に見るその笑顔は、とてもカッコよくて。
………………しばらく、この顔の熱は収まらないだろう。
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