異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird
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第14話

 お姫様抱っこ。

 古今東西、思春期には男女共に憧れる言葉だろう。ご多分に漏れず僕も憧れた……可愛い彼女をお姫様抱っこしてベッドに運ぶ事を。
 だが別の意味で自分がお姫様抱っこをされる事になるとは、屈辱だ!

「すみません、もう少しで洞窟まで運べます。ベッドが有りますから、地面に横になるよりは良いですから……」

 心配そうに僕を気遣う真摯な瞳。だが僕が疲労困憊なのは、問答無用で彼女に精気を吸われたからなんだが……

「お気遣いなく……慣れてますから……」

 華奢なラミアさんの腕に抱かれ、下半身の蛇な部分を器用にくねらせて僕は運ばれている。
 そう、彼女にお姫様抱っこをされた状態で!

 しかも軽々とだ。

 未だ名前も聞いてないのに、精気を吸われてダウン。
 謝罪した彼女を許して彼女の住まいの洞窟のベッドまで運ばれている途中だ。
 本来なら弱っていた彼女を僕が運ぶ予定だったのに、何処で何を間違えたのかな?

「すみません、揺れませんか?恥ずかしいですが、もっと抱き付いても平気ですよ」

「誤解を招く表現は止めて下さい。抱き付くどころか、僕は腕に力が入らずに垂れ下がってますから……」

 実際に両腕には力が入らず、だらんと下に垂らしている状態だ。

「あらあら、でしたら……これでどうでしょう?」

 お姫様抱っこから抱かれてる左手を持ち上げられると、お互いの顔が近くなって彼女の金色の瞳と薄く紫色に輝く髪の毛が鼻の近くに……

「ブクシュ!」

 髪の毛が鼻を擽りクシャミが出てしまった。多分だが涎は飛んでないから大丈夫?

「風邪でしょうか?早くベッドに寝かせて暖めなくては……」

「ちょ、ちょっと貴女!お兄ちゃんにナニをしているのよ?」

 声のする方に目線だけ向ければ、アリスが浮かんでいる。勿論、私起こってます的に両手を腰に当てている。
 擬音は「ぷんぷん」が似合うだろう可愛い怒り方だ。やはりアリスは可愛い、僕の自慢の彼女だ!

「アリス、大丈夫だ。ラミアさんにヒールを掛けすぎたら疲れただけだよ。少し洞窟で休ませて貰えば平気だから」

「私の名前はデルフィナですわ。ラミアは種族名です。デルフィナと呼んで下さい」

 デルフィナさんか……

「私はアリス!種族名はレイスよ。お兄ちゃんは私のモノだから返して欲しいの」

 ふよふよ浮いていたアリスが、デルフィナさんの正面に移動した。
 何故だか背中に黒い炎が見えるんだけど……擬音は多分「ゴゴゴゴゴ……」かな?

「駄目よ、私は未だお礼をしていないもの。
盗賊から助けて貰った事と、素晴らしい精気を吸わせてくれた事に。だから私の家で休んで貰います」

 吸わせた違う、吸われたんです!そこを都合の良い風に捏造しないで下さい。心の中で突っ込みを入れたが、声には出してない。

「精気を吸ったの?アレはアリスだけのご馳走なんだよ!泥棒蛇め、お兄ちゃんを今すぐ降ろして」

 一触即発な状態だが、指一本動かせないのでもどかしい。
 目と口しか動かせないんだけど、この状況を何とかしないと美女と美幼女が大岡裁きになりそうだ。
 内心は嬉しい、以前の生活では考えられない事だが部分的に不幸なのはリアルラックが低いからか?

「アリス、デルフィナさん。
争いは止めて下さい。今は体力を回復したいので休ませて……
アリス、僕は大丈夫だから盗賊連中の装備をひっぺがして死体は燃やそう。
死肉を喰いにモンスターが集まるのは避けたい。デルフィナさんも良かったらアリスを手伝って下さい」

 長い台詞を言い切ったら体力も切れた……みたい……だ……

 目の前が真っ暗になり、僕は意識を手放した。



◇◇◇◇◇◇



 なにやら話し声が聞こえる……

 どうやら洞窟の中のベッドに寝かされているみたいだ。頬に触れる空気はヒンヤリして心地よい。
 体には毛布か何かが掛かっているのか暖かい。それに真っ裸ではなく、ちゃんと服も着ている感じもする。

 薄目を開けて見れば、周りは薄暗く揺らめく灯りが……焚き火か篝火だろうか?

 目を凝らして見れば、体には何かの動物の毛皮みたいな物が掛けられている。
 鞣(なめ)してあるみたいだが、ゴワゴワしている。
 下に敷いてある物もチクチクしていて、触り心地は剥製の猪みたいだ。
 お腹は空いてないから、そんなに時間は経ってないと思う。

 しかしアリス達の会話は物騒な内容だなぁ……

「結構持ってましたね。これなら街で色々と揃える事が出来ます」

「でも失敗したね。
一人生かしておけば、溜め込んだお宝も貰えたのに。絶対に奪った物を溜め込んだアジトか拠点が有ると思う」

「留守番位は残していると思います。討伐隊が戻らなければ様子を見に来るわ。そこを捕まえて吐かせましょう。
私達を襲ったのですから、相応の報いを与えなければなりません。勿論誰一人生かしてはおきませんが……」

「そうだね、私達とお兄ちゃんの安全の為にも根絶やしにしておかないと駄目だよ。
アイツ等の仲間がホモ野郎で、お兄ちゃんを襲った事も有ったんだよ。勿論、お兄ちゃんの貞操は無事だしホモ野郎は燃やしたけどね」

「そんな事が……
ならば遠慮は入りませんね、搾り取れるだけ絞りましょう。
ですが討伐隊として移動する連中がコレだけ持ってるなら、期待出来るわ。これ位の装備なら徒歩で三日位でしょう。
仮に私を倒して真っ直ぐ帰って三日後、二日は待つとして五日後に様子を見る連中が旅立つとすると……
一週間以降は注意しないと駄目かしら?捕まえて情報を吐かせなきゃ駄目ね」

「お宝は山分けよ!勿論、お兄ちゃんを含めて三等分だからね」

「わっ私の取り分は少なくとも構いません。
ですから、彼の精気を少しで構わないので下さい。あの味を知ってしまったら、他の男などカスです塵芥(ちりあくた)です」

「ダメ!お兄ちゃんの精気はアリスのなの!
アリスだって自制心を鍛える迄はマジチュー我慢してるの!お兄ちゃんだって、次のステップに進むのを我慢してるんだよ」

「あらあら、お二人共に奥手で慎重なのね。
彼は盛るしか能の無い他の雄とは違うのかしら?確かに種族を越えた愛みたいな事を言ってましたし……」

「うん!ちゃんと我慢してくれるんだよ。
普通なら発情したら我慢できずに後先構わず押し倒してくるよね。でもお兄ちゃんは違うよ」

「私の親から押し付けられた番(つがい)の方々も無理矢理迫って来たので、全員精気を吸い尽くしてあげましたわ。
流石に族長も三人目を吸い尽くしてからは番を押し付けられる事はなくなりましたが……村には居辛くなり、此処で一人で暮らしてました」

 なにやらデルフィナさんの辛い過去話を聞いてしまったな。

 彼女、若く見えても×三なのか?

 旦那の精気を吸い尽くして殺した様に聞こえたけど、聞き間違いだよね?しかし、この世界の男って本能全開の猿なのかな?
 盛るしか能の無いって種馬と同じじゃないか……物騒な会話は聞こえなかった事にしよう。

 僕の可愛いアリスは、あんなに黒くない。

 清楚系美女なデルフィナさんも、あんなに黒くない。

 僕の聞き間違いだから、もう少し寝よう。きっと目が覚めれば、夢だったと思える筈だ。
 女性陣の本音トークに心が悲鳴をあげそうなので、眠る事で精神の安定化を計る事にする。



◇◇◇◇◇◇



「むぅ、お腹が空いた……」

 空腹と喉の渇きに耐えかねて目覚めた。

「お早う御座います」

「おはよう、お兄ちゃん」

 直ぐに彼女達から声を掛けられたが、ずっと様子を伺ってたのかな?

「おはよう、二人共。もしかして僕は丸一日寝ちゃってたのかな?」

 途中で意識が戻った時は揺らめく灯りしか見えなかったが、今は自然光が洞窟内に入り込んでいる。

「そうですわ」

「そうだよ、お兄ちゃん」

 二人共に輝くばかりの笑顔で答えてくれた。やはりアレは夢の中の出来事だったんだな。
 ベッドから起き上がり、彼女達が座っているテーブルへと移動する。
 立ち上がっても大丈夫だから、気力体力共に回復したみたいだ。
 自然石のテーブルに簡素な木製の椅子。座ると素焼きの器に白湯を入れて出してくれた。

 一口含むと程よい温度に冷めていたので一気に飲んだ。

「お代わり下さい」

「はい、さっきよりも少し熱いですよ」

 石田光成の三茶みたいな展開だが、確かに少し熱めの為にゆっくりと啜る。

「お兄ちゃん、朝ご飯にしようよ。食べながら今後について話し合わないと」

「そうですわ。これからは私も行動を共にさせて頂きます」

 デルフィナさんの言葉に特に反応しないアリス。僕が寝てる間に何か話し合ったのかな?
 昨夜の感じだと余り仲は良くなさそうだったけど……
 ただ頷くだけの僕とキビキビと食事の準備を始めるアリスとデルフィナさん。
 だがテーブルに並べられる料理を見て、空腹が我慢出来なくなる。
 何故なら何時もの素材の味を楽しむワイルドなご飯でなく、ちゃんと調理された料理が出て来たからだ!

「野菜のスープにナンみたいなパン。それに何かのステーキ……凄く旨そうだ!」

 尾頭付きの川魚の丸焼きでもモンスターの骨付き肉でもない、野趣溢れた手料理だ。

「遠慮しないで食べて下さい。お代わりは沢山有りますから、大丈夫ですよ」

 この世界に飛ばされてから初めてのスープに、恐る恐るスプーンで掻き混ぜて一口。

「うん、美味い!」

 野菜の旨味が引き出されており、味付けは薄い塩味のみだが十分に美味しいスープだ。
 ナンっぽい何かはやはりパンみたいだが、酵母菌が無い為か柔らかさが足りない。
 少しちぎってスープに浸して食べる。これも美味しい。残りのステーキも一口食べるが、どれも最高に旨く感じる。
 気が付けば殆どの料理を平らげてしまい、素焼きの器をデルフィナさんに差し出していた。

「お代わり下さい!」

「はい、沢山食べて精力を付けて下さいね」

 具沢山山盛りスープの入った素焼きの器を受け取りながら、何か不自然な事に気が付く。
 沢山用意された料理だが、テーブルの上には僕の前にしか並べられてない。彼女達の前には白湯を入れた素焼きの器しかない。

「アリス達は食事したの?」

 頬杖をして此方を楽しそうに見るアリス。テーブルの上に両手を乗せて微笑むデルフィナさん。

「ううん、未だだよ」

「私も未だです」

「…………良かったら食べます?」

 手渡された素焼きの器を差し出してみる。黙って笑顔で首を横に振る二人……

「ははは、お腹一杯ですか?」

 結果は分かり切っているのだが、足掻いてみた。

「「お腹は空いてます」」

 回復した気力体力を更に回復させる為に、温かいスープを啜り具材を頬張った。
 野菜の優しい旨味が体に染み渡る。だが未だ足りない、これからの事を考えると。
 結局スープ二杯、ナン三枚にステーキを完食した。この世界に来て初めて、お腹がパンパンに膨れた。

「ご馳走様でした」

「「お粗末様でした」」

 食事に対する感謝の言葉を交わしたが、彼女達の期待に満ちた目が痛いです。

「アリスからおいで……」

「うん、お兄ちゃん!優しくしてね」

 優しくして欲しいのは僕の方なんだけど……両手を広げると、文字通りアリスが飛び込んで来たので抱き締める。
 子供特有の体温の高さが心地よい。

「お兄ちゃん、頂きます!」

 軽く触れるだけのキスだが、何度もすれば疲労感を覚える。

「はい、おしまい。これ以上はヤバそうだから……」

 アリスの嬉しそうな顔を見れば精気の少し位なら何でもない。問題は頬を赤く染めてモジモジしているデルフィナさんだろう。

「あっ、あの……その……私も……お願いします」

 アリスを見ても不貞腐れてはいるが、反対しないのは彼女にも吸わせても良いって事なのかな?

 でも僕が四人目にならない様に注意しなければ駄目じゃん!