異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第17話

 人を殺した、二人目だ。

 

 生きるため、自分のため、愛する人のため。理由はあれども現代人の感覚では最大級の禁忌を犯した。

 頭では割り切れていたつもりだが、体は違ったみたいだ。

 

 僕は二人目を殺して……その場で吐いた。

 

「グッ、ゲハッ……ハァハァ……オェ……」

 

 跪いて吐く、吐く物が無くなれば胃液を吐く。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「主様、これで口を濯いでください」

 

 気が付けば、アリスとデルフィナさんが背中を擦ってくれていた。

 

「大丈夫、もう大丈夫だ……」

 

 デルフィナさんの差し出す皮袋の水筒から温い水を含み口を濯ぐ。

 仄かに皮の味がする不味く温い水だが、今は美味しく感じるから不思議だ。

 倒した盗賊の体を漁り使えそうな物を探す。片刃のショートソードが使えそうだ。

 

「洞窟の中に入るよ」

 

 奪ったショートソードを腰に差し、手には弓を持つ。作戦は奇襲。

 僕の弓とアリスの魔法で先制し、デルフィナさんを主力として突っ込む。

 

「主様、敵には魔法使いが居ます。先に倒した方が有利かと……それと、主様」

 

「なっ?デルフィナさん」

 

 デルフィナさんが僕の手を掴むと躊躇無く自分の胸へと……初めて触る彼女の胸は柔らかいのに、握ると抵抗する反発力が凄い。

 

 ゴム鞠みたいだ!

 

「手が震えてますよ。落ち着いて、大丈夫ですわ。私たちなら、あん!そこは摘んでは駄目な場所です……」

 

 調子に乗り過ぎて彼女の蕾を悪戯して、アリスに噛み付かれた。

 叫び声を上げるのを我慢するのが大変だったが、彼女の柔肌は僕を落ち着かせるには十分だった。

 

「ありがとう、それじゃ行こうか!」

 

「続きは事を片付けてから、ゆっくりしましょうね」

 

 艶っぽく微笑むデルフィナさんにクラッとくる。アリスとは寸止めだから、期待が胸の中で高まるな……

 

「ダメ!お兄ちゃんとのニャンニャンはアリスが先なの!」

 

 ごめんなさい、アリス。そうだった、僕はアリスと付き合ってたんだ。

 何となくデルフィナさんとも関係しても良いと、ハーレム主人公的な考え方に……

 

「あら?アリスは制御を学ばないと駄目でしょ?」

 

 そうなんだけど、アリスを刺激しないでください。

 いつもの上品で丁寧な物腰の彼女でなく、挑発的な態度もギャップに萌えます。

 

「デルフィナだって、お兄ちゃんに揉まれてるときに尾で岩を圧壊させたじゃん。お兄ちゃんを潰す気?」

 

 諍いの声が大きくなりそうなので止める。

 

「しっ、静かに……中の連中に気付かれるって!」

 

 そのときにデルフィナさんが尾で音も無く巻いていた岩を圧壊させていたのも確認した。

 

 彼女も寸止めだ……

 

 ニャンニャン中に抱き付かれたら、考えたくない最後を迎えられる。神様、これは罰なんですか、それとも呪いですか?

 極上の美女と美幼女に懐かれても、最後までは結ばれないのは?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 洞窟の中を窺う。

 

 音はしないが、微かに排泄臭か腐臭がする……洞窟内の不衛生さか分かるな。

 洞窟の入口付近は自然光が入り込んでいるので明るいが、10mも進むと緩やかに下り右側に曲がっている。

 警戒しながら進み、曲がり角で顔だけだして様子を窺う。

 

「ヤバいな、簡素ながら木板の壁があって扉がある。扉を開ければ音でバレるよね?」

 

 アリスがレイス化して扉まで近付いて中の様子を窺う。浮遊すれば足音はせずにレイス化すれば気配も薄まる。

 

 諜報に便利だな……

 

「お兄ちゃん、中で話し声が聞こえる。でも内容が聞き取れないから、扉から離れた所に居るよ。

隙間から覗くと中に灯りがあるのは分かったけど、扉を開けたら外の明かりが差し込むから……」

 

「ゆっくり開けても漏れた光でバレるね」

 

 暗い部屋で明かりが差し込めば、幾ら何でもバレない方がおかしい。夜を待つにしても交代要員が戻らないから疑う。

 

「ここは強行突破しかないですわ。弓と魔法で先制し、混乱に乗じて突撃しましょう」

 

「うん、突撃する前にしばらく目を閉じて。明暗の差がある場所に入るから暗闇に目を慣らそう。

相手からは僕らはシルエットしか見えない。僕らは薄暗い中で奴等を見付けないと駄目だ。

アリス、ファイアの魔法で攻撃。とにかく、中での灯りを確保しよう。

デルフィナさん、ブレスの準備を。

アリスがファイアの魔法で灯りを確保し、おおよその位置が分かればブレス攻撃。

僕は発見次第に弓で攻撃するけど、ブレス後にデルフィナさんが突撃したら補助に回る。

ブレス攻撃で一人も倒せなかったら一旦引こう。目を閉じて………………いくよ!」

 

 普通に扉を開けて中に入る。やはり建付けが悪く軋み音が出てしまった。

 素早く扉を開けたときに差し込んだ光で中を確認、奥のテーブルに座りカードゲームをしている盗賊たちを見付けた。

 

 一人は背中を向けて二人は横向きだ。

 

 素早く右側に避けてデルフィナさんのブレスの動線を確保、引き絞った弓を射つ!

 

「ファイアー!」

 

 僕の弓は外れ、アリスの魔法は背中を向けていた盗賊に当たった。

 

「畜生、敵襲か?」

 

 立ち上がった右側の男に弓を射かける。今度は腹に当たった。

 

「デルフィナさん!」

 

「逝きますわ!」

 

 口元に手を添えて青白いブレスを吐き出す。舌の上に青白い球体が浮かび、其処から殺虫剤を噴き出したように魔力の籠もった熱線が放射される。

 

 最強種族、ドラゴンの固有能力は盗賊三人を炭化させるのにさほどの時間も掛からなかった……念のために引き絞っていた弓を下げる。

 

 ブレスを吐き終わり確認のためにロングソードで突いてみるが、既にこと切れていた。

 

「終わった……呆気ない気もするけど、奇襲でラミアとレイスが居れば当たり前なのかな?」

 

 案ずるより産むが何とかか……惚けているとデルフィナさんが、後ろから抱き締めてくれる。

 

「そんなことはありませんわ。主様の作戦が的確だったのです。さぁ、お楽しみの宝探しの時間ですわ!」

 

「そうだよ、お兄ちゃん!何が出るかワクワクしちゃうよね」

 

 女性陣が宝探しに興じる間、僕は洞窟の入口で見張りをすることにする。

 奴らの仲間や敵対勢力が居ないとも限らないから……逞しい女性陣に押され気味だが、油断は禁物だからね。

 

「これで盗賊の脅威は無くなった。しばらくはアリスが解放された事もバレないだろう。次は街に行ってみたいな……」

 

 洞窟内から漏れ聞こえる楽し気な声を聞きながら、次の行動を考えたた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「お兄ちゃん、家捜し終わったよ。見て、盗賊たちは結構溜め込んでたよ」

 

「この規模の盗賊としては、まぁまぁですわ」

 

 テーブルに乗せられた戦利品を嬉しそうに披露してくれる女性陣。皮の袋にパンパンの貨幣、質の良さそうな武器や防具。

 幾つかの宝石に、魔法が掛けられた品々。それと多分だが革表紙の巻物。三人で何とか運べるかなって量だ。

 

 残念ながら食料品は保存状態が良くなかった。

 

 盗賊たちはカビていようが、腐り掛けでも構わず食べていたのだろう。

 アリスやデルフィナさんが腹下しとかは嫌なので、そのまま一ヶ所に山にしただけだ。干し肉や瓶詰めの酒は持ち出すことにする。

 

「これは?」

 

 削りだした石とか束ねた羽根とか民芸品のお土産みたいな物を指差す。

 

「護符ですわ。

この石を削りだした物は防御力を羽根を束ねた物は敏捷性を高める力を宿しています。効果は微量ですが、無いよりはマシですわ」

 

 能力値UP効果の有る装備品か……初めて見たな、造りはお土産屋レベルなのに不思議だな。

 

「アレ、コレって?」

 

 中世の武具・装備品の中で異彩を放つ黒い鞘に収まった短剣。どう見ても日本刀の脇差だ。

 鞘から抜いて刃を見ても、反りのある片刃は日本刀なんだけど……

 

「珍しい短剣ですわ。主様が装備なさってはどうですか?」

 

「お兄ちゃん、使いなよ」

 

 日本刀……か。男なら一度は憧れるモノだけど、この世界で実戦で使うには無理じゃないかな?基本的に西洋の剣は肉厚で重い。

 この世界は盾や鎧も金属が多用されるから、余程の技量が無いと防御力の弱い継ぎ目とかを狙えない。

 まともに金属部分を切ったり、剣と刀で切り結べば直ぐに刃零れをおこすだろう。

 

「切り裂くに特化した剣みたいだし、僕の技量じゃ直ぐに刃を潰して終わりだよ。

手入れだって方法が分からないし……珍しいなら高く売れるかな?」

 

 何故、脇差がこの世界にあるのかを調べれば元の世界へ帰る方法が分かるかもしれない。

 もしかしたら他に同じ境遇の人と出会えるかもしれない。本来なら手放さないで、使わずとも保管しておけば良い。

 

 多分だが、僕が脇差を売りたいのは元の世界に帰りたくないから……アリスやデルフィナさんと別れたくない気持ちが大きいからだ。

 

 残りの僅かな気持ちは……人を二人も殺しておいて、元の世界で普通に暮らせる自信がないんだ。

 

 よく小説やマンガで、どんなことをしても元の世界に帰りたいって人たちも居るけど……余程大切なことや人が居ないと無理じゃないかな?

 薄情と取るか適応と取るかは、本人にしか分からないだろうけどね。

 今の僕にとっては、元の世界に帰るよりは彼女達と一緒に居たいんだ。

 

「やっぱり売ろうよ。宝の持ち腐れは勿体無いよね。デルフィナさんは力があるから、切り裂き系の武器は使い辛いでしょ?

アリスはレイス化するから武具の必要性は低い。僕は未熟だし、技量が必要な高価な剣より丈夫な方が使いやすいよ」

 

 それに持ち歩いていると、いつか元の世界に関係することに巻き込まれる感じがする……

 

「そうですか?主様が良いのなら構いませんが……」

 

「でも珍しい短剣だから、盗まれた持ち主が分かるかも。盗賊から奪った品だって言わないと疑われるかもね」

 

 ああ、元の世界でも盗品を売り捌くのが一番大変だって言ってたな。

 確かに珍しい短剣なら、誰が持っていていつ盗まれたとか噂になってるかも。

 

「デルフィナさん、盗賊から奪った品だけど元は盗品じゃないですか。売り捌くのには問題がありますかね?」

 

 そう言うと僕の手から脇差を受け取り調べ始めた……

 

「うーん……

銘も家紋も刻まれてないですし、特に売るときに身元の確認もされませんから平気だと思いますわ。

盗賊は討伐した者がお宝を所有できるのが、暗黙の了解です。家宝とか特別な品で領主様から依頼がなければ平気ですわね」

 

 右人差し指を頬に当てて考え込む仕草が好きです。

 デルフィナさんって品が良いんだけど、ラミア族の中でも良家の娘さんなんろうか?

 

「前に討伐依頼を領主様が出すって言ったよね。街に入ったら最初に確認して、この短剣を探してなければ売ろう」

 

 これで元の世界と僕を結ぶかもしれない脇差は手放すことになった……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 盗賊たちのお宝を根こそぎ集めて不要な物は山積みにした。やはり男所帯だと衛生的にも良くない。

 腐敗臭や排泄臭の籠もる洞窟内は長く居ると苦痛になってくる。

 

「お兄ちゃん、本当に燃やすの?」

 

「ああ、不衛生だしね。また他の盗賊たちに住み着かれても嫌だろ。

だから使えそうな家具とか腐り掛けの食料とかも、全て燃すんだ。流石に奥の汚い部分は無理だけどさ」

 

 洞窟の奥の方には水が貯まっていて、飲料水や生活用水に使っていたらしい。

 綺麗な湧水じゃない薄い茶色の溜まり水をだ。

 他にも枝分かれした所がトイレ代わりに使っていたりと不衛生極まりない。

 腐り掛けでも食べられるなんて、奴らの胃袋は現代人に比べて丈夫なのかも知れないね。

 

 でも良かった……捕らえられてる人とか居たら、それが女性だったりしたら凄く嫌な思いをしただろうから。

 

 女性陣を先に外に出してから、山積みにした家具や食料に火を付けた……最初は燻っていたが、徐々に火力が強くなる。

 

「盗賊のアジトに押し入って皆殺しの上で放火か……もう元の世界には帰れないな……」

 

 僕の未練と共に燃やし尽くせ!

 


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