異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第18話

 盗賊団を殲滅し蓄えたお宝を根こそぎ奪った。

 

 これでアリス解放の件はしばらく広まらないで済む。モクモクと黒煙を出す洞窟から急いで離れることにする。

 新たに他の盗賊の住みかにならないようにと燃やしたけど、黒煙により場所がバレバレだ!

 黒煙に気付いて誰か来る前に奪ったお宝と共に移動するが、結構重い。

 特にお金は言ってみれば金属の塊だから……

 皮袋を抱えるようにして持ち、背中にショートスピア腰にロングソードと脇差を括り付ける。

 アリスは食料品と宝石類、それに護符をデルフィナさんは防具類を持っている。

 

 昔の「坊や」だった頃では持って動くなど不可能だったはずだ。

 

「そういえば最初に身に付けていた三つの袋があったよな。ずっと腰に括り付けてたけど、確か80Gとか何とか……」

 

 洞窟から歩くこと10分、大体1㎞くらい離れた所に少し開けた草むらがあったので休憩する。

 重い物を担いでの移動は思った以上に体力と気力を消耗するんだな。もうクタクタです……

 一応、一番重そうなお金の袋と武器類を持ったのだが、何となく一番金目の物を取った守銭奴っぽくて嫌だな……

 

「はー疲れた……腰が痛いよ」

 

 お金がパンパンに詰まった皮袋を投げ出して座り込む。多分だが10㎏くらいはあるぞ、コレ。

 自分の腰を揉んでいると、先程考えていた皮袋に手が当たった。

 確か80Gと頭の中にッセージが流れたけど、皮袋自体は膨らみが少なくないか?

 試しに皮袋を逆さまにして中身を全部だすと、明らかに皮袋よりも小山になったコインの方が大きい。

 もう一度、皮袋に80Gを入れてみるが……

 

「あら、主様。それはマジックアイテムですね。収納系は高価で希少なんですのよ」

 

 体力は僕よりも優れているデルフィナさんも汗をかいたのか、布で拭いている。

 男は汗をかくと臭いのに、女は汗をかいても良い匂いなのが不思議だ。

 

「マジックアイテム?収納系?」

 

 聞き慣れない言葉に、驚きながらも皮袋をデルフィナさんに渡す。その際に彼女から漂う匂いも堪能するが、やはり良い匂いだ。

 

「これは……強い魔力を感じますわ。どれくらい入るのかしら?」

 

 パンパンに詰まった皮袋からコインを移し替えていく。ザラザラと音を立てて中に入っていくが、無くならないよね?

 

「まぁ?全部入ったわ。取り出せるかしら?」

 

 皮袋に手を突っ込んで引き抜くと、ちゃんとコインを掴んでいる。

 しかも片手で皮袋を持っているから、重量も緩和されてるらしい。

 試しに持ってみると久し振りに脳内にメッセージが流れた。

 

 『3278G』か……1枚3グラムとして3000枚以上なら10㎏にはなるね。

 

「凄い便利な皮袋だね……、お兄ちゃん!」

 

 アリスが興奮して僕の首に抱き付くが、自分の臭いで気を悪くしないかと思うと少し恥ずかしい。

 

「そうだね、実は知らなかったんだよ。まだ二つあるんだ。

コッチは薬草と毒消し草が入っていて、コッチは廃墟で見付けた玉を入れてある」

 

 彼女の脇の下に手を入れて、高い高いの要領で無難に引き離す。

 試しに薬草と毒消し草が入っている皮袋をひっくり返すとバサハザとほうれん草の束が落ちた。

 やはり皮袋の大きさと収納物の大きさが違い過ぎる。

 それに葉っぱが瑞々しくて、とても皮袋の中に入れっぱなしな状態じゃない。

 

 手に取って葉っぱを一口齧る……

 

「苦い、けと新鮮で瑞々しい。これはアレか?鮮度も保てるのか?」

 

 口の中には野菜特有の青臭さと苦味があるが、不味くはない。

 最近のビタミン不足解消のために、もっと食べたいぐらいだ。

 そういえば、この世界に最初に来たときには有名なドラゴンのクエストだと思ったんだよな。

 実際はモンスターでハンターな世界だったけどさ。あのときは道具や皮袋に対して深く考えなかった。

 

 ゲーム機能ならお金や持ち物は重さも大きさも関係無いと思ってたし……

 

「収納系のマジックアイテムの中には食品の鮮度を保つ物もあります。

こちらの皮袋にも拳大の宝玉が入ってますね。凄いです、三つもマジックアイテムを持っているなんて。

お金専用、衣料品と食料品専用、武具や防具等の道具専門にしましょう。

ほら、ロングソードが入りますわ。皮鎧は無理ですね。やはり皮袋の口の大きさ以上の物は入れられないのですね」

 

 デルフィナさんの意見に大賛成だ。

 

 これで移動が楽になるし、物資を多く持てれば、それだけ長期・長距離の行動が可能になる。

 確かに大きさの違う皮鎧は無理だが、ロングソードやショートスピアと脇差は入れられた。

 違う物を入れた場合、取り出す時にどうするか試しに皮袋に手を突っ込んだが……

 

「痛い……」

 

 ショートスピアの先で指を切ってしまった。感じとしては中はドラム缶くらいの大きさで品物はソコに入っている。

 だから皮袋に手を入れて探れば、触れた感じで品物を選別できるぞ。

 中は常に水平垂直らしく水物も零れないで済みそうだ。

 指先にヒールを掛けて傷を治そうと思ったが、アリスに吸われてしまう。

 

「んーちゅぱちゅぱ……えへへ、お兄ちゃんの血液も美味しい」

 

「あー!ズルいですわ、ならは私も……んっ、んんん……」

 

 美女と美幼女に指先を舐められるって快感だ!嗚呼、力が抜けて……力が……抜ける?

 恍惚として舌を出して指を舐め合う彼女達は明らかに発情しているが、僕の命は枯渇しそうだ。

 互いの舌を絡ませ合いながら、指を舐めている姿をもっと見たい。

 

 見たいが、もうヤバい。

 

「すっ、ストップ!もう駄目、枯渇しちゃうから駄目……」

 

 引き際を間違えてしまった。

 二人のエロい表情を見たいが為に、限界一歩手前まで精気を吸わせてしまった……

 そのままデルフィナさんの胸元に倒れこむが、鎧を着てるので柔らかい感触は感じない。

 失敗した、アリスのフニフニお腹にすれば良かった……

 

「今日はここで野宿しよう。ご飯を用意して……精気が枯渇寸前な気がするよ。肉を肉を食べないと……」

 

 抱き留めてくれたデルフィナさんが、器用に自分の下半身をトグロ状にして僕を寝かせてくれた。

 ヒンヤリしてスベスベで弾力があって気持ちが良い。端から見れば大蛇ベッドだ。

 でも地面に布を敷いて横になるのが普通ならば、見た目以上に快適かも……

 

「主様は休んでいてください。アリス、料理をしますわよ」

 

「ハーイ!

デルフィナ、今夜は豪華にしようよ。お兄ちゃんを回復させないと、私達の夕食にも響くよ」

 

 まだ足りないんですか?嬉しそうに干し肉を刻んで土鍋に入れているアリス。

 土を掘り石を並べて焚き火の準備をするデルフィナさん。

 器用に下半身をくねらせて揺り籠みたいな心地よい振動を与えてくれるから……僕は意識を放棄した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「「頂きます」」

 

 僕とデルフィナさんは生身の肉体を持っているので食物を摂取する必要があるが、アリスはレイス故に精気だけで良い。

 だから食事は二人だけだ。夕食は干し肉と雑野菜を塩で味付けし煮込んだスープ。素朴な味だか普通に美味い。

 後は小麦粉を練って固く焼いたナンみたいな保存食。それを割ってスープに浸して食べる。

 

 盗賊から奪った食材は干し肉と酒だけ。

 

 お酒は地ビールみたいに琥珀色で微炭酸なモノだが、名前はビールらしい。

 常温で飲むビールは正直美味くないが、飲料水の消費を抑えるためには仕方ない。しかもコップが無いから回し飲みです。

 

「ふーっ、お酒は久し振りなんです。嗜好品でしかありませんから、手に入れる優先順位が低くて……」

 

 素焼きの瓶を豪快に煽る彼女は、既に半分出来上がっている。

 ほんのり頬に赤みが差し色っぽい表情をして、尻尾をユラユラさせて楽しそうだ。

 僕は度数の低くて温いビールはイマイチなので、あまり飲まずにデルフィナさんに勧めた。

 

「確かに生きるために必要なモノじゃないですよね。良かったらもっと飲んでください」

 

 確か蛇はお酒が大好きだよね、ヤマタノオロチとかもそうだったし……

 

「ふふふふふ、私を酔わせても何も出ませんわよ?」

 

 尻尾がブンブン揺れているので、お酒が飲めて相当嬉しいんだな。だから全部飲んでもらっても構わない。

 

「僕はスープの方が好きだな。アリス、お代わり頂戴」

 

 物を食べる必要が無いアリスは、ニコニコと僕らを見て給仕を進んでしてくれる。良くできた美幼女なのだ!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「主様、あの先に見える集落がベルレの街ですわ」

 

 良かった、始まりの街とか言われるかと思った。

 デルフィナさんが指差した先には、丸太や板を張り巡らせた壁に矢倉が立った砦みたいな物が見える。

 遠目だが周囲に堀も見えるし白い煙が幾つも立ち上っているな。お昼時だし、煮炊きをしているのだろう。

 周辺は拓けており、畑には青々とした苗みたいな物が風になびいている。

 周辺にも集落みたいな建物群もあるが、街と言うだけあり1000人くらいが住んでいそうだな。

 

「デルフィナさん、街に着いたらまず何をする?」

 

「不要な武具・防具を売って必要な物を買いましょう」

 

「野宿ばっかりじゃ疲労が取れないでしょ?一泊して美味しい物でも食べなよ」

 

 アレ?聞き方が不味かったかな?素で買い物とか食事とか楽しそうに言われた。だから空気を読んで再度聞いてみよう。

 

「うん、久し振りにベッドで寝たいし美味しい物も食べたいね。替えの服とかも見たいな……

デルフィナさんは、あの街はよく行くんですよね?」

 

「よくは行きません。私の家からは、もう一つ近い街が有りますから。年に三回ぐらいでしょうか?」

 

 人差し指を頬に当てて考え込む仕草がグッドです!

 

「じゃあ最初に街に入るときは何をする?何をされるかな?」

 

 この質問で気付いてくれたのか、立ち止まって僕を見た。そう、僕らは異端だ……

 僕は身元不明の不審者、アリスは封印されていたレイス、デルフィナさんは普通だがラミア族なのに人間と行動を共にしている。

 しかも僕は盗賊から奪った皮鎧を着た薄汚れた剣士だが、アリスは幼稚園の制服みたいな上等な衣装でレイス特有の特技で常に新品だ。

 デルフィナさんも上半身は所謂ライトアーマーを着込み長柄の斧を持っている。さぞかし怪しい組合わせだろう。

 

「確かに……まず街の出入口は一ヶ所しかありません。最初に……」

 

 

 

 

 デルフィナさんの話を纏めるとこうだ。

 

 最初に街に来た理由を聞かれて割り符を渡される。その際に宿泊する場合は割り符の種類が変わるが、一泊までしかできない。

 連泊する場合も一回外に出て再入場の手続きが必要。基本的に夜に門を閉めるので宿泊しない連中は全員外へ出される。

 街の中に入る場合、武器は全て守衛に預けなければならない。

 簡単な割り符だと偽造できるので、高価な武器の場合は1G払って金属製な割り符にしてもらう。

 

 これなら一泊程度では偽造は無理だ。

 

 割り符の片割れが盗まれても自己責任で、嫌なら街の外で仲間に預けて手ぶらで入れか。

 武具・防具の買取販売は守衛所の手前にある。売るからと街に持ち込みも不可だ。

 

 良くできているシステムだな。

 

 丸腰なら犯罪を起こしにくいし、宿泊しなければ夜には外に出されてしまう。

 身元の確認が難しい世界ならではのシステムか……僕らはマジックアイテムがあるから、ある程度は持ち込み可能だ。

 だけどデルフィナさんの斧や売る予定の武具・防具は皮袋に入らないから無理だ。

 

 街の外の集落は、そういう連中のための施設か……

 

 現代と違い身元の証明なんか無理だからこそ、不審者を弾くのではなく丸腰にしたうえで入退場を管理しているんだな。

 本当に良くできたシステムじゃないか。

 

「じゃ全員で入っても大丈夫だね。念のためにお金は普通の皮袋にも移しておこう。売る物は、ここから手に持って行かないと不自然だよね」

 

「わかりましたわ」

 

「久し振りの街は楽しみだなー」

 

 ようやくこの世界で初めての街に入れるな!

 


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