異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird
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第19話

 ベルレの街……

 

 アリスの封印されていた場所は石造りの城塞都市みたいだったが、この街は外壁は丸太や平板を多用しているので日本の戦国時代の砦みたいだ。

 聞けば石を用いた城塞は、もっと規模も大きく主要な都市だけだそうだ。しかも何十年単位での建設期間が必要だから、歴史ある街がほとんどだ。

 確かに石を切り出して積み上げるよりも木の方が安価で早い。

 

 だが、それでも街の規模はデカい。

 

 周辺の街や村を統括している偉い人が居るらしい。故に騎士団も常駐しており、有事の際に派遣する。

 まだ1㎞以上あるが既に周りは畑だ。農道みたいな一本道が真っ直ぐ街まで繋がっている。

 土が露出しているが、長い年月を踏み固められたのが分かる。

 まだ街の住人とは接触してないが、遠目に農業に従事している人影が見える。

 

 長閑だなぁ……

 

「主様、武具・防具ですが売るのは鎧だけにしませんか?」

 

「何故だい?」

 

 立ち止まりデルフィナさんを見る。未だ短い付き合いだが、彼女は思慮深いので考え無しなことは言わないのを分かっている。

 だけど持っている皮鎧と脇差類を売ると決めたはずだ。何故、意見を変えるのだろうか?

 

「先程はマジックアイテムの存在を知りませんでした。武器は消耗品です。

お金に余裕はありますし、皮袋の中に収納できるなら売ることはありません。

それと主様の皮鎧は正直盗賊が使っていた物ですから質が良くないです。

ですから手持ちの鎧を全て売り、主様用の新しい防具を揃えましょう。新品でも300Gくらいで買えますから」

 

 立ち止まって考える……

 

 確かに僕の装備品は全て盗賊から奪った物だ。

 彼女たちが手入れをして仕立て直してくれたから着れるが、正直汚いしサイズも微妙に合わない。

 皮って水洗いすると縮むしゴワゴワになるし、この皮鎧は部分的に膠(にかわ)か何かで固めている。

 

 だから見た目が汚いんだよね……

 

 移動に邪魔な皮鎧を売るのは分かるし、僕の装備品を揃えてくれるのも嬉しい。

 

 だが、あの脇差は手放したいのだけど……

 

「そうだね!お兄ちゃんの防御力を高めるのは賛成。それに正直その皮鎧は汚いし臭いよ……」

 

 いつも笑顔なアリスが、少し曇った表情をした。

 

「ありがとう、そうしようか!」

 

 あっさりと前言を翻す。

 

 だってアリスに「お兄ちゃん、くさーい!」とか言われたら、自分でも理解してるから恥ずかしくて悶絶してしまう。

 デルフィナさんにも「主様、私は気にしませんから大丈夫ですわ」とか言われたら、更に恥ずかしくて悶死してしまう。

 とにかく、彼女たちに嫌われる要因は減らすべきだ!

 

「では街に着いたら直ぐに見立てましょう。交渉は私がしますわ」

 

 大阪人の血が流れてない僕では値切り交渉は無理なので、素直にデルフィナさんにお願いし500G入っている皮袋を渡し売る予定だった脇差とロングソードや弓を他人に見られないように皮袋にしまう。

 僕の武器はショートスピアとナイフで、これを守衛所に預ければ良いだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 歩くこと10分、漸くベルレの街に到着した。

 

 街の出入口は閑散としているが、武装した守衛が見た目だけで四人。

 金属製の鎧(ライトアーマー?)を着込み剣を腰に下げて、更に槍を持っている。

 櫓の上に弓を携えた武装兵が二人居る。見えない部屋の奥にも兵士が詰めているんだろうな。

 デルフィナさんが慣れた様子で守衛に話し掛ける。

 

「防具の売り買いと街で日用品の買い出し。今夜は街の中で泊まりますわ。三人共です」

 

 ラミア族が珍しいのか、最強竜種が怖いのか?

 

 守衛は少し引き気味に木製の割り符を三枚渡したが、デルフィナさんが僕の分を含めて2G渡して金属製の割り符を貰い武器を預けた。

 アリスは非武装だから木製の割り符だ。

 

「主様、防具の買取場所はこちらですわ」

 

 優しい笑顔で教えてくれる彼女は、やはり品があるな……

 

「「あっ、主様?お前が?」」

 

 アレ?主様って変な言い回しなのかな?凄い驚いて僕を指差してるんだけど……

 少しイラッときたが、わざわざ波風立てるのは嫌なので彼らをチラっと見るだけにする。

 

 だがステータスは確認させてもらおう。

 

 

 

レベル : 10

 

 

HP : 26/26

MP : 14/14

 

筋力 : 13

体力 : 10

知力 : 17

素早さ : 22

運 : 5

職業 : ベルレの街の守衛K

称号 : 野菜嫌いな偏食家

 

 

 

レベル : 12

 

 

HP : 39/39

MP : 4/4

 

筋力 : 25

体力 : 18

知力 : 9

素早さ : 8

運 : 9

職業 : ベルレの街の守衛M

称号 : 世話好きな脳筋

 

 

 

 久し振りに脳内に情報が流れる。

 

 うーん、この数値が高いのか低いのか判断がつかないし、MとかKとか少なくとも守衛は10人以上は居るんだな。

 わざわざ街の守衛と敵対する必要もないので、直ぐに視線をそらして買取カウンターに向かう。

 

「はい、いらっしゃい。武具の買取希望かな?」

 

 まだ10代後半かギリギリ20代前半な青年が愛想良く対応してくれる。

 

「コレとコレ、それに主様の着ている皮鎧の買取のお願いと新しい鎧を見せてくださいな」

 

 買取希望品は皮鎧が三着だけだ。急いで自分の着ている皮鎧を脱いでカウンターに乗せる。

 

「はい、査定いたします……」

 

 そう言って皮鎧を点検する店員さん。最初に外観を次に内側や傷の有無をチェック……

 五分ほどで全てをチェックし終わり

 

「はい、右から順番に80G60G120Gとなります。合計で260Gですね」

 

 因みに一番高いのは僕が着ていた皮鎧だ。

 これはデルフィナさんとアリスが手入れや仕立て直しをしてくれた皮鎧だから、少し嬉しい。

 値段交渉を始めたデルフィナさんをボンヤリと見つめる。

 

 ああ、やはり美人だなぁ……おっ、尻尾が嬉しそうに振られたぞ。交渉は成功かな?

 

「主様、皮鎧は全部で273Gで買い取ってくれるそうですわ。

代わりに新しい武具を買うことが条件ですけど……私の見立てでは、こちらの皮鎧が良いです。着てみてください」

 

 そう言うと部分的に金属を貼り付けた皮鎧を甲斐甲斐しく着せてくれる。

 

「主様か……ラミア族が人間を選ぶとは摩訶不思議だねぇ……」

 

 店員の呟きを無視する。

 着せてもらった皮鎧は腹回りが内側に小さな金属を短冊状に貼り付けて補強されている所謂ブリガンダインだ。

 外部は部分的に肩や心臓部分の皮をワックスで煮込んで硬化処理してある。

 外側に金属で補強するとスケイルメイルと呼ばれるが、何故補強を内外で変えるのかは知らない。

 一説にはブリガンダインの方が、装着時の動きやすさと破損時の修復が楽らしい。

 見えない内側なら多少見栄えが悪くても補修しやすいからか?何より新品で臭くないのが良いな。

 

「うん、軽くて動きやすいね。コレが良いや……」

 

「分かりました、ではコレに決めますわ」

 

 その後、デルフィナさんが再度店員さんと交渉を始めた。因みに店員のお勧めはラメラーアーマーだった。

 これはスケイルアーマーと区別が付き難いが、レーム (Lame = 薄片 薄板)と呼ばれる小さな板に穴をあけた物を紐などでつなぎ合わせた鎧だ。

 だが、デルフィナさんの選んでくれたブリガンダインの方が、見た目も良いし着心地や動きやすさも良い。

 300Gから280Gに値切り、最後は買取の皮鎧と物々交換に持ち込んだ。

 

 つまり273Gまで負けさせたわけだね。

 

 その代わりに皮のブーツと皮の小手を180Gで一緒に買うことになった。因みに今履いていたブーツの下取り込みの値段だ。

 

「ありがとうございました……」

 

 若干魂が抜けていそうな店員さんの声に見送られてようやく街の中に入る。

 ベルレの街、それは久し振りに見る混雑という名の人の群れだった!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 メインゲートを潜り抜け最初に見たのは幅が6mぐらいの大通りだ。

 左右には最初の廃墟で見たようなカウンター式の店舗が並んでいる。

 

「主様、通行の邪魔ですからこちらへ」

 

「お兄ちゃん、田舎者丸出しだから隅へ寄るよ」

 

 彼女たちに両手を引かれて大通りの隅へ寄る。周りの連中がこちらを珍しそうに眺めているが……

 平凡な若者にラミア族の美女と人間(本当はレイス)の美幼女。アリスと僕は似ていないから親子も兄妹も無理だ。

 不思議な取り合わせだが、別行動は無理だから仕方ないと割り切る。

 

「デルフィナさん、最初はどこに行きますか?」

 

「盗賊のお宝を換金してから食事をしましょう。売れた金額により宿屋のランクを決めますわ」

 

 宿屋のランク?この世界の宿屋は初めてだけど、民宿→旅館→高級旅館とかランクに分かれてるのかな?

 

「ランクって、どんな違いがあるの?」

 

 疑問に思ったことは直ぐに聞く。

 

「そうですね。

一番安いのが大部屋です。夕方に入って朝には一斉に出されます。雨風が凌げるだけで野宿と変わりません。

一般的な宿屋は小部屋に分かれたタイプですが、鍵もありませんし食事やお風呂は別料金です。勿論寝具もありません。

貸し出しもありますが不衛生ですし高いです。自前の物を使った方がマシでしょう。

どちらに泊まるにしてもあらかじめ街で食事やお風呂に入ってから宿屋に泊まるのが一般的ですわ」

 

 なるほどね、基本的に屋根のある場所の提供で大部屋か小部屋かって差だけか……

 

「鍵付の個室とかだと高いのかな?」

 

「小部屋は内側から鍵が掛けられます。勿論、つっかい棒くらいですから蹴破れば入れますよ。高級な宿屋は見張り要員が居るらしいです」

 

 うーん、江戸時代の防犯と変わらないレベルだ……でも一般的な家庭でも鍵なんて無いんだから、宿屋の各部屋なんかには無いよな。

 基本的に自己管理・自己責任だから、他人に任せちゃ駄目なんだろう。

 それに布も貴重品だから不特定多数が使うのに大量に用意できない。

 仮に用意できたとしても、毎回洗えば生地は傷むから洗わずに使い回しになるが……

 それなら清潔な空き部屋を提供して、自前の寝袋とかを使ってもらった方が良いわな。

 

 ぐぅ……

 

「お兄ちゃん?アッチの露店で何か食べようよ。たくさん精力付けて頑張ろうね」

 

「ふふふふ、たくさん食べて精力を蓄えてくださいね」

 

 彼女たちの艶っぽい表情と言葉に周りのヒソヒソ話が……あの中年女性の冷ややかな目とか、あの若者の嫉妬に熱い目とか。

 寒暖の差が激し過ぎるんですよ!

 

「露店行こう、露店に!何か食べようね」

 

 急いでその場を離れた……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 露店街は賑やかだ。

 

 店を構えた対面カウンターの接客と違い商品が直に並べてあるので、珍しい品々を見ることができる。

 本当に何でもあるな……衣類・家具・装飾品・工具農具・食器・魚や捌いた肉、生きている家畜みたいな動物も売られている。

 食べ物は基本的にテイクアウトだから串焼きは葉っぱに乗っている。

 単純な焼き魚や固いパン、チーズっぽい物や香辛料に岩塩か……味噌や醤油は流石に無いが、胡椒や酢みたいな物は売っている。

 特に気になったのは、何の肉だか分からないが鶏肉系の淡白な物のタレ焼きだ。見た目がほとんど焼き鳥なんだよね。

 

「デルフィナさん、あの串焼き肉が食べたいな」

 

「あら、おいしそうですわね。お兄さん、串焼き下さいな。1Gで何本かしら?」

 

「1Gなら10本だよ、それで良いかい?」

 

 ん?買いたい本数を言わずに1Gで何本買えるかって聞いたな。何だろう、あの串焼きの値段設定って何なんだ?

 兄ちゃんは素焼きの壺に入れてある炭火で軽く温めてから、大きな葉っぱに乗せて渡してくれた。

 イメージはパプアニューギニアとかの現地の方の食事みたいだ……

 

「はい、主様どうぞ」

 

「うん、ありがとう……ん、美味いな。このタレだけど、何だろう柑橘系の酸味が……」

 

 ゴルフボール大の肉片が三個刺さっている串焼きは、結構食べ出があるな。

 配分は僕が五本、デルフィナさんが四本でアリスが一本だ。

 モグモグと肉を食べながらブラブラと商品を眺め、そしてさっきの疑問を聞いてみる。

 

「デルフィナさん、さっきの串焼き買うときに何本欲しいじゃなくて幾ら買えるって聞いたのは何故?」

 

「ああ、アレですか?

基本的に個人で使用できる通貨は一種類なんです。1Gは銀ですが1000Gで金の板になります。

金属の価値が、そのまま通貨の価値なのです。だから最低単位の1Gで何本買えるか聞いたんですよ。

お金以外に物々交換もできますが……」

 

 確かに統一通貨とか無さそうだし鋳造技術も未熟そうだ。貨幣の種類を増やしても管理し切れないか。

 だから金や銀の本来の価値で、お金として利用する。現代の金本位制みたいな物かな?

 しかし串焼き10本で1Gってことは、イメージは1G=1000円くらいだろうか?

 

 何となく、この世界の物価が分かった気がするね。

 








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