異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第3話

 どれぐらい寝ていたのだろうか?突然の尿意で目が覚めた。

 現代人は布団やベッドのような均一で柔らかい物の上で寝慣れてるからか?

 藁の山は柔らかいとは言え凸凹だし、チクチクしてるからか体が痛いし痒い。

 

 ポリポリと腹や背中を掻く……

 

 小部屋の扉は開けていたはずだが、閉まってしまったか真っ暗だ。

 方向感覚は全く無く、どっちが扉側だかも不明だが壁伝いに触っていけば分かるだろう。壁は石造りで扉は木製だったから。

 ノソノソと藁の中から這い出し、途中で触れた服を確認したが未だ乾いてない。

 靴だけは履いていたので、相変わらず真っ裸でブーツだけ履いている変態ルックだ。

 腕を前に突き出し取り敢えず壁を探して前進すると、硬い物にブチ当たった。

 

 ヨシ壁だ……

 

 左手で壁を触り右手を前に突き出しながら、時計回りにゆっくりと歩いていく。でもソロソロ膀胱が限界っぽい。

 しかし室内での放尿は言語道断だ!

 

 漸く違う感触が左手から感じた……カサカサの木の感触、その感触の付近をベタベタと触ると取っ手を探り出せた。

 ノブを回して建付けの悪い扉を開く。やはり扉が閉まっていたのか。

 

 小部屋の外は隙間から差し込む月の明かり?で仄かに明るい。

 

 真っ暗の小部屋の中に居たせいか、広い室内の様子が朧気に分かる。夜目に慣れたからかな?

 出口の見当が付いたのでゆっくりと扉に向かい歩いていくが、唐突に何かにブツかった。

 

「キャ!」とか聞こえて、柔らかな何かを弾き飛ばした感触が有る。

 お腹辺りに髪の毛の感触を感じたし、聞こえた声は女の子の物だった。

 

「えっ?ごめん、誰か居たの。見えなかったから……ごめんね、大丈夫かい?」

 

 もしも少女だったら悪いことをしたと思う。突然暗闇でブツかったのはお互い様だが、注意する必要があるのは大人の方だ。

 

 ん?女の子?こんな廃墟で暗い場所に、女の子だって?

 

「もぅ、私を解放してくれたから我慢するけど、普通なら殺しちゃうところだゾ」

 

 可愛い声で物騒なセリフが聞こえた。ゆっくりと首を下げて声の聞こえた方を見れば……尻餅をついた金髪の幼女が、ボンヤリと輝いていた。

 意志の強そうな感じの切れ長の目が印象的だ。ツインテールにどこかの制服のような服装だな。

 

 しかし、アレか?美幼女だから後光が差してるって奴か?

 

 いや彼女自身が発光しているし、彼女の顔と同じ高さには膀胱が限界で肥大した僕の息子が!

 

「「あっ」」

 

 お互い同時に気が付いたせいか、ボッという擬音が聞こえそうなほど速攻で真っ赤になった。

 

「おっおおおおお、お兄ちゃん?いいいいい、いくら解放してくれたからって、いきなり体を要求するってなによ?」

 

 正確に息子を指差しながら、トンでもないことを言う幼女。

 

「ちっ違う。濡れた服を洗って着替えが無いから、裸でいただけなんだ。

その……トイレに行きたいだけで、そんな邪な要求は……」

 

 とにかく、状況を説明しないと、傍から見ればトンでもなく変態行為を幼女に要求している。いや、していると思われている。

 

「とにかく、ソレはしまってよ。じゃないと根こそぎ精気を吸っちゃうよ、ほら早くしまう」

 

 聞き捨てならないセリフがあったが、取り敢えず建物の外に飛びだし近くの塀の影で用を足す……

 湯気を立てながら信じられない量のオシッコが出た。

 

「ひゅう……スッキリした……しかし、あの幼女は誰なんだ?

こんな所に一人で来ているはずはないし、両親か保護者が近くに居るはずだ。見つかったら大問題だぞ」

 

 下半身はスッキリしたが、気持ちがモヤモヤしてきた。人が居ないから全裸族だったのだ。

 誰かが居れば、途端に恥ずかしくなってしまう……トボトボと室内に入り、途中で声を掛ける。

 

「君ぃ、まだ居るの?僕が服を着るまで、他を向いていてほしいんだけど?」

 

 暗い室内に声を掛けるが反応が無い。まぁ暗いから着替えを覗かれる心配も無いんだけど……でもあの子、何故か光ってたよな体が?

 まぁ、居なくなったら居なくなったで構わないけどね。もう眠いから問題事は明日起きてから考えれば良いや。

 

 異常な体験をしているせいか、自分の感覚も不用心だった。普段なら深夜に廃墟で小さな女の子が居るなら、不審に思うはずだ。

 しかも体がぼんやり光ってるなんて、幽霊以外の何者でもないだろう。

 

 でも、それを疲れて眠いからと放置して寝てしまうなんて……小部屋に戻り、ゴソゴソと藁の山に潜り込む。

 

 今度は、ちゃんと扉は開けて僅かでも光が差すように注意して。ああ、眠気が直ぐに……余程、異常事態に体も心も疲れているのだろう。眠気に身を委ねて……

 

「お兄ちゃん?ねぇ、お兄ちゃんったら?私を放っておいて寝ちゃうの?ねぇ、寝ちゃうの?」

 

 ユサユサと体が揺すられる。耐えられない眠気のせいか、中々返事ができない。瞼が鉛のように重い……ああ、彼女が戻ってきたのか?

 幽霊かと思ったけど、ちゃんと実体があるじゃん。

 なら安心だな……せめて明日の朝に話を聞かせてほしいと、伝えようとするが中々意識が覚醒しない。

 

「ねぇ?無視されると悲しいんだよ?ねぇ、起きてってば!」

 

 それでも何度か体を揺すられる。段々乱暴に揺らされる。でも小さな温かい手で揺すられるのって気持ち良いんだな……

 

 寝ぼけて半覚醒のときに、耳元で「お兄ちゃん。私を放っておいて寝ちゃうなんて良い度胸だよね。罰として死なないくらいに吸っちゃうゾ」と、物騒なセリフと共に体が急速に重くなってしまった。

 

 ただ、頭を抱きかかえられるような感触と温かさ、それに良い匂いがしたんだ。

 

「ご馳走様。ゴメンね、吸いすぎちゃった。でっでも、無視したお兄ちゃんが悪いんだからネ?」

 

 その言葉と共に、僕は意識を失うように眠りについた……ちゃ、ちゃんと翌朝になれば目覚めるよね?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「体が重い……やはり風邪をひいたみたいだ……」

 

 のろのろと藁のベッドから這い出して、取り敢えず乾いた服を着る。ブーツを確認し袋を腰のベルトに挟み込み、最後に棍棒を持つ。

 この異常な世界で、持ち物がこれだけとは心細いな……昨夜は開けっ放しのはずの扉が、また閉まっていて室内は隙間から差し込む光だけで薄暗い。

 

「変だな?ちゃんと扉は開けておいたはずだぞ?風で閉まるほど、建付けは良くないのに……」

 

 さて、今は何時頃だろうか?それに何故、体がこんなにも重いんだろうか?

 突然、頭の中にパネルが表示される。

 

 中々慣れない仕様だ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

職業 : 見習い戦士

称号 : 薄幸の異邦人

レベル : 1

経験値 3 必要経験値 4

HP : 6/20

MP : 2

筋力 : 8

体力 : 5

知力 : 4

素早さ : 6

運 : 1

装備 : 棍棒 布の服

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 ん?新しい項目が増えてるな……経験値と必要経験値か。こりゃ本当にロールプレイングゲームだな……

 あと野良スライムを4匹倒せばレベルアップか。あれなら苦労はするが倒すのは難しくないはずだ。

 やはりレベルアップは必要だよね。レベル1じゃ村人Aと大差ないからな。

 

 次はHP?あれ?HPが6……6って、ええ?

 

「なんだよ、ロープレなら一晩寝れば全快だろ?おかしいだろ、このゲームシステム!」

 

 文句を言っても仕方ないって言うか、文句を言う相手が分からない。

 

「取り敢えず、顔を洗って水を飲むか。熱は無いみたいだし喉も痛くないから、風邪よりは疲労なのかな?」

 

 ノロノロと小部屋から出ると、良い匂いがしてきた。何だろう?

 この胃袋に直撃する香ばしい匂いは……魚を焼いている匂いに似ているが?

 

 建物の外に出ると、暖かい春の日差し。多分、この世界の季節は春なんだろう。

 草木も青々としてるし朝晩の冷え込みを考えると、日本の4月か5月ぐらいかな?暫し目を瞑り、太陽の日差しを堪能する。

 

「グゥゥゥゥゥ……」

 

 周囲に漂う焼き魚の香りに我慢できず、空腹感が耐えられないほどに!

 キョロキョロと匂いの元を探せば建物の直ぐ近くに焚き火があり、串に刺した魚を焼くツインテールな金髪幼女。

 

「グキュゥゥゥゥ……」

 

 魚を焼く幼女と目が合った。生意気そうな笑顔で手招きをする幼女。フラフラと近付く僕。

 

 彼女の前に立ち、何か言おうとしたら「おっお兄ちゃんのために焼いたわけじゃないけど、あっあげても良いわヨ」ナイス、ツンデレ!

 

 視線を微妙にズラし、頬を染めながら言ってくれました。

 

 

 語尾が変なイントネーションだが、こちらを見てふて腐れたように生焼けの魚を差し出してきた。

 

「はい、感謝して食べてよネ。余り物だけど感謝してよネ」

 

 その差し出された小さな手から串を受け取る。

 

「あっああ、有難う。えっと、夕べの子だよね?1人なの?お父さんかお母さんは?」

 

 話し掛けながら空腹に耐えきれず焼き魚を見れば、生焼けだ……焚き火で魚を焼き直す。

 無言でソッポを向く彼女を観察するが……本当に綺麗な金髪をツインテールにしている。

 目は綺麗なエメラルドで、透けるような白い肌をしている。

 

 透ける?アレ、透けて向こうの景色がミエマスヨ?

 

「あー、あのお嬢さん?」

 

「なっ何よ、気持ち悪いわね!私を解放してくれたお礼なら、してあげても良いわヨ。もっ勿論、イヤイヤなんだからね」

 

 頬を薄っすらと赤く染めて視線を逸らす彼女は、その外観年齢を伴って大変愛らしいです。

 おもむろに立ち上がり、両手を後ろで組んで片足をブラブラさせながら、チラチラ視線を送ってくるのはアレか?

 

 ツンデレの幽霊?つまりツンデ霊ってやつか。

 

 何か不穏な言葉もあったけど、こんな異常な世界なんだ。幽霊が居ても不思議じゃないよね?

 

「有難う。えっと、僕はココに急に連れてこられちゃってさ。この世界のことがよく分からないんだけど、教えてくれるかな?」

 

 可愛い幽霊を見れて心が和んだが、疲労は回復しない。焚き火の前に座り込んでしまう。

 焼き魚が良い感じに仕上がったので、横腹を齧る。ジュワッと脂がのった身はとても野趣溢れた美味しさだ。

 

「うん。美味い……」

 

 食べだすと止まらない。彼女は残念だが、料理は苦手なんだろう。

 川魚は鱗がないから良いのだが、内臓も出してないし味も付いてない。でも空腹は最高の調味料ってのは本当だ。

 僕の食べっぷりに驚いたのか、向かい側にペタンと座って残りの魚を黙々と焼いてくれる。

 合計5匹の魚を食べ終えて、やっと落ち着いた。体力が回復した感じがする。

 

 突然、頭の中にパネルが表示される。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

職業 : 見習い戦士

称号 : 薄幸の異邦人

レベル : 1

経験値 3 必要経験値 4

HP : 20

MP : 2

筋力 : 8

体力 : 5

知力 : 4

素早さ : 6

運 : 1

装備 : 棍棒 布の服

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 良し、体力が回復した。

 

 このゲームシステムだと食事をすると体力が回復するのかな?喉が渇いたので、小川から直接水を飲む。

 水筒か何かを見つけないと、あの街までは到底たどり着けないぞ。

 まだまだ問題は多いが、この世界のことを聞ける相手が見つかったのは幸いだ。

 

「それでさぁ、色々聞きたいんだけど……あれ?」

 

 振り返ると彼女は居なくなっていた。

 

「ちょ、おい。何処へ言ったんだよー?」

 

 この世界の手掛かりは、あっさりと居なくなった。


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