異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird
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第38話

 見張り番を終えてムールさんの脇に座る。

 

 実は最初にやった方が途中で起こされないから楽なんだよね、秘密だけど……ミーアちゃんは毎食分を袋に小分けしてくれている。

 手触りで雑穀の入っているのを捜し出し袋を開ければ、二合ぐらいの雑穀に干した肉と野菜が入っている。

 野菜雑炊と干肉の炙り焼きが夕飯のメニューだ。前回同様、大きめの素焼きの椀を鍋に見立てて煮炊きを行う。

 

 串に刺した肉を炙れば後は待つばかりだ……

 

「随分と手慣れているんだな。こういう遠征は慣れてるのか?」

 

 流石は没落中でも貴族のお嬢様だけあるな、こういうことはしないのだろう。

 

「遠征慣れと言うよりは旅慣れかな。獲物を狩るのも日帰りじゃ無理だから必ず一泊程度の準備はするよ」

 

 雑炊が椀から噴き出さないように火を調節する。味付けに少量の塩を入れて味をみる……

 

「うん、丁度良い塩梅だな……」

 

 塩梅か……無性に梅干しのオニギリだ食べたい。冷えたコーラやハンバーガーを食べたい。干肉の炙りも良い焼き加減だな。

 小さい椀に雑炊をよそり、息を吹き掛けながら食べる。うん、体が暖まるな。炙り肉を噛れば、脂が滲み出る。

 

 ミーアちゃん、干し肉に下味付けてくれたんだな。

 

 流石はコッヘル様が溺愛する幼妻だけのことはある。ムールさんの視線を痛く感じるのは何故だろう?

 

「あの、見られてると食べ辛いです」

 

「ん、ああ悪かったな。私が調理不要の携帯食料を食べてるのに、隣でバクバク普通の料理を食べてるのが憎らしかったんだ」

 

 貴族の携帯食料ってなんだろう?雑炊のお代わりを椀によそり食べ始める。

 

「どんな携帯食料を?」

 

 参考までに聞いてみると、袋からゴソゴソと取り出して見せてくれた。

 

「これは……固パンに干した肉と魚、野菜と果物。それに乾麺かな?」

 

 流石は貴族様!

 

 携帯食料はどれも質の良い材料ばかりだし、小麦粉を練って伸ばした乾麺みたいな物もある。

 そもそも調理不要の食べ物じゃない、調理必要の食材だ。これだけの材料がありながら、何故僕の雑穀雑炊が食べたいのか何となく分かった。

 

「あの……これだけの材料があれば美味しい物が作れませんか?少なくともスープを作れば固パンは浸して食べれば美味しいですよ」

 

 まさか、この女は料理ができないとか?

 

「……私は料理などしたことが無い。精々干した肉を炙るくらいなんだ」

 

 ああ、そうだよね。慣れないとカマドとか作れないよね、僕もデルフィナさんと出会う前は肉や魚を炙って食べるだけだったし……

 

「慣れないと困りますよ、料理は旅の必須スキルですから。明日の朝食は一緒に作ってみますか?」

 

「む、そうか……そうだな、よろしく頼む」

 

 カマドの作り方と煮炊きの仕方を覚えれば大抵の食材は美味しく食べられるだろう。

 食事を終えて片付けをしてから荷物を枕、外套を布団にして眠りについた。

 

 勿論、ツヴァイへンダーはしっかり抱いて寝ます!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「敵襲!急げ敵襲だ!見張り番を残して東側に集合だ」

 

 暗闇に響く野太いオッサンの声が響く。どうやら敵が襲ってきたみたいだが、盗賊かモンスターかは分からない。

 起き上がり周囲を確認すれば既に兵士たちのほとんどが東側に走りだしている、流石に団体行動は早いな。

 月が真上に来ているので深夜だろうと当たりを付ける。目覚めは悪くないから四時間以上は寝れたか?

 掛けていた外套を荷物の上に乗せて東側に走りだす。

 

 直ぐに敵を確認できた……

 

 ユラユラと蠢く連中がアンデッドモンスターの最下級のゾンビだろう、その数は百体近いと思う。

 見える範囲で百体ならもっと居ると考えよう。傭兵たちの集まっている場所に行くとまだ半数くらいだ。

 全員完全武装なのは流石だが、オッサン六人組とベルガッドさんたちと単独参加の僕とムールさんだけだ。

 てかオッサンたちも地味に凄いんだな。伝令の兵士が駆け寄ってきた。

 

「お前たちは手薄な右側に向かってくれ、たのんだぞ!」

 

 右側……なるほどな。左側にはコッヘル様が奮戦しているから右側に人数を投入するわけだな。

 

「ムールさん、行こうか。単独より二人で戦った方が安全だろ?僕に力を見せてよ」

 

「良いだろう、我が力を見せてやろう」

 

 この手のプライドの高い方は挑まれると答えは一択なんよね。

 他のグループと連携とか無理だし、彼女とのコンビなら何とかなるだろう。

 ツヴァイへンダーは背負っているから、先ずはメイスで様子見だ!

 ムールさんと共に右側に走り寄る、兵士たちも二人ペアで戦っている。流石に強いが数も多いので戦う相手には困らない。

 一匹でユラユラと歩いてくるゾンビに狙いを付けて駆け寄る。

 普通の布の服を着た中年オヤジのゾンビが両手を前に突き出している。

 

「フンッ!」

 

 擦れ違い様に頭を狙い水平に振り抜くと、嫌な手応えを感じる。腐った西瓜を殴った手応えが近い、ゾンビの頭は粉々に吹っ飛んだ!

 

「次っ!」

 

 こちらは若い男だが上半身裸でズボンだけ履いている。僕に気付いて近付いてくるが待ち構えてメイスを頭に振り下ろす。

 グシャりと頭が割れるのを確認してヤクザキックで蹴り飛ばす。危なかった、正面から殴るとリーチの関係でゾンビの爪が届く。

 距離を考えないと弱くても毒や呪いを受けそうだ。

 

「お前、私の戦い方が見たいと言いながら先に行くのは失礼だ!」

 

 いかん、ムールさん忘れてた。

 

「すみません、様子見してました。次どうぞ!」

 

 前には二体のゾンビが近付いてくる。母親と子供だと思う、中年の女性に10歳ぐらいの男の子だ。

 

「ハッ!」

 

 母親は両手を斬り飛ばした後に首チョンパ、子供も首チョンパ。両手剣は手数が多く剣も業物なので切れ味が凄い。

 母子を斬り飛ばしたのを見るのは、クルものがあるがモンスターと割り切ろう。

 

 二人で互いを確認しながら前に出る。

 

 互いの死角を無くすように、またゾンビが複数で固まっている場合は左右から攻めて取り囲まれないようにと、にわかコンビとしては良くやれたと思う。

 結局右側の最前線まで来てしまい、二人で30体以上は倒した。

 まぁ20体から先は数える余裕は無かったが、メイスという打撃武器の有効性は理解した。

 破壊力があり丈夫で扱いやすい、もう少しリーチを長くすれば更に使える武器となる。

 スモールシールドも相手の攻撃を払い体勢を崩すこともできるので、相手の隙を作ってメイスで一撃しドカンと倒すのも良いな。

 大剣で突き特化は必殺技として、サブ武器で打撃も有効だ。

 特に防御力の強い敵には刃物より鈍器が有利らしいし……僕の成長の方向性が漠然とだが決まった気がした。

 

「いや、お前ら頑張り過ぎだな。大体150体ぐらい攻めてきたが、30体くらい倒したろ?

ウチの連中が後ろで見学してたぞ、楽で良いってよ。兄ちゃんの背中の大剣は飾りか?」

 

 余韻に浸っていたら直ぐ隣にコッヘル様か居た。剥き身の大剣を肩に担いでニヤリと笑う姿は嫌になるくらいにダンディーだ。

 

「いえ、その……戦いの中で戦い方を掴んだみたいな……そんな感じなんです。

大剣の突きが必殺技ですが守りの固い敵には打撃が有利なんだと……この戦いで何かを掴んだ気がします」

 

 不思議な顔で僕を見たが、軽く肩を叩いて去っていった。

 去り際に「活躍には報酬に色を付けるぜ!」って格好良過ぎるな……

 倒れているゾンビの中で程度の良い服を着てた奴の服を剥ぎ、メイスに着いた汚れを拭き取る。戻ったら再度手入れをしよう。

 

「さて、戻りましょう。死体はこのまま野晒しにするそうです。

全部埋葬か燃やすのは大変ですし、この辺には民家も無いから良いのかな?」

 

「貴方、凄いのね!腕も凄いけど、大隊長に認められたのよ。遠征から帰ったらスカウトされるかもしれないわ」

 

 目をキラキラさせてるムールさんがキモいです。

 いや、美人にキモいって表現は間違ってるかもしれないけど、直感で思ってしまった。

 

 だけど一回スカウト蹴ってるから無理なんです。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 廃村に戻ると微妙な空気が漂っていた。

 

 兵士たちは怪我人は出たが下級神官がヒールを掛けて全員無事、討伐遠征に支障は無いのだが……あのペレの村の農民チームから二人死者が出た。

 しかもリーダーだった若者も含まれている。泣いて縋る女の子は妹さんらしい。

 地面に横たわった二人は瞼こそ閉じているが苦悶の表情をしている、無念だったろう。

 死亡原因は首を噛みちぎられたことによる出血死かな?

 

 深く関わるのも躊躇われたので樹木の下に向かう。置きっぱなしの荷物を点検したが異常は無かった。

 出発まではしばらくあるので少しでも休んでおこう。目を閉じて寝ようとしたが、ムールさんが話しかけてきた。

 

「ねぇ?あの子たちだけど生き残れるかしら?」

 

「無理だと思うけど途中棄権は禁止されている。僕は彼らの戦い方を見てないから何とも言えないけど……」

 

 ゾンビはアンデッドモンスターの中で最下級、物理攻撃が効くし動きも鈍い。ゾンビ程度で苦戦してたら、この先生き残るのは無理だろう。

 

「私は見たわ、まるで素人よ。ゾンビ一体に全員で襲い掛かるのだけど、鎌なんてリーチが短い武器だから……掴まれて噛まれたのよ」

 

 確かにリーチの大切さは十分理解した。敵の攻撃を受けずに一方的に攻撃するために、リーチの長さや盾による敵の攻撃を受け躱すことが大切なんだ……

 

「集団戦なのに統率が取れてないのは致命的だね。攻撃力も低いしリーチも短いか……」

 

 今回の戦いに参加して思ったのは本職の兵士でさえ三人組くらいで戦っている。

 コッヘル様や僕は例外中の例外だ、何故なら五月蝿かったベルガッドさんたちが畏怖の目で見るから……

 変なテンションと女言葉に戻ったムールさんが変り者なんだろう。

 

「自己責任だけど大変だよね。だからと言って誰かが守るのもいけないことだし……」

 

「そういうことね。自分のことは自分で、助けを求められたら対価を貰って助けるわ。誰かの助けを待ってるだけじゃ駄目なのよ」

 

 そう言うとムールさんも外套を頭まで被った。話は終わりということの意思表示だろう。

 先程の会話の内容をもう一度考えてみる……手助けは人の為に成らない?厳しい世界だから甘やかしは駄目ということかな?

 

 ずっと面倒を見ることはできないし、今回は助けても次回は無理だ。

 何か現代で言うと野生動物に餌を与えることが良いか悪いかみたいだね。

 餌付けは動物の為にならない、怪我を治すのも餓死寸前でも餌を与えないのも自然の摂理だから余計なことはするな、が偉い学者さんの意見らしい。

 確かに生物の頂点に君臨する人間の目線で考えれば、正しいのかもしれない。

 生態系を壊すなとか色々意味はあるのだろう。でも動物の目線で考えたらどうだろうか?助かるなら助けてほしいと思わないのかな?

 

 いや、止めよう。

 

 この手の問題は絶対的な正解は無いと思うから、深く考えるのは無意味だ。要は自分の行動に責任を持てば良い。

 安っぽい同情や憐れみでなければ良いと思うんだ……難しいことを考えたためか結論が出たら急に睡魔が襲ってきた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 翌朝、まだほとんどの人が寝てる時に起きて彼らのもとへ向かう。

 廃村の隅にひっそりと墓ができていて、茫然自失で座っている彼らに声を掛ける。

 

「おはよう、寝れなかったみたいだね」

 

 声を掛けても反応が鈍いが、僕を認識したら何人かが立ち上がった。酷く怯えてるように見えるんだけど?

 

「はっ、はい。何でしょうか、僕らに何かご用ですか?」

 

「アンタみたいな達人が、僕らに何か?」

 

 完全にマイナス思考って言うか、ネガティブ?

 

「君たちも生き残りたいだろ?このまま死なれても寝覚めが悪いから、少しだけ戦い方を教えるよ。

別に何かを要求はしないし、やるやらないも君たち次第だよ。どうする?」

 

 八人が顔を見合わせて、それでも誰も何も言わない。30秒くらい待ったけど反応が……

 

「分かりました、お願いします」

 

 確か亡くなったリーダーの妹さんだったかな?何故か挙手をしてから立ち上がり頭を下げた。

 








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