異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第46話

 ロック鳥ゾンビからの素材は羽根と骨が大量に採れた。

 

 特に鳥類の骨は飛ぶために軽量化されているので軽くて丈夫、しかも空洞になっているので色々と需要があるそうだ。

 お楽しみの胃袋からは大量の宝石類が見付かった。何故、糞として排出されないのかが疑問だよね。

 残念ながら美味といわれた肉や卵は全て腐っているので無理。嘴(くちばし)や爪は全て揃っていた。

 

 ベルレの街に戻ってフェルデン様に報告してから売却し討伐遠征参加者には僅かながら支給されるそうだ。

 だが、傭兵連中は支給を待てないので当初報酬80Gが100Gになる。

 僕は基本報酬も上げてもらい、なおかつオークゾンビを倒すと出来高報酬も貰えるので関係無いかな。

 これ以上欲張っても碌なことにはならない。

 

 考えるよりも今は少しでも休むことが大切だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 しばらく休んだのでだいぶ体力が回復した。

 

 目を覚ますと何故か左右にロッテさんとムールさんがしがみ付いて寝ていた。

 

「最近疲れてるんだな……働き過ぎだよね、幻覚が見えるなんて重症だな。これは幻覚、見なかった」

 

 しがみ付かれていた外套を脱いで外に出る。砦から出ると日がだいぶ傾いていた、お腹の空き具合からして午後三時過ぎかな?

 頬に当たる風が少しだけ冷たいな。

 

「お目覚めか?随分疲れてたんだな、まぁ良いがよ。

周辺の探索して見付けたんだかな、砦周辺の石畳が陥没していた場所があった。

下は洞窟に繋がっていた……まだ探索はしてねぇ」

 

 師匠、つまり僕が回復するまで待ってましたか?探索するメンバーに僕とロッテさんが入ってるんですよね?

 

「いつ入りますか?でも夜は危険ですよ、今夜は見張りを立てて明日の朝から調べますか?」

 

 ゾンビ系の定番としては深夜に穴からゾロゾロってありがちじゃないですか!

 

「そうだな……砦にゃ地下なんて無かったし、噂の部下たちが押し込めた最深部って何なんだ?」

 

 僕らの会話を兵士たちが遠巻きに聞いているがちょっと前までの嫉妬の籠もった視線じゃない。

 きっとロック鳥ゾンビを倒して特別ボーナスが出るから周りに対して優しい気持ちになれるんだろう。

 優しさとは余裕が無いと中々難しい、人は切羽詰まると他人を思いやる余裕なんて無いからね。

 

 余裕が無いのに常に優しさを振り撒ける人は……仏陀様くらいじゃないのかな?

 

「噂は所詮は噂ですが、一部に真実が混じっている場合もあります。砦の下に洞窟、しかも石畳で隠されていた。案外本命かもしれませんよ」

 

「嘘に混じるひと欠片の真実か……ミーアが言ってたな、嘘をつく場合は本当のことを混ぜるとバレ辛いってな。

分かった、穴は見張ろう。明日は朝から洞窟探検だぜ!」

 

 噂(うわさ)と嘘(うそ)って字は似てるけど意味は違うと思うけど……コッヘル様、相当ミーアちゃんに入れ込んでますね。

 でもミーアちゃんって不思議な感じがするよな、年相応じゃない落ち着き方と考え方をしている。

 

「了解しました」

 

 洞窟探索は初めてだな、盗賊のアジトも坑道みたいだったが基本的に一本道だったし条件が違うだろう。

 夕飯は兵士たちからの炊き出しが振る舞われた。温かいスープと固いパンが二つだが十分だ。

 

 それに(僕の精気を吸って満腹な)ロッテさんが自分の分も僕に食べろと渡してくれたので久し振りに満腹感を味わえた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「多分だけど深夜に奴らが穴から出てくると思う、テンプレだから……」

 

「「テンプレ?」」

 

「ありきたりな展開ってことだよ。オークゾンビに続いてロック鳥ゾンビが現れた。

普通じゃないよね?次も何かしら出てきてもおかしくないと思う」

 

 昼間仮眠を取らせてもらった小部屋をそのまま使わせてもらっている。勿論?だが当然のようにムールさんとロッテさんが居る。

 寝る前に一応相談をして今夜の対応を決めておく。

 

「穴を見張るのは兵士達が小隊単位で行ってるわ。その分砦周辺の警戒は薄いけど……

砦だけに周辺に障害物がない見晴らしの良い場所だから大丈夫だと思う」

 

 元々敵の侵入を防ぐ目的の建物だから外部に関しての見張りはしやすい。だけど城壁の内部の穴は……

 コッヘル様は小隊単位で警戒させてるのは、何かが現われても直ぐに戦えるからだ。

 この小部屋は建物の出口に一番近いのは、僕とロッテさんが直ぐに飛び出せるためだろう。

 コッヘル様は指揮官で責任者だから最前線で剣を振るわずに後方指揮をする。

 逆に僕とロッテさんが最前線で戦う。

 

 この待遇の良さだって裏を返せば一番危険な役回りだからだよね。

 

「噂で気になってるのが元守将を砦の最深部に封じ込めたって伝わってるじゃん。

でも、この砦って地下は無いのに何故最深部なんだろう?石畳が陥没して穴の開いた場所は結構遠いよ。でも洞窟って……」

 

「この砦の下に通じてる可能性がある?」

 

 ロッテさんが僕の言いたいことの続きをドヤ顔で……無表情で無関心かと思えば、ちゃんと考えてるのか。

 

「そうだよ、この小部屋も床は石畳と同じだ。叩いても石が厚いから下が空洞かは分からないけどね。

用心のために僕らも交代で見張ろう。周りが騒がしくて起きるのと誰かが異変を感じで起こすのじゃ早さが段違いだ」

 

 あの有名なゾンビ映画も監獄に立て籠もった主人公たちを内部から穴を開けてゾンビは襲ってきた。

 幸い三人居るんだ、命懸けの仕事なら保険は掛けるべきだよね?頷(うなず)いて同意を示す女性陣……

 

「先ずは僕から見張るよ、三時間くらいで交代すれば一回ずつで終わるよね」

 

 この世界に時計は無いが夜なら月の位置とかで大体の時間は分かる。

 

「最初は私が見張りをするわ。悔しいけど私は戦力外ですからね、一番危険な時間帯は深夜でしょ?それまでは二人は体を休めるべきだわ」

 

 確かにムールさんの提案はもっともだと思う、この中では彼女が一番弱い……ならば一番危険な時間帯は僕が起きているべきだろう。

 

「分かった、最初はムールさん。次が僕で最後がロッテさん。

人間が相手なら一番気の緩む明け方とかも考えられるけど、アンデッドモンスターなら自分の力が一番高まる時間帯に攻めてくるだろうし……」

 

 念のため、フル装備で仮眠することにする。この遠征が終わったら打撃系武器を探そう。

 この斧は使いやすいが基本的に薪割り用だからイマイチなんだよね。

 

 丈夫で長持ち、汎用性もある武器は便利だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「起きて、交代の時間よ……」

 

 体をゆすされて目が覚めた、交代の時間か。壁の開口から月明かりが小部屋に差し込んでるので周りがなんとなく見える。

 

「ん……おはよう、ムールさん。見張り番ご苦労様、何か変わったことは無い?」

 

 首と肩を回して凝りを解す、両手で顔を擦るとようやく眠気が覚めた。

 

「特に何も無いわね。何回か兵士が私たちの部屋を覗きに来てたわよ。

注意を払ってくれてるのか単なる覗きかは知らないけど……あの子寝相が悪いのよ。

その、スカートが短いから下着が見えそうで見えないの……」

 

 胎児のように丸まって寝ているロッテさん、確かに足を両手で抱えるようにしてはスカートの中身が見えそうだ。

 僕は自分の外套を脱ぐとロッテさんに布団代わりにかけた。ムニャムニャと幸せそうな寝顔だ。

 

「そろそろ深夜に差し掛かるか……」

 

 ゴソゴソと自分の寝床を作り潜り込むムールさんを横目に見ながら考える。

 美女と美少女と一つ屋根の下か……コッヘル様に口止めを頼み込むしかないな。

 直ぐに寝息を立てる彼女の寝顔は、いつもの凛々しさが無くて年相応の可愛さがあった。壁の開口部分に座って外の様子を見る。

 砦には小部屋や大部屋があるから全員中に入れるのにほとんどが外で寝泊まりしているみたいだ。

 幾つもの焚き火が焚かれ数人単位で巡回している、見張りはバッチリだろう。

 まぁ明日は洞窟探索隊以外は待機で休みみたいなモノだからな。逆に今夜はバッチリ警戒しておこうってことか?

 

 暫く座って外を見ていると農民チームの妹ちゃんが近付いてきた、見張りの交代だろうか他に二人……全員女の子だな。

 ここにはロッテさんとムールさんが寝ているし話し声で起こしたら悪いので外に出る。

 ゆっくりと近付いてくる妹ちゃんは目の下の隈も取れていて見た目は素朴で可愛い女の子だ。

 

「こんばんは、見張りの交代かい?」

 

 残りの距離が5mくらいのときに僕から声を掛ける、小声でだ。

 

「はい、これから見張りです。

色々教えてもらったのに、まだちゃんとしたお礼もしてなかったから……その、ありがとうございました」

 

 ペコリと体を90度に曲げてお礼を言ってくれた、残りの二人も一緒にだ。

 

「気にしないで良いよ。僕が好きでしたことだからね……」

 

 病んでると思われる彼女の神経を逆立てないように軽く微笑んでおく。別にお礼は要らない、関わり合いにもなりたくないのが本音だ。

 妹ちゃんは何か言いたそうだったが、他の二人に連れられて行ってしまった。途中で振り返って頭を下げられたので小さく手を振っておいた。

 

 遠目でも分かるくらいに笑ってくれたが、不思議と背中から汗が流れ落ちる……

 

「ロック鳥ゾンビにだって恐怖を感じなかった僕の手が震えている?まさかな、彼女は純朴な田舎娘だぞ。まだ鍛練が足りないのか……」

 

 僕から関わったのに今更距離を置きたいとは失礼な考えだよな。農民チームは知らないうちに五人に数を減らしていた……

 度重なる襲撃に耐えられなかったのだろう。

 気を取り直して元の場所に腰掛けて夜食用に貰った干肉を懐からだしてチビチビと噛る。

 これは肉を濃い塩水に漬けて陰干ししただけだが、噛めば噛むほど味が染みだしてくるので美味い。

 

 味が濃いから喉が渇くので皮袋の水筒から直接水を飲む。

 

「うーん……」

 

 寝言?かと思ってムールさんを見ると布団代わりの外套を蹴飛ばしているぞ。貴族のお嬢様なのに寝相は悪いんだな。

 彼女に外套を掛け直してあげたときに蒸せるような体臭を嗅いだ。

 

「やはり、やはりだ。オッサンは汗臭いのに女性は汗をかいても良い匂いだ、何故なんだろう?」

 

 因みにロッテさんは体を丸めているために頭しか見えないが、汗もかかないみたいにサラサラの髪の毛が頬に被っている。

 彼女は無臭に近いな。元現代人としては早く風呂に入って体を洗いたい、髪の毛を洗いたい。

 僕は自分の体臭が気になって仕方がないんだけどね、脇の下や首まわりが特に気になるんだ。

 

「討伐遠征は洞窟を調べ終わるまで帰らないだろうな。水浴びか体を拭きたいが危険な場所じゃ無理だし、当分臭いままか……」

 

 一応持参した布を支給された水に浸して顔や首まわりを拭いた、少しだけ楽になったかな。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 月が天辺辺りに差し掛かったとき、それは大地に開けられた穴より現れた。

 最初からモンスターが現れると想定していたのに、ソレが地上に現れたときに兵士たちは呆然として見上げてしまったんだ。

 誰もがソレから発せられた威圧感に呑まれてしまい、声も上げられず指一本も動かせないでいた。

 呆然とする人間たちを見渡したソレはニタリと嫌らしい笑みを浮かべる。

 

 そして、ソレは天に向かって咆哮した……

 

 重低音で周囲に響き渡る咆哮!

 

 漸く金縛りを解かれたみたいに兵士たちがワラワラと逃げ出し始めた。

 

 ソレは悠然として体を震わせながら砦の方に向かって歩いていく。

 

 ドラゴンゾンビ、地上で最強種のモンスターの最悪なアンデッドだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「なんだ?今の叫び声は?」

 

 寝ずの見張り番をしていたのに、近くで獣の咆哮に似た叫び声が聞こえた。

 まさかと思い穴の方を見れば、小山のようなナニかがこちらに向かって悠然と近付いてくるのが見えた。

 

「なんだ、何なんだアレは……まさか、ドラゴンゾンビか?」

 

 未だ30m以上離れているのに、何故かソレと目が合った気がした……

 


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