異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird
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第47話

「ドラゴンゾンビだって?まさか最強種がアンデッド化とか最悪だ。しかも砦に向かって来てる……」

 威圧感が半端無いぞ!

「ロッテさん、ムールさん起きろ!ヤバい相手がこっちに向かって来てるぞ」

 声を掛けると二人とも飛び起きた!ロッテさんから外套を受け取り砦の外に飛び出す。
 一瞬だが砦の中に籠もろうかと思ったが逃げ道が無いから止めた。
 ドラゴンゾンビは見張り番の兵士達に襲い掛かっている。
 鋭い前脚の爪と牙、それと太く強靭な尻尾の一撃に粉砕される兵士達……

「流石はアンデッド化しても地上最強種のドラゴン……強さが桁違いで笑える。
ムールさんは距離を取るんだ。僕とロッテさんはコッヘル様の元に行くよ。
逃げるか戦うかはコッヘル様次第だ。だが所詮はデカいトカゲだから勝てない訳は無い」

 落ち着いて見れば確かに強いが尻尾まで含んでも全長7m位のデカいトカゲだ、直立しても4m程度。
 強靱な防御力を誇る鱗も所々剥がれているので、そこを狙えば攻撃は効きそうだな。
 問題はブレスを吐けるのかだが、これは分からない。

 取り敢えず周囲を見回しコッヘル様を探すが……居た!兵士達を取り纏めているので駆け寄る。

「コッヘル様、ドラゴンゾンビとは厄介な相手ですが……殺りますか?」

 コッヘル様も慌ててはいるが夜間襲撃は想定内の事だからね、ちゃんと完全装備だ。

「兄ちゃん、相手はアンデッドとは言えドラゴンだぞ。簡単に殺るとか大丈夫か?
アレは遠巻きに遠距離攻撃で弱らせてから接近して一気に止めを刺すしかないぜ」

 コッヘル様は落ち着いているが、周りの兵士達を見れば恐怖に耐えているのが分かる。
 何か有れば逃げ出すかも知れないぞ、現に傭兵達は殆どが逃げ出してる。

 僕もムールさんを逃がしたけどさ……

「大丈夫、たかがデカいトカゲですよ。落ち着いて戦えば勝てます!
幾ら防御力が凄いドラゴンとは言え腐って鱗が剥げてる部分が多い。
先ずは僕とロッテさんが牽制の為に接近しますから、兵士達は死角から槍で鱗の無い部分を攻撃して下さい。
さぁ急がないと被害が増えるだけです!」

 ニヤリとダンディーに笑うコッヘル様……この渋さは年齢を重ねないと出せないな。

「おぅ!皆、聞いたか?ドラゴンなんてデカいトカゲだとよ。しかも腐ってやがるんだ。俺達なら勝てるぜ!
ヨシ、全員槍を装備だ。奴を取り囲んで攻撃するぞ、味方の敵討ちだぜ!」

 小隊一つは全滅してしまったが貴重な時間を稼いでくれた。

「ロッテさん、行こう!」

「ん、僕は何処までも君と一緒に行く。君は必ず僕が守る」

 モーニングスターを軽く持ち上げて、端から聞けばプロポーズみたいな台詞を言われた……

「嬉しいけど多大な誤解を周りが……いや、有り難う。それじゃ行くよ!」

 自分も槍を一本貰いゾンビドラゴンに向かって走りだす。
 奴は悠然として僕等が近付いて来るのを待っているが、その余裕が僕等の付け入る隙だと教えてヤルよ!
 ゾンビドラゴンの手前8mで止まる、この距離なら尻尾の一撃は届かない。

 見れば見る程に腐り掛けてるな……顔も右側が腐り落ちていて頭蓋骨が丸見えだし眼球も無いぞ。ん?眼球が無い?

 試しに右側に回り込むと僕の動きに合わせて首を動かした、つまり死角が有るんだな。

「皆、コイツ目の無い右側が死角だ!僕等が左側から牽制するから死角から攻撃して下さい。鱗の無い部分に槍を刺して!」

 そう言って今度は左側に移動する……ヨシ、首を回して僕等を見てるな。

「ロッテさん、兵士達の攻撃に奴が注意を向けたら攻撃するよ。ロッテさんはモーニングスターで奴の膝を砕いてくれる。
僕は槍と斧を鱗の剥げた脇腹に投擲(とうてき)したらツヴァイヘンダーで同じ様に脚を攻める。
動けなくしてから頭を潰そう」

 直立すると4m近いから急所の頭部まで攻撃が届かないんだ。後脚にダメージを与えて立てない様にしないと……

「ん、分かった。君って凄いね、普通ドラゴンを見たら逃げ出す」

 尊敬の眼差しが痛い……

「いや、怖いよ。でもアイツ、僕か君から視線を外さない。他の奴と戦っているのにだよ。どうやら僕等に用が有るらしい。
逃げ出すと後が怖そうだ、ここで倒した方が良いって思うんだ」

 両手の斧を握り直したが掌に汗がビッショリで気持ち悪い。

「そうね、妖魔は良くも悪くも君に惹かれる。君は私達の特別だから……」

 特別?精気が?女性妖魔以外にも?会話しながらも奴の左側に移動しながら隙を伺う。
 成る程、僕を見詰める瞳が情熱的だね、思わず食べちゃうみたいな?涎たれてるぞ、いや腐液?
 死角の兵士達が攻撃を開始したみたいだ。奴の注意が一瞬逸れる。

「チャンスだ!」

「チャンス?」

 しまった、こっちには無い言葉だったか?攻撃した兵士達から注意を逸らす為にも攻撃の手を緩める訳にはいかない。
 接近して右手の斧を奴の左膝目がけて振り下ろす!

「ヨシ、刺さった!」

「追撃!」

 ロッテさんのモーニングスターが斧ごと左膝を粉砕する。たまらず悲鳴を上げるドラゴンゾンビ!

 マズい膝を曲げたのは尻尾で攻撃する気か?残りの斧を奴の顔目がけて投げつけて後に後に下がる!
 顔を仰け反らせて避けたせいか尻尾の軌道が上に逸れた。風を切り裂いて頭上を通過する尻尾は確実に即死級の破壊力が有る。

「あ、危なかった……当たれば即死だったね」

「左脚は潰した、次は右脚……」

 腐ってもドラゴン、強いや……ってドラゴンゾンビは最初から腐ってるよ。オヤジギャグを言ってしまった。

 気を取り直して奴を観察する……左脚を粉砕した為に移動が困難みたいだ、その分用心深くなって周りを良く確認している。
 故に攻めあぐねている、近付くと威嚇して尻尾を振ってくるんだ。
 投擲用の斧は二本共に使ってしまった、残りはメイスとツヴァイヘンダーだけだ。槍は消耗が激しく兵士に渡してしまったんだ。

「消耗戦ならアンデッドの方が有利だ。此方の体力が有る内に倒そう」

 腰からメイスを引き抜き右手に構える、狙いは太さが30㎝は有る尻尾の付け根だ。
 丁度鱗の剥げている場所が有るのでツヴァイヘンダーなら叩き切れるだろう。

「ロッテさん、僕が気を引くからら自分のタイミングで攻撃して。兵士さん、牽制お願いします!」

 左に回り込みながら奴の顔目がけてメイスを投げ付ける。奴の手は短いから避けるには首を振らなければならない。
 僕から視線が外れた時に兵士達が腹に向かって槍を突き出す。
 ダメージを受けた事で相手を見る為に体を捩った隙に尻尾の付け根にツヴァイヘンダーを振り下ろす!

「グォォォォォッ!」

 見事に尻尾を切り飛ばした。すかさずロッテさんが右膝にモーニングスターを振り下ろす。

「グォォォォォッ!」

 ロッテさんの追撃のお陰で後は手順を間違えなければ勝てる。両足を無くした為に移動は出来ず、尻尾が無いので距離の有る攻撃も出来ない。

「コッヘル様、止めをお願いします!」

 ガリガリと頭を掻いて困った感じを醸し出しているが、僕だって目立ち過ぎるのは困るんです。

「あー……兄ちゃん、気を使い過ぎだぞ。まぁ後は任せて下がってな!野郎共、止めを刺すぞ!」

「「「ウォー!」」」

 コッヘル様の号令の下、兵士達がワラワラとドラゴンゾンビに群がる。既に驚異は牙だけだから攻撃範囲にさえ注意すれば問題無く倒せるだろう。
 彼等を見ながら城壁から崩れただろう手頃な岩に座る。
 直ぐにロッテさんと近くで様子を伺っていたムールさんと、何故か妹さんと二人の女性も集まってきた。
 どうやら傭兵チームで逃げ出さなかったのは彼女達だけみたいだ。

「ロッテさん有り難う、助かったよ。流石は地上最強種の元ドラゴン、アンデッド化しても強かった。
もっとフレッシュだったら倒せなかったと思うよ。片目が見えなくて鱗が剥げてたから何とかなったんだ……」

 冷静に考えて無理じゃないと思い戦ったが、実際はギリギリだった。詰めを間違えれば死んでいたな……

「ん、気にしないで。君を守るって僕は約束したから……でもロック鳥ゾンビにドラゴンゾンビって立て続けに大変だった」

 確かに濃い一日だった、普通に考えれば異常な遭遇率だ。

「そこ!二人の世界を作らないの!私の立場が無いじゃない!」

「私達もです、遠目で見ていただけですから……」

 ムールさんと妹ちゃんが少し拗ね気味だけど適材適所だから仕方ないじゃん!

「いや、適材適所だから……今回はロッテさんが居なければ危なかったよ。
僕もコッヘル様も斬撃系だから打撃系のモーニングスターは本当に有り難かったんだ。
ドラゴンゾンビの両膝を砕いたのはロッテさんだからね」

 尻尾は何とか切れたけど膝は関節部分で丈夫だからツヴァイヘンダーと言えども両方粉砕するのは出来なかった。

「皆さん凄いんですね。私達、普通の農民だから……兄さんも青年団の皆も死んでしまって、うっ……ううう……」

 妹ちゃんに泣かれてしまった、確かに兄さんを最初に数を半分に減らしたらしいし、今は女性三人しか居ないか。
 連れの女性二人が妹ちゃんを慰めて泣き止む迄、僕は黙って見ているしか出来なかった……
 何か分からないが下手に慰めると危険な気がしたのと、一応現在も戦闘中なので万が一の時に助けに行く為にコッヘル様達を見てなければ駄目だったから。
 暫く居たたまれない雰囲気だったが、ドラゴンゾンビの断末魔の叫び声が響き渡った事で切り替える事が出来た。
 どうやら止めを刺せたみたいだな、兵士達が勝鬨(かちどき)を上げている。
 
 また素材剥ぎで忙しくなるかも知れないね。

「何にしても勝てて良かったけど、今回は被害が大きい。ドラゴンゾンビに見張り番の一小隊は全滅させられた……一旦引き揚げかな?
でもコッヘル様の立場では洞窟を調べないで放置は無理か。やはり明日、洞窟を探検するしかないか……」

「まだ戦いは続くんですか?」

 妹ちゃんが縋る様に聞いてきた、もう命懸けの戦いなんて嫌だろう、瞳に涙が溢れて今にも零れそうだ。

「うん、洞窟の調査次第だろうね。まだ洞窟内に敵が居れば戦う必要は有る。でも被害も大きいから一旦撤収かも知れない」

 こればっかりは雇われ傭兵には決められない事だから正直に言うしかない。

「未だ終わらないんですか?」

 多分だが妹ちゃん達は心細いんだろう、肉親と知り合いの死に見た事も無い敵との戦い。先の分からない遠征じゃストレスも半端無いだろう。

「君達の面倒は出来るだけみるから大丈夫だよ。勿論、遠征中の安全についてはだけどね……」

 遠征後の事は知らないけど、せめて遠征中位は気を遣ってあげよう。じゃないと農民チームは全滅しそうだし……

「有り難う御座います、本当に有り難う御座います。私達、凄く心細かったんです」

 妹ちゃんに拝む様に感謝された……
 この話の流れで突き放すのはどうかと思ったので言ってしまったが、ムールさんは気に入らなかったのだろう、腕を軽くツネられた。
 前にも少し話したが自己責任の件なのは分かるが、それに気付いた妹ちゃん達とムールさんは微妙な溝が出来たみたいだ……
 ロッテさんは我関せずみたいだけどね、流石は僕っ娘クール美少女。因みに他の傭兵達もチラホラ戻って来ている。

 あの、誰だっけ?

 悪運だか強運だかのベルガッドさんも初日一緒に見張りをしたバールさんとズールさんもちゃんと生き残っていた。
 オッサン五人組は四人に減っていたな……
 暫くしてお祭りみたいに素材の剥ぎ取りを開始した兵士達を横目に、コッヘル様に断りを入れて休む事にした。
 既に東の空が薄らと明るくなり初めている……
 もう夜も明けるだろうから新しいアンデッドモンスターが穴から出て来る事は無いだろう。