落ちてきていきなり文句をつけられはしたが、それ以降は二人(?)とも友好的だったと言えるだろう。
キャラドリーマーは未だにぶつくさと言いながらではあったが自己紹介をしてくれたし、アズリエルは本当に友好的で握手まで求められてしまった。
何と言うか、人を疑おうとしない辺りアズリエルは本当にいいやつなんだなって心から思えた。
まぁ、そんなアズリエルと比べればキャラドリーマーに対する印象はいい物ではなかったが、あれは比べる方が良くないだろう。
初対面でアズリエルほどよくしてくれる存在もあまりいないものだ。
「で、お前の名前は? せっかく名乗ったんだ。こちらも名前を聞かなきゃ平等じゃない」
「あ、そうだね。名前を聞くのをすっかり忘れていたよ」
当然、名乗り返した。
偽名でもなんでもなく、何の面白みのないその名前を。
「――なんというか、普通だな」
「ちょっとキャラ、失礼だよ」
「私は正直な感想を言っただけだ」
目の前のペアが見せる仲睦まじい様子は見ていて飽きないが、それでも限界はある。
キャラドリーマーも当初の目的を思い出したのか、いくらか無造作に足元に生えている花を引っこ抜きいてボクに背中を向ける。
「あ、もう帰るの? だったらせっかくだしこの地下世界を案内しながら行こうよ」
「私は計画の実行で忙しいんだ。……アズ、オマエも私の協力者なんだからそんな余裕はないはずだが?」
「あう……ご、ごめんね? いきなりで悪いけど案内してる余裕はないみたい」
何と言うか、二人とも忙しそうだがどうにもちぐはぐだ。
そんな感想を胸に秘めていたら、少し離れたところでアズリエルが追加でボクに伝えてくれる。
「えっと、僕達の家に暮らしてもらうことになるから、付いてきて!」
そう言う情報はもっと早くに行って欲しい。
そんなことを想いながらもボクは似たような背丈をした二つの背中を追いかけていく。
結構長いこと歩いたと思う。
途中で雪の降る町や滝の流れる暗闇、溶岩の溢れる岩場、そして研究室を抜けてようやく彼らの家に着くようだった。
道すがらに眺めていただけだが、この地下世界で暮らしてるモンスターたちはとても楽しそうだった。
地上の世界ではモンスターなんてもうすでにまやかしとしか思われていなくて、そしてとても凶暴な怪物として語り継がれているというのに。
「ついたよ、ここが僕達の家さ!」
「さて、じゃあ私は早速準備に取り掛かるからな」
「ちょっとキャラ、急ぎすぎだよ。計画の実行はまだ先なんだからもう少しゆっくりしてもいいでしょ?」
「確かに計画にはゆとりを持たせているが、しかしそれと計画の進行を遅らせることはイコールではない。計画を前倒しにできるのならば前倒しにするべきだ」
……少ししか見ていないが、キャラドリーマーという存在がとてつもなく頑固者だということはよくわかった。
そして隣で頭に疑問符を浮かべているアズリエルは今の話があまりよくわかっていなさそうだ。
なんというか、件の『計画』とやらもきっとこの調子でキャラドリーマーがまくし立ててアズリエルを引き込んだのだろうなと、さしたる時間を過ごしていないボクでもわかる。
「そういうわけだ。悪いが、説明は他を当たってくれ」
そんなことを言われてしまっては仕方がない。おとなしく他を当たるとしよう。
きっと、この時にボクは『計画』について質問をするべきだったのだ。
しかしボクはそんなことをしなかった。