ニンゲンにボクは殺される   作:波津木 澄

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よんほんめ みらいへ

 キャラドリーマーが死んだ。

 言葉にしてしまえばたったの15文字にも満たないような内容だ。

 たったそれだけの事実に、ドリーマーの姓を持つ彼らは打ちひしがれた。

 劇的な変化があったわけではない。

 もとより苦しんでいたその体の限界が来たという事なのだろう。

 その瞬間の事は、今でも瞼に焼き付いていて……すぐに思い出せる。

 

 


 

 

「――ぐ、ごほっごほっ」

 

「キャラ!!」

 

 キャラドリーマーが激しくせき込む。

 その音を聞きつけた彼らが集まってくる。

 もとからこの部屋の中にいたボクは隅に追いやられてしまった。

 追いやられてしまった隅でボクは彼らを見る。

 

「キャラ! ケツイを抱き続けるんだ!!」

 

 必死な顔で彼らはキャラドリーマーに向けて言葉を投げかける。

 しかしそんな想いがあっても現実は覆ることがなかった。

 ゆっくりと、しかし確かな足取りでキャラドリーマーの命は弱っていった。

 一歩一歩、確実に。確実に、キャラドリーマーの死が近づいていた。

 

「ごほっごほっ……ねぇ」

 

 キャラドリーマーが静かにボクを、見る。

 いや、違う。きっとボクではなく、ボクの前にいるアズリエルを見ていた。

 弱り切っているとは思えないその力強い眼で、見ていた。

 

「頼、んだ」

 

「――まかせてよ、キャラ」

 

 そのニンゲンは確かにそう言って息を引き取った。

 死んだという事実を受け入れられずに皆がニンゲンに声をかける中で泣きそうな声でアズリエルは確かにそう呟いた。

 けれどどうしてか、ボクにはその言葉がアズリエルに向けられただけではないように感じてしまった。

 

 みんなが悲しみに溺れている中で、アズリエルは急激にその体を成長させた。

 文献では読んだことがあるし、一度質問をしたことだってあったその現象。ニンゲンのタマシイを取り込んだモンスターがどうなるのか。

 それを目の前で見ていた。

 

 そしてボクの中で直前に聞こえたアズリエルの呟きがリフレインして、そして点と点が繋がった。

 ずっと疑問に思ってはいても頭の片隅に追いやっていたキャラドリーマーの言う『計画』。その詳細まではわからなくても、これが『計画』の一端だと気づけた。

 ボクは止めようとした。

 アズリエルまでもが行ってしまえば残された二人がどうなるのかと思って。

 けれど、結局のところボクには彼を止める力はなかった。

 

 しばらくして、アズリエルドリーマーは返ってきた。

 ただし、その体にいくつもの傷を負った状態で。

 ボクの落ちてきたその場所で、確かに横たわっていた。

 そしてその場所で彼が塵になっていくのをボクはただ見守っていた。

 

 彼と、そしてあのニンゲンの最後の言葉を聞いた。

 

 その言葉を聞いて、そしてボクはまた新しく『約束』を交わした。

 

 キャラドリーマーが死んだ。そしてアズリエルドリーマーまでもが消えてしまったという事は深い悲しみを呼んだ。

 しばらくの間はみんな悲しみに溺れていた。しかしそんな悲しみも長くは続かない。

 人は、いや。人でなくとも感情は長くは続かない。

 

 確かに悲しかった。

 その事実に違いはない。

 

 確かに苦しかった。

 その事実にも違いはない。

 

 確かに、あのニンゲンに対してあまりいい感情を持ってはいなかった。

 けれど、それは悲しみを持てないことと同義ではない。

 

 ボクは確かに、そんな状態ではあったが徐々に回復していった。

 その回復は彼らよりも少しだけ早かったけれど、それでもボクの後を追うように彼らもまた回復していった。

 

 

 

 ――そう思っていたんだ。

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