ニンゲンにボクは殺される   作:波津木 澄

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ろくほんめ こわれた

 ボクがボクで無くなってから、もう随分と日が経ったと思う。

 あれからもずっと、ずっと彼らは前へは進めていない。

 つらい現実を受け入れようとせずに、彼らはただ甘い甘い夢の中を歩んでいる。

 きっと、もうダメなのだろうとそう判断してしまいたくなるくらいには、ずっとそのままだった。

 

 彼らは変わらない。

 だったら、変わるべきなのはやはり、ボクなのかもしれない。

 彼らが変わらない分だけ、ボクが変わればそれで解決ができるのだろう。

 だって今更彼らの心をもう一度傷つけるなんて恐ろしいことだ。

 彼らの大切な存在と、ボクという矮小な存在。その二つはもはや比べるまでもないことだ。

 世界に必要とされている彼らと、ボクっていうちっぽけなイレギュラー。

 誰しもに愛されている彼らと、ボクという誰にも見られなくなった存在。

 ほうら、比べるまでもない。

 

 ―――ピシリ。

 

 でも、もうそんな道理だってどうだっていい。理屈なんて知ったことじゃない。

 ただ、ボクが彼らを殺したくないから。そして、彼らに殺されたくないから。

 だから、ボクは『キャラドリーマー』という存在に殺されることにした。

 多分、この胸に秘められている『ココロ(ソウル)』の砕けるその時まで、ずっと。

 

 彼らの買ってきてくれた緑と黄色のシャツを着て。

 いつも変わらずにっこりと笑って。

 時々イタズラなんかをしかけて日々を刺激的にして。

 そうして、『楽しい』って感じるんだ。

 

 本当は嫌だったはずなのに、おかしなことだよね。

 本当はイタズラなんて嫌いだったはずだ。

 本当は誰にも見られないなんて大嫌いだったはずだ。

 本当はボクでいたかったはずだ。

 本当は、事実を受け入れさせなければいけなかったはずだ。

 

 ―――ピシリ。

 

 でも、そんなことがどうでもよくなって、考えるのが嫌になって。

 考えるなんて行動がただの無駄にしか思えなくて。

 ただの演技だったはずなのに、今では心の底から楽しいって思えてきてる。

 心の底から、ボクは……いいや、私は『キャラドリーマー』なんだって思えてくる。

 

 そんなことを思っていたら口から大きな笑い声が出てきた。

 なにも可笑しなことなんてないのに、なぜだかとても笑えて来たんだ。

 

 ―――ピシリ。

 

 その笑い声につられて彼らまでもが集まってきて、そして同じように大口を開けてみんなで笑った。

 笑って、笑って、笑い飛ばして。

 

 今が幸せだって、そう伝えるみたいに笑顔を飛ばした。

 この地下世界で生きる彼らに向けて。ずっとずっと笑いかけた。

 笑い過ぎて涙が出てしまうほどにみんなで笑い続けた。

 

 ――――――パキリ。

 

 とても静かに、とても呆気なく、とても儚く。

 本当なら大切なはずの『ナニカ(ココロ)』が砕ける音がした。

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