魔法少女リリカルなのはStrikerS~竜巻は翼を強くする~ 作:超淑女
機動六課特別訓練場。
廃ビルの屋上に立っているなのは。
モニターで、フィールドに立つ6人を見ていた
スバルがリボルバーナックルを装備、ティアナはアンカーガン。
エリオは槍ストラーダ。キャロはグローブの形をしたケリュケイオン。
そして特に見ているのは残り二人。
友人“八神はやて”曰く管理局の厄介者分隊。
『いわば、あの二人は厄介者の新人ってわけやな』
そんな言葉を聞けば、気にもなる。
それにしても、二人のデバイスは、ふつう。
クリスは大鎌型デバイス。
白い大鎌を両手で持っている。
カートリッジが刃のついている部分の反対部分についていた。
一方、ミコトのデバイスはスナイパーライフル型。
それを肩に担いでいた。
黒く長い銃身が鈍く輝く。
とりあえず、なのはは気持ちを切り替えた。
「よしっと、みんな聞こえる?」
『はい!』
通信機器から聞こえる声。
一人だけ元気のない声が聞こえたが、ミコトだろう。
「じゃあ、さっそくターゲットを出していこうか…まずは軽く12体から!」
その言葉と同時に振り向くと、通信士兼デバイスマイスターのシャリオが空中モニターのパネルをたたきだした。
楽しそうな顔をするシャリオ。
「動作レベル1、攻撃精度2ってとこですかね」
「うん」
それと同時に屋上から、肉眼で六人を捕らえた。
なのはが楽しそうに笑うのは、これからの訓練を思ってだろう。
彼女は自分が育てる生徒を、もう一度見た。
廃墟を、アサギが走っていた。
特別訓練場の一角にたたずむビルに上っていき、扉を開ける。
既に二人がそこには居た。
「あぁ、アサギさん」
スターズ分隊部隊長、高町なのはがそこに立っている。
振り向きアサギに軽く敬礼。
共にいたシャリオも軽く会釈。
「始まった?」
「まだです。今訓練の説明をしたので…はじめるところですよ」
なのはの言葉に、アサギはいつも通り笑顔でうなずいた。
スキップするようにハイテンションでなのはの横に立つと、モニターを見る。
新人六人。
緊張した顔をしている。
「みんな~♪」
通信を通して、6人にアサギの声がとどく。
訝しげな表情をするティアナに、無表情のミコト。
嬉しそうな顔をするクリスとスバル、キャロ。
苦笑するエリオ。
反応はそれぞれで、なのははその反応を見ていた。
「きゃる~ん☆頑張ってね♪」
再びフォワード計六名からの返事が聞こえた。
アサギがなのはの方を向いて頷くと、それと同時にシャリオも頷く。
「それでは!」
シャリオの声、一人身構えるミコト。
「ミッション!」
なのはの声、それでようやく身構えるミコト以外のメンバー。
「すた~とっ♪」
そして、アサギの声で調子を崩された。
ミコトがスコープを除くがすでに遅い。
去るガジェットの背中しか見えず、どれもまがって姿をくらませた。
他のメンツがようやく体勢を整え、それぞれの配置へと走っていく。
機動六課休憩所。
そこに一人、ミナト・ミルフォードが座っていた。
片手に空中モニターを操作している。
流れるような黒い髪。
大和撫子という言葉が似合う彼女。
黒いパンストにつつまれた細い足。
「あらあら…」
厄介者分隊のトルネードに入れられた二人の新人。
その二人の顔が映るモニター。
そこには数々の経歴がかかれていた。
不吉な文字も多々ある。
その中の一つで気になるものがあった。
クリスのものだ。
「なにかしら?」
観覧不可の押収された映像データ。
それを観覧できるのは、相当な権限を持った人間のみ。
少し考えて、閃いた。
「アサギさんに開いてもらいましょう」
そうしましょう。と彼女は立ち上がるとモニターを消す。
優雅に歩く彼女。
その清楚な雰囲気。
管理局の厄介者。
休み時間も終わりだ。
彼女は再び、似たものが集う仕事場に向かう。
機動六課特別訓練場。
ガジェットが四機、ビルの谷間を通って逃げていく。
だが、その背後からはスバルが迫っていた。
飛び上がり、その拳の先に魔力を集める。
スバルの中距離技、リボルバーシュートだ。
「やぁぁぁっ!」
魔力弾は衝撃波を纏って飛ぶが、ガジェット四機はゆるやかに動いて回避。
その先に進んでいく。
スバルが両目を見開いて驚く。
「なにこれ!」
着地して、止まるスバル。
風を切って進むガジェットを見て驚いた表情を見せた。
「動きはやっ!」
颯爽と逃走するガジェット。
それらの前方には、エリオが立っていた。
ガジェットはそれを認識すると、前方につけられたレンズからレーザーを放つ。
エリオは走る。
そのレーザーを避けながら走り、跳んだ。
横のビルを足場にもう一度跳ぶと、ガジェットに向かって二度ストラーダを振った。
金色の斬撃が二撃。
だが、それも回避され、横のビルに直撃。
「だめだっ、ふわふわよけられて…当たらない」
そんな光景を、ビルの真上から見ていたティアナ。
同じくそれを見ているのはキャロとミコト。
「前衛二人分散しすぎ! ちょっとは後ろのことも考えてっ!!」
『は、はい!』
『ごめん!』
二人の謝罪を聞くと、ティアナはビルから身を乗り出してたった今ビルの前を通過した四機に銃口を向ける。
そういえばクリスはどこに行ったのだろう。わからないが、これが終わってから考えればいい。
銃口に集まるオレンジ色の魔力。
それは魔力弾へと加工されていく。
「ちびっこ! 威力強化お願い!」
「はい!」
ティアナの言葉に、キャロは腕を前に出す。
グローブ型デバイス『ケリュケイオン』
ピンク色の宝石が輝く。
「ケリュケイオン!」
『Boost Up. Barret Power.』
腕を振るキャロ。
それと同時に、ティアナの魔力弾はさらに大きさを増す。
ふと気になったキャロが、遠慮がちにミコトを見た。
「えっと、ブラックフォード一等陸士は…撃たないんですか?」
ビルの下にいるガジェット四機を細い瞳で見続ける。
「無駄なことはしない主義で…」
その一言。
キャロが苦笑するが、ティアナは内心どうでもよかった。
ここで一人で四機撃破できれば―――
「ランスターの弾丸の証明になる!」
そして撃った。
四度引かれたトリガー。
放たれる四発の魔力弾。
ガジェットは止まったまま魔力弾を見ていた。
「(舐めてくれるじゃない!)」
それらはまっすぐガジェットに放たれる。
だが、ガジェットの目前で消え去った。
それを見て驚愕の表情を見せるティアナ。
「バリア!?」
「違います」
キャロの言葉。
そしてそれに続くミコト。
「フィールド系…魔力がかきけされた。あれは」
そこで、なのはの通信が入る。
『そう、ガジェットドローンにはちょっと厄介な性質があるの』
ミコノのように変わらぬ表情。
そのまま言葉を解説を続ける。
『攻撃魔力をかき消すアンチ・マギリング・フィールド。AMF』
背を向け、逃げていくガジェットドローン。
それに気づいたスバルが、空中に蒼い道、ウイングロードを作った。
『普通の射撃は通じないし』
走りだしたスバル。
「失礼します!」
いつの間にか現れ、ウイングロードに乗って共に走り出すクリス。
それに気づいたティアナ。
『クリス!スバル!バカ危ない!』
スバルの隣を、大鎌を背負ったまま走るクリス。
もちろんクリスは高速移動魔法を使っているのだろう。
スバルと同じスピードで走っている。
『それに、AMFを全開にされると―――』
突如、ウイングロードが山なりになる。
焦るスバルとクリス。
「えっ! ちょっ、うわわわわっ! うわぁぁぁぁっ!」
レールに沿って跳んでいくスバル。
クリスも減速できずにスバルと共に跳ぶ。
二人仲良くビルの中に飛んで行った。
『飛翔や足場作り、移動系魔法の発動も困難になる』
ビルの中のスバルが立ち上がる。
『スバル、クリスティアーネ、大丈夫?』
なのはの言葉に、クリスも上体だけ起き上がる。
両足の間に大鎌の刃が刺さっているのを見て、肝を冷やす。
「痛っ…なんとか」
「だだだ、大丈夫れす!」
スバルの言葉に、クリスも青ざめたまま言った。
クリスの目の前にモニターが出てきて、アサギが笑う。
『大丈夫?』
「はっ、はい!」
返事をするとアサギは笑顔で頷く。
モニターが消えて、次はシャリオの声が聞こえた。
『まぁ、訓練中ではみんなのデバイスにちょっと工夫をして、疑似的に再現してるだけなんだけどね?でも、現物からデータを取ってるし、かなり本物に近いよ?』
その次になのは。
『対抗する方法はいくつかあるよ。どうすれば良いか、素早く考えて、素早く動いて!』
その言葉を放った時には、すでにティアナはモニターを見ていて、その横にはキャロとミコトが立っていた。
「ちびっこ、名前なんてったっけ?」
「キャロであります」
ミコトが横目でキャロを見る。
少したじろぐが、初見ほどではない。
「あと良く喋るアンタは?」
皮肉を込めて言ってみたが、ミコトは無表情。
「ミコト」
静かに、無表情でそう言うミコト。
喋りかければしっかり返す。
頷いたティアナがキャロに聞く。
「キャロ、手持ちの魔法とそのチビ竜の技で、なんとかできそうなのある?」
チビ竜とは、キャロの横で翼をパタパタとしている竜の子供。
「試してみたいのが、いくつか」
その提案に頷くティアナ。
モニターを消す。
「私もある。ミコトは?」
「同じくだ」
少し笑みを浮かべるティアナは、念話で相棒に連絡を入れる。
<スバル?>
ビルの外へと出てきたスバルは、その意図を理解していた。
「OK! エリオ、あいつら逃がさないように先行して、足止めできる?」
『あ、えっと』
その言葉に驚くエリオは、意図をつかめていないのだろう。
そんな時、もう一人の前衛が念話をする。
『ごめんね、私も少しやってみたいことがあって』
スバルが辺りを見回すが、クリスは再びどこかへ行ってしまっていた。
彼女は彼女で考えがあるようだ。
足止めはエリオにまかせるしかないようだ。
「ティアがなにか考えがあるみたいだから、時間稼ぎ!」
『やってみます!』
その言葉と同時に、スバルが走り出した。
廃ビルの屋上に立つシャリオ、なのは、アサギの三人。
シャリオが関心したような表情をする。
「へぇ、みんな良く走りますね」
「あぶなっかしくてドキドキだけどねぇ」
なんだか疲れたように言うなのは。
「デバイスのデータは取れそう?」
「良いのが取れてます。四機とも良い子に仕上げますよ。レイジングハートさんも、協力してくださいね?」
『All right』
なのはの首から下げられた宝石に、アサギが関心を示す。
若干驚きを見せるなのは。
ぶっちゃけると、話は聞いていたがアサギと会うのは今日が初めてだ。
可愛いと聞いていたが、これは思った以上だった。
「へぇ、これがエース・オブ・エースの…よろしくね♪」
レイジングハートは、鈍く輝くのだった。
走る四機のガジェット。
その前方には、橋の上に立つエリオ。
「行くよ、ストラーダ…カートリッジロード!」
『Explosion』
ストラーダの声と共に、吐き出されるカートリッジ。
エリオの足元に、近代ベルカ式の魔法陣が展開され、エリオはストラーダを頭の上で回す。
ガジェットは目前。
「でやぁぁぁぁぁぁっ!」
何度も、ストラーダを振り回す。
じきに橋が倒壊を始める。
すぐさま飛び退くエリオ。
崩れた橋の下敷きになったガジェット。
だが二機は生き残っていた。
飛び出すスバル。
「潰れてろ!」
一機を殴り飛ばすが、飛ばしただけだ。
着地して、その方向を見る。
「やっぱ魔力が消されちゃうと、いまいち威力が出ない」
その背後に、一機のガジェットが現れた。
「それなら!」
ローラーが回転して、スバルがガジェットの背後に回り込む。
体をひねって、ガジェットを股の間に挟んで地面に押し倒すと、リボルバーナックルをその装甲に打ち付ける。
「うりゃぁぁぁぁっ!」
大きな穴が開くガジェット。
すぐさま飛び退くスバル。
ガジェットは爆発して炎と煙を上げる。
「やった!」
ビルの上で立っているキャロ。
その横にはチビ竜こと、フリードリッヒが飛んでいる。
「連続行きます。フリード、ブラストフレア!」
キャロが指さす。
その方向を向いて、フリードは火球を吐き出した。
その火球はガジェット二機の真下にぶつかる。
炎の高温がガジェットの機器を破壊した。
キャロの真下に召喚魔法陣が展開。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖。錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」
ガジェットの真下に現れた巨大な召喚魔法陣。
そこから伸びる鎖が、先のガジェット二機と、もう一機を捕まえる。
ビルの屋上から、その光景を見ていたアサギたち。
「おぉ~! 召喚ってあんなこともできるんですねぇ」
シャリオの言葉になのはが嬉しそうに笑う。
内心どうした? と思うアサギをよそになのははキャロを見る。
「無機物操作と組み合わせてるね…なかなか器用だ」
アサギも同様にそれは感じていた。
「(あの歳であの魔法か…でも将来は可愛い娘になりそうだな…)」
「あれ、アサギさん…キャロのアレにだいぶ興味をしめしてますね?」
シャリオの言葉に、ビクッと反応するアサギ。
「きゃる~ん☆すごいねっ!」
適当に返事をすると、シャリオもそうですね。と同意した。
アサギは楽しそうに戦場を見ている。
見ていると、ビルを跳び移っているティアナと、ミコトが見えた。
ティアナがビルの一つに立つと、アンカーガンを構える。
ガジェット四機がスバルに追われていた。
「こっちだって射撃型! 無効化されたハイ、そうですかって下がってたんじゃ、生き残れないのよ!」
二発のカートリッジロード。
ティアナの足元に現れる魔法陣。
<スバル、上から仕留めるから、そのまま追ってて!>
<おう!>
その光景をビルを挟んだ向かいから見ていたミコト。
ミコトはビルの屋上に膝をつくと、スナイパーライフルのスコープを覗き込む。
スコープに映るガジェット。
<援護する>
単刀直入に、念話を使ってそうとだけ言う。
ティアナが念話で笑った。
<射撃型どうし、半分だからね!>
<了解>
ミコトの銃口に黒い魔力がたまっていく。
それはどこまでも深い黒。
スコープから目を離して、ミコトはティアナを見る。
少しだけ表情を変えたミコト。
ティアナの行っていることの異常さにだ。
多重弾殻射撃。
AAランク魔導師のスキルだ。
ミコトはもう一度スコープを覗く。
その瞬間、ティアナの声が聞こえた。
「ヴァリアブル……シュート!!」
放たれた弾丸が、スバルを追い越しガジェットへと到達する。
普段ならば消されるはずの魔力弾は、消されるべき装甲で覆われており消されることは無い。
ティアナの弾丸は、ガジェット二機を貫いた。
<ミコト!>
ガンナーの声が聞こえる。
スコープの先に見える二体の獲物。
その二機が、重なる位置になったその時―――トリガーが引かれる。
「スナイパーシュート」
無機質な声でそう言った時には、すでにガジェットは倒されていた。
漆黒の、細いレーザーが銃口からまっすぐガジェット二機を貫く。
少しして、そのレーザーが消えた瞬間、ガジェットは空中で撃破された。
<ナイス! ナイスだよ二人とも! やったねぇ!>
賞賛するスバルの声を聞いて、立ち上がるミコト。
向かいのビルに倒れこんでいるティアナを見る。
ティアナは心底疲れているようだ。
<うるさい…このくらい、当然よ…それに後二機は>
<私がやります!>
突然のクリスの声。
全員が驚き、急ぎモニターを開いた。
そこに映るのはガジェット二機とクリス。
クリスはまっすぐ向かってくるガジェットを目前に一人立っている。
狭い路地にいるクリスは、ガジェットに走っていく。
高速移動魔法で強化された状態で、地を駆ける。
ガジェットのAMFが展開される。
高速移動魔法で助走をつけられているせいかクリスのスピードは速い。
ガジェットのビームが放たれた。
「甘い!」
地を蹴り、跳ぶクリス。
ガジェットの真上を通って、その背後に着地する。
大鎌を後ろに振りかぶった。
「物理が聞くなら、最適です!」
大きく後ろに構えて、大鎌を振る。
一体が真っ二つになり、もう一体が逃げた。
逃げ去る相手に、クリスが大鎌を後ろに構える。
「うりゃぁぁっ!ジェットハーケン!」
大きく振られる大鎌。
それが振られると同時に、クリスが持っている大鎌の二倍ほどの大きさをもった白い鎌が回転しながら敵へと飛んでいく。
良く見ればそれは魔力でできた鎌。
その魔力鎌はビルや外注を切り裂きながら、ガジェットを切り裂く。
「はぁっ…はぁっ…」
最後の一機が爆発して、ビルなどが崩れた。
ビルの屋上で見ているなのはとシャリオとアサギも驚いている。
そんな騒然とした空気の中、ガジェットは無事全滅。
こうしてその日の模擬戦は終了した。
―――かに思われた。
この後、フォワードは夜まで訓練を続けていく。
そして訓練が終わった後、ロビーに集合する面々。
六人の前立つのは、なのは、シャリオ、アサギの三人。
「今日の訓練の結果…初日にしては良かったと思うよ、みんな良くガジェット相手に立ちまわれたし、ティアナは指令塔としても良くやってた」
本当に、変わった者たちばかりで良くやっていた。
内心そう思いながらも、特に変わり者の二人を見る。
なのはは、とりあえずといった風に視線をクリスに向けた。
「とりあえずクリスティアーネは今度からあの技は禁止ね」
その言葉に、えっと驚く面々。
使える技で今日中に何度使ったかわからない。
「魔力、相当使うよね? それにまだうまくコントロールできてないからあの大きさになった」
その言葉に、頷くクリス。
フェイトのスラッシュハーケンに似ているが、あれは根本から違う。
クリスのあの技は非殺傷というものがないのだ。
そんな危険な技をやすやすとつかわせるわけにはいかない。
「はい…」
「うん、他の技も鍛えていこう?」
「はい!」
頷いて、なのはが手をたたく。
では、というと新人たちが嬉しそうな顔をする。
「お疲れさまでした!」
[お疲れさまでした!!]
ミコト以外は元気にあいさつして、解散した。
その後、食事を終えて、適当に夕食をすましたアサギ。
一度トルネード分隊の部屋に帰ってくる。
さすがに夜ともなると仕事しているのはごく少数だった。
前方からミナトが歩いてくる。
「あらアサギさん、おかえりなさい…どうでした?」
アサギのきゃぴきゃぴした雰囲気が消えた。
細い目と、先とは違う楽しそうな笑み。
「面白いよ。すごく面白い…なんていうか、もぉ私たちと同じ匂いがぷんぷんする」
その言葉に、ミナトも笑う。
アサギを理解する数少ない人間だ。
「まぁ、ミナトにそれを伝えに来ただけなんだけどね?」
「そうなんですか」
そう答えると、アサギが一回転する。
ピースの手を目の部分に当ててアサギは再び戻った。
「きゃる~ん☆」
その決め台詞? だけ残して、アサギは部屋を出て行く。
自分の席に座って、彼女は軽くため息をついた。
アサギのことを思って……なのだろう。
「まったく困った隊長さんです」
そしてふと思い出した。
彼に頼もうと思ったことをまんまと忘れていたことに気づく。
まぁ、それも明日で良いだろうと頷いた。
アサギは隊舎を歩いていると思い出す。
そう言えばフォワード六人が休憩所で眠ってしまっていたはずだ。
そう思い毛布を取りに行こうとしたが、前方の通路を横切る影が見えた。
「あれ?」
それを追っていくと、フォワードたちが寝ている場所についた。
追っていたのはミコト・ブラックフォード。
彼女は両手一杯に毛布をかかえて、全員にかけていく。
ソファで両手を開いたポーズで寝ているスバル。
隣のキャロ肩に手を置いて寝ているティアナ、そして置かれているキャロ。
一人あぐらをかいて寝ているエリオ。
そしてはちきれんばかりの胸を横にして寝いるクリス。
ミコトは自分の毛布を肩にかけると、スナイパーライフルを持ち出した。
それを分解して、何かをしている。
アサギは何も言わずにその場から立ち去った。
なにも言わずとも、全員すぐに起きるだろう。
アサギは歩いている最中、はやてと出会う。
隣に守護騎士となのは、フェイトを連れていた。
「はっやてちゃ~ん♪」
正面から抱きつくと、はやての肩にかかっている上着が落ちた。
疲れたような顔をしているはやてと、驚いている他の面々。
はやてより背丈の低いアサギの頭を、ポンポンと叩くはやて。
「なぁアサギ?」
「なぁに、はやてちゃん♪」
二人のやりとりはバカップルのようで、いつの間にっ! と守護騎士たちは恐怖した。
なのはとフェイト。二人は二人で焦っている。
親友の抜け駆けにだ。
ただ誰もが思う。
女同士でっ、と―――
「アサギ?」
「ん?」
「きもいわっ!!」
はやては、アサギを蹴り飛ばした。
転がるアサギが、起き上がって目をうるうるさせる。
全員が口をあんぐりと開いていた。
「お、鬼っ!」
「悪魔!」
なのはとフェイトに言われるはやて。
だがまったく気にもせずに、はやてはアサギをにらむ。
守護騎士も我らが主のご乱心に戸惑っていた。
「本性を見せたらどうや?」
その言葉に、アサギが立ち上がる。
「いきなり蹴るなんて…酷くない? はやて」
その雰囲気に、違和感を感じるはやて以外の面々。
それもそうだろう。
会って一日目だが、アサギと言えば『きゃる~ん☆』がおなじみだ。
それにあの雰囲気はどこへやら、その雰囲気は―――まるで局員。
「機動六課トルネード分隊隊長アサギ・レヴァイン……」
はやての言葉に、再びきゃぴきゃぴした雰囲気をまとうアサギ。
「性別は男や」
その言葉に全員が固まってアサギを見る。
きゃる~ん☆と言いながら回って、可愛らしく敬礼した。
「アサギちゃんっ! 男だよ♪」
もう一度言おう。
アサギ・レヴァイン三佐。
性別は、男である。
―――アニメ・第三話「集結」―――
あとがき
とりあえずプロローグと言って良い部分が終わりました!
みなさん楽しんでいただけましたでしょうか!? 楽しんでいただけたならなによりです♪
では、次回は閑話のような感じになります。
次回もお楽しみに♪
感想などもお待ちしてます!