魔法少女リリカルなのはStrikerS~竜巻は翼を強くする~ 作:超淑女
時空管理局 遺失物管理部 対策部隊
「機動六課」での日々の始まり。
機動六課
隊員オフィスから少し離れた場所にある。
トルネード分隊専用オフィス。
『隊員呼び出しです。スターズ分隊スバル・ナカジマ二等陸士。同、ティアナ・ランスター二等陸士』
オフィスで仕事をしていたクリスがハッとして見上げる。
上着を脱いでシャツで仕事をしているところを見ると気を抜いていたことは明白だ。
『ライトニング分隊、エリオ・モンディアル三等陸士。同、キャロ・ル・ルシエ三等陸士』
ミコトはモニターを消して立ち上がる。
それに気づくクリス。
『トルネード分隊、ミコト・ブラックフォード一等陸士。クリスティアーネ・シュテルンベルグ三等陸士』
ミコトと合わせるように、クリスもモニターを片付けていく。
『十五分後に、ロビーに集合してください』
ミコトがトルネード分隊専用オフィスを出ようとしたとこで、振り向く。
クリスがもたもたとしているが、ミコトは壁に背をつけて待つ。
「お待たせしました!」
数分してクリスがやってくる。
胸のボタンをつけるのに苦労していたようだ。
トルネードの女性隊員数名からの殺気を浴びるクリス。
オフィスを出ると、そこには既に四人が居た。
「待たせた」
ミコトがそれだけ言うと、お辞儀をするエリオとキャロ、スバルは手をびしっと差し出してくる。
ティアナは腕を組んでわずかに手を動かす程度だ。
お待たせしました。と言ってお辞儀を返すクリス。
「そう言えば二人は平気?」
スバルの言葉に、首をひねるクリス。
「筋肉痛とか肩こりとか」
「私でよろしければ簡単な治療をします」
控えめにそういうキャロをクリスが見る。
少し悩んで、クリスは頷いた。
「お願いして良いですか?肩がこっちゃいまして」
そう言ったクリス。
ティアナの表情が一瞬修羅になった。
同い年なのにあれだ。クリスが肩をこる理由もピンと来る。
ミコトはティアナの方に視線を移す。
「…なによ」
今のティアナにかかわると面倒な絡まれ方をされそうだと、顔をそらした。
ミコトはエリオを見てみることにする。
「ど、どうしたんですか?」
警戒するエリオに、ミコトは何も答えずクリスの方に視線を移した。
クリスはキャロに治療されているようだ。
魔力をためた手を肩につけている。
「んっ…あ、あ…効く効くっ……!」
「なんつう声出してんのよ」
クリスのそんな声に、顔を赤くするティアナ。
「さっきのティアナと変わらないよ」
その言葉に、ティアナがスバルの二の腕をつねった。
痛みに跳ねるスバル。
「あたしはあんないやらしい声音じゃないわよ」
そう言ってその光景を見ていた。
治療が済むと、クリスはすっきりした表情で立ち上がる。
「ありがとうございます、ル・ルシエ三士」
キャロにお辞儀すると、キャロもお辞儀する。
「恐縮であります、クリス三士」
頭を上げる二人に、ティアナが溜息を吐く。
苦笑するスバル。
なんとなく言いたいことを理解したミコト。
「あんたたちねぇ、なんでそう堅苦しいのよ、もっと柔らかくやりなさいよ…ってことはさっきキャロにも言った」
「あっ、すみません!」
頭を下げるキャロ。
ティアナは頭を抱える。
「クリスだって微妙でしょう…あんたが最初にクリスって呼んでって伝えてなかったらシュテルンベルグ三士って呼ばれてたわよ?」
頷くクリス。
じゃあ、とクリスはキャロとエリオを見る。
二人はびしっと気を付けをするが、少し腰を下ろしてほほ笑む。
「階級と、あまり堅苦しい言葉はいらないですよ」
その言葉に、二人して肯定的な返事で返す。
「では、クリスさんと」
キャロの言葉に頷くクリス。
クリスの横に歩いてくるミコト。
なぜか、エリオとキャロにはミコトが通常よりよほど大きく見える。
「私も、ミコトで良い」
「は、はい!」
「そうします!」
二人して緊張してこたえた。
頷きも返事もせずに、ミコトは歩いて行ってしまう。
「アイツもアイツね」
そう言うと、ティアナが歩き出す。
その後を急いでおっていくスバル。
クリスはキャロとエリオの頭を優しく撫でた。
「行きましょうか?」
[はいっ]
エリオとキャロの揃った声を聞いて、歩き出す。
ロビーについて、一分ほど待つ。
程なくして、30cmほどの少女が飛んできた。
おなじみ六課のマスコット、リインフォースⅡ空曹長だ。
「はい! みなさん集まりましたね」
おい~っす、とやってくると、六人を前に口を開き始めた。
「今日の午前中は訓練なしということで、六人に六課の施設や人員なんかを紹介していくですよ」
[はいっ!]
6人同時の声。
言うまでも無いかもしれないが、ミコトは無機質な声だ。
それもなのはから聞いているので頷くリイン。
「ほかのみんなは初日にオリエンテーションをやったですが、六人はずーっとなのはさんの訓練でしたから」
スバルが楽しそうに笑う。
「みっちりやってました」
能天気な声。
クリスは苦笑するのみだ。
「でもおかげで最低限の基準は終わって、今日からは本訓練のスタートだとか」
[え゛]
ティアナとクリスの二人が思わず声を出す。
<今なんかすごいことを聞いた気が!>
<ティアナさんもですか、私もです!>
<あはは~~!楽しみだね!>
能天気っ、とティアナとクリスはげんなりした。
今さっき治療された二人。
「では案内するですよ♪」
[はい!]
返事をして、六人はリインフォースについていく。
彼女たちは先のことを考え、木を重くするのだった。
~~~~~
アサギは機動六課内をスキップしていた。
いつも通りのアサギに、隊員たちが挨拶する。
そしてアサギはいつも通り片手を挙げて―――
「こんにちはっ♪」
可愛らしく挨拶をする。
スキップしていると、良さげな獲物を見つけた。
「ぐ~りふぃすっ♪」
前方にいた長身の青年の背中に飛びつくと、うわっ、という声と共にグリフィスが後ろを向く。
すぐそばにあるアサギの美少女フェイスに思春期まっさかりのグリフィスは真っ赤になる。
「ちょっと!アサギ三佐!」
その言葉に、アサギは不満そうに頬をふくらます。
「も~グリフィスったら、三佐なんて他人行儀な呼び方しちゃって~」
そう言ってグリフィスの頬をつつくと、さらに顔を赤くする。
グリフィスはなんとかアサギの腕から抜け出す。
あたりの女性局員たちがヒソヒソとなにかをしゃべっていた。
「し、失礼します!!」
グリフィスは走って行ってしまう。
それと同時に女性局員たちも去って行った。
「相変わらず純情なイケメンをからかうのは楽しいなぁ」
悪魔である。ド鬼畜である。
その後頭部を、誰かが叩く。
「った~い!」
後頭部を押さえるアサギ。
振り返ると、そこには拳を振り下げた人物、八神はやてがいた。
隣は高町なのはが立って苦笑している。
「さっきまで良い話しとったのに、出たらこのざまや…」
「そ、そんなの私のせいじゃないよぉ~」
涙目で言うアサギの顔を、はやてが掴む。
ギリギリと音を立てるはやての腕。
「痛いっ、痛いよはやてっ!握力強くなった!」
ちゃん付けで呼ぶところを呼び捨てにしてしまうのは、思わず素が出ている証だろう。
さらに締まる腕。
さすがにと、なのはがはやてを止めた。
離される腕。こめかみを掌でおさえるアサギ。
「うぅ~ありがと、なのはちゃん」
「いえ、大丈夫ですけど…アサギさんは、なんで、その…」
言いづらそうななのは。
首を傾けるアサギはわかっていないのだろうが、はやては感づいていた。
だから代わりに聞くことにする。
「なのはちゃんは、なんで男がそないな恰好しとんのか?って聞きたいんや」
「ちょっ!はやてちゃんっ!!」
そんなことをストレートに聞くとは思わず、なのはは慌てている。
だが、アサギは笑っているのみだ。
「もちろん…趣味だよ♪」
趣味。
アサギ・レヴァイン。
趣味、女装。
特技、イケメンor美少女をからかうこと。
なのはは頭を抱える。
厄介者分隊の部隊長は、伊達じゃない。
はやてを見ると苦笑して腕を横にやって、まいった。とポーズをしている。
まったくだと、なのはは同意しかけた。
機動六課・食堂。
リインフォースとフォワード六人が集まっていた。
「はい! こちらの食堂で案内は一通り終了です。食堂の使い方はもうわかってますよね?」
[はいっ]
五人の元気な声。
まぁ一人は、言うまでも無いだろう。
「ちょうどお昼休みです、これにて解散といたしましょう」
[ありがとうございました!]
返事と同時に、リインフォースは去っていく。
六人が息をついてゾロゾロと動き出した。
時間も十二時、場所は食堂。
「じゃあお昼たべちゃおっか」
ティアナの言葉に、頷くスバル。
「うん! エリオたちも一緒に……」
「スバル! ちょっといい?」
少し離れた場所から、通信士のルキノが声をかける。
スバルが返事をしてそちらに向かう。
「先に食べてて! すぐ合流するから!」
ティアナが適当に、エリオとキャロとクリスがはいっ!と返事をした。
相変わらずミコトは無愛想だ。
少し間が開く。
ティアナがエリオとキャロを見てみた。
黙ってティアナを見ている二人。
「…あのさ、じつは三日前から思ってたんだけど、あんたたち二人ってお互い全然しゃべんないわよね?」
「えっ」
「あ、そ…そうでしょうか!?」
二人が気付いたかのように声を上げる。
ティアナがミコトを見た。
こちらを見ているが自分がしゃべる気はないようだ。
クリスを見てみるが、ミコトを見ている。
気の毒に、と心の中で合掌。
「あんたたち2人、兄妹みたいなものだって聞いたんだけど…」
その言葉に、二人は表情をゆるめる。
「実際に会ったのは六課に来るときが初めてです。写真では知ってたんですが…」
「私たちは二人ともフェイトさ…フェイト隊長が保護責任者なのですが、別々の場所で過ごしていましたので」
そっか、と頷いて、ティアナは顎に手を当てる。
「ごめんね、あんたらもいろいろ複雑なんだ」
「いえ! フェイト隊長からもなるべく二人で仲良くして欲しいと言われていますので…」
その言葉にティアナが優しく笑った。
「そう、お母さんの言うことはちゃんと聞かないとね」
その言葉に、エリオとキャロは元気よく返事をした。
ティアナは二人共良い子だなぁ、としみじみ実感する。
そしてバッと振り返ってクリスとミコトを見た。
困ったように笑うクリスと、はぐらかすようにそっぽを向いているミコト。
この2人はどうしたものか―――
「あんたたちもねぇ、年上として少しでも会話しようとする二人を見直しなさいよ」
「そんなぁ、私だって会話しようと頑張って話を振ってるんですよ!?」
その言葉に、ミコトがクリスを見る。
ひっ、とのけぞるクリス。
「ごめん」
「あっ、いえ…大丈夫なんですけど、その、なんて言うか…」
溜息をつくティアナ。
この2人は、というよりミコト相手には難しいのだろう。
エリオをキャロを見てみる。
先と変わらず、黙々と食事の準備をしていた。
「ホ、ホントに会話ないのねあんたたち!」
[す…すみませんっ!!]
二人そろって謝罪を口にするが、ティアナが二人に近寄って頭を撫でまわす。というよりかき回した。
「あんたたちライトニングのコンビなんでしょ。しかも同い年、スターズのFAみたいに誰とでもなれあう必要はないけどさ…お互いのコミュニケーションはしっかり取れてないとマズイんじゃないの?」
そう言われた二人はポカンとしている。
髪の毛がボサボサで、クリスが吹きそうになっているのは気のせいだ。
「五人でなんの話~?」
そう言って歩いて来るスバルに、ティアナは一人参加してないけどね、と言う。
もちろんミコトのことだろう。
苦笑するクリス。
「ちっこいの二人があんまり話さないわねって言ってただけ」
そんなティアナの言葉に、頷くスバル。
一度クリスとミコトを見てから、二人を見た。
「なんですか今の」
クリスの文句もスルーされる。
「あーそれあたしもちょびっと思ってた。お話はしたほうがいいよ」
その指摘に、二人が返事をした。
二人の頭を撫でるスバル。
「最初は話なんてあわないのが当たり前!なんでもお話してくうちにいろいろわかってくるもんなんだから」
その言葉が、クリスの心に響いた。
ミコトを見てみる。
先ほどの会話。
会話が続かないという話に、彼女は『ごめん』と謝った。
会話する気が無い。というわけではないらしい。
ならば希望はあるだろう。
クリスは小さくガッツポーズをした。
「クリス、お昼食べちゃうわよ?」
気づけば、全員が席についている。
自分も席についてフォークを持つ。
精一杯、今できることをやっていこう。
とりあえず最優先事項はそれだ。
アサギはトルネード分隊専用オフィスにいた。
背もたれに背をあずけて息をついている。
ミナトがアサギの前に立った。
「で、例の映像の件ですが」
「やだ~! 本局の嫌みな提督とかに頼むのは俺だぞ?」
俺、という一人称。
素が出ている証拠だ。
まぁ可愛く言うようにしているのはなんとなくわかる。
「そうですけど、じゃあこうしましょう!」
なにかを思いついたようで、ミナトは笑顔になった。
だが、アサギが嫌そうな顔をする。
「やだっ!絶対嫌!模擬戦でしょっ!」
素だったのにも関わらず瞳いっぱいに涙をためて椅子にしがみつく。
あら~、と困ったような顔をするミナトだが、アサギがこうなると梃子でも動かないのはわかっているのであきらめる。
「うぅ~っ」
涙目で椅子にしがみつくアサギを見て、男性局員たちはチラチラとみていた。
「まぁ、見ようと思えば見れるのですけれど」
その言葉に、アサギはやめろ。とだけ言う。
もちろん、と言って頷くミナト。
「ところで新人二人ですが…」
「あぁ、浮いてる」
瞳の涙を拭いながら言うアサギ。
あらあら、と笑うミナト。
容姿端麗の二人がこうして会話をしている姿はずいぶんな絵になっている。
「まぁ、それが私たちですからね」
ミナトの言葉に頷くアサギ。
それがトルネード分隊なのだ。
「クリスはだいぶ普通だけどね」
「そうですね」
二人が笑いあう。
部隊員たちを見て、アサギが笑った。
その笑みは不敵で大胆。
「トルネード分隊…元ハッカーに、元次元犯罪者、元の後に不吉な言葉がつくやつばかり」
「まぁ、私たちも元はつきませんが現在進行形で管理局の厄介者ですからね」
笑う二人。
部隊の人間たちも笑っている。
溜息をついて、アサギは頬杖をついた。
「まぁ、この部隊を通して…俺たちはどういう立場の人間かを理解してもらえればいいさ」
ん~、と両手を組んで上に伸ばす。
立ち上がって、アサギは毎度おなじみのポーズをした。
「きゃる~ん☆じゃっ、お昼にしよっか♪」
その言葉に、ミナトは頷く。
二人はオフィスを出て行った。
特別訓練場で準備運動をするフォワードたち。
スバルとティアナは良く喋るし、エリオとキャロも喋ろうと努力していた。
クリスはミコトを見てみる。
準備運動を終えて、すでにスナイパーライフルをいじっていた。
ミコトがクリスの方を見る。
目が合う二人。
「ごめん」
ミコトが謝る。
クスッと笑みを浮かべるクリス。
彼女の気持ちはわかった。
「私たちは私たちのペースで、ゆっくりとやっていきましょう♪」
その言葉に、クリスは相変わらずの無表情で頷く。
こうして、彼女たちの機動六課での一年は始まった―――
―――コミックス・Episode-8(StrikerS #3.5)「新しい日々」―――
あとがき
今回は閑話でした!次回は本編に戻ってファーストアラート!
お楽しみいただければなによりの幸いです♪
では次回も!テイク・オフ!