魔法少女リリカルなのはStrikerS~竜巻は翼を強くする~   作:超淑女

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第四話「ファーストアラート」

 5月13日 AM5:45

 機動六課隊舎。

 

 歯磨きをしているティアナとスバルとキャロ。

 そこに、眠気眼でやってきたクリスは、欠伸を噛み殺しながら二人に一礼。

 

「おはようございます」

 

 クリスもコップと歯ブラシをもってきている。

 

「おはよう」

 

「おはようございます」

 

 スバルとキャロが返事をするがティアナは口に歯ブラシをくわえたまま、クリスを見ていた。

 不思議そうな顔をするクリスが、どうしました? と声をかけたが、首を横に振るスバルとキャロ。

 ティアナは忌々しげな顔をして言う。

 

「うしぢ…じゃなくて、牛乳(うしぢち)め」

 

「今の、言い直す必要ありました?」

 

 クリスは怪訝な顔をして歯磨きを始めた。

 ティアナとクリスは同じ年だ。

 なんだか気に入らない。

 自分は、凡人サイズだろう。

 

 ティアナはため息を飲み込んで、歯磨きを続けた。

 

 

 

 四人がそんなやりとりをしている頃……。

 隊舎前で準備運動をしているエリオと、その横でスナイパーライフルを点検しているミコト。

 空から降りてくるフリードに、エリオは笑顔を見せる。

 

「おはよう、フリード」

 

「きゅくる~」

 

 嬉しそうに声を上げた。

 相変わらずミコトはだんまりだが、ポケットから何かを出すとフリードの前に置く。

 それは小さいチョコレート。

 

「きゅくる~♪」

 

 嬉しそうに食べるフリード。

 ミコトは無言で無表情。

 再びスナイパーライフルの点検をすることにした。

 

 

 

 機動六課の部隊長室にアサギが居た。

 上着は椅子にかけられ、ネクタイは床に落ちている。

 はだけたシャツの間から、わずかに見える胸元。

 

 机に座って、手を差し出すアサギ。

 赤く火照っているアサギの頬。

 艶かしい唇で、そっと言う。

 

「おいで?」

 

 その瞬間、言われた隊員はアサギに近寄り、腕を振り上げ―――。

 

「アホか!」

 

 勢いよく振り下げた。

 ゴツン。と音が鳴る。

 

「いった~い!」

 

 涙目で頭をおさえるアサギ。

 殴った隊員こと部隊長八神はやて。

 

「そこは私のデスクや、退きい」

 

 そう言ってアサギをどかすと、アサギは拗ねたようにネクタイを拾った。

 ボタンを閉めながら、アサギはぼやく。

 

「まったく、はやてはつまんないなぁ…シグナムとかだったらきっと楽しかったのに」

 

「うちの侍をからかわんでもらおうか」

 

 そう言って、ネクタイをしめたアサギに上着を投げた。

 アサギはそれを受け取ってパンパンと叩いて埃を取る。

 はやては上着を脱いで椅子にかけると、ネクタイをゆるめはじめた。

 

 その時、部屋のインターホンが鳴る。

 

「どぉぞ」

 

 その言葉のすぐ後に、ドアが開いて入ってくるのはフェイト。

 彼女は、二人を見て固まった。

 それも当然だろう。

 

 シャツのネクタイをしめているはやてと、上着を着ようとしているアサギ。

 ぶたれたせいで出た涙がいまだに残っているアサギには犯罪臭を感じる。

 

 まぁ、要約すると、見えるのだ。

 

 事後に……。

 

 それに気づいたはやてが、頭を押さえる。

 しっかり話せばわかってくれるだろう。

 

「あのな、フェイトちゃん…これは」

 

「ごめん!」

 

 走って出ていくフェイト。

 はやてが溜息を吐いて、アサギを見た。

 反して、嬉しそうな顔をしているアサギ。

 

「ほんと、勘弁してほしいわ」

 

 疲れたように言うはやて。

 アサギは、そんなはやてに顔を近づける。

 特に表情を変えないはやてとアサギ。

 

「…小皺増えたね」

 

 再びゴツン、と音が鳴る。

 その後に可愛らしい少女の声と、少女のどなる声が聞こえた。

 

 

 

 隊舎前にやってくるスバル、ティアナ、キャロ、クリス。

 エリオとミコトが立ち上がる。

 スバルが腕を上げた。

 

「今日もやるぞー!」

 

[おー!]

 

 キャロとエリオとクリスが腕を上げて合わせる。

 ティアナの隣に立つミコトが、ティアナを見た。

 

「…やらないわよ」

 

 ミコトは黙って頷く。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 機動六課特別訓練場。

 なのはがBJを着て空中を飛んでいた。

 

「はーい、みんな集合!」

 

[はい!]

 

 フォワード6人とフリードが並んでいるが、全員がボロボロで肩で息をしている。

 彼女、ミコトだけがボロボロでも呼吸は整っていた。

 全員を見てなのはがうなずく。

 

「みんな、まだ頑張れる?」

 

[はい!]

 

「じゃあ、シュートイベーションをやるよ。レイジングハート!」

 

 なのはがレイジングハートを前に出す。

 

『All right. Accel Shooter』

 

 なのはの周囲にいくつかのアクセルシューターが現れる。

 それらを見て、フォワードたちは表情を引き締めた。

 

「私の攻撃を五分間、被弾なしで回避しきるか…私にクリーンヒットを入れればクリア。誰か一人でも被弾したら最初からやりなおしだよ。頑張って行こう!」

 

[はい!]

 

 なのはの周囲のアクセルシューターがなのはの周りで回転を始める。

 瞬時に状況を把握したのはティアナ。

 

「このボロボロの状態で、なのはさんの攻撃を五分間…さばききる自信ある?」

 

「ない!」

 

 自信たっぷりに否定するスバル。

 

「まったく」

 

「同じくです」

 

 それに続くミコトとエリオの言葉。

 ティアナは頷く。

 

「じゃあ、なんとか一発入れよう」

 

「はい!」

 

「了解!」

 

 キャロとクリスの返事。

 スバルがリボルバーナックルを構える。

 

「よーし!行くよ、エリオ、クリス!」

 

「はい!」

 

「まかしてください!」

 

 二人は己が武器を構える。

 それを見て頷くなのは。

 

「準備はOKだね。それじゃ、レディー」

 

 腕を振り上げるなのは。

 

「ゴー!」

 

 声と同時に腕を振り下げた。

 四発のアクセルシューターが放たれる。

 桜色の魔弾が六人を襲う。

 

「全員、絶対回避!二分以内に決めるわよ!」

 

[おう!]

 

 瞬間、爆煙があたりを包む。

 その爆煙から飛び出す5つ、青、金、ピンク、オレンジ、白の閃光。

 

「さっそく被弾かな?」

 

 爆煙の一部が大きく開き、そこから伸びる黒く細いレーザー。

 なのはがそれを避けて、爆煙の中にいくつかのアクセルシューターを飛ばす。

 だが今度は、黒い閃光が飛び出してアクセルシューターを回避した。

 

「ちょっと、侮ってたかもね」

 

 少し驚いたような顔でつぶやいた。

 同時に、なのはの背後に伸びるウイングロード。

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

 振り返ったなのはの視界に映るのは、叫び声をあげながら突っ込んでくるスバル。

 そして別方向からはティアナがなのはを狙っている。

 

「アクセル!」

 

『Snipe Shot』

 

 レイジングハートを振るなのは。

 アクセルシューターが左右に一発づつ放たれた。

 まっすぐ二人に向かっていく魔力弾は、何も抵抗せず当たった。

 

 消える二人。

 

「シルエット…やるねティアナ」

 

 その瞬間、背後に走る蒼いレール。

 真上を見上げる。

 ほぼ90度にまでのばされたレールの上。

 

 突然スバルが現れた。

 幻術魔法で隠れていたスバルが、拳を突き出す。

 

「てりゃあぁぁぁぁっ!」

 

 なのはは冷静にシールドを展開してその拳を防ぐ。

 アクセルシューター二つが左右からスバルを襲う。

 

「えっ?」

 

 ローラーブーツを逆回転させて魔力弾をなんとか避ける。

 

「うん、良い反応」

 

 ウイングロードから落ちたスバルが、下のウイングロードに乗ったが、坂になっているので横向きに落ちる。

 火花を散らすローラーブーツ。

 なんとか体勢を立て直すとそのままなのはに背を向けて撤退する。

 

 二発のアクセルシューターはスバルを追う。

 

<スバル、バカ!危ないでしょ!!>

 

 ティアナの叱咤が念話で響く。

 ごめん、と謝罪を口にしたまま走る。

 

<ちょっと待ってなさい、今撃ち落とすから>

 

 ビルの窓から銃を出しているティアナ。

 魔力弾が、生成されていく。

 トリガーを引くティアナ。

 

 その瞬間―――不発。

 

「いっ!?」

 

<わぁ~ティア援護を~!!>

 

 叫ぶスバル。

 ティアナはカートリッジを出す。

 

「この肝心な時に…!」

 

 だがティアナが銃を向けた瞬間、魔力弾はすでにスバルの背中のぎりぎりの部分にいた。

 間に合わない!そう思った瞬間、黒いレーザーが二発の魔力弾を撃ち落とす。

 

<援護完了>

 

 ミコトから念話が届いた。

 安心するティアナとスバル。

 

<ありがと~!>

 

 だが、ティアナはすぐに魔力弾を二発撃つ。

 その魔力弾を見てほほ笑むなのは。

 

 二発の魔力弾はなのはを襲うが、なのははそれを華麗に避けていく。

 

 だが、そこから少し離れた場所でエリオが槍を構えていた。

 その背後にはキャロが立っている。

 

「我が乞うは、疾風の翼。若き槍そう騎士に、駆け抜ける力を」

 

『Boost Up. Acceleration』

 

 腕を振ると、エリオのストラーダは刃にピンク色の魔力を纏う。

 エリオの足元の金色の近代ベルカ式魔法陣が輝いた。

 ストラーダがバーニアを勢いよく吹く。

 

「あの、かなり加速がついちゃうから…気を付けて!」

 

「大丈夫!スピードだけが取り柄だからっ!!」

 

 エリオが前方を向く。

 

「行くよ、ストラーダ!」

 

 バーニアの勢いがさらに増した。

 

 ティアナの誘導弾を避けるなのはの上空から、フリードが襲う。

 火球を回避したなのは。

 別の方向に移動しようとした時、チャージをしているエリオを見た。

 

「エリオ、今!」

 

 その言葉と同時に、エリオが構える。

 

「いっけえぇぇぇぇっ!!」

 

『Speerangriff!!』

 

 飛び出すエリオ。

 煙を上げて、勢いよく飛ぶ。

 直撃する直前、なのはがシールドを展開する。

 そのシールドとエリオの槍がぶつかり、火花を散らす。

 

 キャロの手に再び魔力がたまっていた。

 

「我が乞うは、力。猛き死神に、盾を貫く力を」

 

 腕を振るキャロ。

 なのはの反対方向にウイングロードが走る。

 

「っ!?」

 

 ウイングロードを走るのは、クリス。

 

「アクセル!」

 

 桜色の魔力弾が4発、クリスへと飛ぶ。

 その魔力弾に恐れなく突撃するクリス。

 

 魔力弾は黒いレーザーで二つ。

 後二つはオレンジ色の魔力弾で、相殺された。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 ピンク色の魔力をクリスの鎌の刃は纏う。

 なのはがシールドを展開したが、クリスは一度横に回転してから、その切っ先をシールドに突き立てた。

 それは、スムーズにシールドを抜けた。

 

 その瞬間、爆発が起きる。

 

 爆煙から吹き飛ばされ出てきたエリオは、ビルの屋上に着地した。

 それと同じようにクリスも地上に着地する。

 

「エリオ、クリス!」

 

 叫ぶスバル。

 ビルから見ているティアナ。

 

「外した!?」

 

 爆煙が晴れて、その場に浮いているなのは。

 浮いているなのはは相変わらず真っ白で、どこも怪我をしていない。

 

『Mission complete』

 

「お見事、ミッションコンプリート」

 

「うそ?」

 

「ほんとですか!?」

 

 驚愕の声を最初にあげたのはクリスで、それに続くエリオ。

 なのはは自分の胸元を指さす。

 そこにはわずかな汚れ。

 

「ほら、ちゃんとバリアを抜いてジャケットまで通ったよ」

 

 その言葉に、クリスとエリオの顔に笑みが浮かぶ。

 続いてほかのフォワードたちの顔にも笑みが浮かび始めた。

 

「今朝はここまで、一旦集合しよ?」

 

[はい!]

 

 なのはは地上に降りて武装を解除する。

 並んでいる六人の前に立った。

 

「さて、みんなもチーム戦にだいぶ慣れてきたね」

 

[ありがとうございます!]

 

「ティアナの指揮も、筋が通ってきたよ。指揮官訓練受けてみる?」

 

「えっ、いやあの、戦闘訓練だけで一杯一杯です!」

 

 笑うスバルとクリス。

 その気持ちは嫌でもわかるのだろう。

 

「きゅくる~、きゅくる」

 

 フリードが鳴き声を上げると、キャロがそちらを見た。

 エリオとミコトも少し異変を感じた。

 

「なんか、焦げ臭いような…」

 

「スバル」

 

「え?」

 

 ミコトの言葉に首をかしげる。

 ティアナがスバルを見て気づく。

 

「あっ、アンタのローラー」

 

「えっ?」

 

 ローラーブーツを見た。

 火花を上げているローラーブーツ。

 

「あっ、うわやばっ!あっちゃ~」

 

 急いでローラーブーツを脱ぐと、両手で抱える。

 

「しまった~、無茶させちゃった~」

 

 なのはがそのブーツを見た。

 

「オーバーヒートかなぁ…後で、メンテスタッフに見てもらお?」

 

「はい」

 

 意気消沈と言った状況だろう。

 いつも元気なスバルのテンションがガタ落ちだ。

 

「ティアナのアンカーガンも結構厳しい?」

 

「あ、はい。だましだましです」

 

 なのはがフォワードそれぞれの顔を見る。

 

「みんな、訓練にもなれてきたし…そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかな?」

 

 どこかを向いていうなのは。

 その言葉に反応するフォワード陣。

 

「新…デバイス?」

 

 ティアナがつぶやく。

 キョトンとしているフォワード陣の中で、唯一ミコトだけが無表情だった。

 

 

 

 

 

 なのはとフォワードが、隊舎への帰り道を歩いている。

 

「じゃあ、一旦寮でシャワー使って、着替えてロビーに集まろうか」

 

[はい!]

 

 なのはの提案に返事をするフォワード陣。

 

 前方から一台の車が走ってきて、止まった。

 その黒い車の窓と上が開き、オープンカーのようになる。

 乗っていたのはフェイトと、はやて。

 

「フェイトさん、八神部隊長!」

 

 キャロが言うと、二人が返事を返す。

 歩み寄るメンバー、フォワード陣は車を興味津々と言った表情で見る。

 

「すごい、これフェイト隊長の車だったんですか!?」

 

 スバルが感嘆の声を上げる。

 他のフォワードと違って、ミコトはホイールや運転席などを見ていた。

 

「そうだよ、地上での移動手段なんだ」

 

「みんな、練習の方はどないや?」

 

 はやての質問に、苦笑するスバルとクリス。

 それをフォローしようとティアナが口を開いた。

 

「頑張ってます」

 

 フェイトがエリオとキャロの方を向いた。

 

「エリオ、キャロ、ごめんね?私は2人の隊長なのにあんまり見てあげられなくて」

 

 エリオとキャロは別段気にしてないと言った様子。

 

「いえ、そんな!」

 

「大丈夫です!」

 

「そやよ…もっと見に行かへんやからもおるし」

 

 そう言って笑うはやて、フェイトとなのはとクリスが苦笑で返す。

 

「厄介者ですから」

 

 その一言を、ぼそっとつぶやいた。

 それははやてとなのはとフェイトにだけ伝わったようで、なのはとフェイトは苦笑。

 はやてはクツクツと笑った。

 なのはが、フェイトとはやてを見る。

 

「六人とも良い感じで慣れてきてるよ、いつ出動があっても大丈夫」

 

 その言葉にはやてがうなずく。

 

「そうか? それは頼もしいなぁ」

 

 その言葉に苦笑するフォワード一同。

 はやては面白そうに笑う。

 

「二人はどこかにおでかけ?」

 

 問いかけるなのは。

 

「うん、ちょっと六番ポートまで」

 

「教会本部でカリムと会談や、夕方には戻るよ?」

 

「私は昼前に戻るから、お昼はみんなで一緒に食べようか?」

 

[はい!]

 

 その返事を聞いてフェイトはアクセルを踏み込む。

 はやてがそのまま手を振った。

 

「ほんならな~」

 

 敬礼する一同。

 その光景を遠くからミナトは見ていた。

 

「アサギさんも行ってあげたら良いのですが」

 

 つぶやいて、隊舎に入っていく。

 それを、ミコトだけは見ていた。

 

 

 

 

 

 トルネード分隊オフィス。

 珍しく、しっかりと書類整理をしているアサギ。

 その手際は良くすごい速度で数ある空中モニターを消していく。

 

「アサギ隊長、それ一段落したら良いですか?」

 

 一般隊員の言葉に返事せず、すべてのモニターを消した。

 

「終わった~♪話ってなぁに?」

 

 いつものきゃぴきゃぴした雰囲気で聞くが、隊員は真面目な表情のままだ。

 きゃぴきゃぴしていたアサギだったが……途端、表情がひきしまった。

 鋭い目で隊員を見る。

 

「なに?」

 

「いえ、例の件、洗いなおしたのですが…不可解な点が多く」

 

「俺とはやてのデータに送れ、俺たちでもう一度調べてみる」

 

 その言葉に、隊員たちが少し驚く。

 他の隊員たちも立ち上がった。

 

「アサギ隊長。私たちも頼ってください、お二人だけでは」

 

 一人の言葉に、アサギは頷く。

 

「……俺とはやてでどうにもできなかったら頼るさ」

 

 その言葉に、隊員たちが座って作業を続ける。

 目の前に立っていた局員も座った。

 

「もぉ、変なタイミングで出かけるんだから…はやてちゃん」

 

 雰囲気と口調だけは戻したが、どうもその奥のものだけは直せなかったようだ。

 そう、“あれも”彼の素なのだから、完全に隠すのは無理だった。

 

 

 

 

 

 機動六課 寮。

 シャワールーム内にいる四人。

 スバルとキャロが同じ場所で、ティアナとクリスは一人づつ使っている。

 ちなみにミコトはすでに出たようだ。

 

「えと、スバルさんのローラーとティアさんの銃ってご自分で組まれたんですよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

 キャロの質問に、スバルが答えた。

 

「クリスさんもですか?」

 

 隣のシャワーを使っているクリスに聞いてみる。

 

「そうですよ、自分で作りました」

 

「訓練校でも前の部隊でも、支給品って杖しかなかったのよ」

 

 ティアナが答える。

 その言葉になんとなく理解したキャロ。

 

「私は魔法がベルカ式の上に、戦闘スタイルがあんなだし…ティアも、カートリッジシステム使いたいからって」

 

「で、そうなると、自分で作るしかないのよ。訓練校じゃオリジナルデバイス持ちなんていなかったから…目立っちゃってね」

 

「あ、それでスバルさんとティアさんお友達になったんですか?」

 

 キャロを見ていたティアナが目をつむってシャワーを浴びる。

 

「腐れ縁とあたしの苦悩の日々の始まりって言って」

 

 えへへ~と笑うスバル。

 キャロは次にクリスを見た。

 

「クリスさんは?」

 

 聞くと、クリスが止まる。

 キャロの方に顔を向けるが、眼が完全に泳いでいた。

 

「えっと、私はですね…その、少しありまして」

 

 そう言って苦笑する。

 言いたくないならこれ以上聞くこともないだろう。

 キャロは問い詰めることはしなかった。

 

 自分も知られたくないことはある。

 

「さてキャロ、頭洗おっか?」

 

「お願いします」

 

 スバルがキャロの髪を洗い始めた。

 ティアナがシャワーを止める。

 

「あたし、先にあがってるからね」

 

[はーい!]

 

 三人の返事が聞こえた。

 

 

 

 

 シャワーのそばにある階段で座り込んでいるエリオとミコト、そしてミコトの膝の上で休むフリード。

 暇そうに、頬杖をつくエリオ。

 ミコトは無表情でフリードを撫でている。

 

「みんな、まだかなぁ」

 

「きゅくる~」

 

 フリードの返事、ミコトがエリオを見た。

 

「…一緒に入る?」

 

「えっ…えぇぇっ!?」

 

 ミコトの言葉に驚き跳ねるエリオ。

 フリードがエリオを見ている。

 

「冗談」

 

「び、びっくりさせないでくださいよぉ」

 

 エリオが赤くなる顔と鼓動を抑えようとした。

 そう言えば、ミコトが冗談を言うなんてはじめてかもしれない。

 待つのもそんなに悪くないなと思った。

 

 

 

 

 

 機動六課 メンテナンス室。

 あれから数十分が経った。

 

「わぁ、これが…」

 

「私たちの新、デバイスですか?」

 

「そうで~す!」

 

 スバルとティアナの前に浮かぶ二つのデバイス。

 カードとペンダントの二つだ。

 シャリオが話をしているが、クリスは目の前の二つを見ていた。

 

「わぁ~やった~♪」

 

「新デバイス」

 

 クリスとミコトの前にも置いてある二つ。

 首輪と指輪。

 冷や汗を流すクリス。

 

「この首輪は、たぶんミコトさんの―――」

 

「クリスちゃんの♪」

 

 目の前に突如出てくる変態。

 先週に、アサギ(目の前の変態)が男だということを聞いた時は心臓発作が起きると思ったが、一週間もすれば馴れるものだった。

 ちなみに女装は趣味だそうだ。

 なぜこの人が自分たちの隊長なのか?

 

「設計、デザインはアサギちゃんで~す! ま、少しだけミナトちゃんも協力してくれたよ♪」

 

 バッ、と指さすアサギ。

 振り向くと、そこにはリインフォースがいた。

 

「みんなが扱うことになる六機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが技術と経験の粋を集めて完成させた最新型! 部隊の目的に合わせて、そしてエリオやキャロ、スバルにティア、クリスとミコト! 個性に合わせて作られた。文句なしに最高の機体です!」

 

 リインフォースが手を伸ばすと、リインフォースの周囲に六機のデバイスが集まる。

 

「この子達はまだ生まれたばかりですが、いろんな人の思いや願いが込められてて、一杯時間をかけてやっと完成したです…ただの道具や武器と思わないで、大切に…だけど性能の限界まで思いっきり全開で使ってあげて欲しいです!」

 

 それぞれの手元にあつまるデバイス。

 シャリオが笑みを浮かべる。

 

「この子達もね、きっとそれを望んでるから」

 

 そう言った時、部屋に入ってくるのは高町なのは。

 

「ごめんごめん、お待たせ~」

 

「なのはさ~ん!」

 

 飛んでいくリイン。

 

「ナイスタイミングです、これから機能説明をしようかと」

 

「そう、もうすぐに使える状態なんだよね?」

 

「はい!」

 

 リインが元気よく返事をすると、シャリオが空中モニターを出現させる。

 六つのモニターに映る六つの機体。

 アサギは飽きて話を聞くのをやめる。

 髪の毛を弄っていると、ふと気になる単語が聞こえた。

 

「あっ、出力リミッターっていうと、なのはさんたちにもかかってますよね?」

 

「あぁ、私たちはデバイスだけにじゃなくて、本人にもだけどね」

 

 えっ、と声を上げるフォワード陣。

 相変わらずミコトだけはわかっているようだった。

 

「本人たちにもですか?」

 

 エリオの疑問も当然だ。

 

「能力限定って言ってね、ウチの隊長と副隊長はみんなだよ。私とフェイト隊長、シグナム副隊長とヴィータ副隊長」

 

「俺とはやてとミナトもだな」

 

 つい素が出ているが誰もつっこまない。

 頷くなのは。

 フォワード陣はいまいちわかっていないようだ。

 

「えっと」

 

「ほら、部隊ごとに保有できる、魔導師ランクの総計規模って決まってるじゃない」

 

 シャリオの言葉に、スバルとキャロとクリスが苦笑した。

 わかっていなかったのだろう。

 アサギが笑っていないのが気になる。

 

「一つの部隊でたくさんの優秀な魔導師を保有したい場合は、そこに上手くおさまるよう、魔力の出力リミッターをかけるですよ」

 

「まぁ、裏技っちゃあ裏技なんだけどね」

 

 今度はシャリオが苦笑した。

 なのはが続きを引き継ぐ。

 

「うちの部隊だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長たちは大体2ランクダウンかな…」

 

「四つ? 八神部隊長ってSSランクのはずだから…」

 

「Aランクまで落としてるんですか」

 

 エリオが答えると、リインフォースが飛んでくる。

 

「はやてちゃんもいろいろ苦労してるですよ」

 

「なのはさんは?」

 

 眉をひそめて聞くスバル。

 

「私はもともとS+だったから、2.5ランクダウンでAAランク。だからそろそろ一人でみんなの相手するのは辛くなってくるかな?」

 

 茫然とするスバル。

 憧れの人の苦労を知った。ということだろう。

 

「隊長さんたちははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役、クロノ提督の許可がないとリミッター解除はできないですし…許可は滅多なことでは出せないそうです」

 

 おてあげと言わんばかり肩をすぼめる。

 

「そうだったんですね」

 

「…アサギさんとミナトさんは?」

 

 アサギを見るメンバー。

 

「俺は3.5ランクダウンAAA+だからBランク、ミナトも3.5ランクダウン、もともとS+だからAだな」

 

 Bランクともなるとここにいるフォワードメンバーと大佐ない。

 とんでもないことに気づくミナト。

 

「でも部隊保有ランクって、二人入るんですか?」

 

 ティアナのその言葉に、アサギは苦笑した。

 

「俺とミナトを所有する場合多少の無理はOKされるの」

 

 そんな言葉を言って、理解できたのはミコトのみだった。

 なのはが話題を変える。

 

「隊長たちの話は、心の片隅くらいで良いよ。今はみんなのデバイスのこと」

 

「はい」

 

「はい…」

 

「は、はい」

 

 スバル、エリオ、クリスの順で返事をした。

 何かを思うような表情で考え事をするアサギ。

 そして長々と説明が続く。

 

「便利だよね~今は」

 

「便利です~♪」

 

「あっ、スバルの方はリボルバーナックルとのシンクロ機能も上手く設定できてるからね」

 

 嬉しそうな顔をするスバル。

 

「持ち運びが楽になるように、収納と瞬間装着の機能もつけといた」

 

「わぁっ! ありがとうございます!」

 

 あと、とつけたしてシャリオがミコトを見る。

 

「ミコトが提案してくれた例の機能なんだけど、付けといたよ」

 

「ありがとうございます」

 

 無感情な声で礼を言うと、シャリオは笑顔でうなずく。

 全員ミコトにも馴れたということだろう。

 感情がこもってないように見えてもしっかり考えているというのはこの2週間で十分わかっている。

 

「ってミコトさん知ってたんですか?」

 

 頷くミコト。

 

「私がなにかつけとく機能は無いかって聞いたんだよね。クリスとミコトのデバイスにはカートリッジシステムがついてるから、馴れないかもしれないけど、馴らしていこう」

 

 なのはの言葉に、はい。と返事をする二人。

 その瞬間、あたりに空中モニターが現れてアラートが鳴り響く。

 

「このアラートって…」

 

「一級警戒態勢!?」

 

 なのはが叫ぶ。

 

「グリフィス君!」

 

 モニターにグリフィスが映った。

 

『はい、教会本部から出動要請です!』

 

 その隣のモニターにはやてが映る。

 

『なのは隊長、フェイト隊長、アサギ隊長、グリフィス君、こちらはやて!』

 

「うん」

 

「はいは~い♪」

 

『教会騎士団の調査部が追ってた、レリックらしきものが発見された!場所はエイリム山岳丘陵地区、対象はリニアレールで移動中』

 

「まさかっ!」

 

『そのまさかや…内部に侵入したガジェットのせいで、車両の制御が奪われてるリニアレール内のガジェットは、最低でも50体。大型や飛行型の未確認タイプも出てるかもしれへん、いきなりハードな初出動や、なのはちゃんフェイトちゃん、アサギ、行けるか?』

 

『私はいつでも』

 

 フェイトの返事に、なのはがうなずく。

 

「私も!」

 

「ミナトに任せる!」

 

 なのはとアサギの返事。

 

『まぁええ…スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、クリス、ミコト…みんなもOKか?』

 

[はい!]

 

 頷くはやて。

 

『よし、良いお返事や…シフトはA-3、グリフィス君は隊舎での指揮、リインとアサギは現場管制! なのはちゃんとフェイトちゃん、それからミナトさんは現場指揮!』

 

「うん!」

 

 モニターにミナトが現れる。

 

『了解しました』

 

 準備万端。

 はやては深くうなずいて表情をひきしめる。

 

『ほんなら…機動六課フォワード部隊、出動!!』

 

[はい!]

 

『了解、みんなは先行して、私もすぐに追いかける』

 

 動き出す面々。

 そして初出動へと至る。

 

 

 

 

 

 十分足らず、フォワードの面々となのはとリイン、アサギとミナトはヘリに乗り込んでいた。

 

「新デバイスもぶっつけ本番になっちゃったけど、練習通りで大丈夫だからね」

 

「はい」

 

「頑張ります!」

 

 返事をするティアナとスバル。

 

「エリオとキャロ、それにフリードもしっかりですよ!」

 

「はい!」

 

「はい!」

 

「きゅくる~」

 

 リインの激励に二人と一匹も返事をする。

 

「二人とも、あんまり気を詰めすぎないでね♪」

 

「はい」

 

「りょ、了解です!」

 

 アサギが言うが、緊張はほどけないようだ。

 まぁ説得力がないのは確かだろう。

 ミナトが二人にほほ笑みかける。

 

「危なくなったら私やアサギさんが援護に向かいますから」

 

「了解!」

 

 その言葉に、クリスは今度こそしっかり返事をした。

 ミコトは頷くのみだ。

 しっかり者で真面目なミナトはやはり信用できるのだろう。

 

 なのはがうなずく。

 

「今言ったように、危なくなったら私やフェイト隊長、アサギ隊長にミナト副隊長、それとリインがしっかりサポートするから…おっかなびっくりじゃなくて、思いっきりやってみよう!」

 

[はい!]

 

 新人たちの返事に、なのはは深くうなずいた。

 

 ミコトが隣を見る。

 クリスの手がわずかに震えているのがわかった。

 その手に、ミコトはそっと手を重ねる。

 

「っ!?」

 

「…しっかり援護する」

 

 その言葉に、クリスは深く頷く。

 震えは止まった。

 初めての実戦。

 クリスは重ねた手と反対側の手で、自分の首輪を触った。

 

 

 

 

 

 

―――アニメ・第四話「ファーストアラート」―――




あとがき
ずいぶん久しい更新ですね。
これからも応援よろしくお願いします♪
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