河童が実力至上主義の学校で色々やらかす話   作:河童はきゅうり好き

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部屋~盗み~

『ご報告があります。マスターに対する敵性反応あり。こちらの映像をご覧ください』

 

「うん? *1バッドカンパニーじゃないか。お仕事ご苦労様。それでその映像ってのは?」

 

『こちらのUSBに移しておきました。マスターの敵が密会をしていたようです。始末するならば我々にお任せを』

 

「いや、映像を見てからそれは決めるよ。取り合えず追加の物資は補充しておいたから持っていくといいよ」

 

『はっ! ありがたき幸せ。では、物資を補充次第任務に戻ります』

 

「本当に働き者だな~。頑張っておいで。あと、君の数人の部下がメンテナンスをサボっているみたいだ。隊長の君から言い聞かせておいてくれ」

 

『なんと! それは本当ですか! マスターをいつでも守れるようコンディションは常に良好を保てと言っていたのに……分かりました。殺してでも連れていきます』

 

「殺してしまったら点検の意味がないだろう? とにかく、頼んだよ」

 

 にとりは早速パソコンに電源をつける。このパソコンは元々不燃ごみのところにあったものだが、にとりはすぐに直して使えるようにしたのだった。幻想入りしていないようなパソコンだったため、その時のにとりのテンションは爆上げだったという。

 

 USBを差し込んで開いた映像には教師たちの密会の映像があった。そう、あの教師たちは誰もいないと思い込んでいたようだが、それは違う。その部屋にはバッドカンパニーのうちの一名がいたのだ。だが、にとりとしてもそれはかなりラッキーな出来事であった。このバッドカンパニー、まだそこまで人員がいないのだ。現在作られて活動しているのは10人。ヘリなどの乗り物もなしである。一応自動で作ってもらえるような機械を作ろうとも考えたのだが、それはことねに却下された。

 

 〈にとり、にとりの商品はオンリーワンだからこそ価値があるの。にとりが作る機械を作れる全自動ロボットなんてあったら、それを盗まれた時点で価値は暴落するよ。金稼ぎをしたいならチマチマとそれでいて大胆にだよ。〉

 

 商売に関してはことねにかなり任せ気味のため、あまり反論できないにとりは特に何も言えなかった。まあ、そういうわけで現在のバッドカンパニーは総勢10名の少数精鋭部隊なわけだ。にとりとしては愛着が湧いているため、どうにかして仲間を増やすか乗り物をプレゼントしたいところなのだが……この2カ月程度で注文が殺到していて時間が取れないのが現状である。

 

 そして、にとりは今日特に対策する気は特になかった。明日盟友に相談してみようとしか思っていなかったからだ。にとりは午後4時に睡眠を取り始めた。この体は妖怪の身ではなく人間の身なのだ。当然一日でも多少は寝なければ今後の活動に支障がでるため、ことねがにとりに言い聞かせたルールである。必ず三時間は寝るようにすること。それがルールであった。

 

 最初はお互いに慣れなかったが、もう既に順応したルール。2人の仲が良好な証拠である。

 

 

 

 

 次の日の朝……

 

 〈ふ~ん、教師たちが共謀ね……。敢えて盗ませましょうか。にとり、ここにある撃退用のセキュリティは全て電源を落として。電源をつけたままなのは監視カメラだけでいいよ。あとはバッドカンパニーをこの部屋で一日中待機させておいて。証拠映像を掴み次第政府を脅すわ。そのホワイトルームだとかいう物に関しても私たちの平穏のために聞き出さないとね。真なる恐怖は未知にあるんだよ、にとり。〉

 

(盟友……自分から面倒事に突っ込んでいくのかい? 君の考えとは矛盾している気がするんだけど……)

 

 〈何言っているの、にとり? 私が恐れていたのは敵がどんな奴かが掴めなかったから。敵が本当に政府ならそれでよし! 他に敵がいるようならそいつらを滅ぼして完全勝利だよ! 結局は私たちを攫おうとしたホワイトルームとかいう所の責任者を排除出来る可能性が出てきたというわけだよ。誘拐というのは下手したら殺害よりも嫌なことを味わうことになるから、そういう危険はこっちから仕掛けることになっても排除しておくべきなのさ。〉

 

(まあ、私としても試し打ちしたいものがいっぱいあるから的は多ければ多い方が良いよね。威力検査も必要だし)

 

 〈そういうこと。科学の発展に犠牲は付き物って言うし、いいんじゃないかな? そういうわけだから、一旦思い上がらせておこうか。あの教師2人を。まあ、彼らがやってくれた方が脅しに使えるし、彼らの人生が破滅することになろうが私たちの知った事じゃないからね。〉

 

(でもいいのかい? お客様に悪い印象を与えることになるかもしれないけど)

 

 〈いいの、いいの。政府を脅せれば今までとは違って巨大ロボットも表立って作れるようになるかもしれないよ? だって、ここは政府が運営しているんだから。その実験のための環境ぐらい用意してくれるでしょ。ある意味、にとりへのプレゼントにもなるかもね。〉

 

(なるほど~まあ、私には機械とキュウリがあればそれでいいし。匙加減は盟友に任せるよ)

 

 〈ほいほい、任せなさい。必ず私たちを敵に回すような真似をした奴らには後悔させてあげるわ。〉

 

 ことねとにとりは政府に疑心を抱いていた。機械なら別に金を払えば売ってあげるのに……何故自分たちを誘拐しようとするのか。金の削減のために誘拐というくだらない手段を取ろうとしていると分かってことねは少し怒っていた。お前たちの発明は金を払うほどの物ではないと馬鹿にされているように感じたからだ。

 

 現在、この学校が設立されたときから見比べても学校に波乱を最も及ぼしたのは私たちだろうという自覚というか自信はあったため、それなりに傷ついたのだった。今回の件はことねにとって、その腹いせのつもりのようだ。この軽い気持ちで政府も脅される羽目になるのだから、まさに天災である。

 

 

 ことねとにとりは朝の支度をして教室に向かった。これからDクラスによる目撃者探しが始まるのだが、彼女たちにとってはどうでもいい話である。彼女たちは彼女たちの時間を過ごすだけ。ただ、それだけなのだから。

 

 

 

 

 

 ****

「……想像以上に綺麗ですね。もう少し汚いと思ったのですが……にしても改造しすぎでは? ここってあくまでも借り物ですよね? なんで床が鉄板に置き換えられているんですかね。この件は理事長に報告するべき……いや、それだと私が何故知っているのかという話になりますし……やめておきましょうか」

 

 ことねによってきちんと部屋の中は整理されていた。現在、学校では授業中。この部屋や周りには誰もいない。吹奏楽部の顧問が周りを見渡すと機械が整頓されている箱を見つけた。3種類ほどあり、依頼の物・開発途中・私物で分けられていた。

 

 いきなり探す手間が省けたと思い、彼女は持ってきた袋の中に依頼の物と開発途中の物から複数個見繕って持って行った。警戒ぐらいするべきであったのにだ。

 

 確かに入り口は何かトラップがないか念入りに調べたのだが、流石に生活空間にはないと思ってしまったのだろう。自分が怪我をしないようにはしているだろうと彼女は考えていたのだ。だが、その考えは甘い。

 

 本来ならば、赤外線によって発動するトラップが大量にあるのだ。ことねとにとりが如何に天災かということに気付いていなかったのが、彼女の敗因だった。

 

 この瞬間から、彼女の人生の終わりが着々と近づいていたのだった。

 

 

*1
おなじみジョジョのスタンド。ただ、姿が同じなだけでスタンドではない。その正体はにとりによって作られた小型ロボットである。原作と同じ攻撃力に加えて光学迷彩と高性能AIを装備に加えた連携も出来るヤバい小型軍隊となっている。主な仕事はにとりとことねの警護。その目的を達成するためにはいかなる犠牲も辞さないヤバい奴ら。ことねとしても流石にやり過ぎだと思っていたが、勝手に核爆弾を撃とうとしたあのAIよりかは遥かにマシなため、放置することにしたらしい。欠点は移動にとても時間がかかること。しかし、その問題点が解決するのにそう時間はかからないだろう。


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