河童が実力至上主義の学校で色々やらかす話 作:河童はきゅうり好き
小テストの結果の報告……そして、中間テストがあることについての話が終わったあと、ことねは坂上から与えられた情報について考えていた。
〈1人でAクラスに上がるために必要なプライベートポイントは2000万必要……か。こればかりは稼いでみないと分からないな。評判が広まるまではいくらにとりの技術が凄くても人は寄ってこない。……駄目もとでやってみるか。ポイントを貯めきれなかったとしても、事業が成功すれば豪遊とかして学校生活を送れるかもしれないしね。〉
ことねがやろうとしているのはにとりのとんでも技術によって、壊れた機械を直したりする事業だ。にとりの技術が表に出ているのはVRゴーグルだけなのだ。
実際に世の中から認知されていないだけで、家のガレージや彼女の部屋には様々な発明品がある。許可なしに部屋に侵入を試みた場合、何もない*1虚無の世界に転移させられる防衛システムのような危険な物から、全自動介護ロボットなどの安全な物まで、彼女の家には社会に出れば大ごとになる事間違いなしの発明品がいっぱいあるのだ。
にとりが機械を修理する時に魔改造を施したり、何かそういった商品を皆に紹介出来れば、金をいっぱい持っているであろう2,3年生が買ってくれるのではないかとことねは考えた。そこでことねは2つの金稼ぎを実行することにした。
1つはお客が持ち込んだ機械の修理や、魔改造、お客のニーズに沿った機械の開発を行うサービスを提供すること。こちらのサービスの名前はお、値段以上にとりという名前にすることにしたようだ。
もう1つはにとりが自分で開発した機械を動画で紹介して、インターネットオークション形式で売りつけるカパネットにとりというサービスを展開する。
この案を思いついたことねは早速行動に移した。最初はおふざけでもいいので、客が来ることが重要であるから、ことねは自分のことが話題になっているサイトがないかを探した。毎日壊れた機械を持ち歩く人間がいるのだ。むしろ、話題になっていない方がおかしいだろう。ことねはそう確信していたからだ。
彼女はネット掲示板で自分のことが度々話題になっていることに気付いた。彼女はネット掲示板に自分のことを書いてみた。
すると、何人かの生徒には反応があったらしく、後日おふざけでにとりのところに壊れてしまった機械を持ってくるらしい。こんなにすぐに反応があるとはことね本人も思っていなかった。ある意味で人間とは変人を笑いの種とするのをいつの時代も好むのかもしれない。
彼女が後日彼らが本当に持ってきた時にすぐに取り掛かれるように、色々とにとりと相談して用意しておこう。彼女がそう思い、教室から出ようとした放課後、龍園が教壇に立ち、クラス全体に向けてこんな事を言ってきた。
「今日からCクラスの王に君臨することにした龍園翔だ。だが、今の俺はあくまで自称王に過ぎない。当然お前たちの中にはいるだろう。俺に反発する気のある人間が。だから、白黒つけようじゃないか。俺に不満がある奴は叩き潰してやるからよぉ~。逆に俺が王になることに不満がない奴は教室を出ても構わないぜ。だが、そう判断したからにはきちんと駒として働いてもらう」
〈……面倒臭いことになったね、にとり〉
(盟友はどうするんだい? 私としては一応残っておいた方がいいと思うんだけど。あいつの態度を見るに、ここで何かしら手を打っておかないと何か私たちの物を横暴に盗んでいきそうな気がするし)
〈本当はわざわざ自分から闘いなんてやりたくないんだけどな……。まあ、こういう時の為に用意した自衛手段だし、使わない手はないか。にとり……にとりは人間のことを撃てる?〉
(人間と河童は盟友同士だからねぇ……出来ればやりたくはない……かな。でも、盟友がやって欲しいっていうなら、やってあげないこともないけど……どうする?)
〈……分かった。私がやるからにとりはちょっと……耐えてね。〉
(盟友……あれの出番かな? 確かにあれは今まで作ってきたものの中では殺傷能力が低い方だけど、撃ちどころを間違ったら普通に死ぬから気を付けてね)
〈うん。頭をぶち抜かなければ取り合えず大丈夫だよね。分かってる分かってる。お互いに同意を得れば、死にさえしなければ問題はない……と思うから大丈夫だって。〉
彼女たちが龍園たちのことを話している間にかなりの生徒が教室から出ており、教室には龍園、石崎、アルベルトを除くと、ことねを含めて数人しか残っていなかった。
「河城、お前も俺に対して不満があるのか?」
「いや、まあね。私はクラスのことなんてどうでもいいんだけどね、ここであんたを倒しておかないと後から色々と請求されそうで嫌だから残った。私が望むのはCクラスというクラスに縛られないこと。……つまり、あんたが王になるかどうかはどうでもいいけど、あんたが出す戦略に無条件で協力してやるつもりはないってこと。もう1人の私は機械をずっと弄れるならそれでもいいって言いそうだけどね」
「結局、言いたいのは俺の指図には従わないってことだろ? だったら簡単だ。俺たちに勝ってみせろ。それならば、俺はお前には何も指示しない。まあ、お前に果たして勝てるかな? 俺たち3人に」
「うん、いいよ。でも、戦う前に1つ約束事をしてくれないかな? たった1つだけなんだけど……どんな怪我をしたとしても、お互いに文句は言わないってこと。そして、もう1つ。監視カメラが無い所で喧嘩は行う事。それでいいよね?」
「おいおい、緊張しているのか? 1つと言ったはずなのに、2つ頼みごとをしているぞ? まあ、2つ目に関しては当然の処置だ。場所は既に用意してある。そして、1つ目に関してだが……一応俺の優しさから言っておくぞ? やめておけ。テストが受けれなくなるぐらい滅茶苦茶にされてもいいってなら、思いっきりやってやるぜ? お望み通りにな」
「そちらこそ、後で後悔しないでよね? 今だからこそ言っておくけど、私ももう1人の私も敵に対しては割と容赦ない性格なんだ~。むしろ、私は1対3でも勝てる自信があるよ? 私のことを甘く見れば、後悔するのはそっちだと言っておくよ」
「クククッ、お前こそ後悔するなよ……。証人はここにいる生徒全員だ。そして、監視カメラもある。あとで泣きべそかいて文句を言ってもしらないぜ?」
龍園は己たちが必ず勝つと確信していた。目の前にいる少女はいくら天才であったとしても、自分とは違うベクトルの天才であり、喧嘩慣れもしていないただのアマちゃんだと。真の喧嘩も理解していない雑魚だとそう認識していた。
だが、龍園は知らなかった。彼女の真の恐ろしさはそんなものではないと。にとりは色々な機械をこの世に来てから作り上げてきた。その中には当然彼女の弱くなった体を守るために作り上げた兵器もあった。あのVRゴーグルであっても、独自でゲームソフトを開発すればスパイの育成や軍隊の育成など軍事に生かすことだって出来るのだ。ホワイトルームの関係者が彼女を攫いに来たのも、このVRゴーグルを量産させるためというのが大きかった。
無論、政府も自分たちで量産すればいいと最初は考えた。しかし、あまりにも使われている技術が理解不能であったため、仕方なく誘拐という手段を取って量産させるつもりだったのだが……その結果が虚無の世界への転送である。
だが、そんな発明品でさえ彼女にとっては売り出してもいいと思える品物なのだ。にとりとことねはモラルが途轍もなく低かった。それを売り出すことで世の中がどうなるかなんて欠片も考えていなかった。それを売った目的も発明のための資金調達である。
そんな彼女と正々堂々と決闘するということは自殺行為に等しいのだ。龍園はこの日、正史で綾小路に与えられたトラウマとはまた別のトラウマを植え付けられる羽目になる。ついでに坂上の胃も今回の件で痛みを訴え始めることとなる。
決戦のバトルフィールドにやって来たことねと龍園、石崎、アルベルトは互いに向き合っていた。伊吹など龍園に対して不満を持っていた数名は離れた場所で横から4人の戦いを見守っていた。
伊吹は当初、1対3で戦おうとしていたことねに対して無謀だと言った。彼女もある程度喧嘩慣れしていたからこそ、アルベルトがいる時点でことねに勝ち目はないと確信していた。そのため、自分も一緒に戦ってやろうかと提案したのだが、他ならぬことね自身に断られたのだった。危険だからと。
内心伊吹はことねのことを馬鹿にしていた。なら、精々恥をかけばいい。そう考えていた。だが、喧嘩の結果は彼女の予想の斜め上の物であった。
結果はことねの前に龍園たち3人が血を流しながら地面に這いつくばる……そんな光景であった。
伊吹もその他の人間もまるで信じられなかった。ことねが何をしたのか……まったく理解出来なかった。ただ理解出来たのはことねがスカートをめくった動作のみ。その動作の後、何が起こったのかまるで理解できなかったが、一瞬で龍園たち3人の足から血が噴き出したのだ。
目の前にあるのは地面に這いつくばって、何が起こったのか分からずに呆けた顔をしている龍園たち3人の姿……そして、何かいたずらが成功した時の子供のような表情を浮かべていたことねの姿であり、その異常な光景に何名かはその場から逃げ出したのだった。