河童が実力至上主義の学校で色々やらかす話 作:河童はきゅうり好き
〈いやぁ、上手くいったとはいえ試運転しておかないとやっぱり駄目だな……元ネタからしてかなりの威力があるとは思っていたけど、ここまでとは……思わなかったな。〉
ことねが何をしたか……実は彼女は何もしていない。ただ、スカートをめくって標的を捉えさせただけ。当然龍園たち3人の足を撃ち抜いたのはにとりが作った機械である。
その名は……*1高圧ウォーターガン。ことねとにとりが自衛手段として開発してスカートの中に潜ませていた機械の1つである。
〈まあ、どんな怪我をしてもお互いに文句は言わないという話だったし、別にいいよね。これであいつの指図に従う必要がないから、商売にも集中出来るってものさ。〉
「て……てめぇ……何しやがった?」
龍園は足から出てくる血を見ながらそう言った。アルベルトと石崎も何があったのかまるで理解出来ないらしく、ことねのことをただ睨んでいた。それはそうだろう。彼らは勝負が始まったと思ったらいつの間にか足に怪我を負っているのだ。何が起こったのかぐらい知りたいだろう。
だが、ことねから出た言葉は彼らにとって望むものではなかった。
「だから……何? 私があんたたちに教えてあげる義理があるとでも思ってるの? あんたたちにあるのは敗北だけ。それともまだ続ける? 続けるなら次はもう片方の足に穴を開けてあげるけど……それはあんたたちにとっては致命的なんじゃないの? 今は片足だからいいけど、両方の足に穴が開けば自由に移動なんて暫く出来なくなるよ」
龍園は自分が圧倒的に不利な状況にあるということを理解したのだろう。一旦引くことにしたようだ。
「今はそうやって勝ち誇っておけばいいさ。だがな! 最後に勝つのはこの俺だ。俺はお前をどんな手段を使ってでも必ず叩き潰してやる。首を洗って待ってな」
「龍園さん!? こんな奴に負けを認めるんですか!?」
「黙ってろ石崎。最低でも今の状況でこいつと戦っても勝てないことぐらいお前でも理解出来るだろう! 後、俺がいつ敗北を認めた? 確かにこの勝負では負けた。だが、最後には必ず勝ってやる。アルベルトの時のようにな」
そう言って、龍園たち3人組は足を引きずりながらどこかへ向かって行った。彼らがその場所を去ってからすぐに悲鳴が聞こえてきたが、ことねにとってはどうでもいいことである。
(今回の発明品はどうだい? 盟友のアイデアを取り入れてみたけど……かなり威力があったね。これは幻想郷に戻っても身を守るのに使えそうだね。天狗にでも使ってみる価値はありそうだな)
〈鬼には使わないの? これがあれば鬼の四肢ぐらいは使用不可に出来そうなもんだけど……〉
(盟友はあいつらの怖さを知らないからそんなことが言えるんだよ。あいつらの四肢を失わせることなんて私たち河童には出来っこないし、何よりも恐ろしいのは鬼に強さで興味を持たれること=死なんだよ。そんなことになるくらいなら泣き寝入りした方が遥かにマシさ)
「ちょっとあんた何をしたんだ。私に危険だからと言ったのはこういうことなのか?」
外野で見学していた伊吹がことねに詰め寄る。今の勝負に納得がいっていないようだ。
「私の勝ちで、あいつらの負け。それだけでいいでしょ。ともかくこれで私はCクラスの王の独裁制度から一抜けた。あんたもあいつら3人組の足が重傷の間に戦いを挑んでおいた方がいいんじゃない? んじゃまあ、そういう事で。私も明日から忙しくなるからあまり話しかけないでよね」
「待てよ。じゃあ、さっきの勝負のからくりは教えてから帰れよな。どうやったらスカートをめくっただけであいつらの足に穴が開くんだ」
「さっき全く同じことを言ったんだけど? 何度も言わせないでくれる? 私はそうやって無駄に時間を奪われるのが好きじゃないの。私たちは失った時間を取り戻せる? 取り戻せないでしょ。だから、趣味に時間を費やすためにも無駄な部分は省くことにしているんだ。まあ、でもそうだな……企業秘密だよ。これでいい? じゃあ、さよなら」
今の彼女には金のことしか見えていない。その為、準備を妨害した龍園に若干イラついていたため、お灸をすえる意味でも割と本気でやった。そう、川城ことねは重度のエゴイストであった。
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今回の件は学校全体に広まり、坂上は今まで感じたこともないような気持ちに覆われた。今回の事件の発端は龍園翔と川城ことねであることが分かった時はまたこいつらかと思った。だが、やってしまったことが途轍もなく大変なことであった。
5月1日、入学からわずか一カ月後に自らが担当している生徒が3人も緊急搬送されたのだ。それも原因は川城ことねたった一人なのだという。このことを真嶋に聞いた時、坂上は本当に耳を疑った。確かに川城ことねは天才ではあるが、荒事に慣れているはずもない。そう思っていたのだが、被害にあったのは龍園翔とその取り巻き2人なのだという。坂上にはとてもではないが信じられなかった。
坂上はこの件について調べているうちにある事実に辿り着いた。1年Cクラスに設置されている監視カメラに龍園翔と川城ことねのやり取りが録画されていたのだ。その映像を見た坂上は確信した。川城ことねがこうなることを理解しておきながらやったに違いないと。確実に傷つける自信があったからこその発言であったのだとこの事件が起こった以上、簡単に理解出来るからだ。彼らが怪我をした理由も何かしらの発明品が原因だとすれば納得がいく。
坂上は決断した。これ以上彼女を野放しにしておくのは危険だと。坂上は早速彼女がこれ以上何か大罪を犯さないうちに行動を抑制させるために他の教師、そして校長に会議を開くように頼みに行くのだった。
「すみません、集まっていただいて。今回は本当にこの学校の築き上げてきたものが崩壊しかねない案件だったので、会議の題材として挙げることにしました」
「例の事件ですか。確かにあれは大変な事件でしたが、被害はCクラスの生徒だけなのですから、私たちまで呼ぶ必要はなかったのでは? 坂上先生」
真嶋がそう言う。実際本来ならば、坂上と校長だけで話し合えばいい案件だったのだ……本来であれば。
「すみません。ですが、私の担当しているクラスの生徒である川城ことねがこうなることを理解しておきながらあの事件を引き起こした可能性があったのでその報告をと思いまして。そして、提案なのですが川城ことねの動きを抑制するために皆さんにも策を考えてはもらえないかと思いまして」
「何故ですか? 他のクラスからならまだしも、ご自身のクラスの生徒をそこまで警戒するとは……らしくないですよ。坂上先生」
茶柱もそう言う。彼は本来勝つために龍園の策の後押しで佐倉のことを色々と強く言って証言台から退場させようとしたりと自分の為に生徒の策略に協力するような人間であり、決して自ら自分のクラスの生徒の情報を吐くような人間ではないのだ。
「ええ、私もらしくないと自分自身思っています。しかし、これはこの事件が起こった以上、全教師に公開すべきものだと思いましたので……手元の資料をご覧ください」
坂上は川城ことねの評価についていた別途資料のコピーを各教師と校長に事前に渡しておいた。その情報を開示された教師は目を見開く。校長は入学時点で既に理解していたことから特に驚きもしなかった。
「なるほど……坂上先生。坂上先生はこのことは事実なのではないか……そう疑っていたのですね? 今回の事件から鑑みても、川城ことねは人を殺したことがあるのではないかと……そう言いたいのですか?」
「ええ……はっきりと言って彼女は異常です。もし、このまま何も彼女に対して対策を取らなければ、本当に死人が出かねないのです。無論彼女自身も危険ですが、彼女の行動を何故抑制しなければならないのか。それは彼女が作っているのは機械の類であり、誰でも使い方さえ理解すれば使用できるという点にあるのです。そして、これが全教員に相談しなければならないと思った原因です」
そう言って坂上は自分のスマホの画面を各教員に見せた。そこにはことねがネット掲示板に書き込んだコメントがあった。そして、同時に教師たちは坂上が何を言いたいのかを完全に理解する。
「機械の修理・改造・製作に加えて発明品のインターネットオークション……ですか。なるほど……彼女が具体的に何を作っているのかは分かりませんが大事になるのは間違いなしでしょう。彼女の発明品がどんな物か次第では生徒の実力を高めるというこの学校の設立された主義の在り方が完全に崩壊するというわけですか」
「彼女の発明品の中でいかに有用なものを持っているか……プライベートポイントを多く持っている者が必然的に有利になり、逆にプライベートポイントを持たない者は勝つ確率が全く無く不公平になりますね。勿論この学校に平等なんて甘い考えはありませんが、流石に勝つ確率が0になってしまえば教育になりませんから、これはどうにかしなければならない問題でしょう」
「う~ん、流石にこれは見逃せないなぁ~。今回の件をネタにして厳重注意とかそういうのやった方がいいんじゃな~い? 彼女、やって良いことと悪いことの区別がついてないだけかもしれないし~」
教師たちも坂上のこの意見に全面的に肯定していた。教師たちも競い合う仲ではあるが、今回の件に関しては協力しあう必要があると考えたからだ。
だが、彼らは出来るだけ穏便に済ませるべきだったのだ。いや、ある意味仕方がないのかもしれない。まさか、彼女があんなことをするとは到底誰も思いつかないだろうからだ。しかし、この場で思いついていれば被害は最小で済んでいたかもしれない。
河城にとりが日本政府を脅し始めるまで残り数カ月