ヴァンガライブ!   作:九戸政景

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どうも、二番目に好きなクランはリンクジョーカーの片倉政実です。
それでは、第1話をどうぞ。


第1話 ヴァンガードとの出会い

 あるよく晴れた日の事、私がいつものように『スクールアイドル部』の部室でみんなと話をしていた時、曜ちゃんと一緒にパソコンの画面を真剣な表情で見ていた千歌ちゃんが突然「……これだー!」と大声を上げた。その瞬間、千歌ちゃんと曜ちゃんを除いたみんなの体がビクリと震え、何事かといった様子で私達は千歌ちゃんの方へ顔を向けた。

 

「ど、どうしたの? 千歌ちゃん?」

「みんな! ヴァンガードだよ、ヴァンガード!」

「ヴァンガード……って、たしかアニメでやってる奴だよね?」

「うん! 正確には『カードファイト!! ヴァンガード』っていうんだけど、そのヴァンガードとラブライブが今度コラボイベントを開催するんだって!」

「こらぼいべんと……ずら?」

「そう! 全国のスクールアイドルの中で『カードファイト!! ヴァンガード』が一番強い人を決める大会、『ヴァンガライブ』を開催するみたいなんだ!」

「『ヴァンガライブ』……それで、それがどうかしたの? 千歌」

「どうしたもこうしたもないよ、果南ちゃん! 私達もそれに参加して、優勝をしてAqoursの知名度をもっと上げるんだよ!」

 

 私からの問い掛けに千歌ちゃんは身を乗り出しながら答えたけれど、そんな千歌ちゃんとは対照的に果南さんはあまり乗り気じゃなそうな様子を見せた。

 

「優勝して知名度をアップ、ねぇ……たしかにそう出来るなら良いけど、そのゲームってそんなにすぐ上手くなれる物なの?」

「う、それは……」

「それに、カードゲームってそれなりにお金が掛かるでしょ? この中の誰かが代表になってとかならまだ分かるけど、千歌の考えだとAqours全員で参加するつもりなんだよね? だとしたら、やっぱり金銭面的に結構キツいメンバーが出てくるんじゃ……」

「そうね……このヨハネとしては、是非とも参加したいイベントではあるけど、金銭面を考えたら素直に首を縦には振れないわ」

「うぅ……やっぱりそうだよね。でも、どうせやるなら私はみんなでやりたいよ。みんなでやれたら絶対に楽しいし、そこから新しい曲のアイデアだって浮かぶかもしれないし……」

「たしかにそうだけど……やっぱりカードを集めないといけないっていう点はどうにも──」

 

 その時、「ふふっ、それはノープロブレムよ♪」と言いながら鞠莉さんが果南さんの肩にそっと手を置いたかと思うと、それに驚いている果南さんに対してダイヤさんがクスリと笑った。

 

「果南さん、鞠莉さんの言う通り、カード集めの件は問題ありませんわよ」

「鞠莉、ダイヤ、それってどういう事?」

「実はね……カードだけなら昨日までに既に集めてあるのよ。それも全カードを4枚ずつ……ね♪」

「……え?」

『えー!?』

 

 ウインクをしながら言う鞠莉さんの言葉に果南さんが疑問の声を上げた後、千歌ちゃん達は心から驚いたような声を上げた。もちろん、私も驚いてはいたけど、正直な事を言うなら驚きよりも疑問の方が勝っていたから、千歌ちゃん達と同じように驚きの声を上げられていなかった。

 

 カードは昨日の内に集めたって言ってたけど……どうして鞠莉さんはそんな事が出来たんだろう?

 

 みんなが驚いた顔で鞠莉さんを見つめる中、鞠莉さんの言葉の意味を考えていたその時、私の頭の中にある考えが浮かび、それが正しいかを確かめるために私は鞠莉さんに話し掛けた。

 

「……鞠莉さん」

「うん? どうしたの、梨子?」

「もしかしてなんですけど……鞠莉さん宛に何か手紙でも来ていたんじゃないですか? それもラブライブの運営の方から……」

「……梨子、何故そう思ったのかしら?」

「……『ヴァンガライブ』の事を千歌ちゃんや私達は今日になって始めて知ったのに、鞠莉さんが既にそれに使うカードを集めていたから、そしてラブライブに関する事なのに、『ヴァンガライブ』の事をルビィちゃんが全く知ってる様子が無かったからです。もちろん、ルビィちゃんがラブライブについて全てを知ってるわけではないですけど、スクールアイドルやラブライブについて色々な事を知っているルビィちゃんならラブライブのホームページを一日一回くらい目を通していてもおかしくはない。なのに、まったく知っている様子が無かった。という事は、『ヴァンガライブ』の事がラブライブのホームページに載ったのは、少なくとも今日のお昼休みの後になります。お昼休みは善子ちゃんや花丸ちゃんと話していたとしても何かしらのきっかけでホームページを見る可能性は充分にありますから。ルビィちゃん、どうかしら?」

「え、えっと……うん、お昼休みは善子ちゃん達とずっとお話ししてたし、昨日の時点では『ヴァンガライブ』については載ってなかったよ」

「うん、ありがとう。では、何故鞠莉さんやダイヤさんだけは事情を知っている様子だったのか。それは鞠莉さん──いや、『浦の星女学院』の理事長宛で大会の開催の連絡やAqoursの大会への参加の打診についての何かが来たからだと考えられます。そして、ダイヤさんがそれを知っていたのは、ちょうどその場に居合わせたから。実際、最近鞠莉さんの仕事をよく手伝っていましたから。それに、さっきまで不思議にしか思ってませんでしたけど、重そうなアタッシュケースを足元に置いた鞠莉さんのお家のメイドさん達が部室の前にいるのも明らかに違和感があります」

 

 私が部室の前に立つメイドさん達に視線を向けると、鞠莉さんとダイヤさんを除いた全員が納得顔でメイドさん達に視線を向けた。そして、私はそんなみんなの中の『ある一人』へと視線を移した。

 

「後……詩羽ちゃん、たぶんだけど、あなたもこの事は知ってたよね?」

「……どうしてそう思うのかな?」

「千歌ちゃん達が驚いてる中、一切驚いてる様子が無かったから。それに、ちょうどこの前、鞠莉さん達に飲み物を届けに行っていたから、その時に偶然話を聞いた可能性は十分にあると思うの」

「なるほどね……たしかにそれなら辻褄は合うかな。それで……三人とも、梨子の推理はどうなのかなん?」

 小首を傾げながら果南さんが問い掛けると、鞠莉さん達は静かに顔を見合わせた後、悪戯がバレてしまった子供のような笑みを浮かべながらクスリと笑った。そして、揃って私達の方へ向き直ると、鞠莉さんは舌をペロリと出しながら戯けた調子で話し始めた。

「Exactlyよ、梨子。梨子のその赤い瞳の前では、どんなMysteryも形無しってところね」

「そ、そんなことないですよ。それで……カードを集めていたって事は、その『ヴァンガライブ』には参加する予定なんですか?」

「ええ。『スクールアイドルフェスティバル』の件については、今まで通り皆で力を合わせて頑張るしかないわ。でも、チカッチがさっき言ってたように、『ヴァンガライブ』で優勝できれば、Aqoursの知名度をもっと上げられるだろうし、このゲームを通じてAqoursの絆をもっと深い物に出来ると思っているからね」

「なるほど……でも、詩羽ちゃんはともかくダイヤさんまで賛成だったのはちょっと意外かも」

「うん、ダイヤさんだったらさっきの果南ちゃんみたいにカードを集める事とかすぐに上手くなれるわけじゃない事とかについて色々と考えて反対する気がするのに……」

「……たしかに私も最初は難色を示していましたわ。ですが、鞠莉さんの言いたい事も分かりますし、鞠莉さんがカードは用意すると言っていましたし、μ'sやニジガクの皆さんも参加すると思われる中で参加しないという形でやる前から負けを認めるのは性に合いませんでしたから、私も賛成する事にしたのですわ。それに……さっきのように『ヴァンガライブ』ヘの参加について前向きな千歌さんやゲームがお好きだという善子さんや千歌さんが前向きなら自分もやろうと言いだすであろう曜さんはもちろん賛成でしょうし、カードを用意する点さえクリアしてしまえば果南さんや梨子さんも恐らく賛成に回り、ルビィや花丸さんもそれなら反対する理由が無いという事で賛成すると思っていましたし」

「あはは、なるほどね。まあ、たしかにカードを用意してもらってるならこのまま反対するのもなんだか悪いし、みんなでやれるならもしかしたら優勝を出来るまでに上手くなれるかもしれないしね」

「うんうん。みんなで協力すれば、出来ない事なんて何も無いもんね!」

「くっくっく……カードゲームとは言え、ゲームとなればこの堕天使ヨハネの独壇場。ヨハネの華麗なプレイングでAqoursの人気もリトルデーモンの数も増やしてみせるわ!」

「リトルデーモンの数はどうでも良いとして……みんなが賛成ならマルも反対する理由は無いずら。ねっ、ルビィちゃん」

「う、うん……それに、みんなで一緒の事をするなんてなんだか楽しそうだし……♪」

「……まあ、たしかにそうね。という事で、私も賛成です、鞠莉さん」

「Great♪ それじゃあ、参加登録は私がやっておくから、早速カードとのご対面といきましょうか!」

 

 そう言いながら鞠莉さんが指を鳴らしたその時、部室の前にいた鞠莉さんのお家のメイドさん達が重そうなアタッシュケースを持って次々と部室内に入ってきた。

 

「な、何!?」

「ま、鞠莉ちゃん……もしかしてそのアタッシュケースに入ってるのは、全部カードなの?」

「That's right! このカードゲーム、思っていたよりも『クラン』っていうなのが多い上にその『クラン』を揃えてデッキを組むのがPopularなようだったから、こんなに多くなっちゃったのよね」

「ひいふうみい……軽く数えても20近くはあるわよ、これ……」

「に、20もあるの……?」

「これは……あまりにも選択肢が多くないかな……?」

「ルビィ……全部覚えられるかな……?」

「……全部覚える必要は多分無いと思うけど、たしかに結構多いわよね……」

 

 アタッシュケースの多さに私達が戸惑いを隠しきれずにいる中、メイドさん達はアタッシュケースを全て部室の隅に置き終えると、鞠莉さんに対して恭しく一礼をしてから静かに去っていった。そして、私達の視線がアタッシュケースに集中すると、鞠莉さんは楽しそうな笑みを浮かべながら席を立ち、そのままアタッシュケースへと近づいた。

 

「さて……それじゃあ早速ケースを開けようと思うんだけど、その前にマリー特製のルールブックやプレイマットなんかを配布するわね」

「ルールブック……あ、たしかにこのカードゲームのルールについて全く知らないや」

「そう。だから、とりあえずみんなでルールを覚えてしまいましょう」

 

 鞠莉さんのその言葉に全員が頷くと、鞠莉さんはアタッシュケースの内の一つを開き、中から10冊の小冊子のような物を取り出し、それを私達に渡した。そして、渡された小冊子を開くと、そこには『カードファイト!! ヴァンガード』のルールとデフォルメされた鞠莉さんのイラストの解説などが書かれていた。

 

「うわぁ……スゴく詳しく書いてある」

「ライド……コール、イマジナリーギフトにトリガー……うぅ、覚える事がスゴく多い……」

「まあ、これくらいなら覚えられそうだけど、まずはやってみてからじゃないと何とも言えなそうだね」

「そうですわね……」

「ふふっ……まあ、そうね。それじゃあそろそろカードを見てもらいましょうか」

 

 そう言うと、鞠莉さんは再びアタッシュケースへ近づき、それに続いて私達も席を立ってアタッシュケースへ近づくと、「それじゃあ……Open♪」と言葉と同時に鞠莉さんは表面に『ロイヤルパラディン』と書かれたラベルが貼ってあるアタッシュケースをパカッと開けた。すると、中には様々なイラストが描かれたカードがみっちりと入っており、その量の多さに千歌ちゃん達はとても驚いた様子を見せていた。

 

「おぉ……本当にいっぱいあるね」

「なんだかキラキラしてるカードもあるけど、これも4枚ずつ入ってるんだよね?」

「Yes! 『ヴァンガライブ』で使用する『Vシリーズ』って言われてるレギュレーションのカードに限定はされちゃったけど、普通にカードパックに入ってるカードはもちろん、イベントなんかでしか手に入らないカード達まで全てが4枚ずつあるわよ」

「『Vシリーズ』……ああ、さっきのルールブックになんか書いてあったわね。『スタンダード』とか『プレミアムスタンダード』とか……」

「その通りよ、善子。『プレミアムスタンダード』だったら、今出てるカードのリメイク前の奴とかが該当する『旧シリーズ』のカードも使えたんだけど、さっきも言ったように今回の『ヴァンガライブ』では新シリーズのカードのみが使える『スタンダード』というレギュレーションでやるみたいだから、新シリーズのカードだけ集めたってわけ」

「なるほど……って、善子言うな!」

「善子ちゃん、そのツッコミはスゴく今さらずら」

「うるさいわね、ずら丸! と言うか、善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!」

「はいはい。それで、その大会はマル達それぞれが出る個人戦なの? それともチームを組む団体戦?」

「『ヴァンガライブ』は三人一組の団体戦よ。だから、分けるならユニット別か学年別にしたいんだけど……そこは後で決めましょうか」

「そうですわね。それにしても……この中から使うカードを決めるとなると、中々骨が折れそうですわ……」

「うん……こんなにたくさんある中から使ってみたい物を一つだけ選ぶとなると流石にね……」

「あ、言い忘れていたけど、デッキは詩羽(うたう)と各ユニットから選抜された一人は三つ、残りの皆には二つずつ持ってもらうわよ」

「あ、やっぱり私もなんだね」

「ええ。詩羽にはManagerとして、練習相手になってもらいたいから。それに、こんなにあるんだし、一人につきそれくらい選ばないと結構余っちゃうでしょ? それに、デッキが複数あれば相手によって使い分けられるし、いざとなれば一人でも練習が出来るからね」

「あ、なるほど。でも……迷っちゃうのに変わりは無いかな……」

「ふふっ、こんなのFeelingで問題ないわ。今はカードに触れる事が大事だし、やってみて合わないと思ったら、誰かと交換してもいいんだし♪」

「交換……そっか、そういうのもありなんだ」

「ええ、もちろん。でも、誰かが選んだ『クラン』はそれを選んだメンバーと交換をするまで他のメンバーが選ぶ事は出来ないわ。用意したのは各4枚までだから、二人で一つの『クラン』を使おうとしたら、カードが足りなくなるかもしれないもの」

「なるほど……」

「という事で、早速Choice timeといきましょう♪」

 

 その鞠莉さんの言葉でAqoursのみんなは様々な名前のラベルが貼ってあるアタッシュケースへと近づき、恐る恐るといった様子でアタッシュケースを開け始めた。

 

 さて……それじゃあ私も使いたい『クラン』を選びに──。

 

 そう思いながら行動を始めたその時、『……私達の声をどうか聞いて下さい、先導者(マイヴァンガード)』という声が聞こえ、私は思わず「え……?」という声を上げながらそちらに視線を向けてしまっていた。すると、そこにはあったのはさっき鞠莉さんが開けた『ロイヤルパラディン』のアタッシュケースと『ギアクロニクル』、そして『リンクジョーカー』のアタッシュケースだった。

 

 い、今のって……誰の声……? もしかして……ゆ、幽霊……!?

 

 突然聞こえてきた声に私が恐怖を抱きながら周囲を見回していたその時、『先導者よ、落ち着いて下さい』という声と『先導者、まずは我らの声を聞くのだ』という声が聞こえ、私は再び『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』と『リンクジョーカー』のアタッシュケースへ視線を向けると、そこには銀色の鎧に身を包んだ凛々しい顔の騎士と大きな歯車が両肩に付いた金色のドラゴン、そして善子ちゃんが好きそうな禍々しさ満点の姿をした赤い悪魔みたいな何かがそこにはいた。

 

「……い、今のは、貴方達が話し掛けてきたの……?」

『……その通りです、先導者よ』

『ようやく、落ち着いてくれたようだな』

「い、いや……別に落ち着いてないから。というか、どうしてカードから声なんて聞こえるのよ……」

『……その事については後で説明する』

「後で説明するって……」

 

 赤い悪魔みたいな何かに対してそんな事を言っていたその時、「りーこちゃん!」と突然後ろからポンッと肩を叩かれ、私は思わず「わわっ!?」と変な声を上げてしまった。そして、私の肩を叩いた張本人の方へゆっくりと顔を向けると、そこにはアタッシュケースを足元に置きながらニコニコと笑う千歌ちゃんとそれを少し後ろから見ている曜ちゃんと詩羽ちゃんの姿があった。

 

「千歌ちゃん……もう、驚かさないでよ」

「あははっ、ごめんごめん。でも、あんなに驚くなんて思ってなかったよ」

「うんうん。ところで……梨子ちゃんはどの『クラン』を見てたの?」

「え……? わ、私は……この『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』と『リンクジョーカー』っていう『クラン』を見てたけど……」

「『ロイヤルパラディン』に『ギアクロニクル』に『リンクジョーカー』……なんか梨子ちゃんにして珍しいチョイスだね。何か惹かれる物でもあったの?」

「惹かれる物っていうか……よ、呼ばれたから……みたいな?」

『よ、呼ばれたから……』

 

 私の返事に対して千歌ちゃん達は声を揃えてそれを繰り返すと、すぐさま息の合った様子でこそこそ話を始めた。

 

「今の梨子ちゃんの言葉、どう思います、曜ちゃん、詩羽ちゃん……?」

「うーん……これは上級リトルデーモンリリーの再来かもしれませんよ、千歌ちゃん……」

「これは我らがヨハネ様に報告ですね……」

「ちょっと、リリーは禁止だってば! というか、こそこそ話すのも止めてよ!」

「あ、ゴメン。でも……梨子ちゃんがそんな事を言うのはちょっと意外だったから」

「それは……まあ、そうだけど……」

「でも、そこまで言うなら梨子ちゃんがその『クラン』を使った方が良いのかもしれないね。もしかしたら、梨子ちゃんはその三つの『クラン』と何らかの『(えにし)』があったのかもしれないし」

「『縁』……か」

 

 曜ちゃんの言葉を繰り返しながら私は再び『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』、『リンクジョーカー』のカードに視線を向けた。今まで私はあまり『縁』だとか『運命』みたいな言葉に縁が無かったし、正直今のAqoursのみんなに会えたのもそういう物があったからじゃなく、千歌ちゃんで言うところの『奇跡』という物なんだと思ってる。だけど、この『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』と『リンクジョーカー』という三つの『クラン』に出会った事が私にとって『縁』があったという事ならば、私はこのカード達と一緒に進んでいくべきなんだろう。それがこの三つの『クラン』と『縁』があった私の為すべき使命のような物だから。

 

「……なんて、また善子ちゃんみたいな事を考えちゃったわね」

 

 そんな事を独り言ちながら苦笑いを浮かべた後、私はアタッシュケースの上に乗っている『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』と『リンクジョーカー』の仲間達にそっと声を掛けた。

 

「……これからよろしくね、みんな」

『はい。こちらこそよろしくお願いたします、先導者よ』

『こちらこそよろしく頼むぞ、先導者』

『先導者よ、よろしく頼む』

「……うん」

 

 みんなの声に対して私が微笑みながら答えていたその時、「……これで全員揃ったみたいね」という鞠莉さんの声が聞こえ、私が周囲を見回してみると、みんなはそれぞれ別のアタッシュケースの前に立っており、私以外のメンバーは既に全員が使いたい『クラン』を決めてしまっていたようだった。

 

 そっか……私が最後だったんだ。それにしても……みんな、どんな『クラン』を選んだのかな?

 

 そんな事を思いながらみんなの後ろにあるアタッシュケースに貼られたラベルを見ようとしたその時、「ところで……」と果南さんが周囲を見回しながら鞠莉さんに声を掛けた。

 

「鞠莉、この後はどうするの? 選んだカードを使ってデッキ作りとか?」

「うーん……そうね、その方が良いかもしれないわ。みんなだって大会に出る以上、早くカードに慣れておきたいでしょう?」

「それはそうですが……10人全員がこの部室でデッキ作りとなると、流石にスペースが足りないのでは?」

「それなら、とりあえず学年毎に集まって別の場所で作るのはどうかしら? それぞれの教室で作るなら問題は無いでしょ?」

「それぞれの教室……って事は、私達は二年生の教室で……」

「ルビィ達は一年生の教室……♪」

「そして、私達は三年生の教室よ。あ、それと……各教室にはそれぞれメイドを三人ずつ待機させるから、デッキが出来たら残りのカードはアタッシュケースに入れてそのまま渡しちゃってちょうだい。そのままそれぞれの家に届けさせるから」

「分かりました。それじゃあ早速行こっか、三人とも」

「「うん!」」

「了解であります!」

 

 千歌ちゃん達の元気いっぱいな返事を聞いた後、私達は鞠莉さん達に一言ずつ言ってからそれぞれのアタッシュケースやルールブックなどを手に部室を後にした。そして、私達の教室へ向かう途中、私はふと三人が選んだ『クラン』が気になり、歩きながら三人に話し掛けた。

「ところで……みんなはどんな『クラン』を選んだの?」

「ふふ……この私、高海千歌は『かげろう』と『なるかみ』の二つだよ!」

「『かげろう』に『なるかみ』……それってどんな『クラン』なの?」

「えっとね……『かげろう』と『なるかみ』はどっちもカッコいいドラゴンや竜人がいっぱいの『クラン』で、パッと見た感じだと相手を次々と倒しながら戦っていくみたいだよ」

「あははっ、それじゃあこれからは『普通怪獣ちかちー』じゃなく、『普通龍ちかちー』だね!」

「うんっ! どんな相手でも『カイ君』達と一緒にがおーって倒していっちゃうよ!」

「カ、カイ君……?」

「うん! スゴく迫力があって、カッコ良いドラゴンなんだぁ♪」

「そ、そっか……曜ちゃんの『クラン』はどんな『クラン』なの?」

「私のは『アクアフォース』と『ディメンジョンポリス』であります! 『アクアフォース』は水兵さんみたいな格好をした人や海竜が多い『クラン』で、『ディメンジョンポリス』はヒーローな怪獣、ロボットが多い『クラン』なんだ!」

「そうなんだ……ふふ、なんだか曜ちゃんらしい『クラン』だね」

「うん、私もそう思ってるんだ。詩羽ちゃんは?」

「私のは忍者がモチーフの『ぬばたま』と恐竜達がモチーフの『たちかぜ』、後はラグビー選手みたいな格好をした人達が多い『スパイクブラザーズ』だよ。それで、梨子ちゃんは『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』と『リンクジョーカー』なんだよね?」

「うん、せっかく出会えた事だしね。だけど、どんな『クラン』なのかまだしっかりと見てないかな」

「そっかぁ……でも、パッと見た感じだと、『ロイヤルパラディン』は騎士みたいな感じの人が多そうだったよね」

「騎士、かぁ……ふふっ、麗しの梨子姫を守るは白銀の聖騎士達ってところかな?」

「ひ、姫って……私はそんなんじゃないから!」

「あっはは! でも、今度の衣装はそういうのもありかもしれないね──っと、話してる内に教室に着いたよ」

「あ、ほんとだ。よーしっ、それじゃあ早速デッキ作り開始だーっ!」

『おー!』

 

 そして、教室に入った後、私達は話をしながらデッキ作りを始めた。その間、私が選んだ『クラン』のみんなも時々アドバイスをしてくれていた事もあってか、デッキ作りは結構すんなりと終わり、私達は出来たてほやほやのデッキを残して、鞠莉さんのお家のメイドさん達に早々にアタッシュケースを預ける事が出来ていた。

 

「ふぅ……これで良いわね。さて……結構早くデッキ作りが終わっちゃったけど、これからどうしようか?」

「ふっふっふ……梨子ちゃん、それは愚問ってもんだよ」

「え……?」

「デッキが出来たなら……早速やってみようよ! ヴァンガード!」

「あははっ、そうだね。鞠莉ちゃんが言ってたように早くカードに慣れたいし、それが良いかも♪」

「……うん、そうだね。それじゃあまずは誰からやってみる?」

「それなら、私と梨子ちゃんでやってみようよ!」

「え、私と千歌ちゃんで?」

「うん! 私、梨子ちゃんの『クラン』がどんな感じがスゴく気になってたからね。だけど、やるからには負けないよ!」

「千歌ちゃん……うん、私も全力で行くからね」

「うん!」

 

 千歌ちゃんの元気いっぱいな返事を聞いた後、曜ちゃんは詩羽ちゃんの手を取りながらニッと笑った。

 

「それなら、私は詩羽ちゃんとやろうかな? 詩羽ちゃんもそれで良い?」

「うん、もちろん!」

「ヨーソロー! それじゃあ、早速準備開始であります!」

 

 その曜ちゃんの言葉に頷いた後、私達は机を二つずつくっつけてスペースを作った。そして、ルールブックを読みながら鞠莉さんからもらったプレイマットなどの準備をして、プレイマットの上に私は『ロイヤルパラディン』のデッキを置いた。

 

 ……これから私の初めてのファイトが始まる。でも、何故か『ロイヤルパラディン』のみんなと一緒なら大丈夫な気がする。だから、不安なんて一切無い!

 

 そう思いながらFV(ファーストヴァンガード)を裏向きで置き、じゃんけんで先行を勝ち取ってから、デッキをシャッフルしていたその時、『先導者よ』といつのまにか私の肩の上に移動していた騎士が話し掛けてきたため、私はこっそりと話し始めた。

 

「……うん、なに?」

『このファイト、私にもアドバイスをさせて頂けませんか?』

「アドバイス……?」

『はい。もちろん、先導者さえよければですが……』

「そうね……うん、分かった。それじゃあお願いするね」

『かしこまりました』

「うん、よろしくね。あ、そうだ……まだ貴方の名前を訊いてなかったよね? せっかくだから、名前を聞かせてもらえるかな?」

『はい、私は『ブラスター・ブレード』と申します。これからよろしくお願いいたします、先導者』

「『ブラスター・ブレード』ね。私は桜内梨子よ、よろしくね」

『はい、よろしくお願いいたします、先導者梨子殿』

 

『ブラスター・ブレード』さんの凛々しい声にコクンと頷いた後、私は千歌ちゃんのデッキのカットを行い、最初の手札を引いた。

 

 ……うん、たぶんこの手札で大丈夫だと思う。

 

「『ブラスター・ブレード』さん──って、『ブラスター・ブレード』さんから手札は見えてる?」

『はい、見えています』

「そっか。それじゃあ、この手札でも良いかな?」

『はい、問題ないかと』

「うん、ありがとう」

 

『ブラスター・ブレード』さんにお礼を言った後、私は千歌ちゃんに話し掛けた。

 

「私はこのままで良いけど、千歌ちゃんは引き直しする?」

「ううん、私も大丈夫」

「……うん、分かった。それじゃあ……始めようか」

「うん!」

 

 そして、私達は裏向きで置いていたFVを静かに掴み、『カードファイト!! ヴァンガード』の開始を宣言する言葉を同時に口にした。

 

『スタンドアップ! ヴァンガード!』




第1話、いかがでしたでしょうか。次回は梨子VS千歌のファイトを書いていきますのでお楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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