それでは、第3話をどうぞ。
みんなと話しながら歩く事数分、部室に戻ってきてみると、そこには既に一年生達と三年生達の姿があった。そして、部室の中に入ると、私達の姿に気づいた鞠莉ちゃんがにこりと笑いながら話し掛けてきた。
「おかえりなさい、みんな。二年生達も早速ファイトをしたのかしら?」
「うん。私と詩羽ちゃん、千歌ちゃんと梨子ちゃんでやって、私と梨子ちゃんが勝ったんだ!」
「へえ、そうなんだ。私も鞠莉と試しにやってみたけど、どうにか勝てたよ」
「私もずら丸とやったけど……ふふ、ずら丸が可哀想になる程、圧倒的な勝利を収めたわ」
「圧倒的、なんて言っているけど、本当は結構な接戦だったずら」
「ばらすな!」
「はいはい、一旦そこまでに致しましょう。それで、鞠莉さん。こうして一年生と二年生にも集まってもらったわけですが、この後はどうするつもりですの?」
「そうね……集まってもらったのは、みんながデッキを組めたかやファイトをしてみたかを確認するためで、他に特に何かをしたいわけではないから、今日はこのまま解散かしら。私もAqoursが『ヴァンガライブ』に参加する旨を運営委員会に報告しないといけないし、少しだけ理事長としての仕事も残ってるからね」
「そっか。それじゃあこの場は解散にして、私とダイヤは鞠莉の仕事を手伝おうかな。ダイヤもそれで良いよね?」
「はい。それに、鞠莉さんとは少し話したい事もありますし、ちょうど良いですから」
「Thank You,二人とも。という事で、一年生と二年生はこのまま帰っちゃっていいわ」
『はーい』
鞠莉ちゃんの言葉に返事をした後、私達はそれぞれ帰り支度を始めた。
それにしても……『カードファイト!! ヴァンガード』っていうカードゲームに触れたと思ったら、それに出てくるユニットと話せるようになるなんて……こんな漫画やアニメみたいな出来事が自分の身に起きるなんて思ってもみなかったなぁ。
帰り支度をしながらそんな事を考えていた時、肩の方から話が出来るユニットの内の一人がとても明るいノリで話し掛けてきた。
「よーう! 帰り支度をしながら何を考えているんだい?」
「『嵐を超える者 サヴァス』さん……いえ、こんな漫画やアニメみたいな出来事が起きるとはなぁと思って」
「ははっ、なるほどね! けど、それは僕達にとっても同じなんだよ? 『地球』の存在は知っていたけど、こうして僕達が『地球』に来て、君と話が出来るとは思っていなかったからね。そうだよね? 『大宇宙勇機 グランギャロップ』」
「……まあな。だが、こうして私達の『先導者』である曜と出会えた事はとても嬉しく思っている」
「『大宇宙勇機 グランギャロップ』さん……えへへ、それは私も同じであります。『嵐を超える者 サヴァス』さん、『大宇宙勇機 グランギャロップ』さん、これからもよろしくお願いします!」
「うん、こちらこそよろしくね」
「よろしく頼む」
私の言葉に二人がそれぞれの言葉で答えていたその時、「ねえ、曜ちゃん」と詩羽ちゃんが話し掛けてくる声が聞こえ、私がそちらに顔を向けると、にこにこと笑う詩羽ちゃんの肩に紫色の竜のようなモノが見え、私は一瞬怯んでしまった。
「えっと……詩羽ちゃん、その肩のって……」
「え、さっき大活躍してくれた『修羅忍竜 クジキリコンゴウ』さんと『轟剣竜 アンガーブレイダー』さんと『デッドヒート・ブルスパイク』さんだけど……あ、良く見たら曜ちゃんの肩に『嵐を超える者 サヴァス』が乗ってる!」
「え、ちょっと待って……もう一人のユニットは見えてないの?」
「もう一人のユニット……ううん、『嵐を超える者 サヴァス』しか見えないよ? 曜ちゃんは?」
「私も『修羅忍竜 クジキリコンゴウ』しか見えない……って事は、お互いにさっき使った『クラン』のユニットしか見えてないって事になるんだね」
「そうだね……でも、どうして見えるようになったんだろう?」
「それは──」
私にもわからない。そう言おうとしたその時、突然「ふーたりとも!」と言いながら千歌ちゃんが私の背中をドンと押してきたため、私は驚きから身体をびくりと震わせてしまった。
「わわっ!?」
「ふふ……ビックリした?」
「ビックリした? って、そりゃビックリしたよぅ……」
「ようだけに?」
「いやいや、別に掛けてないから……それで、どうしたの?」
その私の問いかけに千歌ちゃんはクスリと笑ってから答えた。
「実はね、さっき梨子ちゃんとヴァンガード合宿をしないかって話をしてたの」
「ヴァンガード合宿……?」
「それって、千歌ちゃんの家に泊まってって事?」
「うん!」
「千歌ちゃん曰く、やるからには優勝を目指したいんだって」
「だって、優勝出来たらAqoursの名前がもっと広まるんだよ? これは頑張るしかないでしょ!」
「……まあ、そうだね。せっかくのチャンスは、活かしてなんぼだし」
「それじゃあ──」
「うん、この渡辺曜もヴァンガード合宿に参加するであります!」
「もちろん、私も参加するよ」
「やったぁ! みんなでお泊まりだぁ!」
「千歌ちゃん、ただのお泊まり会じゃないからね?」
「もちろん、わかってるよ。でも、やっぱりワクワクしない?」
「それは……まあ、ワクワクしないって言ったら嘘になるわね」
「ふふ……でしょ? というわけで、早速帰ろう! 時は金なり、なんて言葉もあるからね!」
「了解であります! あ、そうだ……果南ちゃん達やルビィちゃん達もヴァンガード合宿に参加しない?」
「ヴァンガード合宿?」
「えっと……実は、一年生はヨハネちゃんのお家でやる事にしちゃったんだぁ……」
「あれ、一年生も?」
「マリー達三年生もウチのホテルでやる事にしたのよ」
「おおぅ、そうなんだ……」
「それなら合同で……って言いたいところだけど、さすがに今からだと難しいだろうし、みんなでやるのはまた今度にした方が良いみたいだね」
「そうだね」
「仕方ないけど、それしかないわね」
「うん。よし……それじゃあ二年生組は二年生組でヴァンガード合宿を頑張ろう!」
『おー!』
三人で声を揃えて返事をした後、私達は一年生達と三年生達に挨拶をしてから部室を後にし、そのまま下駄箱へと向かった。そして、『浦の星女学院』の校舎を出て、いつものバス停へ向かって歩いていたその時、『嵐を超える者 サヴァス』さん達が千歌ちゃんと梨子ちゃんの事を見ているのが目に入り、それが気になった私は『嵐を超える者 サヴァス』さん達に話し掛けた。
「千歌ちゃんと梨子ちゃんがどうかしたんですか?」
「えっとね……さっきから、この二人からもユニットの気配がするんだ」
「ユニットの気配って事は……千歌ちゃん達もユニットの姿を見たり、お話が出来るって事ですか?」
「恐らくな」
「曜、試しに訊いてみてくれないか?」
「え……」
「大丈夫大丈夫。もし、僕達の考えが間違っていてもすぐに誤魔化せば変な風には思われ──」
その時だった。
「ねえ、千歌ちゃん、梨子ちゃん。二人はユニットの声が聞こえたり、姿が見えたりする?」
「ちょ! 詩羽ちゃん!?」
不意に立ち止まった詩羽ちゃんが突然そんな事を言い出し、それに対して私が驚いていると、千歌ちゃん達は顔を見合わせてから静かに頷いた。
「うん、聞こえるし見えるよ?」
「もっとも、何故なのかはわからないけど……」
「……え? 二人も見えるし聞こえるの?」
「そうだけど……って、曜ちゃんも?」
「うん……まあ、それは詩羽ちゃんもそうみたいだけど」
「詩羽ちゃんも……って事は、二人の肩にもユニットが乗っかってるの!?」
「うん、私には『ぬばたま』と『たちかぜ』と『スパイクブラザーズ』のユニットの姿が見えてるし、曜ちゃんには『アクアフォース』と『ディメンジョンポリス』のユニットの姿が見えているみたいだけど、私には『アクアフォース』の『嵐を超える者 サヴァス』しか見えないし、曜ちゃんには『ぬばたま』の『修羅忍竜 クジキリコンゴウ』さんの姿しか見えてないみたい」
「それ、私達も同じだよ!」
「私には『ロイヤルパラディン』の『ブラスター・ブレード』さんと『ギアクロニクル』の『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』さん、『リンクジョーカー』の『遊星骸神 ブラントリンガー』さんの姿が見えていて……」
「私には『かげろう』の『超越竜 ドラゴニック・ヌーベルバーグ』のベル君と『なるかみ』の『ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオン』のカイ君の姿が見えるけど、梨子ちゃんにはカイ君の姿しか見えなくて、私には『ブラスター・ブレード』の姿しか見えないの」
「つまり、千歌ちゃん達もさっきのファイトで使った『クラン』のユニットしか見えてないって事になるんだね」
「うん」
「でも、一体どうしてこんなこんな事が起きてるんだろう?」
「わからない……わからないけど、たぶんこれはなにか意味があるんだと思う。あの、『嵐を超える者 サヴァス』さん、この件について何か知らないですか?」
その問いかけに『嵐を超える者 サヴァス』さんは、申し訳なさそうな表情を浮かべながら首を横に振った。
「申し訳ないけど、僕達にも何故なのかははっきりとわからないんだ。予想程度なら考えはあるけど……」
「それでも良いです」
「……じゃあ、話すね。まず、君達には『PSYクオリア』という能力が備わっていて、僕達の声を聞けたり姿が見えるのはそれが原因だと思う」
「『PSYクオリア』……?」
「『PSYクオリア』とは、私達が住む『惑星クレイ』の住人だけでは決めかねる事態が発生した時、『地球』の先導者に導いてもらうため、先導者候補と『惑星クレイ』をシンクロさせる能力の事だ。つまり、曜は『アクアフォース』と『ディメンジョンポリス』の先導者候補という事になる」
「そっか……だから、私の事を先導者って言っていたんですね」
「そういう事。もっとも、『アクアフォース』と『ディメンジョンポリス』の先導者候補は他にもいるんだけどね」
「他にもいるって……後何人いるんですか?」
「私達のように『地球』の先導者候補の人間の声が聞こえたのは、『クラン』一つにつき三人だった。つまり、最低でも後二人ずついる事になるな」
「そして、その人達もこの『地球』にいる……」
「そうなるね。そして、先導者候補ではない『クラン』のユニットの姿が見える理由、これはファイトを通じてお互いのイメージが重なりあった事が原因だと思うんだ」
「イメージが重なりあった……」
「まあでも、これはあくまでも僕達の予想。本当のところはまだわからないよ」
「だが、先程話していたヴァンガード合宿を利用して、ここにいる全員が持つ『クラン』のユニットの姿を見えるようにし、声を聞こえるようにしておく必要はあるだろうな」
「そうですね。そうじゃないと、みんなで相談が出来ないですし……」
このよくわからない状況を解決するには、たぶん全員の力が必要だ。だから、『大宇宙勇機 グランギャロップ』さんの言う通り、千歌ちゃんの家でのヴァンガード合宿でみんなのユニットとも話せるようにならないと。
そう思いながらここまでの会話をみんなに話すと、みんなは真剣な表情を浮かべながら揃って頷いた。
「そうだね。こうしてユニット達の声が聞こえたりするようになった以上、これは他人事じゃないもん」
「うん。それに、放っておいたら何が起きるかわからない状況なわけだしね」
「ええ。その『PSYクオリア』が私達に備わっているのは、私達だから出来る事があるっていう事だと思う。それなら、放ってなんておけないわ。もちろん、そうじゃなかったとしても」
「うん、そうだね」
「よし、みんな。このヴァンガード合宿を通して、『カードファイト!! ヴァンガード』の腕を磨くだけじゃなく、いま私達の身に起きてるこの出来事についても解決できるように頑張っていこう!」
『うん!』
千歌ちゃんの言葉に揃って頷いていると、それを聞いていた『嵐を超える者 サヴァス』さんはクスリと笑ってから話し掛けてきた。
「曜、君達のリーダーはとても頼りになるね。久しぶりにハートに来たよ」
「ふふ、自慢の幼馴染ですから。もちろん、Aqoursのメンバー全員が自慢の幼馴染ですけどね」
「ははっ、そうか」
「そんなメンバー達と出会えた事、そして共に何かを出来る事は、将来の大切な財産になる。曜、幼馴染達は大切にするのだぞ?」
「もちろん、今仲良い人やこれから仲良くなる人達もね」
「はい、もちろんです!」
二人の言葉にニカッと笑いながら返事をした後、私は千歌ちゃん達と話をしながら再びバス停に向かって歩き始めた。
それから数時間後、家に運んでもらっていた『カードファイト!! ヴァンガード』のカードやいつものお泊まりセットなどの合宿の準備を終えた私が千歌ちゃんのお家である旅館『
「あ、千歌ちゃんのお母さん。おじゃまします」
「あら、いらっしゃい。梨子ちゃんと詩羽ちゃんはもう千歌ちゃんの部屋にいるわよ」
「わかりました」
「そういえば、千歌ちゃんから聞いたけど、今度はスクールアイドルを対象にしたカードゲームの大会に出るんだっけ?」
「はい! 出るからには全力でやるつもりです!」
「ふふっ、頑張ってね。私達も応援してるから」
「はい、ありがとうございます!」
敬礼をしながら返事をした後、私は千歌ちゃんの部屋へ向かって歩き、部屋の前に着くと、部屋の襖を静かに開けた。
「みんな、お待たせ!」
「あ、曜ちゃん!」
「さっきぶり、曜ちゃん」
「これで全員揃ったわね」
「そうだね。それで、ヴァンガード合宿と言うからには、ファイトを何度もするんだろうけど、まずは誰と誰がやるの?」
「そうだね……さっきは私と梨子ちゃん、曜ちゃんと詩羽ちゃんでやったから、今度は違う組み合わせが良いよね」
「それじゃあ、私は千歌ちゃんとやってみたいかな」
「おっ、良いねえ。詩羽ちゃんのそのやる気、私は大好きだよ」
「ふふ、ありがと」
「じゃあ、私は梨子ちゃんとだね」
「うん。よろしくね、曜ちゃん」
「こちらこそよろしくね、梨子ちゃん」
そう言いながら梨子ちゃんと握手を交わした後、私達はそれぞれファイトの準備を始めた。
さてと……さっきは『アクアフォース』のみんなに頑張ってもらったし、今度は『ディメンジョンポリス』のみんなの出番かな?
「『大宇宙勇機 グランギャロップ』さん、お願いしても良いですか?」
「ああ。そろそろ私もファイトで活躍しないといけないと思っていたところだからな」
「それなら良かったです。それじゃあ、一緒に頑張っていきましょう、『大宇宙勇機 グランギャロップ』さん」
「ああ」
そして、『ディメンジョンポリス』のデッキを手に取り、プレイマットなどの準備を終えた後、私達はデッキのシャッフルなどを行い、じゃんけんで先攻後攻を決めてから、最初の手札になる5枚を引いた。
……うん、これなら大丈夫そう。
「私は引き直さなくて良いけど、梨子ちゃんはどう?」
「私も大丈夫」
「わかった。それじゃあ……行くよ」
「うん」
梨子ちゃんが返事をした後、私達はFVに手を掛け、同時にあの言葉を口にした。
『スタンドアップ、ヴァンガード!』
第3話、いかがでしたでしょうか。次回は曜VS梨子のファイトを書いていきますのでお楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。