ヴァンガライブ!   作:九戸政景

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どうも、リンクジョーカーのデッキで愛用しているのは根絶者の片倉政実です。
それでは、第1話をどうぞ。


第1話 ユニット達の声

『ヴァンガライブ』の詳細について理事長から報された日から一週間後、私達はアタッシュケースを載せた台車を押しながら所属する『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の部室へ向かって歩いていた。

 

「ふう……それにしても、スゴいケースの量だね」

「ひいふうみい……大体20くらいはあるよ」

「今回使う事が出来ない『クラン』も幾つかありますけどね」

「『エトランジェ』や『クレイエレメンタル』ですね。まあ、『クレイエレメンタル』に関しては『絶界巨神 ヴァルケリオン』のみ使えますけど」

「栞子ちゃんも結構詳しいんだね」

「……実は菜々さんに付き合って私もプレイしていた時期がありましたから。もっとも、私も菜々さんと同時期に一度止していましたが、その間も情報だけは集めていたんです」

「なるほどね」

 

 栞子さんの言葉に侑さんが納得顔で頷いていた時、向こう側から歩夢さんとかすみさんが仲良く話しながら歩いてくるのが目に入ってきた。

 

 ふふ……ああいった姿を見ていると、お二人が本当の姉妹のように見えてきますね。まあ、お二人自身はどう思っているかわかりませんけど。

 

 そんな事を思いながら歩いていくと、私達の姿に気付いた歩夢さんがニコリと笑い、かすみさんと一緒に少し小走りになりながら近付いてきた。

 

「みんな、お疲れ様」

「スゴい荷物ですけど……この中には何が入っているんですか?」

「それは後のお楽しみです」

「ところで、二人はどうしてここに?」

 

 その問い掛けに歩夢さんはクスリと笑ってから答えた。

 

「言われた通り、先に部室に行って他のみんなと一緒に待ってたんだけど、少し遅いなと思ってかすみちゃんと一緒に迎えに来たんだ」

「かすみん達、早く侑先輩達に会いたかったですから」

「……そっか」

「お二人とも、ありがとうございます」

「ふふ、どういたしまして」

「それじゃあ早速行きましょうか。早くしないと彼方先輩がまたすやぴしちゃいますし」

「そうだね」

 

 侑さんが頷きながら答えた後、歩夢さんとかすみさんを加えた私達は再び部室に向けて歩き始めた。そしてそれから数分後、部室に着いた私達がドアを開けると、私達が来たのに気付いた愛さんが笑顔を浮かべながら話し掛けてきた。

 

「おっそいよー、みんなー」

「ごめんごめん。これの数が思っていたよりも多くて運ぶのに少し苦労してたんだ」

「たしかに重そう。でも、何が入ってるの? 璃奈ちゃんボード『興味津々』」

「えっとね……菜々ちゃん、そろそろ説明しても良いかな?」

「はい。でも、その前に……エマさん、彼方さんを起こしてもらっても良いですか?」

「うん、わかったよ」

 

 エマさんは自分の膝枕で眠る彼方さんの身体を優しく揺さぶった。

 

「彼方ちゃん、そろそろ起きてー」

「うーん……? もう、朝ー……?」

「とっくに朝でしょ。ほら、彼方。しっかりしなさい」

「うーん……わかった」

 

 彼方さんはまだ少し眠そうに答えると、欠伸をしながらゆっくりと体を起こし、私達に微笑みかけた。

 

「おはようー、みんなー」

「はい、おはようございます。さて、それではそろそろ説明をしたいと思いますが……その前に、一つだけ質問を。かすみさん、今日ラブライブの公式サイトは確認していますか?」

「公式サイト、ですかぁ? まだですけど、もしかしてそれに関する事なんですか?」

「はい。実はですね──」

 

 そして、私が『ヴァンガライブ』について話すと、皆さんの視線はカードが入ったアタッシュケースに注がれた。

 

「なるほど……あの中にそのカードが入っているのね」

「スクールアイドルによるカードゲームの大会……! それ、絶対楽しいじゃないですか! かすみんは大賛成です!」

「私も賛成。前に菜々さんからそれの話を聞いて、私も興味を持っていたから。璃奈ちゃんボード『やるぞー』」

「カードゲーム……今まで触れた事はありませんが、これも一つの経験として頑張ってみようと思います」

「あははっ! どうせやるなら前向きな方が良いからね。愛さんも全力でやっちゃうよー!」

「彼方ちゃんも賛成だよー」

「私も大賛成♪」

「やる前から逃げるのは性に合わないの。私もスクールアイドルやモデル活動と同じくらい本気でやらせてもらうわ」

「もちろん、私も賛成だよ」

「うん、わかった。それじゃあ……」

「はい、早速カードとのご対面と行きましょう」

 

 そして、皆さんと協力してアタッシュケースを台車から降ろした後、私はその中にあった『ロイヤルパラディン』とラベルが貼られたアタッシュケースに手を掛けた。

 

『ロイヤルパラディン』……国家『ユナイテッド・サンクチュアリ』に属しており、仲間を呼ぶスキルなどに特化している聖騎士や魔導師の『クラン』。その特性から相手を除去する事を得意とする『クラン』との相性はあまり良くないけれど、あまりクセも無い上に仲間が揃った時の爆発力は凄まじく──。

 

「……ちゃん、菜々ちゃんってば!」

「はっ!」

 

 その侑さんの声で我に返ると、私は少しだけ気恥ずかしさを感じながら侑さんにペコリと頭を下げた。

 

「す、すみません……この『ロイヤルパラディン』は、私の好きな『クラン』の一つだったので、つい『優木せつ菜』の時の私みたいに私の中で『大好き』が爆発してしまいました……」

「あはは、別に良いよ。でも、本当に好きなんだね、そのカード達が」

「はい。他の『クラン』にも言える事ではありますが、その中でもこの『ロイヤルパラディン』は仲間達の絆をとても重んじる『クラン』でして、その力を合わせて戦う姿に私は魂を揺さぶられるんです」

「なるほどね」

「あ、そういえば……栞子さんは『シャドウパラディン』がお好きでしたよね?」

「はい。『ロイヤルパラディン』と同じように仲間を呼ぶ事を得意としていますが、常に仲間と共に戦場を駆ける『ロイヤルパラディン』とは逆に『シャドウパラディン』は仲間の犠牲がコストになる事が多いんです」

「仲間の犠牲がコストって……なんかそれだけ聞くと、スゴく冷たい感じがするよ、しお子」

「たしかにそうですが、決して仲間の犠牲を無駄にするわけでは無く、自分達の勝利のために一時的に仲間達の命を借り受けているという考え方も出来、私はそんな冷酷なように見えて一つの目的へ向かってひたすらに突き進むそんな彼らの姿に尊敬の念を抱いているんです」

 

 愛おしそうに『シャドウパラディン』のラベルが貼られたアタッシュケースを撫でる栞子さんの姿を見て、歩夢さんは微笑ましそうにクスリと笑った。

 

「栞子ちゃん、本当にその『クラン』が好きなんだね」

「うんうん。話してる時のしおってぃー、なんだか大好きな物を語ってる時の菜々みたいだった」

「……まあ、私はスクールアイドル優木せつ菜の最初のファンですから、その影響を受けていてもおかしくはありません。それよりも菜々さん、カードはどのように分けるつもりなのですか?」

「そうですね……こうして集めて頂けた『クラン』は合計で24。ここにいるのは全員で12人なので、一人二つずつにすれば問題ないかと」

「え?」

「私達、スクールアイドルじゃないのに良いの?」

「はい。1年生は栞子さんが本格的に加入して下さった事で四人になりましたが、2年生と3年生は三人ずつなので、練習でファイトをする時にはどうやっても一人余ってしまうんです。それに、ユニットでもQU4RTZ(クォーツ)DiverDiva(ダイバーディーバ)は人数が偶数ですが、A・ZU・NA(アズナ)とユニットに入っていない栞子さんがファイトをする時にも同様に一人余るか対人戦の経験を積めない事になります。なので、侑さんと舞さんにはそういった時の練習相手としてデッキを持っていて欲しいんです」

「なるほどね。そういう事なら喜んで練習相手になるよ。ね、舞ちゃん」

「うん。同好会のマネージャーとして全力でみんなの練習相手を務めさせてもらうよ」

「ありがとうございます。さて、今度は誰がどの『クラン』を選ぶかですが──」

 

 そう言いながら再びアタッシュケースに視線を向けようとしたその時だった。

 

先導者(マイヴァンガード)よ、私達の声をどうか聞いてくれ……』

『聞こえるか、先導者』

 

 そんな二つの声が頭の中に響いてきた。

 

 え……? 今の二つの声、どこかで聞いた事があるような……。

 

「皆さん……今、声が聞こえませんでしたか?」

「うん……聞こえた」

「ええ、なんだか落ち着いた感じの男性と女性の声だったわ」

「え? アタシはとっても低い男の人の声と人の良さそうな男の人の声だったよ?」

「私は……どこかで聞いた事があるような声が……」

「つまり……皆さん、聞こえた声がそれぞれ違う、と……」

「ど、どういう事……?」

「りな子、実は生徒会チームとグルで、そのアタッシュケースに何か声が聞こえるような装置を付けてるとかは……」

「そんな事、絶対にしてない。困惑してるのは、私も同じ……」

「同じく、私達も何もしてないよ。そもそも理事長からこのアタッシュケースを受け取った後、開けたりなんてしてないし……」

「つまり、誰一人この状況については何も知らないと……」

 

 もちろん、私も何も知らない。けれど、あの声はたしかに『あの人』の声だった。という事は、まさか……。

 

 突然聞こえてきた声に全員が困惑する中、私はこっそり栞子さんに話し掛けた。

 

「栞子さん」

「なんですか?」

「栞子さんに聞こえた声、もしかしてですが……どこか掴み所が無さそうな人の声だったんじゃないですか?」

「……よくわかりましたね」

「私もどこかで聞いた事があるような声が聞こえたもので。そして、栞子さんも同じだったという事は、たぶん私の予想は合っているという事になりますね」

「菜々さんの予想……?」

「はい。私の予想が正しければこの声の内の一つは……」

 

 そう言いながら私は『ロイヤルパラディン』のラベルが貼られたアタッシュケースと『シャドウパラディン』のラベルが貼られたアタッシュケースを開き、その中の1枚をそれぞれ手に取った。

 

「……あなたですよね、『ブラスター・ブレード』。そして、栞子さん。あなたが聞いた声の内の一つは恐らく……この『ファントム・ブラスター・ドラゴン』だと思われます」

「……菜々さん。つまりあなたは、私達が聞いたのは『カードファイト!! ヴァンガード』のユニットの声だったと言うんですか?」

「菜々ちゃん、流石にそれは……」

「あはは……そんな事あるわけが無いよ、菜々」

「……正直、私も自分のこの予想を疑っています。ですが、ここは一度私を信じて聞こえた声に問い掛けて欲しいんです。

『あなた達は、『惑星クレイ』に住むユニットなのか』と」

「菜々さん、そうしたいのは山々だけど──」

 

 私からの提案に璃奈さんが『困惑』の璃奈ちゃんボードを出しながら答えようとしたその時、

 

「……わかりました。やりましょう」

 

 と、被せるように栞子さんが小さく溜息をつきながら答え、私に右手を差し出した。

 

「菜々さん、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のカードを渡して頂けますか?」

「栞子さん……」

「しお子、何を言ってるの!?」

「意外です。いくら栞子さんでも、今の菜々さんの話は信じないと思っていましたから……」

「……私も正直半信半疑です。ですが、菜々さんは私が聞いた声の内の一つを見事言い当ててみせた。それなら、私も菜々さんの事を信じてみるべきだと思った。それだけです」

「栞子さん……ありがとうございます」

「どういたしまして」

 私のお礼の言葉に栞子さんがニコリと笑いながら答えていると、それを見ていた同好会の皆さんが覚悟を決めたような表情で同時に頷いた。

 

「それなら、私達もやるよ。菜々ちゃん」

「別にやって損する事でも無いお願い事を試しもせずに断るのは流石に良くないからね」

「うん、そうだね」

「よっし、ここは一つやってみよう!」

「ま、まあ……試すだけならただですもんね」

「もし、本当にユニットからの声だったらスゴい。璃奈ちゃんボード『ワクワク』」

「ふふ、そうですね」

「ユニットさんもお昼寝は好きなのかなー?」

「だったら、それも訊いてみたら?」

「……訊いても困らせるだけなんじゃないかしらね……」

「皆さん……本当にありがとうございます」

「どういたしまして。それじゃあやろうか、みんな!」

 

 その侑さんの声に全員が頷いた後、私達は目を瞑って揃って問い掛けた。

 

『あなた達は、『惑星クレイ』に住むユニットですか?』

 

 そう問い掛けてから数秒が経ち、やはり私の予想はハズレていたのかと思ったその時、アタッシュケースの方から二つの声が聞こえてきた。

 

「……ああ、その通りだ」

「先程までの話を聞く限り、我らの先導者はどうやら中々頭が働くようだな」

「……あ」

 

 そして、アタッシュケースの方へ顔を向けると、そこにはソフビ人形ほどの大きさの『ブラスター・ブレード』と『絆の根絶者(ドッキング・デリーター) グレイヲン』の姿があった。

 

「……やはり、あなた達だったんですね。会えて嬉しいですよ、『ブラスター・ブレード』さん、『絆の根絶者 グレイヲン』さん」

「さん付けはいらないぞ、先導者」

「……わかりました。それで、質問なのですが……」

 

『惑星クレイ』のユニット達に会えた喜びを噛みしめながら質問を始めようとしたその時、栞子さんを除いた全員から様々な声が上がった。

 

「え、ええっ!?」

「本当に……菜々さんの言う通り、『カードファイト!! ヴァンガード』のユニットからの声だった……!」

「スゴい。こんな事ってあるんだ」

「う、うん……!」

「これって夢、じゃないわよね……?」

「うん……だって、彼方ちゃんの目はパッチリしてるから……」

「で、でも……どうして?」

「……そこまではわかりません。ですが、あなた方なら知っているのではないですか?」

 

 そう栞子さんが問い掛けたけれど、『ブラスター・ブレード』と『絆の根絶者 グレイヲン』は何も答えず、栞子さんの事を見ながら少し不思議そうな顔をしていた。

 

「あ、もしかしてなのですが……私達に特定のユニットの声しか聞こえないように、ユニット達もそれぞれ聞こえる声と聞こえない声があるのでは無いでしょうか?」

「つまり、アタシはこのユニット達の声しか聞けないし、ユニット達はアタシの声しか聞こえないって事?」

「そっか……だから、ユニット達が栞子ちゃんの事を見ながら不思議そうにしていたんだ……」

「でも、それって結構不便」

「そうですよ。こんなに可愛いかすみんの声を特定のユニットしか聞けないなんて可哀想過ぎます」

「可哀想かはさておき……何か方法は無いのでしょうか?」

「そうね……あ、そうだわ」

「果林ちゃん、何か良いアイデアでもあるの?」

「本当にちょっとした思いつき程度なのだけど、一度戦ってみるというのはどうかしら?」

「戦うという事は……ファイトですね?」

「そう、そのファイト? を誰かと誰かがして、それを通じて気持ちを通じ合わせれば、お互いのユニットの声も聞こえるようになるんじゃないかと思うのよ」

「ファイトを通じて気持ちを通じ合わせる……果林さん、きっとそれですよ! そうする事で、ファイター同士のイメージ力が共鳴し合い、お互いのユニットの声も聞こえるように──」

「……菜々さん、優木せつ菜モードになりかけてますよ」

「……失礼。とりあえず、まずはデッキを組んでファイトをしてみましょう。もしかしたら本当に果林さんの予想通り、それぞれのユニットの声が聞こえるようになるかもしれませんし」

 

 その私の言葉に全員が頷いた後、それぞれユニットと話をしながらそれぞれの『クラン』のラベルが貼られたアタッシュケースを手に取った。

 

「さて、これで全員がカードを手にしましたね。それで、どこでデッキを組むかなのですが……この部室と生徒会室、後はどこが良いでしょうか?」

「裏庭……じゃ風で飛んでっちゃうかもしれない」

「それなら、どこかの教室を借りるとか?」

「では、それで行きましょう。そうなると、どうやって四人ずつに分けるかですが……」

「QU4RTZと生徒会役員はちょうど四人ですから、後は残ったA・ZU・NAのお二人とDiverDivaのお二人を合わせた四人でとりあえず良いのでは無いでしょうか」

「そうですね。では、何か生徒からの問い合わせがあった時のために私達は生徒会役員は生徒会室で行うとして、他の皆さんはどうしましょうか」

 

 その私の問い掛けに愛さんが静かに手を挙げた。

 

「それじゃあ、QU4RTZにこの部室をあげるよ」

「え、でも……」

「本当に良いんですか? 愛先輩」

「うん。良いよね、みんな」

「うん。私もそれで良いよ」

「私も賛成です」

「もちろん、私も賛成よ」

「……えへへ、ありがとう。という事で、愛さん達は愛のこもったデッキを組むために色々な教室をぶーらぶらしてみるよ。愛だけに!」

「プクッ……! わ、わかったよ……!」

「皆さん、気をつけて行ってきて下さいね」

「うん、ありがとう」

「それでは早速行ってきますね」

「行ってらっしゃーい」

「行ってらっしゃい」

 

 彼方さんと舞さんが答えた後、DiverDivaのお二人と歩夢さんとしずくさんは自分のアタッシュケースを持ったまま部室を出て行った。

 

 さて……私達もそろそろ行かないと。

 

「では、私達もそろそろ行きましょうか」

「そうですね。それでは、QU4RTZの皆さん。また後ほど」

「みんな、デッキ作り頑張ってね」

「私達も頑張るから」

「はい! 先輩達も頑張って下さいね」

「頑張る。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

「彼方ちゃんもすやぴしないように気をつけるよ」

「みんな、気をつけて行ってきてねー」

 

 そして、QU4RTZの皆さんに見送られながら私達は部室を後にし、そのまま生徒会室へ向けて歩いていった。

 

 そういえば、栞子さん達はどの『クラン』を手にしたかまだ確認していませんでしたね。

 

 そんな事を思った後、私は栞子さん達に話し掛けた。

 

「皆さん、皆さんはどの『クラン』を手にしたのですか?」

「あ、たしかに気になるかも」

「うん。それじゃあ……順番に言っていこうか。後はお話しできるユニットの名前も」

「わかりました。それでは、私から。私は『シャドウパラディン』と『ゴールドパラディン』の二つを手に入れました。話が出来るユニットは『シャドウパラディン』の『ファントム・ブラスター・ドラゴン』と『ゴールドパラディン』の『旭光の騎士 グルグウィント』です」

「『ファントム・ブラスター・ドラゴン』に『旭光の騎士 グルグウィント』……声はどちらも私が想像している通りですか?」

「……はい、その通りです」

「想像している通りって……あ、そういえば菜々ちゃんは栞子ちゃんがお話しできるユニットの事を言い当てたんだっけ」

「はい。因みに私が言い当てたのは、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』の方です」

「なるほどね。それじゃあ次は私かな。私は『メガコロニー』と『ディメンジョンポリス』の二つで、話せるのは『メガコロニー』の『マシニング・スパークヘラクレス』と『ディメンジョンポリス』の『鋼闘機 シンバスター』だよ」

「『メガコロニー』と『ディメンジョンポリス』ですか」

「うん。話した感じだとどっちも良いユニットみたいだし、これから仲良くしていこうと思うよ」

「はい。舞さんなら出来ると思います」

「ふふ、ありがと」

「それじゃあ次は私だね。私は『ギアクロニクル』と『ぬばたま』で、『ギアクロニクル』の『クロノジェット・ドラゴン』と『ぬばたま』の『隠密魔竜 マガツストーム』と話せるよ」

「『ギアクロニクル』と『ぬばたま』……そういえば、侑さんと舞さんはどちらも『フォース』と『プロテクト』ですね」

「『フォース』に……」

「『プロテクト』……?」

「はい。『イマジナリーギフト』という物の一種で、ある条件を満たすと手に入れられる物なんです。因みに『フォース』は自分のユニットの強化に特化していて、『プロテクト』は相手の攻撃を防ぐカードを手に入れるなど守りに特化した『イマジナリーギフト』です」

「へえ……そうなんだ」

「それじゃあその辺も意識しないとだね」

「はい。それで最後は私ですが、私は『ロイヤルパラディン』と『リンクジョーカー』の二つで、話せるのは『ロイヤルパラディン』の『ブラスター・ブレード』と『リンクジョーカー』の『絆の根絶者 グレイヲン』です」

「『ロイヤルパラディン』と『リンクジョーカー』……舞さんの方とはまた違った意味で善と悪の『クラン』が揃った形ですね」

 

 その栞子さんの発言に舞さんは不思議そうに首を傾げた。

 

「あれ、そうなの?」

「はい。設定上、『メガコロニー』は『ズー』という国家に属する『インセクト』という種族で構成された巨大犯罪結社で、『ディメンジョンポリス』は『スターゲート』という国家に属している巨大ロボットやそれをサポートする人間、更には怪獣などが所属する『クラン』なのです」

「つまり、設定だけ見れば、『メガコロニー』が悪側で、『ディメンジョンポリス』が善側って事だね」

「そうなります。そして、『ロイヤルパラディン』と『リンクジョーカー』ですが、『ロイヤルパラディン』はアニメで主人公が使っていた『クラン』の一つで『リンクジョーカー』は幾つかのシリーズでラスボスなどが使っていた『クラン』なんです」

「まあ、侑さんの『ギアクロニクル』もあるシリーズでは主人公とラスボスが使っていたので、そういう意味では侑さんも似たような感じでしょうか」

「なるほどね。因みに栞子ちゃんの『クラン』はどうなの?」

「私の場合も同じです。『ゴールドパラディン』はある主人公が使っていた『クラン』ですし、『シャドウパラディン』はその主人公が一時的に使っていたり、ラスボスが使っていたりと様々です」

「そうだったんだ」

「はい──と、着きましたね。生徒会室に」

「そうですね。それでは早速中に入ってデッキ作りを始めましょう」

 

 それに対して三人が頷いた後、私達は生徒会室に入り、それぞれの席に座ってデッキ作りを始めた。その間、いつの間にか肩に移動していたユニット達も時々アドバイスをくれたため、デッキ作りは特に苦労する事も無く終わり、私は出来たてのデッキを見ながら満足感に浸っていた。

 

「さて……出来ましたね、私達のデッキが」

「そうですね。それで、対戦相手はどうやって決めるのですか?」

「そうですね……ここは経験者である私と栞子さんが初心者の侑さんと舞さんのお相手を務めるという事でどうでしょう?」

「なるほど……それでは、私は舞さんの相手を務めるので菜々さんは侑さんのお相手をお願いします」

「わかりました。それでは侑さん、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそよろしくね」

「舞さん、よろしくお願いします」

「うん、よろしくね、栞子ちゃん」

 

 そして私達はファイトをしやすいように席を移動した後、プレイマットやイマジナリーギフトアイコンなどの準備を始めた。そして、二つあるデッキの内、『ロイヤルパラディン』のデッキを手に取り、FV(ファーストヴァンガード)(V)(ヴァンガードサークル)に裏向きで置いて、デッキのシャッフルとカットを終えた時、「先導者よ」と『ブラスター・ブレード』が声を掛けてきた。

 

「はい、何でしょうか?」

「このファイト、私にもアドバイスをさせてもらえないだろうか」

「アドバイス……ですか。それはとても心強いですが、まずは侑さんに訊いて──」

「あ、大丈夫だよ。私もちょうどその提案をされたところだったから」

「……わかりました。それでは、よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしく頼む」

 

『ブラスター・ブレード』さんがニコリと笑いながら答えた後、私達は最初の手札となる5枚を引き、その後に現時点で不必要な数枚を山札の下に戻してそれと同じ数を引き直し、再びシャッフルとカットを行った。

 

 準備は整いました。後はあの言葉を口にしてファイトを始めるだけです……!

 

「行きますよ、侑さん」

「うん」

 

 そして私達は、裏向きで置いていたFVに手を掛け、それを裏返しながらファイトの始まりを告げる言葉を口にした。

 

『スタンドアップ! ヴァンガード!』




第1話、いかがでしたでしょうか。次回は菜々モードのせつ菜と侑のファイトを書いていきますのでお楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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