それでは、第1話をどうぞ。
祈りを捧げ始めてからおよそ一時間が過ぎた頃、背後から話し声が聞こえ始め、私達が祈るのを一度止めて背後を振り返ると、そこには各国家に調査へ向かっていたユニット達の他、様々なユニット達の姿がそこにはあり、その光景に私が驚いてると、平行世界の『遊星骸神 ブラントリンガー』が声を掛けてきた。
「皆、調子はどうだ?」
「……残念ながらまだ声が届いている様子は無いな」
「ふむ……そうか」
「やはり、先程のは偶然だったのか?」
「そうだったとしても、誰かの声が聞こえてきたのはたしか。そうなれば、何らかの繋がりは出来ているはずなのだ」
「その繋がりが切れていなければ、私達の声はきっと届くはずです」
「……そうだな」
『ハーモニクス・メサイア』の言葉に『クロノジェット・ドラゴン』が静かに答え、ユニット達の顔に少しだけ希望の色が浮かび始める中、私と似た装備を纏った漆黒の騎士──『ブラスター・ダーク』がその中から進み出てきた。
「アーメス、祈りを捧げるのは良いが、まずは『ロイヤルパラディン』のユニット達にも事情を話してきてはどうだ?」
「ユーノス……ああ、たしかにそうだな。我が王の元にも平行世界の王達が来ているはずだからな。ここは一度休憩をして、我が王達にもここまでの話をしておいた方が良いかもしれないな」
「ああ。平行世界の『ハーモニクス・メサイア』達が話だけはしてくれたが、それでも『ユナイテッド・サンクチュアリ』の皆が混乱しているのはたしかだ。アーメス、そして平行世界の『ブラスター・ブレード』達よ。早々に自分達の王の下へと向かえ。ただ祈りを捧げ続けるよりもその方が今は良い」
「ああ、わかっている。よし……それでは、行くか」
私の声に平行世界の私達が頷いた後、私達は我が王──『騎士王 アルフレッド』の元へと向かった。そして、王宮へ向かう途中、城下町のあらゆる箇所を見てみると、そこではユーノスの言う通り、突如現れた平行世界の自分達に困惑するユニット達の姿があった。
「……やはり、誰もが混乱しているようだな」
「ああ。だが、これは仕方がない。いきなり、平行世界の自分が現れたのだ。混乱するなと言う方が無理な話だ」
「そうだな……」
「ああ……」
平行世界の私の言葉に私ともう一人の平行世界の私が頷きながら答えていた時、私はふとある事が気になった。
「ところでなのだが、平行世界の私達の真名もアーメスなのか?」
「ああ、そうだ」
「だから、先程『ブラスター・ダーク』からアーメスと呼ばれた時、それがお前の事だとわかっていても、思わず返事をしてしまいそうになった」
「なるほどな……因みに、『ブラスター・ダーク』の真名も──」
「「ユーノス、だな」」
「そうか……しかし、先程から不思議だったのだが、私達はどうして平行世界のユニットを一目見て自分の世界のユニットと平行世界のユニット区別出来ているのだろうな」
「さてな……」
「やはり、同じ世界の者同士、自分の世界のユニットからは何か感じる物でもあるのかもしれないな」
「感じる物、か……」
「まあ、それに関しては我が王達とも話すとしよう」
「ああ」
「そうだな」
そして私達は、王宮の中へと入り、我が王がいるであろう
「……ご無事でしたか、我が王よ」
「……うむ。お前も無事で何よりだ、我が友よ」
私達がそれぞれの王の下へと向かうと、我が王は心から安心したような笑みを浮かべた。そして、他の王へと視線を向けると、静かに口を開いた。
「さて……平行世界の私よ。先程から話していた通り、まずは私達が先頭に立ち、この『ユナイテッド・サンクチュアリ』のユニット達の不安を取り除いていくのが先決だと思うが、貴方達はどう思う?」
「そうだな。ユニット達が酷く混乱し、この先の事を不安に思っているのは間違いない。それならば、その不安を取り除くのが一番だろう」
「ああ。事態の解決に向けて他のユニット達が動いてくれている以上、私達のように『地球』の人々と交信が出来ないユニットは、そちらに回った方が良いだろう」
「わかった」
平行世界の『騎士王 アルフレッド』達の言葉に我が王が頷きながら答えた後、我が王達は私達を見回した。
「『ブラスター・ブレード』よ」
「今より汝らには、『地球』の人々と交信が出来るユニット達と協力し、この事態を終息へ導くための実行部隊としての活動を命じる」
「そして、何か新たな動きなどがあれば、すぐさま情報の伝達をしてほしい。良いか?」
『はい。我が王のご命令のままに』
私達は声を揃えて返事をした後、謁見の間を後にし、他のユニット達が待つ『ユナイテッド・サンクチュアリ』の外れにある荒野へと向かった。そして、そこへ着いてみると、そこでは何人ものユニット達が祈りを捧げる横で他のユニット達が話し合いを行っていた。
「皆、調子はどうだ?」
「……いや、祈りが届いている様子も無ければ、他の方法も見つかってはいないな」
「ふむ……存外難しいのじゃな。妾達から『地球』に住む人間──『
「そうだな……」
「こうなってくると、他の方法を探した方が良いような気すらしてくるけど、さっきから話し合いをしてもそれ以外の方法はまったく見つかってないのよね……」
「うむ……」
「あー! もうちょっと楽に済む方法はねぇのかよ!」
「あれば、既にやっているだろう……」
話し合いをしているユニット達から色々な声が上がる中、私は祈りを捧げ続けるユニット達に混ざり、再び祈りを捧げ始めた。
先導者よ、どうか私の声を聞いて下さい……。
そう思いながら祈りを捧げ続けていたその時、『ち……かち、ゃん……』と再びあの少女の声が頭の中に響いてきた。
「今のは……! 皆、皆には何か声が聞こえなかったか……!?」
「はい、たしかに聞こえました!」
「私にもあの時と同じ少女の声が聞こえましたよ、『ブラスター・ブレード』」
「やはり、そうか……! よし、皆。どのような声が聞こえたかを一人一人挙げていこう。そして、もしも同じ人物からの声が聞こえた者がいたら、そのユニット同士で集まり、同時に祈りを捧げるんだ!」
その私の声にその場にいた全員が頷くと、私達はどのような声が聞こえたかを挙げていった。すると、『遊星骸神 ブラントリンガー』と『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』が同じ人物からの声が聞こえていた事がわかり、私達は共に祈りを捧げるために集まった。そして、横一列に並んだ後、「……よし、やるぞ」という私の声と同時に私達は共に祈りを捧げ始めた。
「……私達の声をどうか聞いて下さい、先導者よ」
そう口に出しながら祈りを捧げていたその時、私の視界が白い光に包まれ、その光が消えたかと思うと、目の前にはどこかの部屋のような光景が広がっており、そこには洋服のような物を着た長い赤紫色の髪の少女の姿があった。
……もしや、この少女が私達の先導者、なのか?
その事を疑問に思いながら『遊星骸神 ブラントリンガー』達の方へ視線を向けていると、どうやら彼らも同じ少女の姿が見えているらしく、彼らも少し困惑した様子で私の事を見ていた。
やはり、私達は同じ少女の声が聞こえていたのだな。
自分でも驚くほど冷静にこの状況について考えながら少女の方へ視線を戻したその時、少女は突然恐怖に満ちた表情で辺りを見回し始めた。どうやら、先程の私の声があちらにも聞こえていたらしく、少女はそれに恐怖を抱いてしまったようだったため、私は少女に落ち着いてもらうために更に声を掛けた。
「先導者よ、落ち着いて下さい」
「先導者、まずは我らの声を聞くのだ」
私と『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』が同時に声を掛けると、少女は少し警戒した様子で私達の事を見始めた。
「……い、今のは、貴方達が話し掛けてきたの……?」
「……その通りです、先導者よ」
「ようやく、落ち着いてくれたようだな」
「い、いや……別に落ち着いてないから。というか、どうしてカードから声なんて聞こえるのよ……」
「……その事については後で説明する」
「後で説明するって……」
『遊星骸神 ブラントリンガー』の言葉に少女が困った様子を見せていたその時、「りーこちゃん!」と後ろから少女と同じ服を着た橙色の髪の少女がりこと呼ばれた少女の肩をポンと叩くと、先導者は「わわっ!?」ととても驚いた様子で後ろを振り向いた。すると、そこには橙色の髪の少女の他に灰色の髪の少女と黒い長い髪の少女の姿があり、先導者はその少女達と話を始めた。
……よし、この辺りで私達も状況の確認を──。
その時、頭の中に突如として様々な知識が流れ込み、その知識の奔流によって私は酷い頭痛に襲われた。
くっ……これは一体……!?
そう思いながら暫くそうしている内に頭痛は治まり、私はすぐに『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』と『遊星骸神 ブラントリンガー』の方へ視線を向けた。すると、彼らも少しだけ苦しそうな表情を浮かべながら、荒い息遣いをしていた。
「二人とも、大丈夫か?」
「あ、ああ……なんとかな」
「だが、先程から流れてきた知識は何なのだ?」
「……まとめると、私達はこの『地球』に存在する『カードファイト!! ヴァンガード』というカードゲームに登場するキャラクターの一人として扱われているようだったな」
「……だから、我らの先導者はカードから声が聞こえるなど言っていたのか」
「だが、今ではりこにも我々の姿は見え、我々には『カードファイト!! ヴァンガード』における様々な知識や技術が備わった。これが意味するところは恐らく……」
「ああ。先導者の支援をしながら、先導者にも『惑星クレイ』に起きた異変の手助けをお願いする。それが今我々がすべき事だ」
「うむ」
「そうだな」
『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』と『遊星骸神 ブラントリンガー』が共に頷きながら答えた後、私達は先導者へと視線を戻した。すると、先導者は何かを考えている様子だったため、私はそれが少し心配になり、先導者に声を掛けようとした。けれど、先導者はすぐに何かを決意したような表情を浮かべると、何事か呟き、私達へ視線を向けながら優しい笑みを浮かべた。
「これからよろしくね、みんな」
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします、先導者よ」
「こちらこそよろしく頼むぞ、先導者」
「先導者よ、よろしく頼む」
「……うん」
先導者が微笑みながら答えた後、私は再び現状を確認するために隣に立つユニット達に声を掛けた。
「さて……私達のやるべき事は定まった。だが、かなり多くの疑問も出てきたな……」
「何故、我らの祈りがいきなり届いたのか。何故、『惑星クレイ』にいたはずの我々が見知らぬ場所にいるのか。挙げていけばキリが無いな」
「うむ。後は、他のユニット達がどうなったかも気になるところだが……」
「それについてもまったくだな……」
「……こうなれば仕方あるまい。とりあえず、我々が今すべき事をやるとしよう」
「そうだな」
「ああ」
『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』の言葉に揃って頷いた後、先導者へ視線を戻そうとしたその時、私の視界が高くなっている事に気付いた。そして、足元を見てみると、そこには先導者の肩があった。
「いつの間にか位置が変わっていたようだな」
「ああ。だが、こういう事もこれからは日常茶飯事になるのかもしれんな」
「そうだな」
そんな事を話している内に先導者は他の方々と共に部屋を出て、話をしながらどこかへ向かって歩き始めた。そしてその道中、一緒にいるのがちか殿とよう殿、うたう殿だという事やちか殿達が手にした『クラン』が何かを知りながら移動をする事数分、また別の部屋に着くと、部屋のドアを開けて中に入った。すると、先導者達はそれぞれ別の机に座り、ケースの中に入っていたカードを広げ始めた。
そういえば、先程よう殿がデッキ作りがどうのと仰っていたな。ふむ……ならば、私達も自分達の『クラン』のデッキ作りをお手伝いしなければ。
『時空竜 ミステリーフレア・ドラゴン』達と頷き合った後、私は先導者に声を掛けた。
「先導者。よろしければ、私達にもデッキ作りを手伝わせては頂けませんか?」
「え、良いの?」
「うむ。自分達の『クラン』の事は我々がよく知っているからな」
「まあ、無理にとは言わんが」
「ううん。スゴく助かるわ。それじゃあお願いします」
先導者のこそっという声に揃って頷いた後、私達は自分の『クラン』のデッキのお手伝いを開始した。そしてそれから十数分後、『ロイヤルパラディン』と『ギアクロニクル』、『リンクジョーカー』のデッキが完成し、他のカードが入ったケースを待機していたメイドの方々に渡すと、ちか殿は早速デッキを使ってファイトがしたいと仰り、それに先導者を含む全員が賛同した後、先導者達は机を二つずつくっつけだし、それを終えると、先導者とちか殿、よう殿とうたう殿というペアで向かい合って座り、先導者はマットなどを広げてから私達『ロイヤルパラディン』のデッキを手に取った。そして、ファイトを始める準備をする中、私は先導者に声を掛けた。
「先導者よ」
「……うん、なに?」
「このファイト、私にもアドバイスをさせて頂けませんか?」
「アドバイス……?」
「はい。もちろん、先導者さえよければですが……」
「そうね……うん、分かった。それじゃあお願いするね」
「かしこまりました」
「うん、よろしくね。あ、そうだ……まだ貴方の名前を訊いてなかったよね? せっかくだから、名前を聞かせてもらえるかな?」
「はい、私は『ブラスター・ブレード』と申します。これからよろしくお願いいたします、先導者」
「『ブラスター・ブレード』ね。私は桜内梨子よ、よろしくね」
「はい、よろしくお願いいたします、先導者梨子殿」
梨子殿は静かに頷いた後、再び準備を始め、デッキから5枚を引くと、それを私にこっそりと見せ始めた。
「『ブラスター・ブレード』さん──って、『ブラスター・ブレード』さんから手札は見えてる?」
「はい、見えています」
「そっか。それじゃあ、この手札でも良いかな?」
「はい、問題ないかと」
「うん、ありがとう」
梨子殿のお礼の言葉にコクリと頷いた後、私はちか殿へ視線を向けた。すると、そこにはさっきまでいなかったはずの『ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオン』の姿があったが、『ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオン』はどうやら私の姿には気付いていない様子だった。
つまり、私達が相手取るのは『なるかみ』という事か。ふふ、面白い。ならば、私達の力を存分に示すとしよう……!
そして、梨子殿とちか殿は裏向きにしていた
『スタンドアップ! ヴァンガード!』
第1話、いかがでしたでしょうか。時には今回のようにブラスター・ブレード視点での話も書いていきますのでお楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。