それでは、早速プロローグを始めていきます。
プロローグ
夏休みが始まって数日後、その日の夏期講習も終わって、穂乃果ちゃん達と話をしながら一緒に部室に向かって歩いていたその時、ピンポンパンポーンとスピーカーからチャイムが聞こえてくると同時に、スピーカーから私にとってとても聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
『
「今の声ってお母さん……?」
「なんか、ことりちゃんとクリスちゃんと絵里ちゃんを呼んでたよね」
「私はもちろん、ことりちゃんと絵里ちゃんが呼ばれる程の事をするとは到底思えないし、呼ばれた理由はまったく想像がつかないね」
「そうですね……ことり、クリス、とりあえず理事長室まで行ってみてはどうでしよう?」
「う、うん。それじゃあ行こっか、クリスちゃん」
「うん。それじゃあ行ってきます」
「「いってらっしゃい」」
その穂乃果ちゃんと海未ちゃんの声を背に私達は理事長室に向けて歩き始めた。そして、歩き始めてから数分後、理事長室の前で同じμ'sのメンバーでこの学校の生徒会長である絵里ちゃんが立っているのが見え、私達は絵里ちゃんへと近付いた。
「絵里ちゃん、お疲れ様です♪」
「お疲れ様、絵里ちゃん」
「あら、ことりにクリス。今、放送で理事長から呼ばれてきたのだけど、二人は何で呼ばれたのか知ってる?」
「ううん、それがまったく……」
「その様子だと絵里ちゃんも理由を知らないみたいだね」
「ええ。私自身、学校生活や生徒会の事で何か大きな失敗をした覚えは無いから、もしかしたらラブライブについてかしらね」
「なるほど……それなら絵里ちゃんとクリスちゃんが呼ばれるのはわかるけど、リーダーの穂乃果ちゃんや部長のにこちゃんが呼ばれずに私が呼ばれたのはどうしてなんだろう?」
「そうね……そう考えると不思議だけど、とりあえず理事長から話を聞きましょう? 理事長だって私達の事を待ってるわけだしね」
「うん、そうだね」
「よし……それじゃあ入ろうか」
そして、私達が中に入ると、そこには椅子に座りながら私達の事を見ているお母さんの姿があった。
「お母さん、来たよ」
「ええ、よく来てくれたわ、ことり。それに、絵里ちゃんにクリスちゃんも」
「はい」
「それで……ことりちゃんのお母さん。私達を呼んだ理由って何ですか?」
「それなのだけど……三人は『カードファイト!! ヴァンガード』っていうカードゲームを知ってるかしら?」
「『カードファイト!! ヴァンガード』……あっ、そういえば前に穂乃果ちゃんがそんな名前のアニメに海未ちゃんに声がそっくりなキャラクターが出てるって言ってたかも」
「そういえば、そんな事を言ってたわね」
「うん、言ってた言ってた」
「あら、そうなのね。それで、その『カードファイト!! ヴァンガード』なのだけど、今度全国のスクールアイドルを対象にしたラブライブとのコラボイベントとしてそのカードゲームの大会、『ヴァンガライブ』を開催するらしくて、μ'sにも出てみませんかっていう参加の打診がさっき来たのよ」
「μ'sにも……」
「けど……それならどうして私達を呼んだんですか? 生徒会長である私やμ'sのマネージャーをしてくれているクリスはまだしもリーダーの穂乃果や部長のにこじゃなく、ことりを呼んだ理由って一体?」
「ああ、それはね……来週、ラブライブの公式サイトでこのイベントの事が公表されるんだけれど、それまでは出来る限り内緒にしていてほしいと言われているからよ。あなた達は口が硬いけれど、穂乃果ちゃんとにこちゃんは参加をするためにすぐにでも動きだしそうだし、海未ちゃんはすぐ顔に出ちゃうから隠し事は苦手だと思って」
「あ、なるほど……」
たしかに、穂乃果ちゃんとにこちゃんなら、今日の内からみんなを引っ張って行っちゃいそうだし、海未ちゃんは希ちゃん辺りにカマを掛けられて喋っちゃいそうだもんね。
穂乃果ちゃん達の顔を思い浮かべながらそんな事を考えていると、絵里ちゃんが少し難しい顔をしながらお母さんに話し掛けた。
「理事長──いえ、おばさま。たしかにそのコラボイベントは私達にとって良い話なのかもしれません。ですが、カードゲームの大会となれば、まずはカードを集めないといけませんよね。そうなると、部費だけでは賄えない可能性が出て来るんじゃ……」
「……あ、たしかに」
「カードゲームには構築済みデッキっていうのがあるのは、前にバイト先のお客さんが話してるのを聞いた事があるけど、それだけで勝てるなんてわけは無いもんね……」
でも、その大会に出てもしも優勝出来たら、μ'sや音ノ木坂学院の名前をもっと色んな人に知ってもらえるのは間違いないよね。うーん……一体どうしたら……。
その時、理事長室のドアをコンコンとノックする音が聞こえ、「はい?」とお母さんが答えると、ドアを押し開けながら同じμ'sのメンバーの真姫ちゃんが入ってきた。
「真姫ちゃん?」
「一体どうしたの、真姫?」
「今度の新曲や衣装のイメージについて話が終わったらことりとちょっと話したかったから、理事長室の前で待ってたのよ。それで、さっきの話も聞こえてたんだけど、カード集めをどうしたら良いかって話なのよね?」
「え、ええ……」
「真姫ちゃん、何か考えが?」
「ええ、あるわ。みんな、カード集めにお金が掛かるというなら、私がどうにか集めてみるわ」
「え」
「ええ!? ま、真姫ちゃんが……!?」
「ええ、そうよ。どれだけお金が掛かるかはわからないけど、流石に払えないくらいにはならないはずだから」
「たしかにそうかもしれないけれど……流石に申し訳ないわ。真姫にも真姫のお家の人にも……」
「ああ、そんな事気にしなくて良いわ。これは私なりのみんなへの恩返しのような物だから」
「恩返し……?」
「そうよ。みんなとは小学生の頃からの付き合いだけど、その頃から私はみんなに助けられてばかりだった。だから、これは私なりのみんなへの恩返し。正直、こんな方法でしか出来ないのは悔しい限りだけどね」
「そんな事は無いわ。真姫には作曲面でいつもお世話になっているわよ。にこが一人になって、私と希が『アイドル研究部』の部員となった後のライブでも曲を提供してもらったし、穂乃果達が入部してくれた後のライブでもそうだったしね」
「エリー……けど、カード集めの件は私に任せて。これはあくまでも私なりのけじめみたいな物だから」
「……わかったわ。けれど、行動をする前にまずはご両親ともお話をして。それが条件よ」
「わかってるわ。まあ、二人とも私と同じでみんなには感謝してるみたいだから、μ'sや音ノ木坂学院の為になるとなれば、反対しないとは思うけどね。とりあえず、今日家に帰ったら両親に話してみるわ」
「ええ、そうしてちょうだい。さて……これでひとまずカードの件は何とかなったわけだけど、ここにいるみんなは『ヴァンガライブ』への参加に賛成という事で良いかしら?」
「うん、ことりは大賛成です♪」
「まあ、μ'sのマネージャーとしてμ'sや音ノ木坂学院の為になるとなれば、反対する理由は無いよね」
「私は……まあ、聞くまでも無いわよね?」
「ふふ、そうね」
私達の返事を聞くと、絵里ちゃんはお母さんの方へ顔を戻した。
「という事で、とりあえず私達は賛成ですが、他のみんなにも参加する意思があるかを聞いてから、正式な回答とさせてもらいますね」
「ええ、もちろんよ。ここにいるみんなだけで進めて良い話では無いものね」
「ありがとうございます」
絵里ちゃんが丁寧に一礼をした後、私達は揃って理事長室を出た。そして、『アイドル研究部』の部室に向かう最中、みんなが何をしているかと思いながら歩いていた時、真姫ちゃんがふとポツリと呟いた。
「それにしても……どうして『カードファイト!! ヴァンガード』の開発企業はラブライブとコラボしようなんて思ったのかしら……」
「そうね……まあ、おおかた新しいプレーヤー層の獲得のためとかなんじゃない?」
「新しいプレーヤー層の獲得っていうと、スクールアイドルのファンや『スクールアイドルフェスティバル』の件で興味を持ってくれた人達の事?」
「そう。コラボレーション企画というのは、あくまでも双方に利があってこそなり立つ物だし、お互いにお互いのファンの獲得を見込んで今回のコラボイベントに踏み切ったんじゃないかしらね」
「なるほど……まあ、そうかもしれないね」
絵里ちゃんの予想を聞いて、真姫ちゃんが納得顔で頷く中、ことりは話を聞きながら『ヴァンガライブ』の事について考えていた。
正直な事を言えば、カードファイト!! ヴァンガード側の真意もラブライブ側の真意もまったくわからない。でも、『ヴァンガライブ』で優勝出来たら、μ'sや音ノ木坂学院の名前をもっと色んな人に知ってもらえる事に繋がるのは間違いないし、もしみんなも参加したいって言ったら、私も精いっぱい頑張らなきゃ……!
そう思いながらやる気を高めた後、私は絵里ちゃん達と色々な話をしながら『アイドル研究部』の部室に向かって歩いていった。
プロローグ、いかがでしたでしょうか。楽しんで読んで頂けたならとても嬉しいです。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。