ヴァンガライブ!   作:九戸政景

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どうも、ロイヤルパラディンの中で一番好きなユニットはブラスター・ブレードの片倉政実です。
それでは、第1話をどうぞ。


第1話 9人の先導者

 夏休みのある日の事、幼馴染みの穂乃果とことり、そしてクリスと一緒に真姫の家に向けて歩いていると、突然穂乃果が体を上へグーッと伸ばしながら気持ちよさそうに独り言ちた。

 

「うーん、今日も良い天気だねぇ……♪」

「ふふっ、そうだね。こんなに良いお天気だと、お昼寝したくなっちゃうよね……♪」

「その気持ちは分からなくもありませんが……穂乃果、こんなところで眠らないで下さいね? 小さい頃ではありますが、貴女には前科があるのですから……」

「あー……たしかにあったね。急に話に参加しなくなったと思ったら、歩きながら眠ってた時が前に一度だけ」

「……もう、穂乃果だってあれから成長したんだから、こんなところじゃ眠らないよぅ……」

「それなら良いのですが……」

「それにしても……今日は練習をお休みにして、真姫ちゃんのお家に集合する事になったけど……一体何があるんだろうね?」

「さあ……昨夜、急に真姫からその連絡が来たので、私もまったく知らないのです……」

「そっかぁ……ことりちゃんは?」

 

 すると、ことりはとても楽しそうな笑みを浮かべ、腰に軽く手を当てながら穂乃果からの問い掛けに答えた。

 

「ふっふっふ……♪ 実は、ことりとクリスちゃんは今から何があるのかを知っているのです♪」

「ええっ、そうなの!?」

「うん♪ 先週の夏期講習の後、ことりとクリスちゃんと絵里ちゃんがお母さんに放送で理事長室に呼び出されていたでしょ?」

「そういえばそうでしたね。という事は、学校に関する何か、という事ですか?」

「うーん、ちょっとおしい! 学校というか、μ'sやラブライブに関する事、かな?」

「μ'sやラブライブに関する事……なるほど、それならば納得です」

「それで、その事についてお母さんと絵里ちゃんと話してたら、そこに真姫ちゃんが来たんだ。話が終わっているようだったら、次のライブでやる予定の新曲の衣装のイメージについて訊きたい事があったからって」

「そっか、それで真姫ちゃんも関わってるんだね」

「うん。まあ、今だと私や真姫ちゃんだけじゃなく、花陽ちゃんとにこちゃんも知ってそうだけど……」

「え、それってどういう──」

 

 ことりの言葉に穂乃果が疑問を投げかけたその時、「あっ、いたにゃー!」という元気の良い声が聞こえ、そちらへ視線を向けると、そこにはこちらへ向かって嬉しそうに走ってくる凛とそれを必死になって追い掛ける花陽の姿があり、その姿に穂乃果は満面の笑みを浮かべながらぶんぶんと大きく手を振って応えた。

 

「凛ちゃーん! 花陽ちゃーん! おっはよー!」

「もう、穂乃果。そんな大声を出しては、ご近所の方々に迷惑ですよ?」

「えへへ、だって嬉しかったから」

「……まあ、それは分かりますけど、少しは落ち着きを持って──」

 

 穂乃果に対して注意をしていたその時、「どーんっ!」という声と共に強い衝撃が私を襲い、思わず「ひゃうっ!?」という変な声を出してしまった。そして、その事に恥ずかしさを覚えながら衝撃があった方へ視線を向けると、私に抱き付きながら嬉しそうに頬ずりをする凛の姿があった。

 

「もう……凛、いきなりタックルしては危ないですよ?」

「えへへっ、海未ちゃん達を見たらスゴく嬉しくなっちゃって♪」

「まったく……凛と穂乃果は本当に昔から元気いっぱいですね。まるで本物の姉妹のようです」

「凛ちゃんが妹かぁ……うん、いつも落ち着いてて頼りになる雪穂と元気いっぱいでこっちまで元気がもらえそうな凛ちゃんなんてスッゴく良いと思う! というか、凛ちゃん達とは小学生の頃からの付き合いだから、もう姉妹みたいな物だけどね!」

「うん!」

 

 両手を繋ぎ合いながらニコニコと笑う穂乃果と凛の姿に安心感を覚えながら胸の奥がポカポカとしてくるのを感じていると、ようやく追いついた花陽が息を切らす姿が目に入り、私はクスリと笑ってから花陽に声を掛けた。

 

「おはようございます、花陽。大丈夫ですか?」

「お、おはよう……海未ちゃん。私は大丈夫だけど、海未ちゃんこそ凛ちゃんがタックルしちゃったところは大丈夫?」

「はい、鍛えてますから。ところで……先程、ことりが今から真姫の家で行われる事について花陽とにこなら知っているかもしれないと言っていたのですが、花陽は知っていますか?」

「真姫ちゃんのお家で行われる事……うん、あくまでも予想に過ぎないけど、何となくこれに関係してるのかなっていうのはあるよ」

「そうですか。それで、それは一体何なのですか?」

「うん、それはね……『ヴァンガライブ』だよ!」

「『ヴァンガライブ』……聞いた事が無い名前だけど、それって一体何なの?」

 

 すると、花陽はその問い掛けに対してアイドルの事を話す時と同じように目を輝かせながら話し始めた。

 

「『ヴァンガライブ』というのは、昨日になって急にラブライブの運営委員会が発表した『カードファイト!! ヴァンガード』というカードゲームとのコラボレーション企画で、全国のスクールアイドルを対象とした『カードファイト!! ヴァンガード』を使った大会の名前です! それで、この大会には三人一組でエントリーをするんですが、この大会で優勝すれば、その優勝チームの名前が大々的に紹介されるだけではなく、次の『カードファイト!! ヴァンガード』のアニメのキャラクターの声優の特別枠として選ばれたり、イベントへの出演の依頼をされたり、とスクールアイドルの人気を高めるためにはとても重要なイベントなんです!」

「な、なるほど……言われてみれば、その『カードファイト!! ヴァンガード』という名前も聞き覚えがありますね。たしか、前に穂乃果から私の声に似ている声優さんや穂乃果の声に似ている声優さんがそのアニメのキャラクターの声を当てていると聞いた気がしますが……穂乃果、そうでしたよね?」

「うん、そうなの! 海未ちゃんと同じ声の人のキャラクターの見た目は絵里ちゃんで、性格は真姫ちゃんみたいなんだけど、声は海未ちゃんだったから、一人クラッシーヴィだなんて思ってたんだ!」

「なるほど、たしかにそれならクラッシーヴィだね! それで、その『ヴァンガライブ』の事に話は戻るんだけど、『カードファイト!! ヴァンガード』では『スタンダード』と『プレミアムスタンダード』っていうレギュレーションがあるんだけど、今回の『ヴァンガライブ』のレギュレーションは『スタンダード』、使えるカードはVシリーズっていう物だけみたいなんだ」

「Vシリーズ……って何なの?」

「えっとね……実は、『カードファイト!! ヴァンガード』は数年前にもアニメをやっていて、その頃に出ていたカードは旧シリーズ、それで今やっているアニメのカードがVシリーズっていうみたい。ただ、Vシリーズのカードの中には、旧シリーズのカードのリメイク版もあるみたいで、旧シリーズと比べるとかなり強くなってるってネットには書いてあったよ」

「なるほど……あれ? という事は、真姫ちゃんが手伝ってくれてるのって……」

 

 何かに気付いたような表情で穂乃果がことりへ視線を向けると、ことりはニコニコと笑いながらコクンと頷いた。

 

「うん、真姫ちゃんはそのカードを集めてくれてるの」

「そうだったのですね。ですが……流石に申し訳ないですね。いくらμ'sにとってプラスになるかもしれない大会のためとはいえ、真姫にそこまでさせてしまうのは……」

「うん……ことり達もそう思ったんだけど、真姫ちゃんがμ'sのためならそれくらいどうって事無いから、是非とも手伝わせて欲しいって言ってくれたから、手伝ってもらう事にしたの」

「そういう事でしたか。つまり、集合がかかったという事は、そのゲームで使うカードが集まったからという事でしょうか?」

「それもあるけど、みんながこのイベントに参加する意思があるかを訊くためでもあるかな」

「参加する意思……そんなのあるに決まってるよ!」

「そうですね。μ'sや音ノ木坂の為になるのならば、反対する理由はありません」

「凛も大さんせーい!」

「私も賛成かな。でも……カードゲームなんてあまりやった事無いから、覚えられるか少し心配……」

「たしかに心配はあるけど、みんなと一緒ならきっと大丈夫だよ! 今までも困った事があったら、みんなで力を合わせて解決してきたし、今回もきっと大丈夫!」

「穂乃果ちゃん……うん、そうだよね♪」

「凛達、幼馴染みの絆があれば、ぜーったい大丈夫だよ!」

「ええ、そうですね」

「うん♪」

 

 ふふ……穂乃果達は本当に頼りになる幼馴染み達ですね。

 

 穂乃果達が笑う様子を見ながらそんな事を思った後、私達は再び真姫の家に向けて話をしながらゆっくりと歩き出した。そしてそれから数分後、真姫の家に着いた私達がチャイムを鳴らすと、ガチャリという音を立ててドアが開き、中から真姫がゆっくりと顔を出した。

 

「いらっしゃい、みんな。エリー達3年生はもうとっくに来てるわよ」

「あ、そうだったんだ。ところで……真姫ちゃん、今日みんなで集まるのは『ヴァンガライブ』の事についてなんだよね?」

「なんだ、もう知ってるのね。穂乃果の言う通り、今日来てもらったのは『ヴァンガライブ』の事でなの。お手伝いさん達にも協力してもらって、『ヴァンガライブ』で使えるカードが全て集まったから、みんなでそのカードやカードゲーム自体に触れていくつもりよ」

「なるほど……しかし、いくら真姫でもカードを集めるとなれば、とても苦労したのではないですか?」

「そんな事無いわ。まあ、レアリティの高いカードなんかもあって、お金はそれなりにかかったようだけど、これも今までお世話になってきたみんなのためで、これからのμ'sのためでもあるから、それは気にしなくて良いわ。私がやりたくてやった事だから」

「真姫……」

「ところで……今更だけど、みんなはこのイベントに参加する意思はあるの?」

「うん。さっき、穂乃果ちゃん達に訊いたら、みんな参加するのに賛成だったよ」

「そう。それなら、良かったわ。さて……それじゃあ早速上がってちょうだい」

 

 その言葉に頷いた後、私達はしっかりと挨拶をしながら順番に中へと入り、真姫の後に続いて家の中を歩いていった。そして、応接間のドアの前に着いた後、ドアをゆっくりと開けると、中には3年生の三人が楽しそうに話をしており、私達が中に入っていくと、それに気付いた絵里達が微笑みながら声を掛けてきた。

 

「おはよう、みんな」

「みんな、おはようさん」

「みんな、おはよう」

「はい、おはようございます。ところで、絵里達はここへは何時頃に来たのですか?」

「ふふ、そんなに早いわけやないよ。ウチ達も着いたのはほんの十数分くらい前の事で、にこっちが調べてくれてた『ヴァンガライブ』の事について話しとっただけやから」

「やはり、にこも『ヴァンガライブ』については知っていたのですね」

「当たり前でしょ? まあ、これまでやった事は無いけど、スクールアイドルを対象としたイベントっていうなら、参加しようと思わないわけが無いもの! にこ達の可愛さと華麗なプレイングで、相手のみならず見てくれているお客さんの視線まで釘付けにしてやるわ!」

「まあ、そう出来るのが一番よね。さて……これで全員揃ったし、早速カードがどんな物なのか見てもらいましょうか」

 

 その真姫の言葉と同時に、応接間のドアが静かに開くと、銀色のアタッシュケースを二つずつ持ったメイドさん達が次々と中へと入ってきた。そして、その光景に私達が圧倒されている内に、メイドさん達は持っているアタッシュケースをテーブルの傍に置いていくと、真姫に一言声を掛けてから、入ってきた時と同じように次々と応接間から出ていき、最後のメイドさんが出ていくと、真姫はアタッシュケースに近づいてから私達に声を掛けてきた。

 

「さてと……という事で、この中に入っているのが、『カードファイト!! ヴァンガード』で使うカード、それとゲームをする上で必要なプレイマットやルールブックよ。一応、このゲームには『クラン』と呼ばれるグループみたいなのがあるから、その『クラン』毎にケースは分けてあるわ」

「ひいふうみい……うわぁ、全部で20近くもあるよ……!」

「20……結構な数がありますね」

「まあ、そうね。因みに、これは全て私達で分けるから、クリスも含めた10人の内、4人には『クラン』を三つずつ、残りの人には二つずつ持ってもらえばたぶん丁度良いはずよ」

「あれ、私も?」

「ええ、あなたには私達の練習相手になってもらいたいの。『ヴァンガライブ』は三人一組でエントリーする物だから、チームで練習する時に一人余っちゃうでしょ? そんな時に残った一人が手持ち無沙汰にならないようにしたいのよ」

「なるほどね……そういう事なら、喜んで引き受けるよ」

「ありがとね、クリス」

「どういたしまして」

「うーん……そうなると、クリスが『クラン』を三つ持つのは確定として、後は各ユニットから一人ずつ選べば良さそうかしら」

「そうね。という事で、早速みんなにはカードを──」

 

 そう言いながら真姫がアタッシュケースを開けようとしたその時、『……先導者(マイヴァンガード)よ』という声が聞こえ、私は周囲を見回した。しかし、そんな声で話し掛けてきそうな人物の姿はどこにも無く、私が「はて……」と首を傾げていると、隣に立っていた穂乃果がトントンと私の肩を叩いてきた。

 

「穂乃果、どうしたのですか?」

「ねえ……今、誰かの声が聞こえなかった?」

「穂乃果ちゃんも? 私も今、女の人の声が聞こえてスゴくビックリしてたの?」

「え、女の人? 私が聞こえたのは、男の人の声だったけど……」

「私が聞こえたのも男性の声でした。ですが……その声が言っていた『先導者』という言葉の意味まではさっぱりです……」

「『先導者』……たしかにそんな事を言っていたけれど、私が聞こえたのは女性の声だったわよ?」

 

 突然聞こえてきた謎の声を巡って、私達がそれぞれ聞こえた声について話すと、メンバーによって声自体に違いはあるが、言っている言葉は共通しているようだった。

 

「うーん……ますます謎が深まるわね。真姫、そのアタッシュケースに何かトランシーバーのような物が仕込まれているみたいなのは無いわよね?」

「それは無いわね。というか、たとえ仕掛けられていても、それだと聞こえた声がそれぞれ違うのは何故なの?」

「たしかにそうやね……という事は、今聞こえてきた声は、人智を越えた何かの声という事に……」

「じ、人智を越えた何かって何にゃ!?」

「それは……流石に分からないけど、そうじゃないと説明がつかないというか……」

「でも、希ちゃんの言う通りかもしれないよ? 聞こえてきた声がそれぞれ違うなんて、普通じゃあり得ないわけだし……」

「たしかにそうですね。後、謎の声が言っていた『先導者』という言葉も何の事なのか分かりませんね……」

「『先導者』……あ、それってもしかしたら……!」

 

 すると、穂乃果は何かに気付いた様子でアタッシュケースに近づくと、アタッシュケースへ向けて声を掛け始めた。

 

「おーい、聞こえてるなら返事をしてー!」

「ちょっと、穂乃果!? 一体何をしているんですか?」

「え? だって、このカードゲームの名前は『カードファイト!! ヴァンガード』なんでしょ? だったら、このカードから声が聞こえてきたって考えてみてもおかしくはないんじゃないかな?」

「まったく、貴女は何を言ってるのですか? カードから声が聞こえるわけが……」

 

 穂乃果の行動に呆れながら返事をしていたその時、『……なるほど、その少女は中々頭が切れるようですね』というまた別の声が聞こえ、私は再び周囲を見回した。

 

「だ、誰ですか!?」

『我が先導者よ、こちらだ」』

「こちらって……まさか……!?」

 

 謎の声が聞こえた方向、そこにあったのはカードが入っているアタッシュケースであり、その事に私が驚いていると、同じようにアタッシュケースに視線を向けていたみんながとても驚いた様子を見せた。

 

「ほ、本当にカードが喋っているのにゃ!?」

「そ、そうみたいだけど……でも、どうして……!?」

「わ、わからない……」

「正直、まだ半信半疑ではあるけど、みんなに声が聞こえている以上、信じるしかないのよね……?」

「そう……やね」

 

 穂乃果を除いたメンバー全員がアタッシュケースへ驚きや不信感がこもった視線を向けていたその時、再び謎の声が私に話し掛けてきた。

 

『我が先導者よ。驚くのも無理はないが、今は我々の事を信じてはくれないか?』

「信じる……ですか?」

『そうだ。そして、早く我らの元へと来てくれ』

『今、私達の世界には危機が迫っているのかもしれないのですから』

「危機……ですが、その危機というのは一体何なのですか?」

『それについては後で説明をする』

『今は早々に我らの元へと来て欲しいのだ』

『私達『リンクジョーカー』と彼ら『ロイヤルパラディン』と『ゴールドパラディン』の元へ……』

「『リンクジョーカー』に『ロイヤルパラディン』……そして、『ゴールドパラディン』……」

 

 女性のような声が言っていた名前を繰り返しながらアタッシュケースへと近づき、それらのアタッシュケースを開けたその時、「……ようやく出会えたな、先導者よ」という声が肩の方から聞こえ、そちらへ視線を向けると、白銀の鎧を纏った騎士のような男性と白金の鎧を纏った騎士のような男性、そして杖を持った白い竜のような何かの姿が揃って肩に乗っているのが目に入ってきた。

「なっ!? 貴方達は一体何者ですか!? というか、どうして揃って私の肩の上に立っているのですか!?」

「肩の上に立っている……なるほど、そう見えているのか」

「そう見えているのかって……はあ、まあ良いです。それで、貴方達は何者なのです?」

『私は『ブラスター・ブレード』、『ロイヤルパラディン』という『クラン』に属するユニットだ』

「次は私だ。私は『ゴールドパラディン』に属する『光輝の獅子 プラチナエイゼル』だ。これからよろしく頼むぞ、我らの先導者よ」

「そして、私は『リンクジョーカー』のユニットである『ハーモニクス・メサイア』といいます。これからよろしくお願いいたします」

「え……えっと、私は園田海未と申します。こちらこそよろしく……お願いいたします」

『ああ、よろしく頼む』

 私の自己紹介に『ブラスター・ブレード』さんが頷きながら答えていると、周囲から嬉しそうに自己紹介をする声や興味深そうに質問をする声、そして楽しそうに話す声など様々な声が聞こえてきた。

 

 ……どうやら、みんなにもそれぞれ別の存在がいるようですね。しかし……何故、私には他のみんなのユニットの姿が見えず、声も聞こえないのでしょうか……?

 

 その事に疑問を覚えていたその時、真姫は両手をパンパンと打ち鳴らしながら私達に声を掛けてきた。

 

「はいはい、色々気になる事もあると思うけど、まずは本来の目的を達成しましょう」

「本来の目的……そういえば、元々は『ヴァンガライブ』のためにカードやこのゲーム自体に触れる事だった物ね」

「そういう事。まあ、そのカードのユニットが視えるなんていう意味わからない事にはなってるけど、本人達がいるならその『クラン』の特色やデッキの主な組み方も分かって好都合だわ。という事で、ユニット達にも私達に話したい事はあると思うけど、まずは私達に協力してちょうだい。そうすれば、こっちも助かるし、そっちだって自分達が怪しいモノじゃ無いという証明も出来るから」

 

 すると、『ブラスター・ブレード』達は揃って頷き、私が真姫へ向かってコクンと頷くと、同様に他のメンバーも各々のユニットの気持ちを代弁するように頷いた。そして真姫は、「決まりね」と言いながらドアの方へ視線を向けた。

 

「それじゃあ、とりあえず三組に分かれましょうか。ここで全員でやってても良いけど、どうせなら『ヴァンガライブ』に出る時と同じ人数でやった方がそのままそのチームで出場するという事も出来るしね」

 

「なるほど、それは一理あります。ですが、どのように組み分けをしましょうか?」

「それなら、とりあえず学年毎で良いんじゃない?」

「そうね。それじゃあ学年毎で分かれるとして……それぞれどこでやる事にしましょうか」

「それなら、私達1年生は私の部屋で、2年生は居間を、3年生はそのままここを使ってちょうだい。今日はママ達もいないし、誰も居間を使う予定も無いはずだから」

「分かりました」

「ええ、了解したわ」

 

 それぞれの学年を代表して私と絵里が返事をすると、待ちきれないといった表情の凛が花陽を掴みながら真姫ヘと近づき、その手をむんずと掴んだ。

 

「わっ! ちょっと、凛!?」

「り、凛ちゃん……?」

「えっへへ……早くユニットさん達とデッキを組みたくなっちゃった。という事で、早速真姫ちゃんの部屋までいっくにゃー!」

「行くのは良いけど、このままだとアタッシュケースを持っていけないでしょ?」

「おっとと、そうだった。それじゃあ手を繋ぐのは後にして、今はアタッシュケースを持って早速出発するにゃ!」

「……分かったわ。この状態の凛に何を言ってもしょうがないのは昔から知ってるし、とりあえず行く事にしましょうか」

「ふふ、そうだね♪」

「という事で、私達1年生はそろそろ行くから、みんなも好きなタイミングで始めちゃってちょうだい」

「はーい!」

「わかったわ」

 

 穂乃果とにこが返事をすると、真姫は満足顔で頷き、凛達と一緒に各々のアタッシュケースを手に持つと、応接間のドアへと近づき、クルリと私達の方へ振り向いた。

 

「それじゃあ……行ってきます」

「行ってきまーす!」

「行ってきます♪」

 

 その真姫達の言葉に私達が頷くと、真姫達は応接間のドアをゆっくりと開け、そのまま真姫の部屋へ向けて歩いていった。

 

 さて……それでは、私達2年生もそろそろ出発しましょうか。

 

 1年生達が歩いていったのを見送った後、私は『ロイヤルパラディン』と『ゴールドパラディン』と『リンクジョーカー』のアタッシュケースを手に持ち、穂乃果とことりとクリスに声を掛けた。

 

「それでは、私達2年生もそろそろ出発しましょうか」

「うん、そうだね!」

「はーい♪」

 

 そして、穂乃果達がそれぞれのアタッシュケースを手に持った後、私は絵里達3年生に声を掛けた。

 

「それでは、私達も行ってきますね」

「ええ、行ってらっしゃい」

「晩ご飯までには帰ってきてねー」

「いやいや、そんなには掛からないでしょ……まあ、アンタ達には言う必要は無いと思うけど、仲良くやんなさいよ?」

「はい、もちろんです。それでは、行ってきます」

「行ってきまーす!」

「行ってきまーす♪」

「行ってきます」

 

 そして、それに対して3年生が頷いた後、開けっぱなしになっていたドアをくぐり、私達は居間へ向けて歩き出した。

 

 そういえば……穂乃果達はどんな『クラン』と出会ったのでしょうか? これから一緒にデッキを組むわけですし、せっかくですから訊いてみましょうか。

 

 そう思った後、私は穂乃果達に声を掛けた。

 

「穂乃果、ことり、クリス。貴方達の『クラン』はどのような物なのですか?」

「穂乃果のはね……『たちかぜ』と『ネオネクタール』だよ!」

「うーん……名前だけだと少し分かりづらいですが、それらにはどのようなユニットがいるのですか?」

「えっとね、『たちかぜ』は簡単に言えば、恐竜達の『クラン』で『ネオネクタール』は植物をモチーフにしたユニット達が多い『クラン』みたいだよ」

「なるほど……ことりの方はどうですか?」

「えっとね……私のは、お医者さんの天使さん達がいる『エンジェルフェザー』とカッコいいドラゴンさんや竜人さんがいる『なるかみ』だよ」

「そうですか……クリスはどうですか?」

「私のはスチームパンク風な見た目の人や機械が多い『ギアクロニクル』とサーカス団がモチーフの『ペイルムーン』、後は悪魔や魔人が多い『ダークイレギュラーズ』だよ。海未ちゃんは?」

「私は騎士をモチーフにした『ロイヤルパラディン』と『ゴールドパラディン』、そして『リンクジョーカー』なのですが、この『リンクジョーカー』だけはまだどのような『クラン』なのかハッキリしていないですね……」

「そうなの? それなら、その『リンクジョーカー』っていう『クラン』のユニットに訊いてみようよ」

「……そうですね。では、早速訊いてみます」

 

 そう言った後、私は肩に乗っている『ハーモニクス・メサイア』さんの方へ視線を向けた。

 

「『ハーモニクス・メサイア』さん、『リンクジョーカー』とはどのような『クラン』なのですか?」

「『リンクジョーカー』は元々他の『クラン』が住まう星、『惑星クレイ』を侵略しようとしに来たいわゆる侵略者で、他星の歪められた存在やそれらのデータを元にした人口生命体で構成されています。しかし、『惑星クレイ』の住人達の奮闘により、彼ら──『星輝兵』は退却を余儀なくされ、『惑星クレイ』を去っていきました。その後、『リンクジョーカー』は『星輝兵』と『遊星ブラント』に住まう異形の存在と融合した『根絶者』や『星骸者』、そして『惑星クレイ』に受け入れられ、『調和と再生』の意志によって再生した新世代、『メサイア』の三勢力へと分かれる事になったのです」

「なるほど……つまり、名前から察するに、貴女はその『メサイア』という勢力の一員なのですね?」

「その通りです。なので、私達には侵略の意志などは一切無いので、ご安心下さい」

「分かりました」

 

『ハーモニクス・メサイア』さんの言葉に頷いた後、私は彼女から聞いた話を穂乃果達へと伝えた。すると、穂乃果達は一瞬驚いた様子を見せたものの、すぐに笑みを浮かべた。

「そういう事なら安心だね」

 

「うん。最初はビックリしちゃったけど、そういう事ならことりも『ハーモニクス・メサイア』さん達の事を信じます♪」

「私も信じるよ」

『ありがとうございます、皆さん。まあ……『根絶者』や『星骸者』もいますが、()()はまったくの無害なので、安心して下さいね』

「はい、わかりました」

 

『ハーモニクス・メサイア』さんが、彼らという言葉を強調していたのが少し気になったものの、私はとりあえずデッキを組む事に意識を集中しようと思い、その事を頭の片隅へと追いやった。そしてそれからしばらく歩き、居間に着いた後、ドアをゆっくりと開けてそのまま中へと入ると、穂乃果が嬉しそうな笑みを浮かべながら私達に話し掛けてきた。

 

「さて……居間に着いた事だし、早速デッキ作りを始めよっか!」

「ええ、そうですね」

「はーい♪」

「うん」

 

 そして、並んでソファへと座ってアタッシュケースから出したカードをテーブルに広げた後、私達は話をしたりルールブックを確認したりしながらデッキ作りを始めた。初めての経験だった事もあって、戸惑う事もあったけれど、ユニット達からのアドバイスのおかげであまり苦労せずにデッキを作り終える事が出来た。

 

 ……これでよしです。まあ、やっていく内に改良したいと思えるところも出てくると思いますが、その時もユニット達と相談しながらやる事にすれば良いですね。

 

 そんな事を思いながら目の前にあるデッキを見ていたその時、「よーしっ、それじゃあ早速やろう!」と穂乃果が嬉しそうな声を上げ、それに対してことりがキョトンとしながら声を掛けた。

 

「やるって……何を?」

「ファイトだよ、ファイト! せっかくデッキが完成したんだよ? それなら、早速やってみたいじゃない!」

「まあ、それはそうですが……最初は誰と誰でやるのですか?」

「……あ、それならことりはクリスちゃんとファイトをしようかな? クリスちゃん、お願いしてもいい?」

「うん、良いよ。それじゃあ、穂乃果ちゃんは海未ちゃんとだね」

「うん! それじゃあ……海未ちゃん、早速ファイトだよ!」

「……ふふ、分かりました。穂乃果の相手、全力で務めさせて頂きますね」

「うん!」

 

 穂乃果が大きく頷いた後、私達は向かい合うようにして座り直し、ルールブックを読みながらプレイマットやデッキの準備を始めた。

 

 さて……私の初戦は、どの『クラン』に任せる事にしましょうか。

 

 そんな事を思いながら目の前にあるデッキから選んでいた時、ふと『ロイヤルパラディン』のデッキが目に入り、私はクスリと笑ってからそれを手に取り、肩に乗っている『ブラスター・ブレード』さんに声を掛けた。

「『ブラスター・ブレード』さん、よろしくお願いしますね」

「……ああ、任せておけ』」

『ブラスター・ブレード』さんが静かに頷いた後、私はFV(ファーストヴァンガード)を裏向きで(V)(ヴァンガードサークル)へと置き、デッキを軽くシャッフルした。そして、穂乃果からデッキを受け取ると同時にカットをし、デッキを穂乃果に返してから受け取ったデッキを定位置へと置き、最初の手札となる5枚を引いた。

 

 ふむ……グレードもバラバラですし、これなら引き直しはいらなそうですね。

 

 そんな事を思いながら手札を見ていた時、「……あ、そうだ」と穂乃果は何かを思いついたような表情で声を上げると、私に声を掛けてきた。

 

「ねえ、海未ちゃん。ファイト中にユニットからアドバイスをもらうのってありにする?」

「アドバイス、ですか……まあ、これが私達にとって初めてのファイトですし、ユニットを視認出来ているという点も同じですから、別に良いと思いますよ」

「うん、わかった!」

 

 穂乃果は嬉しそうな笑みを浮かべると、自分の手札を肩に乗っていると思われる穂乃果のユニット達へと見せ始め、私もそれに続いてユニット達からアドバイスをもらうべく、引いたばかりの手札を見せた。

 

「皆さん、この手札で良いと思いますか?」

「……ああ、問題ない」

「私もこれで良いと思う」

「私も問題ないと思いますよ」

「分かりました」

 

 ユニット達からの太鼓判を頂いた後、私は一度深呼吸をして気持ちを整え、穂乃果へと視線を向けながらFVに手を置いた。

 

 これが私の初ファイト……当然、まだまだ拙いところはあると思いますが、全力で参りましょう!

 

 そして、穂乃果と頷き合った後、私達はFVを捲りながらファイトの開始を告げる言葉を口にした。

 

『スタンドアップ! ヴァンガード!』




第1話、いかがでしたでしょうか。次回は海未VS穂乃果のファイトを書いていきますのでお楽しみに。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。
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