クロムが倒れる。
「え……?」
事態についていけるシルフィが目を白黒する。ほかのものたちも似たような状況だ。
拍手が部屋にこだました。
「お涙頂戴、といったところかな」
この場には酷く似つかわしくない、少年の声だった。
彼の手にはクロムから取り出した『竜の心臓』が握られている。
「なっ……!? 漁夫の利ぶっこいてんじゃねーぞ!! 何処の泥棒猫だ!!!」
モルドレッドが斬りかかる。それを遮る影であった。
その顔を見た瞬間、モルドレッドが目を見開く。
あの時、友を殺した少女が少年とモルドレッドの間に入り、斬撃を遮ったのだ。
「テメェは……!!」
モルドレッドが息をのむ。怒りで思考が真っ白となった。幾度か火花が散った。
その様子を気にとめず、少年は皆を見回す。
「……マスター」
「やぁ、オーヴェロン」
なんとか起き上がった
「……だれ?」
「私かい? 私はマスターアヴァロン。このあ島の所有者であり、フェアリーテイルの王だよ。クロエ・イートン・ガボール」
クロエ・イートン・ガボール。それは
これをしっているものは二課の人員を含め、ごくわずかだ。
「……お前がっ!」
「なるほど」
その横で
「情報通りか……」
「正直、オーヴェロンとティターニアが離反するとは思わなかったがね」
「離反……だと?」
「負けた。それはまぁいいが……。君たちに協力するとでもいうつもりなら、離反以外なにものでもないだろう」
「彼らは最後まで忠義を尽くし、子たちと戦ってまでも貴様のために献身したのだ! それでも貴様は離反と呼ぶかっ!!」
「フェアリーテイルを裏切る行為なのは事実だろう? だから、こちらも計画を進めてしまうしかない」
マスターアヴァロンが指を鳴らすと、大地が激しく揺れ始めた。
「理想の為には仕方のない犠牲さ」
「てめぇの理想は人をさらって薬漬けにして頭に変な機械をとりつけることかよ!」
「必要なことならしょうがないさ。それに私の事を非道というなら君達はどうなんだい? 年端もいかない少女に戦わせて理想を叶えるように使っている。私とどう違うんだい」
地響きが強くなり、床が割れた。
鋼鉄の塊がせりあがってくる。島が浮上しているのだ。
地形の変化に合わせモルドレッドがバランスを崩す。
隙が生まれた。『少女』がその隙を逃がさず、モルドレッドの脇を通り過ぎ、クロムと
「猶予をあげようミスター
そして、皆の足場が崩れ、落ちていく。
モルドレッドが咄嗟に、瓦礫を伝い、皆を掴み――着水した。
†
クロム=クルワッハは邪竜である。
あるいは邪竜であった。
彼女が邪竜である、と自らを定義しているのは『竜の心臓』とそれによって培った性格であるところが大きい。
ならば、今、『竜の心臓』を失ってる今、彼女は邪竜なのだろうか、それとも違うのだろうか。それは彼女自身にもわからなかった。
クロムが目を覚ます。
まず、行ったのは確認。周囲は古めかしい遺跡のように石造りの床でできた、培養層が並んでいる部屋。
次に自信の状況だった。四肢は鎖で繋がれており、胸にはぽっかりと穴が開いている。そこから薄紅色をした血肉が露出しており、不思議なことに心臓が抜き取られた部分から血は流れていなかった。
身体が回復していっていることを自覚する。クロムは元々、治癒能力が高いのである。
なんでもフェアリーテイルの任務で敗走した経験からそれはわかっている。
あるときなど、任務で捕まり戦果として扱われた際には、逆に相手側が息絶え絶えとなったほどであった。
視界に少年が写る。彼は何かを準備しているようで、宙に浮いた透明な板を操作していた。
鎖を無音でほどくのは無理か、とクロムは判断した。
「やっほー。あんた誰だい?」
「思ったより元気そうだね、クロム=クルワッハ」
少年、マスターアヴァロンは苦笑した。クロムは子の少年には見覚えはない。しかし、マスターの方はフェアイーテイルの尖兵としてクロムの事は把握していた。
「私はマスター・アヴァロン、フェアリーテイルの王……ドクターやティターニアの上司といったほうがわかりやすいだろうね」
「ほう」
感心したように、クロム。
「ドクターやティターニア、シルフィはどうなったんだ?」
「さてね……。反逆者に私が与えた猶予までに出て来なければ死んだのだろうさ……と」
その言葉を無感動にクロムが受け止める。
戦場なれしているクロムにとって――思うところがないわけではない――戦友が死ぬことは珍しくない。経験的にも、まず状況の把握を優先することにした。
とりあえず、ドクターたちはここにはおらず、またアヴァロンは興味も無さそうな口ぶりであった。
「……まぁ、死んでないならいいけど」
「ふむ」
アヴァロンが手元の操作盤をみながら、
「……やはり『竜の心臓』は聖遺物の中でも別格だな。おかげで随分と楽ができる」
「さすが、オレの体だな」
「感謝してるよ、クロム=クルワッハ。君を十年余り育てた甲斐があった」
「そりゃどうも。ただ、オレを育てたのはドクターさ。……で、オレの心臓はどこにやったんだ」
「調整中だよ。それ終わればコアに投入する予定さ」
アヴァロンが視線をを上げ、クロムを見つめる。
「しかし、そうだね。せっかく育成した君をそのまま放置というのも味気ないな」
「放置してくれたほうが楽ではあるな」
クロムとしては監視の目がなくなったあと、鎖を引きちぎって脱出するつもりだっただけに、なにかよからぬことをおもいつかれたのは非常にまずい。
「私はそうは思わなくてね。そこで……コア・フィードバック・システムの最終調整に使わせてもらうと思ったのだよ」
マスターアヴァロンがクロムに手を伸ばし、ぽっかりと胸に開いた穴に手を突っ込む。
「女の扱いがなってないな」
何かの陣を刻んだシートを挟み込んだ。
「それは失礼。生憎とそういうの捨て去ってしまったのだよ」
「……ふーん。あ、そうだ。ひとつ聞いておきたいんだけど、お前の価値ってなんだ?」
「価値? 決まっているだろう。私の望んだ世界を手に入れる、それだけだ」
マスターアヴァロンがクロムの頭を掴む。
「――ああ、その価値は嫌いじゃないな」
その途端、クロムの視界は暗転し、意識を失った。
†
どれぐらいの時間がたっただろうか、
中型のクルーザーのようだ。そこにはモルドレッドをはじめ、ティターニアやシルフィ、オーヴェロンまで乗っていた。
「やっと起きたのかよ」
モルドレッドが
ただでさえ白い肌は血の気が引いており、体調はよくないようだ。
「あんま待たせんなよ」
「……状況を説明してもらえると助かるのだが」
その後ろから眼鏡をかけた男が歩いてくる。
途中ではぐれた二課のエージェント、相沢である。
「……この船を手に入れたのは相沢君かね?」
「島にあったのをかっぱらったんだが……なにがどうなってるんだ」
相沢が呆れたように視線を上に向ける。
そこには浮遊した島が空高くそびえたっていた。
話がおわるのを待ってモルドレッドが、
「さっそくで悪いけど、よ」
彼女の口の端から血がこぼれる。
「俺の“メンテナンス”とかできそうか?
相沢とかいう堅物はつかえるけど、流石に無理らしくてよ」
「モルドレッドの調整はそのものは……、島内の設備が必要だ……」
ドクター・オーヴェロンが答える。
「天才の私でもか?」
「君が天才であることは否定しないが、モルドレッドに使われている技術は条理の外のものだ。専用の設備がないと使えるものではない」
「ま、そのおかげ手に入れた力だ」
モルドレッドが伸びをしている。体の中から乾いた音がいくつか響いた。無理に無茶を重ねて来た身体が悲鳴をあげているのである。
いくつか骨が折れ、再生が開始されたもののモルドレッドは気にしていない――もうあまり痛覚も働いていないのだ。
「君もそんな身体で絶唱なんぞ使うから……」
言葉の途中で、ドクターがうずくまる。
脇腹あたりから子気味の良い音とともに骨が折れたのだ。
「もー、作り直した身体で無茶するんだから……」
ティターニアが呆れたように言う。
「とりあえず、応急処置ぐらいはしよう。見せてくれ」
しかし、彼の医者としての経験が告げる――もう長くは保たない、と。
「……なるほど」
軽く目をつむり、
「ミスター……ミスター? オーヴェロン、彼女についての方策はあるだろうか?」
「……なくはない、が」
オーヴェロンがモルドレッドを見る。
「どちらにせよ島の設備が必要だ。島の外で手に入れる時間がない。
何より、一番優先されるの彼女の意志だ」
「あるならば教えてほしい、彼女の夢をかなえるにはこの世界はあまりに広いから」
「……おっさん、なんか勘違いしてねーか?」
モルドレッドが面倒くさそうに、
「君の夢は外の世界を知りたい、見て回りたい、違ったかな?」
「別に俺は外の全部を見たいわけじゃねーんだよ」
「外が“ある”ってことを見てーんだよ。そのうえで、あることをアイツに自慢できればそれでいいんだよ」
「……そうか。そうだな。わかったまずは君に外を見せよう。そのあと、もっと土産話が多い方がいいと思ったなら頼ってくれればいい」
「おう! サンキューな」
にっこりとモルドレッドが笑う。
所在なさげにしてたシルフィが近づいてきて、
「え、えーっと……みんな、アヴァロン島を目指すってことでいいんだよね?
クロムも心配だし」
「……ケッ」
シルフィの言葉を聞いて、モルドレッドは不機嫌に、
「そういうとこだぞ、優等生」
「どういうこと!?」
「ほんとーにどこまでいってもおりこーさんな回答かましやがって」
しかし、その言葉にはどこか相手をからかうような響きがあった。
「なら、モルドレッドはどうするのさ」
「あの人食い女郎をぶっ殺してついでにメンテナンスをできたらする。
そんでチビクロエも助ける」
「……え、人食い女郎ってなに? なにそれ、こっ」
「うっせー! 名前知らねーんだから仕方ねーだろ!」
「……あれにはなるべく手を出すなら、マスターだけ……だ」
ドクター・オーヴェロンがうずくまった状態からなんとから、船に背をあずけて座る状態へと移行する。
「つまり、勝てない可能性が高いと?」
「然り、シルフィとモルドレッドだけでは無理だ。
錬金術の秘奥……賢者の石を核に大量の聖遺物を内包したアレを相手にするには、ね」
「賢者の石……資料で名前をみかけたことはあったのですが、詳細な情報がのっているものはなかったので、できれご教授いただけますか?」
「膨大な力を秘めた石だ」
「……もしや資料にあった人造ノイズというのも」
「ああ、あの少女こそがその人造ノイズだ。人間のデータを参考にし、賢者の石を埋め込むことで人間程度の知性と貌を得た」
ドクターがうつむき、苦虫を噛んだように顔をゆがませる。
「そのために何人も喰わせたのだよ、私は」
モルドレッドがなにかを耐えるように歯軋りした。
「……それに関しては許される事ではない。が、人は過ちを犯すものだ。
モルドレッド君からの一発くらいは覚悟もらうとして、今後、どう罪をつぐなうか、この島の子たちに返していくかそこが大事ではないだろうか」
「――若造め」
「はは、あなたから見ればそうでしょうね」
「なぁ、師匠とドクターが言いなりになってたマスターってそんなにすげーやつなのか? そんなやつが何をしたくてこんなことをしてるんだ?」
モルドレッドがつまらなさそうにティターニアに疑問をぶつける。
シンフォギアシステムの状態を弄っていたティターニアがモルドレッドの言葉に顔をあげた。
「端的にいえば、国家の簒奪ね。そのうえでコアシステムを用いて『外敵』を排除する気よ」
「……なんだよ、結局、絵本の悪党まんまじゃねーか」
「そうね。……けど、私からしてみれば拾い主よ。すくなくとも私たちの様な孤児を集めて生きていく力をくれたもの。悪党だとしても、とは思っていたわ」
ティターアニアの言葉を受けて、
「『外敵』……今までの研究から言ってノイズじゃないとすると、人間が想定なのか?
そう考えるとノイズを手駒にしようとしたことにつじつまがあうが」
ノイズ。それは超常の災害の一つであり、その特徴として『位相差障壁』と呼ばれる特性をもっており、これにより通常の火器・兵器は次元のずれにより届かず、逆にノイズの攻撃を受けると生身は炭素の塊へと変化させられる。
つまり、通常の人類にとっては一方的に攻撃し、炭素の塊に変化させる存在であり、通常の人間が相手にするにはこれほど厄介な存在もいないのである。
「……外敵に関しては私にも話してくれなかったが」
オーヴェロンが少し寂しそうに、
「だが、その外敵のために長い年月を使い、人を、力を、知識を集めてきたのは事実だ。
そして、コアはその計画の中核を担う存在だ。その事実だけでコアの撃破は難しいことがわかるとおもうが」
「へっ」
モルドレッドが笑う。
「裏をかえせば、そのコアを破壊すれば野郎の計画を破綻させることができるってことだろ」
「私もモルドレッド君に同意しよう。今の私たちはギア保有のテロリストを討伐しに来ただけで戦力が足りてるとは言いがたい。しかし援軍がくるまでには間に合いそうにはない。
つまり、一点突破で行くしかない状況だ。だからこそ、乾坤一擲、そこにかけるしかないだろう」
「……わかった。アヴァロン島までの道は私が開こう」
ドクターが虚空へと手をかざすと、空間に穴が開く。
「マスターはコアシステムを自分に接続し、コア・ノイズを制御するつもりだ。どちらかを破壊すればいい。……これをうまく役立てろ」
とドクターが
手のひらサイズのそれには黒い薬品が入っていた。
彼には分ったこれは、Anti Linkerだ。
「最後に残ったものだ。どう使うかは任せる」
「……恩に着る」
「ふん、せいぜい頑張るがいい、若造よ」
ティターニアがドクターの横へと立つ。
「私はここで船を護衛しているわ。マスターもこのまま手をこまねいてはいないと思うから、誰か一人ぐらい守る人がいないと」
「ああ、任せたぜ、ティターニア」
モルドレッドが親指を立てた。
その姿を見て、ティターニアがふっ、とモルドレッドの髪を柔らかく撫でる。
「……な、なにするんだよ」
「どうか無事で」
どこか気恥ずかしそうにモルドレッドは手を振り払い、
「ああ、行ってくるよ、母さん」
シルフィ、モルドレッド、
†
戦艦となったアヴァロン島の中を三人が走る。虚空の穴の先は島の基底部にでており、そこから上部へとあがっていくこととなった。
フォルゴレの護衛を優先するということで、モルドレッドが少し先行し、その後ろを
地下通路は島に住んでいる者同士がであうことがよくある場所である。が、いまはまったく人がいる気配がなかった。
シルフィは不安なのかそわそわとした様子で周囲をうかがっている。
「どうした優等生。トイレか?」
「違うよ! クロムやみんなは無事かなぁって……」
「……お前も物好きだよな。あのクズ野郎の友達とか」
うへぇ、とモルドレッドが舌を出す。
「友達だもの、それだけで十分でしょ?」
「あいつの友達ってお前くらいじゃねーの?」
「私としてはモルドレッドも友達だよ? それにクロムはダメな子だけどかかわってみるとそうでもないよ?」
「――それはしょうがねぇか。友達は見捨てられないからな」
けど、とモルドレッド。
「あいつは無理」
ぶるり、と震えた。
「お前の方は生理的に無理だけど、アイツは完全に無理、クズ過ぎて無理」
ないない、と首を振るモルドレッド。
「まだお前の方が喋ってて楽し……あっ」
「……これ終ったら、一緒に島の外を回ってみようか」
顔をそむけたモルドレッドに向ってシルフィが微笑む。
モルドレッドの耳は赤く染まっていた。
「お、お前なんて友達じゃねーし!!」
「島の皆も一緒にさー」
「うっせーバーカ!!」
「バカじゃないもーん!」
「頭お花畑は馬鹿で良いんだよ!」
「モーさんだって勉強できなかったじゃーん!」
「うるせぇ!? 勉強できなくても師匠の飯食えるし、勝てるんだよ! お前は師匠の飯のうまさわかんねーし! 勝てねーだろうが!」
「え、師匠のご飯はない」
シルフィは真顔で答えた。信じられないものを見ているような目であった。
その時だった。モルドレッドの足元に『鍵爪のついた鞭』が絡みつき、モルドレッドを一本釣りのように吊り上げ、奥へと引きずり込む。
「モルドレッド!!」
「モルドレッド君!!」
二人が咄嗟に手を伸ばすが間に合わない。
「優等生!! そのおっさんを守れ!! おまえたちはチビクロエを探せ!!」
鞭の引きずられる先には魔法陣が展開されており、そこへモルドレッドはひきずられていく。
「モルドレッド君!!」
それと引き換えるように、轟音をたてて、二人の眼前に一つの巨体がおちてきた。
二つのカノンを肩にのせ、竜の形に酷似した兵器が唸りをあげて、あらわれた。
†
「やっほー」
竜を模した兵器と共に現れたのは、マスターアヴァロンの隣にいた謎の少女である。
彼女は竜を制御するかのように横に立っている。
「はっはっはっ、想定していなかったわけじゃないが、最悪のパターンだ」
「どうしましょうか……」
シルフィが
「いやー、凄いでしょ、この人造ノイズの試作品
ちょっと遊んで行こうよ」
「いやー、それはごめん被るかなぁ。それにしてもこれがノイズか……」
「もはや兵器じゃないか」
「そりゃノイズの有益な部分だけ突っ込んでるからねぇ……とはいえ、完成品の僕と違って位相障壁もないし、人間を動力にしないと使えないし、やっぱ試作品だなぁ」
長い黒髪をなびかせ少女が答える。
その内容にシルフィが口を抑え、
「まて、今、何と言った。人間を動力、だと……?」
「んー? そうそう、コアフィード自体はマスターとのコネクトだけど、完成品である僕と違って、半永久稼働には適当な動力がいるの。
だーかーらー、ちょうど回収できた人間を突っ込んじゃました!」
「外道が……っ!」
「そんな、ひどい……」
少女が首をひねる。
「まぁ、君たちには二つの選択肢がある。こいつに立ち向かうか、追いかけっこだ!」
「……フォルゴレさん、どうする?」
「ふっ、決まっているだろう?」
「逃げるんだ!!」
「ええええっ!?」
謎の少女が驚く。
「ばかやろう! 彼我の戦力差を見極められないほど馬鹿じゃないぞ!!」
「なるほど!」
一瞬、面食らってたシルフィが納得したように
シルフィが、何かに納得したかのようにうなずいた。
二人が角を曲がって逃げる。
「逃がすわけないだろぉ!」
謎の少女が竜に命令した。
咆哮を一つ。竜が走り出す。連絡路が揺れる。
竜も同じく角を曲がる。その瞬間、隅に潜んでいたシルフィが跳躍し、竜に斬りつけた。
「お? おおお?」
謎の少女が驚く。シルフィがつくった隙を生かして、
手にシャツの一部を巻きつけ、切り裂いた隙間から手をつっこむ。
「恐らく動力源があるのは装甲の厚い腹部! そして、動力源が人間というのなら!!
それさえ取り出すことができれば……!!」
賭けであった。
苦悶のうめきが漏れた。
そして、
「掴んだ!!」
動力源とおぼしき人物を見つけ、ひっぱりだす。
デジタルな六角形の傷から落ちて来たそれは、
「クロム!?」
クロム=クルワッハ、その人であった。