妖精郷に響け――リプレイ   作:イーストプリースト

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第8話

 一同が階段を登り切ると、開けた場所にたどり着く。

 高空のためか、風は止まず、肌寒い。

 軽く周囲を警戒するが伏兵の類はいないようだ。

「来たか、諸君。あと一時間もすぎれば別の場所のコアフィードが襲撃を開始のだがな」

「よう、変態」

 モルドレッドが先の恥を思い出したのか、額に青筋を立てながら声をかける。

「別にあれは私の趣味ではないよ。しかし、まぁ……モルドレッド、黒江、イートン・ガボール、クロム・クルワッハ……大なり小なり、私がスクナってやった命がこちらに牙を剥くというのも、どこか不思議な感傷を覚えるね」

「うっせー変態、あんたに救われた覚えはない」

 黒江(くろえ)がにらみつける。

「大義のためさ、やむをえないね」

「まぁ、そこら辺の事情はお前をぶっ飛ばすからどうでもいいんだけどさ。みんなはどこにやったんだ?」

「皆か……。この島の妖精たちは別の場所で協力してもらっているよ」

 アヴァロンが自らの顎をさすり、ふむ、とつぶやいた。

「特にクロム、君は難儀なものだね」

「うん? どういうことだ?」

「一つの国家が主導した、先天的な融合症例の開発……融合症例の母体を作り、先天的な融合症例の子を作り出す実験、そこから救ったのは私だ」

「だから、それを恩に感じてそちらにつけと?」

「道理で言えばそうだね」

「オレが恩があるのはオーヴェロンのほうなのでね、断る」

 そのとき、アヴァロンが何かを気にするように下方を見た。

 全員が、そちらに視線を誘導された時、

「―――ダメッ!!」

 風切り音、足元の影が濃ゆくなる。

 シルフィが周囲にいた面々を押し出す。シルフィの声に、各々が反応する。

 次の瞬間、先ほどまでシルフィがいた場所に、爆撃が炸裂した。

「……一人しか仕留められなかったか」

「――テメェ!!」

 モルドレッドが叫ぶ。

 アヴァロンの横に二体の竜を模した人造ノイズが降りて来る。

 超高高度に待機させたそれによる爆撃、それにより一網打尽を狙うために先ほどまで会話をしていたようだ。

 煙をくすぶる中をクロムがぬって走り、シルフィの容態を確認する。

「……クロム、皆、大丈夫だった?」

 うなずくクロム。

 幸いにもシルフィの姿を確認することはできた。

 しかし、

「……何か言いたいことはあるかい?」

 通常、シンフォギアを纏っていない状態でノイズの攻撃を受ければ、身体が灰のようになり消えてしまう――それを炭化という。

 シルフィは指先からほどけるように、徐々に炭化し始めた。

「言いたいことはいっぱいあるよ、けど―――」

 何かを伝えようとシルフィが口を開くが、それを言葉にする前に彼女は灰になって消えてしまった。

「大丈夫だ、シルフィ。伝わったよ」

 クロムが手に残った灰を口に入れて咀嚼する。

 灰の中に唯一残っていた聖遺物『アロンダイト』が光り、クロムのぽっかりと空いた胸の穴へと納まる。

【――最高の友を、ここに】

 聖詠。

 クロムが漆黒の甲冑姿へと変貌する。

「一人食べ損なっちゃたかな?」

 アヴァロンの隣にいた少女『コア』の姿が変貌する。

 人の姿から、機械でできた人型へと。

「まぁいいや、竜は二人もいらないもんね」

「――竜をうたうか」

 二重契約(ダブルコントラクト)

 手に入れたシルフィの聖遺物と同調し、即座にその力を引き出したクロム。

 その力を確かめるように軽く手を握るクロム。

「ならば奪って見せろよ。アイツの心も体もオレのものだ」

「――上等!!」

 クロムが突撃を開始し、戦闘が始まった。

 

 

 クロムが飛び出し竜型のノイズ――ワイバーンへと飛び掛かる。

 それを皮きりにコアがモルドレッドたちへと襲い掛かった。

 邪魔にならないように古是(こぜ)は退避しようとしたのだが。

「ミスター古是(こぜ)

「んん? 私に何か話すことがあったか、貴方が」

「いや、他の者と違って君だけは話ができると思ってね」

「というと……?」

「単刀直入に言うのだが、手を組まないか?」

「貴方が冗談を言うとは思わなかった」

「冗談ではないよ、君とて分かっているだろう、守るべき民、それも罪も知らない子供に血を背負わせ続けている」

「…………」

「無論それは今の我々とてそうだ、だがそれを甘んじている事こそ腐っていると思わんかね?」

「いかな美麗な言葉を告げようとも、あなたのいままでの行いと先ほどの行動の後に心が動くと思っているのかね?」

「いいや?」

 戦闘域から少し離れてアヴァロンと古是(こぜ)が並び立つ。

「だから、現物で納得させよう」

 古是(こぜ)の手を握るアヴァロン。

 その瞬間、古是(こぜ)の脳内に存在しないはずの記憶がよみがえる。

 ホムンクルスの作り方、錬金術の知識、DFS(ダイレクトフィールドバックシステム)の図案……。

「これらはほんの初級の知識だがね。しかし、協力してくれるというのなら提供を約束しようじゃないか」

「……なぜ、私にそのようなことをしようとするのかね?」

「簡単なことだよ。君は彼らを案じてはいたが、それとは別に知識を得ることも目的として行動していた。だから、交渉できるんじゃないかと考えたんだよ」

「……僕だってね、知識は欲しい」

 アヴァロンがうなずく。

「腐敗してるだって? 痛いほど感じてるさ、守ると言いながらも守るべき対象である子供を前線立たせてる矛盾。だから、それをなくすために研究を続けてるさ」

「なら、どうだい? 手を組まないか。私の開発した技術なら君自身がノイズと闘うこともできるぞ」

「確かに素晴らしい。実際、私は……俺は貴方の技術を得たいと思っているよ」

「じゃあ」

「だが、ひとつ聞かせてほしい。そのためにどれだけの人を犠牲にする?

 守るべき民のために、守るべき人々を殺すつもりだい?」

「…………」

「その沈黙が答えと思わせていただくよ」

「……そうか、それならしょうがないな」

 マスターアヴァロンが手を振りかざす。

 クロムが相手をしているのと別のワイバーンが飛翔する。

 その足には先ほどシルフィを殺した爆弾が装備されている。

「残念だよ。互いに守るべきものが同じなら共に歩けたかもしれないのだがな」

黒江(くろえ)君!!」

 コアと闘っている黒江(くろえ)とモルドレッドは気づいていない。

 このままでワイバーンの爆撃を受けてしまうだろう。

 それを悟った古是(こぜ)は一も二もなく飛び出した。

 

 

 変身する黒江(くろえ)の横でモルドレッドが剣を掲げる。

「俺が確かめる外にお前らは邪魔だ」

 Linkerを首打って捨てる。

「――【孤独に朽ち果てようと恐れない】」

 モルドレッドの身を炎が包む。

 炎は火柱となり、天高く照らす。

 さらに――

「――――【世界を切り開き進む】」

 今までの鎧とは違う軽装。されど、待とう力はいままでと段違いであり、モルドレッドが煌めいて見える。

 迸る炎が右手に収束するとそこには剣を一つ持っていた。

 柄に真紅(ルビー)がはまった西洋剣、これこそが彼女の本来の聖遺物『クレラント』であった。

 直後、その剣を構えるモルドレッド

 弓の聖遺物をまとい離脱しようとした黒江(くろえ)を巻き込み、直進してくるコア。

 その大質量をモルドレッドが真正面から受け止めた。

「……三度目だ」

「……あん?」

「一度目は、お前にあいつを食われ」

 火花が飛び散る。

「二度目は、平気な顔で俺の前にまた姿を現して」

 叩きつけられる無機質な腕を躱し、切り返しを入れる。

 コアとモルドレッドの間で幾度か金属音が交わされた。

「……今度は」

 距離をとろうとした黒江(くろえ)に対してサブアームを用いた射撃が叩きつけられる。

 黒江(くろえ)は舌打ちして、腕を交差して防御する。

 彼女も熟練の奏者、射撃の隙を縫って、アサルトライフルで反撃した。

「―――できちまった大切な奴らを踏みにじりやがった」

 その隙を縫ってモルドレッドが大きく踏み込んだ。

 迎撃しようとするコアの視界を防ぐようにミサイルが飛んでくる、黒江(くろえ)だ。

 クレラントが炎を纏った。

「三度もマジで怒らせたんだ。地獄に叩き落とすには十分だよなァ!!!!」

 モルドレッドの渾身の切り上げがコアに叩き込まれる。

「ッッッ、このぉ!!」

「無駄だ、くたばれ!!」

のけぞったコアの咄嗟の反撃を避け、さらに連撃が叩き込まれる。

 コアの装甲がひしゃげ、くだけ、割れていく。

「よし、そのまま……!!」

黒江(くろえ)君! モルドレッド!! 上だ!!!」

 古是(こぜ)の緊迫した声。今まで叫んでいたが、戦闘に手中していて聞こえなかったようだ。だから、やむをえる走ってきたのだろう。

 二人の視界がそちらに向く。

 シルフィを殺した時と同じように空高くワイバーンが飛翔している。

 その足には爆撃のための機器が装着されていた。

 黒江(くろえ)とモルドレッドの脳内に先ほどの光景が思い出される。

 遠くでもう一体のワイバーンを迎撃しているクロムが二人を見ていぶかしんでいた。

「ちぃっ!!」

「同じ手が二度も通じると思うなよ!!」

 黒江(くろえ)が落ちてくる複数の爆弾を迎撃しようとする。

 だが、コアは隙を見逃さず突撃してきた。

 それをモルドレッドが迎え撃つ。

 射線を遮られ、爆弾を迎撃する機会が潰された。

 そして、爆弾が放たれ――。

「ッグハ!!!」

 運よく爆撃には巻き込まれなかったが、古是(こぜ)は爆発の衝撃波で吹きとばされ壁にたたきつけられた。あと少しで爆風に巻き込まれシルフィと同じように炭化していたかもしれず、また、もう少しずれていたら戦場から落下し、海にたたきつけられ死んでいたことから本当に幸運だったのだろう。

 しかし、意識を保つことは出来なかったのか、動かない。

 土煙がもくもくと上がる。

 その中から一番に飛び出してきたのは黒江(くろえ)だ。

 コアを振り切り、マスターアヴァロンを射線に入れた。

「捕らえたぞ、屑!!」

 最後のあがきだろうか、アヴァロンから眼が眩むほどの光が放たれた。

 目くらましだろうか、だが、もう遅い。

「……ああ、私のことかい? まぁ、そういう言われるのも仕方がないかな、実際、私も子供たちを犠牲にして(ことわり)を敷くのに変わりはないからね」

「そんな話じゃない。なんで私が本名で名乗らないか知ってるか?」

「さぁ? 親からもらった名前を使わないのは親に対して失礼とは思うけどね」

「その親を殺したのはお前らだ! そして、わたしは脳をいじくられて変な機械を埋め込まれて薬づけにされた!!」

 黒江(くろえ)がアサルトライフルを構える。

「うすうす気づいてるんだよ……、村正を使うと人を斬りたくてうずうずするのは村正の効力だけじゃない、頭の機械に何か細工したんだろ? 村正に反応するように!」

「だったらどうなんだというんだい? 戦場でなにもできないよりマシだろ?」

「そんなことをありがたがると思うか! だから決めたんだ、二課に助けられてから貴様らフェアリーテイルをぶっ潰すってな!」

「ふん、手を汚したのは自分のせいじゃないって言いざまじゃないか」

「そんなことはない! けど、私は教えてもらったんだ、汚れた手でも誰かを救えるって。

 だから、胸を張ってクロエ・イートン・ガボールだって名乗れるために貴様を倒す!!」

「ふん、いいだろう。やってみればいいさ! できるものならな!!」

 黒江(くろえ)のアサルトライフルが発射される。

 腰元からパーツがスライドし、内包しているミサイルが撃ち出された。

 マスターアヴァロンがそれらを避けようと、逃げる。

 しかし、ミサイルの爆風に煽られ、弾丸が足を穿ち、地を転がる。

 そこへ多数の弾丸が降り注ぎ、踊るように揺れた後、地へと伏した。

「終わった……!!」

 弾丸が巻き上げた砂埃が徐々に晴れていく。

「馬鹿野郎……どうして……?」

 そこにいたのはずたぼろになったモルドレッド。

 どうやら黒江(くろえ)の弾丸を浴びたようだが。

「……!!?」

 驚愕する黒江(くろえ)の横からコアのメイスが横薙ぎに炸裂する。

 黒江(くろえ)は吹きとばされ、「何が起こったの!?」という疑問はそのまま闇へと沈んでいった。

 

 

 クロムが最初に飛び出したのは十年以上戦いつづけた勘かあるいは別の何かか。

 いずれにせよ、彼女をして目前の光景は困惑するものであった。

 一体目のワイバーンを撃墜しつつ、その眼光は鋭く戦場を舐る。

 先ほど、爆撃の粉塵(ふんじん)から現れた黒江(くろえ)が唐突に光を浴びたかと思うと、いきなりモルドレッドを撃ち始めた。

 クロムがもう一体のワイバーンに向って突撃する――ようにみせかけて直角に曲がった。

 先ほどの現象から察せられるのは、幻覚あるいは洗脳能力者が隠れている。

「――――、そこだ!!」

 誰かがいる、と認識してからのクロムの動きは速かった。

 鋭敏な感覚で何者かを捕らえると義肢による一撃を加える。

 何もない空間から弾かれるように一人の少女が弾かれるように地へと転がった。

「おや、気づいたかい。伏兵に配置していたのだがね」

「なるほどな……」

 恐らく、黒江(くろえ)に幻覚を見せたのはこの少女の能力だろう。

 黒江(くろえ)がひっかからなければ、もっと致命的なタイミングで幻覚を見せられ、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。

 シンフォギアをまとっていることを確認した――よくみると顔見知りだ――クロムは少女を殴り飛ばす。

 少女は錐もみ条に宙を飛びながら古是の横に落ちると、ぴくりとも動かなくなった。

「容赦がないね」

「あいつは洗脳能力も持ってるからな、残しておく理由がないぜ」

「ああ、そうだね。ちなみに、モルドレッドや黒江(くろえ)を洗脳したのも彼女だ。

彼女もコア・フィードバックシステムで操っていたんだ」

「なるほどな……」

「ちょっと! ボクのこと忘れてない!!」

 ワイバーンによる爆撃が入る。

 もくもくと粉塵が舞い上がる中、コアがメイスを叩きつけた。

「で?」

「な!?」

 それをクロムが上腕で受け止めた。

 足元が砕けるがクロム自身は微動だにしていない。

 コアがメイスで追撃する。

 それを防御せずにクロムが反撃する。 

 黒い甲冑が拉げ、ぴしり、と乾いた音がするがクロムは気にしない。

「どうした。竜を名乗るのだろう?」

「くっ……! この量産機がぁ!」

「はっ、大事にとっておかれた試作機とは年季が違うさ!」

 クロム=クルワッハは邪竜である。

 それは竜の心臓をもっているから、だけではない。

 自身を竜と認識し、そうであらんと振る舞っているからである。

 そして、シンフォギアの力の源は自信である。

 どのような目にも合おうとも、幾度も敗走しようとも、その身を汚されようとも、一切揺るがぬ竜としての自信があるのならば、シンフォギアもまたその自信に答えるだろう。

「なっ……!」

 ここにきてマスターアヴァロンが驚いたように声を上げる。

 護身用のピストルを抜き、電撃を纏った弾丸でクロムを撃ち抜いた。

 青雷がクロムを走り、一瞬だけ動きを止めるが彼女の拳は止まらない。

 あたりまえであった。

「なぁ、コアちゃん。お前の価値はなんだ?」

「はぁ!? 兵器に価値なんかあるか! ただ毎日、壊して奪う、それだけだろう!!」

「……自我があるのにもったいないなぁ」

 追加の爆撃に晒されながらもクロムが踏み込む。

 防御は必要ない、竜だから。そんな根拠のない自信こそがクロムを支えるものであった。

 だが、しかし、それは形として表れている。

 クロムが歩を進める、放つ拳を休めない。

 メイスで打ち据えられようとも、電撃を浴びようとも、爆撃に晒されようとも、その歩みを阻むことはできない。

 やがて、気押されたのか、損傷に耐えられなくなったのかコアがコアが後ずさりする

「この駄作があああああああああああ!!!!」

「悲しいなぁ、お前にも誰にも譲れない我があるならもっと強かったかもしれないのに」

 クロムが踏み込む。

 竜である自信、そして、シルフィとの無言の約束――皆を助ける。

 その2つに支えられたクロムの手がコアの割れた装甲に突っ込まれる。

 そして、その中にある自らの心臓を引き抜いた。

「がッ……ぁあああああああああああ!!?」

「まずいっ!!」

 アヴァロンが慌ててコアを転移させる。

 クロムが甲冑姿を解き、自らの胸に心臓を入れ込んだ。

「奪い、返したぞ」

「返せ! それはボクのだ!!」

「ならば、奪って見せろ。竜をうたうのなら奪え」

「このぉ!!」

「命令に……逆らうだと……!?」

 ここで、マスターアヴァロンにとっての計算違いが起きた。

 アヴァロンにとってコアは、コアフィールドバックシステムで制御できる兵器なのだ。

 しかし、竜の心臓を奪われ制御にバグがおきたのか、そのアヴァロンに逆らい、クロムへと突撃を刊行した。 

 メイスを振り上げ、雄たけびをあげるコア。

 明らかな大ぶりの一撃、避けようと思えば簡単に避けることができるだろう。

 だが、クロムはその一撃に真正面から答えた。

 さらに大きく踏み込み、拳を繰り出す。

「――――ねぇ、何が足りなかったんだろう?」

「そうだな……お前さん、アヴァロンから離れたことがなかっただろう」

「当り前だよ、兵器だもん」

「そこさ、結局のところ自分で手に入れたことがない。いや、手に入れたいと思ったことすらないんだろう。オレはずっとほしいものは手に入れて来た、そこの差だろうよ」

「ふぅん……けど、今回は取り返したかったな。ああ、これが悔しさ、なのかな……」

 コアのメイスはクロム頭部を捕らえていた。

 ぐらり、とクロムが揺れる。が、そこで踏ん張り、クロムはコアの胸部に突っ込んだ手を引き抜いた。

 その手の中には小型の石――賢者の石が握られていた。 

 自我の核であり動力源であるコアがぐらりと倒れる。

 クロムはしばし、それを見つめ、せめて姉妹機をつれていってやろうと、口を開いたが、その前に賢者の石は灰となってしまう。

 その灰の一部を舐めて、取り込むと、クロムはマスターアヴァロンへと向き直る。

 アヴァロンは片目が吹き飛び、目を抑えて苦しんでいた。

「ああ、それが操るための触媒か」

「正確には目にコアフィードバックシステムの端末を埋め込んでいたんだ……」

 痛みのためか、動けないアヴァロンはあっさりとクロムに捕まる。

 その瞬間、宙に浮かんでいる要塞が大きく傾く。

「おお?」

「……制御の核であるコアを失って要塞の制御が失われたようだ」

「そうか……それで聞きたいんだが、他の皆はどこにいるんだ?」

「言うと思うかい」

 クロムが少し考える素振りをして、とりあえず、マスターアヴァロンの右手を握りつぶした。

 悲鳴が上がる。

 同じよう動作で左手を握りつぶす。

「グ、ガアアア!? くそッ……!」

「とりあえずさー、時間もなさそうだし、さっさと吐いてくれない?

拷問するの面倒だし」

「これは拷問じゃ……ぐがっ?!」

 喋らないアヴァロンの足を叩き折るクロム。

 特にアヴァロンへの注意は払っておらず、だんだんと高度が下がっていく様にどうするか悩んでいるようだった。

 腕を撒き畳んでいる様を見てもアヴァロンが口を割らない所を見て、いますぐに口割らせるのは無理と判断したクロムは、他の面々を起こすと、脱出することにした。

 

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