ただ寝たいだけの全世最強   作:AZAZERU

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主人公視点。
線の後は三人称視点。


中村恵理の転機(その2)

 転生してからは俺が望んだ通りの、ただただ寝て起きてふとした時に何かして。そんな気ままな時間を過ごしていた。

 

 誰かに煩わされず、自分一人でいるのはとても気楽で、時間が無為に過ぎていく感覚が心地いい。

 

 だが、俺は別に波旬のように狂ったように一人になりたい願望がある訳じゃない。最近は少し会話をしたいと思っていた。

 

 そんなことを思っていても行動に移すのは面倒で、何かきっかけがないかなー、といつも通りグダグダ過ごしていると、召喚系の対象になる感覚があった。

 

 実は昔から何かに呼ばれることは何度もあったのだが、その度に適当な天使や悪魔その他もろもろを代わりに送っていたのだ。だって行くの面倒だし。身代わりに送った奴らはその場で創ったか、勝手に発生していた奴なので別にどうなっても構わないし。帰ってきたも元から居た奴と一緒に適当に世界創ってそこに居させている。

 

 そんな事もあったけど、今回は俺が呼ばれるとしよう。そのほうがいい予感がするし。

 

 ただどの程度の分霊なら大丈夫なんだろうなー。え?本体で行かないのかって?行ったら世界ごと潰れちゃうと思うぞー。随分前にそれで世界終わらせてしまったし。一回だけ、本当に最初の頃に召喚に応じた事があったんだけど、何も考えずに本体で行ってみたら、召喚した奴は潰れて、周りの建物とか森とかも潰れて、最後には世界が歪んで潰れていったからな。この間僅か十秒前後。正直びっくりした。だって俺何にもしてないもん。威圧もしてないし、魔力も出てないし、神威も能力も使ってない。本当にただそこに出て行っただけでそうなった。もし使ってたら特異点でも発生してたかもしれない。

 

 ・・・まあ過ぎたことはいいか、うん。正直どうでもいいし。

 

 そうだな、細胞一つ分ぐらいでいいか。足りなかったらまた送ればいいし。流石にこれで術者その他もろもろが潰れて死ぬことは無いでしょ・・・無いよね?無いと思いたい。

 

 とりあえず送るか・・・。

 

 


 

 夜遅く、とある少女が廃屋の中で魔法陣のようなものを描いていた。周りにはろうそくが灯り、その手にはナイフと少し古ぼけたように見える本を持っていた。

 

 

「えっと・・・、これをここに置いて・・・、これはここで・・・、これはこっち・・・。うん、これで大丈夫。最後には血を垂らして・・・。

 もし、これで悪魔が来なかったら・・・、その時は川にでも飛び込もう。」

 

 

 どうやら少女は悪魔の召喚を行うらしい。少女の持つ本はどこか異様な雰囲気を放ち、しかし何故か手に取ってみたくなる様な、そんな本である。

 それを持つ少女の風貌も場違いだった。歳は九歳ほどの、まだまだ幼いと言っていい少女だが、服はボロボロになり、破けた隙間から青黒い内出血の後が見える。また、ろうそくの灯りに照らされて見える少女の目は暗く澱んでおり、まるで希望など無いと悟った死にかけの孤児のようだ。

 

 それもそのはず。少女は朝早くに家を出て、自殺をしようとしていたのだ。ただ、それをしようと思った時にふと、悪魔はいるのか?いるとすれば願いを叶えてくれるのか?と、そのような疑問を抱いた。

 

 少女は図書館に行き悪魔について調べた。そして閉館直前に何かに惹かれるかのように今手に持っている本を見つけたのだ。

 その本は悪魔の召喚方法が書いてあるものであった。この本の著者は実際に悪魔を召喚したようで、復讐の願いを叶えてもらったそうだ。しかし対価が重く、当時の二十歳前半だったそうだが、余命三十歳までしか生きられない程度まで捧げたらしい。

 

 しかし少女は躊躇わなかった。当然と言ってもいい。なぜなら少女は自殺しようと思っているのだから。もはや少女に恐れるものは無い。それほどまでに壊れてしまっているのだ。

 

 

「ふー、緊張するなぁ。」

 

 

 どうやら召喚を始めるらしい。その顔には恐れはもちろん、期待も不安もない。ただ間違えずに出来るかどうかという緊張があるだけだ。

 

 

「悠久を無為に過ごす王よ、世界を総べる大いなる神よ。その視線を、その指先を我へ向けたまえ。我が身を代価とし、わが望みを叶えたまえ。〝召喚〟」

 

 

 果たして召喚は成功した。魔法陣は輝き廃屋は光に包まれた。

 

 光に包まれ召喚に成功した少女は、しかし喜ぶ余裕は無かった。押し潰されそうだったのだ。ただそこに居るだけで全てを圧殺させる程の気配。しかしそれがこちらに向いていない事が分かるからこそ、無くなったはずの、無くしたはずの恐怖が湧き出てくる。

 

 だがそれも光が消えれば他のことに意識が絡め取られてしまった。

 

 

「貴様が俺を呼んだマスターか?」

 

 

 現れたそれは、絶世を超えた滅世の美を持った男だった。

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