波動ねじれのヒーローアカデミア 【台本式無しVer】   作:へたくそ

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12「願い」「思い」「祈り」そして「光」

巨大仮想ヴィラン。それをOFA100%でぶっ飛ばした出久だったが、その後すぐにタイムアウト。試験はその場で終了となった。それまでに出久が稼げたポイントは21。周りの受験生と比べても、そのポイントはあまりにも少なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出久は試験会場でそのまま治療された。OFAで負った怪我は、今ではほとんど治っている。試験から約一週間が経ったが、オールマイトとの連絡が取れていない。ねじれとは連絡を取ってはいるが、実技試験の結果のこともあり会ってはいなかった。

 

 

 

「はぁ・・・」

 

「い、出久?大丈夫?」

 

「あ、うん。大丈夫だよ。気にしないで」

 

 

 

 

 

なんとも気まずい食卓の雰囲気。引子と出久は仲のいい親子だが、出久の憧れと試験での結果を知っている引子はなんと声をかけてたら良いのか分からないでいた。

 

 

 

「し・・・試験の結果、今日明日くらいだっけ?」

 

「うん・・・」

 

「雄英を受けたってだけでも、すごいと思うよ!お母さんは!」

 

 

 

これが今の引子が出久にかけれる精一杯だった。引子と2人で晩御飯を食べているが、食が思うように進まない。いつもなら体作りのためにしっかり食べなければいけないのだが、今はどうしても喉を通らなかった。そして引子は回覧板を回しに外へ出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出久は食器を片付けると、すぐに自室に戻る。床に転がっているダンベルを持ち上げ筋トレを始める。今ではオールマイトが考案してくれたトレーニングが日課になっている事もあるが、何より何かして気を紛らわせていないと落ちつかなかった。

 

 

 

(オールマイト。せっかく見初めてくれたのに、ごめんなさい。でも僕は正しいと思う事をしたんだよ。あそこで逃げてたらきっと僕は、ねじれ先輩とオールマイトを、本当の意味で裏切ると思ったから・・・)

 

 

 

出久は悔しいとは思ったが、後悔はしていなかった。本当の意味でヒーローであるオールマイトの背中を追いかけて育ってきた出久にとって、試験の合格より人を助ける事の方が大事だったからだ。これで不合格だったとしても、それは自分が選んだ道だ。素直に受け入れよう。そう思っていた時、部屋の外から慌ただしい足音が聞こえてきたと思ったら、引子が慌ててドアを開けてきた。

 

 

 

「イズ、イイイズ、イズイズイズ・・・イズク!着てた!着てたよ」

 

 

 

そう言って引子が差し出してきたのは、封蝋にUAと刻印された手紙だった。その中には出久の合否の結果が入っている。自分を認めてくれる人に出会って、憧れの人に出会って、力をもらった。だが結果は自分の思い描いていたのモノとは大きく違い、不安ばかりが募る。そして今、自分のこれからの運命を大きく左右するたった一枚の紙切れを、出久はその手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間前、出久の試験当日の夜、ベッドでゴロゴロしているとねじれのケータイが鳴っていた。体を起こし画面を確認すると、出久からの電話だった。きっと試験の報告だろう。筆記試験の方はねじれも一緒に勉強していた事もあり心配はないが、実技の方はどうしても心配だった。しかしオールマイトに見てもらった出久なら大丈夫。そう思っていた。

 

 

 

「もしもし出久君!こんばんは!」

 

『ねじれ先輩。こんばんは』

 

「ん?ねえねえどうしたの?元気ないみたいだけど、試験そんなに大変だった」

 

 

 

電話越しに聞いた出久の声は、あまりにも弱々しかった。確かに雄英の試験は難易度が高く、かなり疲れるであろうが、ここまで表に疲れが出るほどキツいものを雄英は試験には出さないはず。それは2年前に受けたねじれがよく分かっていた。それに出久の体力はオールマイトとの訓練の成果もあり、かなりついているはずだと思っていた。

 

 

 

『えぇ、まぁそうですね。確かにすごい疲れました。筆記も難しかったですけど、実技の方も緊張してしまって。でも先輩からもらったお守りのおかげで、緊張がほぐれました。ありがとうございます」

 

「そっか!少しでも役に立てたなら良かった!出久君なら大丈夫だよ!筆記は私も一緒に勉強したんだし、実技の方だってオールマイトと訓練したんだからきっと!」

 

「21ポイント・・・」

 

「え?」

 

 

 

いきなり出久が口にした数字。一瞬なんのことか分からなかったが、それも一秒と経たずにねじれは理解した。仮想ヴィランを倒した時に与えられるポイント。この試験を合格ラインは最低でも30Pは必要になってくる。

 

 

 

『個性の調節がうまく出来なくて、仮想ヴィランを倒すのに手間取ってしまいました。ロボットを見つけるのにも時間がかかってしまって。せっかくオールマイトとねじれ先輩に協力してもらって、一緒に雄英に通ってヒーローになるって約束もしたのに・・・』

 

「出久君・・・」

 

 

 

そこでねじれは出久に、ある事を言い出そう思ったが、出来なかった。もし自分が期待させるだけさせて、出久が受かってなかったらと思うと、それはあまりにも無責任過ぎた。出久のヒーローの志を疑っているわけでは無い。ただ、志でどうにも出来ない問題がある事も事実だ。個性がなければヒーローになれないのと同じように、志だけでヒーローになれる程、ヒーロー社会は甘くはない。努力しても実らない事だって当たり前の様に溢れている。それが、現実というモノだ。

 

 

だが、それでも、ねじれの中で絶対に変わらない想いがある。

 

 

 

「確かに、今の出久君の結果だとすごく厳しいかもしれない。一緒に雄英に通う事も、一緒にヒーローになる事もできないかもしれない」

 

『・・・』

 

「でもね?知ってた?」

 

 

 

 

 

 

 

私に取って出久君は、もうヒーローなんだよ?

 

 

 

 

 

 

この言葉に出久は、自分がした事を全て認められた気がした。ヒーローになるために見捨てるのではなく、ヒーローに憧れてるからこそ自分のとった行動は正しいのだと。それが緑谷 出久と言うヒーローに憧れた少年だと言うことを。

 

 

 

『あがとうございます、ねじれ先輩。おかげで気が晴れました』

 

「そっか、それなら良かった。それじゃ、結果が来たら教えてね?」

 

『はい、それじゃまた』

 

 

 

ねじれは電話を切り、背中からベッドに倒れ込んだ。こんな時にどうしたらいいのか分からない。本人はあぁは言ってるが、それでもそう簡単に割り切れる程、ヒーローに対する出久の気持ちは軽くはない。

 

 

 

「明日、神社に行かなくちゃ」

 

 

 

ねじれは自分ができる事をしようと、神社でお参りいくことにした。いるかいないのか分からない神様に願っても、意味があるのかどうかも分からない。だが例え気休めでも、出久の努力を無駄にしたくはないねじれの思いだった。そしてそれから一週間、ねじれは神社に欠かさず通っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出久の部屋、机の上にあるオールマイトの映像が投影されていた。それは雄英の合格通知の封筒に入っていた丸い機械から投影されたものだった。

 

 

 

「お、オールマイト!?こ、これ雄英からだよな・・・?」

 

 

 

試験以降連絡が付かなかったオールマイトが、まさか雄英の合格通知で出てくると思っても見なかった。

 

 

 

『もろもろ手続きに時間がかかってね。連絡取れなくてごめんね。いや、本当にすまない。実は私がこの街に来たのは他でもない。雄英に勤めることになったからなんだ』

 

「え、オールマイトが雄英に?」

 

『うん、え?なんだい?巻きで?』

 

 

 

出久が驚いているところで、オールマイトが他の誰かに急かされ始めていた。

 

 

 

『いや、彼には話さなきゃいけないことが・・・』

 

 

 

オールマイトが説得しようとするが、画面の隅から出ている手がジェスチャーする。

 

 

 

『後がつかえてる?あ〜、分かった、OK。・・・筆記は取れていても、実技は21ポイント。決して低くはないが、高いポイントでもない。これでは合格ラインには達していない為、当然不合格だ』

 

 

 

覚悟はしていた。後悔もしていない。自分はやれる事を全てやった。こうなる事も当然分かっていた。分かってたよ。分かってたけど・・・悔しい。

 

この一つの感情が出久の中で大きく膨れ上がった。この2年間、出久は雄英合格のために頑張ってきた。個性がないながらも豪円の元で修行し、オールマイトから受け継いだ個性を扱える様になるために訓練もした。それでも、願いには届かなかったのいだと・・・そう思ったがオールマイトは再び口を開く。

 

 

 

『それだけならね』

 

「え?」

 

『私もまた、エンターティナー!まずは、こちらのVTRをどうぞ!』

 

 

そう言ってオールマイトがリモコンを押すと、画面が切り替わった。場所は雄英の校舎内。そしてそこに写っていたのは、出久が巨大仮想ヴィランから助けた少女だった。

 

 

 

『あの、すみません』

 

「この人は、あの時の」

 

『試験後すぐに、直談判しに来たんだってさ』

 

「え?」

 

『何をって?それでは続きをどうぞ!』

 

 

 

いきなり言われても主語がないため当然出久は理解できない。そしてオールマイトはそんな出久に直談判の内容を教えるため、止めていた映像を再び再生し始めると、少女がプレゼントマイクに直談判していた。

 

 

 

『あの、頭モッサモサの人。そばかすのあった・・・。分かりますか?えぇっと、地味目の・・・」

 

 

 

少女が言っている特徴は、まんま出久のそれだった。出久の頭の中では益々ハテナマークが浮かび上がってくる。この人は一体僕の何を直談判しに来たのだろうと。しかし、その正解がすぐに分かった。

 

 

 

『その人に、私のポイント分ける事ってできませんか?あの人、すごい焦ってる顔してて、あのでっかいロボットを倒してボロボロになった後も、必死で試験を続けようとしてたんです。だから、ポイントをそんなに稼げなかったんじゃないかって思って』

 

 

 

出久の脳裏に、ある記憶が蘇る。いつか言われた、爆豪の言葉

『お前に何ができるんだぁ?』

 

 

 

 

『せめて私のせいでロスした分!』

 

 

 

いつか言われた、ヒーローの言葉

『君が危険を冒す必要は、全くなかったんだ!』

 

 

 

 

『あの人!私を助けてけてくれたんです!』

 

 

 

自分も試験に受かりたいはずなのに、この少女は出久のために自分のポイントを分けようとしていた。

 

 

 

『お願いします!』

 

 

その僅かなポイントの低下で不合格になる事だって十分にあり得る。そんな事をする義理をこの少女は持ち合わせてはない。

 

 

 

『お願いします!』

 

 

 

なのに、それなのに・・・

 

 

 

 

『個性を得てなお、君の行動は人を動かした。先日の入試、見ていたのはヴィランポイントのみにあらず!』

 

「え?」

 

 

 

 

『お願いされても、ポイントは分らんねえ。そもそも分ける必要ないと思うぜ?女子リスナー』

 

 

 

プレゼントマイクが少女をに言い聞かせていた。その言葉に、出久は希望を抱いてしまう。あり得ない現実が起こる予感がすると。

 

 

 

『人助けを、正しい事をした人間を排斥にしちまうヒーロー科など、あってたまるかって話だよ!』

 

 

 

みんなの言葉一つ一つが、自分だけでは手の届かないあの場所に導いてくれているかもしれないと。心の中の小さな光が、あまりにも遠すぎた光が近く、大きく、眩しくなっていくのを感じる。

 

 

 

『きれい事?上等さ!命をとしてきれい事実践するお仕事だ!』

 

 

 

そしてその光がついに、出久の心の中全てに満たれた。

 

 

 

 

『レスキューポイント!しかも審査制!我々雄英が見ていた、もう一つの基礎能力』

 

 

 

 

緑谷 出久 60ポイント!!

 

 

ついでに麗日 お茶子 45ポイント

 

 

 

『合格だってさ』

 

「無茶苦茶だよ・・・オールマイト」

 

 

 

僕は涙を流す。あの時と同じように光を照らしてくれた。

 

ヒーローになれると言ってくれたあの時と同じように、涙が止まらなかった。

 

ヒーローになれると言ってくれた時と同じように、手を差し伸ばしてくれた。

 

ヒーローになれると言ってくれたあの時と同じ様に、また・・・

 

 

 

 

 

『来いよ、緑谷少年。ここが、君のヒーローアカデミアだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が欲しくてたまらなかった言葉を、僕に聞かせてくれたんだ。

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