波動ねじれのヒーローアカデミア 【台本式無しVer】 作:へたくそ
お待たせいたしました
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ」
私は今走っている。寒い冬の中コートも着ないで部屋着のまま、お母さんには「出かけてくる!」とだけ言い残し飛び出してきた。
もっと早く、もっと早く!自分にそう言い聞かせながら。私は愛しい彼の元にひたすら走っている。冬の寒さなんてどうでもいい、心臓の鼓動なんてどうでもいい、早く、早く彼の元に。
そして私は彼の家の前にたどり着いた。表札には見慣れた緑谷の文字。インターホンを押す前に深く深く深呼吸をする。それは緊張をほぐす為なのか、それともここまで走ってきた心臓を落ち着かせる為なのか自分でもよく分からない。
「スゥー、ハァー・・・よしっ」
ここで決意して、私はついにインターホンを押した。するとまた謎の緊張感に襲われる。まだ心臓がバクバク鳴っている。顔も暑くなってきた。そんな事を考えているうちに、目の前のドアが空いた。
そこには出久君が立っていた。目は赤く浮腫んおり、手には雄英から届いたであろう合格通知の封筒。先程、引子さんから電話があった。『雄英からの合格通知が届いた』と。それだけ聞き私はすぐに家を飛び出したのだ。
「出久君・・・?」
私の問いかけに彼が、長い、とても長く感じられる沈黙を作り出した。私の心臓の鼓動は、もう出久君にも届いているんじゃないかと思うほどにうるさかった。そして出久君の口が開かれ、その口から出た言葉は弱々しく震えながらも、それでも確かにこう言ったのだ。
「やりました、ねじれ先輩」
その顔にはもう二度目であろう涙が溢れ、もうおかしいくらいクシャクシャな顔で、だけどとても嬉しいそうな顔で言ったのだ。
嬉しかった。ただただ嬉しかった。自分が雄英に受かった時よりも、生きてきた中で一番嬉しいのではないかと思う程に。そう思うと私の目にも一気に涙が溢れ、我慢できず出久君に抱きついた。
「おめでとう!」
私はこれでもかと言うほど強く抱きしめた。後で恥ずかしくなだろう、きっと二人してしばらく顔を合わせなくなるだろう。でもいい、それでもいいのだ。それほどに私は今、幸せに満ちているのだから。
まぁ勢いというものは怖いものでして、冷静さを取り戻すとまともに顔を見れないのは必然であるからして・・・
「・・・」
「・・・」
二人はまともに顔を合わせられないでいるのであった。引子が持ってきてくれたケーキや紅茶も、今のねじれの喉に通るわけも無く。しかし、出久とねじれの間で無言の時間はそう珍しくもない事だ。二人の存在を近くに感じられる時間でもあり、同じ時を共有している事を強く感じれる時間でもあるから。
「ねえ出久君」
「なんですか?」
「これからも、一緒に頑張ろうね」
そう、これからはもっといろんな事を共有できる。共に同じ校舎へ通い、同じ屋根の下同じ目標に向かう。自分の好きな人と、同じ夢を目指す。これほど胸躍るものがあるだろうか。ヒーローを目指すのは憧れたからだ。雄英に入ったのはその憧れを掴むためだ。しかし、今の自分は浮かれている。不純だと言われる事もあるだろう。
それでも今、限られた時間の中で彼といれる時間が増えることに喜びを隠せない。だがそれを恥じることはないだろう。自分は胸を張って言えるだろう。
波動ねじれは、緑谷 出久に恋をしているのだと