波動ねじれのヒーローアカデミア 【台本式無しVer】 作:へたくそ
あれからねじれは、出久の訓練には顔を一切出していなかった。
理由は聞いていないが、そんなの聞かなくても分かる。
いくら学生とは言え、雄英に通う以上は体調管理はしっかりしなくてはいけない。それだけではなく、勉強面においても他に遅れを取ってはいけない為、予習復習も必要となってくる。
そんな状況で朝の5時からの訓練に来て欲しいなんて言えた者ではなかった。
L○NEで連絡はとっているが、ここ3ヶ月まともに会っていない。
そんな状況に、出久のメンタルは少しずつ削られていった。
元から自分の感情を隠すことの得意だった出久は、オールマイトと
「緑谷少年。昨日は豪円さんとどんな訓練をしたんだい?」
「昨日は反射神経を鍛えるために、ひたすら師匠の攻撃を交わす訓練をしてました!」
オールマイトは出久に豪円との訓練内容の確認をしていた。
驚くべき事にオールマイトと豪円はそれなりに長い付き合いがあるという。
昔、オールマイトがまだ学生の頃、稽古をつけてもらっていたのだという。
その為、オールマイトと豪円は訓練内容を共有していた。
「ふむ、それならば私たちは瞬発力を鍛えようか」
「はい!」
「それと緑谷少年、波動少女とは最近どうなんだい?あの訓練に来たのもあの一回きり、まぁ無理はしてほしくなのだがこんなにも来ないのが少し心配でね」
「実は僕も3ヶ月近く会えていないんです。連絡は取れているんですが、やっぱり学校の方が忙しい様で」
「そうか。(できれば波動少女には緑谷少年の精神的支柱になってもらいたかったのだが…)」
オールマイトはねじれがこれ程長い期間、ここに来ないのは予想外だった。この二人の関係は一目見ただけで何となく分かった。
そんな二人がもう3ヶ月も会っていない、何かあったとしか思えないのだが出久を見た限りでは喧嘩ではない様に見える。
「(心配だが、まだ私の出る幕ではないだろう。これは二人の問題、もう少し様子を見ておくか)」
オールマイトは二人の問題にはまだ手出ししないと決めた。
この二人なら自分たちで解決できるだろうと信じての事だ。
「はぁ、もう3ヶ月か…。ずっと出久君に会えてない」
今は朝の5時、ちょうど出久とオールマイトが訓練をしている時間。最後に出久に会って以来ずっとこんな感じだ。
基本的に頭も運動センスも良いねじれは、少しの予習とストレッチさえしていれば授業に遅れることはまずない。
毎朝4時に起きて、5時には登校の準備は終えている。後はねじれが出久に会いに行く勇気が出ないのだ。
ねじれ自身、本当は会いに行きたい。でも会ってしまえばまた嫉妬してしまうかもしれない。
「私だけが出久君の理解者でいたいなんて、出久君に知ったらなんて思われるんだろう…」
この前のオールマイトの件がかなりキテいる様だ。今まで恋愛のした事の無いねじれにとって、今まで関係が基準になってしまう。
出久の夢を理解しているのは家族を除けば自分と豪円だけ。豪円に至っては、理解者というより師匠のイメージが強い。
だからあまり気にはしていなかった。しかしオールマイトは違う。
確かに師匠というイメージもあるが、それ以上にオールマイトは出久の絶対的な憧れ。
そんな彼が出久のヒーローになる為の手助けをするという。それは喜ばしい、喜ばしい事なのは分かっているのに素直に喜べない。
「……今頃、頑張ってるんだろうな。出久君、頑張っているんだろうな。最近L○NEの返信も少なくなってきてるし。もしかしてこのまま離れていっちゃうのかな…」
出久の依存先がこのままオールマイトに変わってもおかしくは無い。そうなれば出久は自分から離れていくのでは無いかと不安になる。
出久に限ってそんな事はありえないのだが、今のねじれにはどうしてもこの不安は簡単に拭い切れるモノではなかった。
出久が離れていく事を想像してしまう。とても辛い、苦しい、どうしようもなく心が痛く、切なくなる。
そして涙が止まらなくなるのだった。
「ねじれちゃ〜ん?早く起きなさ〜い?学校遅れちゃうわよ〜!」
「ん、んん。寝ちゃってたんだ、私」
ねじれはあのまま眠りについてしまい、気がつけば時計は7時半を指していた。
もう学校に行くのすら面倒くさくて、いっそこのままサボってしまおうかと思ったがそんな訳にはいかない。
それこそ出久に幻滅されかねない。重い体を起こし、鞄を持って玄関に向かう。
「おはよう、どうしたの?元気ないみたいだけど」
「なんでも無いよ。寝起きだからちょっと頭が冴えてないだけ」
「そう?あまり無理しないようにね。それじゃあいってらっしゃい。出久君が外で待ってるわよ?」
「…え?」
ねじれはケータイを確認して出久からのL○NEを見るが、新着は入っていない。
3ヶ月も会っていないのに、いきなり会うのはねじれもかなりの勇気がいる。
もしかしたら、ねじれにとってあまり良く無い事を言われるかもしれない。
不安に不安が重なり、ドアを開けるのが怖くなり手が震える。
それを見て、何かを察したねじれの母は
「ねじれちゃん、大丈夫よ。出久君は今ねじれちゃんが思っているような事は絶対にしないわ。あの子はヒーローになる子でしょ?それを信じたねじれちゃんの事を裏切る事は絶対にしない。だから少し勇気を出してみなさい?そうすればきっとあの子もそれに答えてくれるわ」
ねじれは母の方を見ると、自信満々な顔ねじれを見ていた。
確かに出久は優しい子だ。しかし今のねじれはその言葉を信じるにはそれ相応の根拠が欲しいのだ。
「どうしてそう思うの?」
ねじれは緊張した顔で返答を待つ。そして母から放たれた言葉は
「女の勘よ!!!」
その一言でねじれの顔は一瞬にして惚け顔になった。
しかし何故か自信満々の顔、それ見ていると今まで考えていた事が少しだけ小さい事の様に思えた。
それに母の言った様に出久がねじれの思っていた様な事をする少年では無い事を、ねじれは理解している。
いや、理解していたはずなのにそれをいつの間にか信じれなくなっていた。
「そうだよね、うん、いつまでもウジウジしていたらダメだよね。ありがとうお母さん!!私、頑張る!」
そう言うとさっきまで震えていた手の震えは収まっていた。
そして母が見たねじれに背中は、いつも通りの天真爛漫な自慢の愛娘の背中だった。
「いってきます!!!」
「いってらっしゃい!」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「どうした?緑谷少年。そんなもんか?」
「ま、まだいけます!」
出久は今、オールマイトに総重80キロの負担がかかるサポーターを付けながら反復横跳びをしていた。
「…いや、緑谷少年。今日の訓練はこれで終わりにしよう」
「え。で、でもまだ1時間しか」
「ここ最近、君は訓練に集中できていない。原因はねじれ少女だと言うことも分かっている。君たちの間で何があったかは分からない。本当ならもう少し待とうと思っていたんだが、これ以上放っておくと双方にとっても良く無い。だからまずは、君たちの問題を解決してきなさい。もちろん訓練はするがそれでも時間を短くする。いいかね?」
「は、はい。」
「君がどうしていいのか分からないのも分かるよ。だから君に私なりのアドバイスを送ろう」
「アドバイス?」
「うむ!それは、『シンプルイズベスト』さ!!」
「は、はぁ」
「ふむ、あまり分かっていない様だな。いいかい?緑谷少年。分からない事はいくら考えても分かりっこ無い。ならばどうするか。それはもう明白だろう。後は君が勇気を出して、実行できるかどうかさ」
オールマイトの言う様に出久は、どうしてねじれとの関係がこんな風になったのか分からないのだ。
ここ最近、その事ばかり考えていて授業も集中できていない。
そんな出久だからこそ、オールマイトの言葉に納得できた。
出久は何もねじれの全てを知っているわけでは無い。ならば本人に聞くしかない。
「うむ、どうやら覚悟は決まったみたいだな」
「はい!それじゃ僕お先に失礼します!」
出久は急いで家に向かう。シャワーをして、学校に行く準備を済ませ、直ぐにねじれの家に向かう。
ねじれにそれを教えると避けられるかもしれないので、あえて連絡入れない。
そして7時半にねじれの家の前に着いた。そこでインターホンを今まさに押そうとしていると、ねじれの母親が出てきた。
「あら?出久くんじゃ無い!最近来ないからどうしたのかと思ったわ」
「す、すみません。それよりまだねじれ先輩いますか?」
「えぇ、いるわよ?今呼んでくるから少し待ってね」
その5分後、ねじれが家から出てきた。ねじれは出久をまっすぐ見て、出久の前に立つ。
その様子に出久は少したじろぎそうになるが、グッと堪える。
「あ、あのねじれせんp…」
「出久君!ごめんなさい!!」
ねじれは出久に向かって頭を下げる。
まさか頭を下げられるなんて思ってなかった出久は何がなんだか分からなくなる。
「え、ねじれ先輩!?何してるんですか!?」
「出久君に謝ってるの」
「いや、それは分かっているんですが…」
「私ね、実はすごく不安だったの」
「え…」
ねじれは出久の事なんて気にしないで、今まで自分が持っている事を出久に話始める。
「オールマイトと出会って、出久君がもしかしたら私から離れていくんじゃ無いかって思っちゃって。そう思ったらどんどん嫌な事ばかり思い浮かんじゃって。でもね、さっきお母さんに言われて気付いたんだ」
ねじれは最初、俯きながら話していた。それは出久に不信感を抱いたと言う申し訳なさからくるモノだった。
だが、次第にねじれは顔を上げていく。
「このままじゃ、離れてくのは出久君じゃなくて私の方なんだって。それじゃきっと後悔しちゃう」
「ねじれ先輩…」
「今日まで避けていてごめんなさい。だからその、これからも一緒にいてくれるかな?」
ねじれは、ここで出久の返事が帰ってくるモノだと思っていた。
しかし返事は返ってこない。不安になり、出久の方を見上げると、出久が口を開いた。
「ねじれ先輩、この前先輩はずっと僕の隣にいてくれると言ってくれました」
「え、あ。うん」
「あの時はすごい嬉しかったです。それで、今回の事で気付いた事があります。……ねじれ先輩」
ねじれの中ではこの5秒にも満たない時間でも、何十分と言う長い時間に感じられた。
「僕も約束します。ずっと、貴方の傍にいます。先輩がどこに行こうと、どんなに僕から離れようとしても絶対に離れません」
「っ!!……い、ずく君…ありがとう…ありがとう…」
ねじれは一気に緊張の糸が切れた様に感情が溢れ出し、泣き始めてしまったのだ。
そんなねじれを出久は優しく抱きしめた。いつもは自分がされている様に、ただ何も言わずに…。
「あなた達、学校にも行かないで何朝っぱらから家の前でラブコメしてるの?」
まぁこの人のせいで出久の勇姿も台無しだが…。