ーホーネットsideー
「ホーネット。どう思うのだ? あの指揮官が言っていた事・・・・?」
「う~ん、自分の中の『可能性』と『気高さ』、か・・・・。何かパッとしないなぁ」
ホーネットとハムマン、そしてヴェスタルは、先ほどカイン指揮官が言っていた『〈ノブレス・ドライブ〉の発動条件』について首を捻っていた。
前回のレッドアクシズと奇襲と怪獣の襲撃のおり、ベルファストが見せた金色の輝き。
そして自分達よりも圧倒的な巨大な怪獣と互角近く戦った姿を見て、カイン指揮官から、自分達にもあの輝きを得られると知らされ、どうすれば良いのか頭を悩ませた。
「何も難しく考える事ないよ」
「「「指揮官っ!」」」
ベルファストを連れたカイン指揮官が目の前に現れて、ホーネット達は肩を振るわせるが、カインは落ち着いてと言うように、手を上げる。
「ああそんなに肩肘張らなくて良いよ。気楽にしてくれ」
カインがそう言うと、ハムマンは肘でチョンチョンとホーネットの脇腹をつついて、ホーネットも少し言いづらそうに口を開く。
「あのさ指揮官。その、〈ノブレス・ドライブ〉ってさ、どうやったらその、なれるのかな?」
「〈ノブレス・ドライブ〉になる方法か・・・・。実際にできた人達に聞いた方が良いと思うけど。・・・・ベル、どうやってなれたか覚えているかい?」
カインの後ろに控えているベルファストに声をかけると、ベルファストが声を発する。
「・・・・申し訳ありません。私も無我夢中で戦っていたら、いつの間にか発動できるようになったので。詳しくはーーーーただ、“自分が何故戦うのか”を考え続けていたら、身体の中をまるで血液が溶岩のように熱く煮えたぎり、それなのに頭はまるで氷のように冷静となった感覚がありました」
「「「???」」」
あまりに抽象的な言葉に、三人は首を傾げ、カインとベルファストはにこやかに笑みを浮かべる。
「ま、焦らず、“自分の戦う理由”を考え続け、“自分に問いかけて行けば”、自ずと答えは出てくるよ」
「あの、指揮官、良いでしょうか?」
「ん? ユニオンのヴェスタルだね。工作艦が来てくれて助かるよ。それでなんだい?」
「あの、エンタープライズちゃんの事で・・・・」
「・・・・・・・・」
「ご主人様・・・・」
ヴェスタルがエンタープライズの事を話そうとすると、カインは突然頭を下げた。
「し、指揮官?!」
「「!?」」
カインの行動に面食らったヴェスタル達に構わず、カインは口を開く。
「すまなかった。エンタープライズの行動を読めず、止められず、彼女を行かせてしまったのは、僕の失態だ。行動を読んでいれば、彼女が負傷した身体と破損した艤装で出撃するのを止められたかもしれないし、彼女が倒れる事もなかった。本当に申し訳ない」
カインの謝罪にヴェスタルが口を開いた。
「顔を上げてください。指揮官が救出部隊の編成をし、エンタープライズちゃんに待機指示をしていたのに、それをエンタープライズちゃんが破ったって事は聞いてますから」
「あの後、クリーブランドから聞いたんだよ。姉ちゃんが私達を助ける為に無理して出撃したって。指揮官が悪い訳じゃないんだから、あんまり気にしないでよ」
「・・・・まぁ、次からはちゃんとやるのだ」
「・・・・ありがとう。そう言って貰えると少し気持ちが晴れるよ。・・・・だが、エンタープライズには自重を覚えてほしいな」
「・・・・それには同意します指揮官」
カインとヴェスタルが顔を見合わせて黒い笑みを浮かべる。
「彼女には『お目付け役』を付けようと思うけど、その辺りはどう思う?」
「それは良い考えですね。エンタープライズちゃんには『お目付け役』を付けることをお薦めします」
「ほぉ、ヴェスタル。君は賛成かい?」
「ええ。是非とも」
フッフッフッ・・・・と、黒い笑みを浮かべて笑い合う二人に、ホーネットとハムマンは引き、ベルファストは静かに控えていた。
ーエンタープライズsideー
そのさらに翌日。
母港にある『ユニオンの寮』の部屋でエンタープライズは、まだ眠っていた。
そして夢の中で、青い空と海が窓の外に広がる部屋の一室。
ベッドに横たわるのは、『ロイヤル所属 空母 ヨークタウン』。エンタープライズとホーネットの姉であり、現在は負傷の為、戦線を離脱してしまっていた。
【見て、海が綺麗よ】
【ーーーー海を、美しいと思ったことはない。私達が生まれた時から、海は戦場だった】
エンタープライズは忌々しそうに海を睨んだ。
【ヨークタウン姉さん。あなただって海でーーーー】
【それは違うわ。忘れてるだけよ、私達は艦が人のカタチを成したもの。海の美しさは、私達の魂の奥に刻み込まれている】
ヨークタウンはエンタープライズの手を取り諭す。
【人があなたの名前に込めた想いを、いつかきっと、思い出させる日がくるわーーーー碧き航路に祝福を、エンタープライズ。私の、かわいい妹ーーーー】
◇
「ヨークタウン姉さん・・・・」
「あら? 可愛らしい寝言ですね?」
「・・・・はっ!?」
突然聞こえた声に、エンタープライズは目を覚まし飛び起きると、カーテンが開かれ、日差しに目がくらむとーーーー。
「おはようございます。ゆっくりとお休みになられましたか?」
「貴女は・・・・?」
「メイドの、ベルファストと申します」
『ロイヤルメイド隊 メイド長・ベルファスト』がにこやかな笑みを浮かべていた。
その顔を見て、あの時に見た〈ノブレス・ドライブ〉を発動させた艦船<KAN-SEN>であると思い出した。
「・・・・そうだった。私は貴女に助けられたんだな。すまない、迷惑を掛けた」
「大事が無くて何よりでございます」
エンタープライズは服を着用すると、自室の机に置いた携帯食を持って、部屋を出ようとした。
「もし・・・・」
ベルファストはエンタープライズについていく。
「安静にしていた方が宜しいのでは?」
「この程度の負傷は戦場の常だ」
「危ない所だったのですよ」
「そうだな。貴艦に感謝する」
素っ気なく答えるエンタープライズにベルファストが小さくため息を吐く。
「朝食のお時間です。それを終えたら、待機命令違反について、ご主人様・・・・カイン・オーシャン指揮官様が執務室に来るようにと」
「そうか・・・・」
指揮官の名前を聞くと、エンタープライズは外に出ようとした。
「朝食は・・・・?」
「これで十分だ。それに、指揮官が呼んでいるのだろう?」
携帯食を見せたエンタープライズは外に出ようとするが、ベルファストに向けて声を発する。
「一つ、聞いておきたいのだが・・・・」
「何でしょう?」
「あの時の、あの光る姿、あれは一体?」
「〈ノブレス・ドライブ〉。の事でしょうか?」
「・・・・・・・・」
エンタープライズは小さく頷いた。
「それを知りたければ、貴女御自身の中にある『気高さ』を見出ださなければなりませんね」
「『気高さ』? まるで人間みたいな事を言うのだな?」
そう言って、エンタープライズは今度こそユニオン寮を出ていった。
ーベルファストsideー
「はあ・・・・(ご主人様の言うとおり、『お目付け役』が必要なお方のようですわね)」
ベルファストは、エンタープライズの様子を見て、カインの見立ては正しかったと思った。
ージャベリンsideー
母港の食堂で、朝食のサンドイッチを食べていたジャベリンは、隣でハンバーガーを頬張るラフィーを見る。
綾波に対して敵対しようとしないラフィーの態度に疑問を持っていた。
勿論。綾波についてだ。
「ラフィーを置いて撤退して」と言うラフィーを置いて行けず、しかし並んで綾波に武器を構えて立つ事すらも、選べなかった。
「ラフィーちゃんは、どうしてあの時・・・・」
「???」
「・・・・うぅん。なんでもない」
首を傾げるラフィーに無理に笑みを浮かべるジャベリン。
「やぁ、おはよう」
「っ! し、指揮官!?」
突然話しかけてきたのは、トレーに朝食を乗せたカインだった。
「一緒に良いかな?」
「は、はい!」
「指揮官、今日はここでご飯??」
「ああ。最近書類仕事が多いから執務室で取っていたけど、たまには良いかなってね」
座ったカインはパンとサラダ、目玉焼きとウィンナーそしてコーヒーの朝食を食べると、何か難しい顔をして唸った。
「・・・・・・・・」
「指揮官、どうしたの?」
「いやな、何か物足りないって言うか、何かを食べたいがそれが何か分からないんだよなぁ?」
「???」
なんてジャベリンとラフィーと他愛ない会話を続けると食事を終えて立ち上がるカイン。
「じゃあ、僕はもう行くね。・・・・あ、そうだジャベリン」
カインはジャベリンに顔を近づけた。
「し、指揮官/////」
「ジャベリン、君は綾波が悪い子に、“敵”に見えたかい?」
カインがそう言うと、ジャベリンは少し言いにくそうにしながらも、口を開いた。
「・・・・いえ、そんな子には、見えませんでしたし、“敵”だとは・・・・思いたくありません」
ユニコーンの大事な友達である『ゆーちゃん』を見つけた姿を見たときの綾波からは、とても悪い子だとは思えなかった。
悩みながらも絞り出したジャベリンの答えに、カインは笑みを浮かべてジャベリンの頭をソッと優しく撫でた。
「そうか。・・・・ジャベリン。その気持ちを大切にしなよ」
「・・・・・・・・///////」
カインは優しい笑顔をジャベリンに向けると、そのまま去っていき、ジャベリンはその背中をボォ~と、頬を紅くして見送り、ラフィーもカインに小さく手を振ると、朝食を終えて、くぁ~と小さな欠伸をした。
ーカインsideー
カインが執務室の自分の席に座ると、ちょうどエンタープライズが入室してきて、先ほどジャベリン達と会話していた時とは一変した雰囲気でエンタープライズを見据える。
「・・・・エンタープライズ。何か弁明する事はあるか?」
「言い訳をするつもりはありません。命令違反の厳罰は覚悟しています」
執務室に来たエンタープライズを、ウェールズとイラストリアス、そしてユニコーンを控えさせたカインが厳かに睨んで口を開き、エンタープライズは答える。
「戦場に立つ者ならば、自分のコンディションと艤装の状態を常に万全にしておくのがプロだ。それは分かっているか?」
「私は『兵器』です。コンディションが万全でなくても、戦う事が義務です」
エンタープライズの言うと、ウェールズが口を開こうとするが、カインが手を上げて制する。
「結果的にホーネット達を救出できたから、今回は不問とするが、次に命令違反を行った場合、今度こそ君には厳罰を受けてもらう。下がって良い」
「・・・・はっ」
敬礼して執務室を出ようとするエンタープライズに、カインが声をかけた。
「エンタープライズ。〈ノブレス・ドライブ〉について聞きたい事はあるか?」
「っ・・・・!」
それまで無表情だったエンタープライズの顔に、僅かな動きがあったのを、カインは見逃さなかった。
「・・・・指揮官。あの力は、どうやって会得できるのでしょうか?」
「今の君じゃ、会得するのは不可能だろうね」
「な、何故ですかっ?」
エンタープライズがカインに顔を向けて言うが、カインは毅然とした態度で言う。
「“君は何も見えていない”。そんな君に、『気高さ』なんて見いだせないな」
「『気高さ』・・・・。まるで私<KAN-SEN>を『人間』として見ているようですね」
「・・・・君は自分を『兵器』だなんて思っているようだが、そんなのはただ、“自分にそう言い聞かせて自分の殻に閉じ籠っているだけじゃないのか?”」
「っ・・・・・・・・失礼します」
そう言って今度こそ部屋を退室したエンタープライズに、ウェールズとイラストリアスは重いため息を吐いた。
「やはり彼女は危ういですね」
「ああ・・・・」
「お兄ちゃん。エンタープライズお姉ちゃん、大丈夫かな?」
「こればっかりは、本人が向き合わないといけない事だからなぁ。僕がちゃんと対話しないといけないだろうがーーーー」
「・・・・指揮官」
「ウェールズ・・・・」
エンタープライズを追おうかと考えるカインに、ウェールズが諌めるように声をかけた。
「指揮官様。エンタープライズだけを特別視するような素振りをしてはいけません」
「イラストリアス・・・・」
「この艦隊はできて間もないのです。指揮官には出向する前に、出来るだけ多くの艦船達と交流を重ね、連携を取れるようにして貰わないとなりません。エンタープライズだけに構っている訳にはいかないでしょう」
「・・・・そうだよなぁ。・・・・分かった。なるべく多くの艦船達と対話していくよ」
イラストリアスとウェールズに言われたカインは、ユニコーンを連れて執務室を出て行こうとしたその時ーーーー。
「じゃ、書類仕事の方はヨロシクね!」
「「あ・・・・」」
机の上に置かれた書類を見て、ウェールズとイラストリアスが、ハッとなるが、既にカインはユニコーンを抱えて執務室から逃げていき、少し進むとベルファストと出会った。
「あら、ご主人様。お仕事はどうなさいました?」
「あ、いや、ね・・・・。ほら! 他の艦船<KAN-SEN>の皆とコミュニケーションを取るのも、指揮官として大事な仕事だからさぁ!」
「・・・・それもそうですね」
「お見通しですよ」と言わんばかりのベルファストの笑みにカインは苦笑いを浮かべると、ちょうど通信機に着信音が響き、『ホーネット』と表示され、通信に出るとホーネットと会話し、通信を終えると笑みを浮かべて、ベルファストとユニコーンに指示を出した。
ーエンタープライズsideー
「何をやってるんだ、あの子達は?」
1人母港を歩いていたエンタープライズは、ベルファストとユニコーンに誘われ、車に乗ってそこに連れてこられて呆然と呟いた。
目の前にはビーチが広がり、ビーチウェアには妹のホーネットが少し過激な黒いビキニを着用し、そのメリハリの効いたプロポーションを惜しげなく晒して寝そべり、ハムマンや他の艦船<KAN-SEN>達も水着姿でいた。
トランクスタイプの水着にパーカーを着用した指揮官が、何やら細長いアタッシュケースを持って、水着姿のジャベリンとラフィーと談笑していると、サンディエゴが鮫に食われそうになったり、サラトガがそれを助けようとサンディエゴごと吹き飛ばした光景が広がっていた。
「息抜きも結構な事だと思いますが?」
「襲撃の後だぞ」
「固いこと言うなよエンタープライズ」
「指揮官・・・・」
エンタープライズ達に近づくアタッシュケースを持ったカインは、ユニコーンに遊んで来て良いよと言うと、ユニコーンは浜辺へと走っていった。
「襲撃の後だからこそ、身体や心を休ませないといけないんだ。じゃないと、何処かの誰かさんみたいな凡ミスをやらかしてしまうからな」
「・・・・・・・・」
カインの刺のある言い分に、エンタープライズは渋面を作った。
すると、ユニコーンがこちらに手を振っていた。
「呼ばれてますよ」
「えっ?」
エンタープライズは自分を指差して、ユニコーンをチラッと見ると、少し困ったが歩を進めようとした。
ーーーーキラッ・・・・。
「む」
ふと、カインが浜辺から少し離れた場所で、奇妙な反射光に目を鋭く向け、アタッシュケースを開けて中身を出すとそれはーーーー。
スナイパーライフルのエアガンだった。
「・・・・ソコッ!」
ーーーーぐぁっ!!!
指揮官が狙いをすませてライフルの引き金を引くと、パシュンッ! と、小さな音が鳴り、銃口から“何か”が発射され、光った地点から何やら女性のような声が響いた 。
「ベル」
「はい」
「『対象R』はあそこだ。ゴム弾だから命に別状はない。すぐに捕縛し、ロイヤル寮の地下の独房に軟禁しておいてくれ。抵抗するようなら『性格改編装置』を使用すると脅しておけ」
「承知しました」
スラスラと慣れたように指示を出すカインと、それに応じるベルファストが何処から出したのか、通信端末を取り出すと、ロイヤルメイド隊のメンバーに指示を出していた。
「・・・・・・・・一体、何があったんだ?」
「気にしなくて良いよエンタープライズ」
「ええ」
ライフルをしまったカインと通信を終えたベルファストは何事も無かったように言い。
カインは改めて海で戯れる水着の天使達と遊んだ。
ーーーー待ってくれ閣下! 私は小さな駆逐艦達を眺めて愛でていただけでやましいことはぁぁあああああああああああああああああ!!
離れた所から女性の悲鳴のようなものが聞こえたが、エンタープライズは聞かなかった事にした。
次回。嵐の海にロボット怪獣登場。