ー???sideー
カイン達のいる星の衛生軌道上に鎮座する宇宙ステーション。カイン達の星の科学では発見できないように光学迷彩が仕掛けられたその場所で、『マーキンド星人』が再び『怪獣オークション』を始めようとしていた。
『それではお集まりの皆様! 前回のベムラーではウルトラマントレギアのせいで中止となりましたが、今回は大丈夫です! 本日紹介致します怪獣はまさに目玉商品! あの! “『サイバー惑星クシア』が生み出した『最凶の人工知能』が作り出した超兵器です”!!』
『おぉおおおおーーーー!!』
オークションのステージの真ん中で声高に宣言するマーキンド星人の頭上に大きな空中ディスプレイが表示され、その画像には、宇宙ステーションの怪獣保管庫に入った『兵器』を見て、競りに来た宇宙のならず者や一部の悪徳な金持ち達が驚嘆の叫び声を上げた。
『では! これよりその性能を実戦でお見せしましょう! 降下開始!!』
マーキンド星人がそう言うと、『兵器』がカイン達の星に降下されようとしていた。
ーエンタープライズsideー
「ウフフ、お兄ちゃん♪」
夕暮れの浜辺にて、ワンピースの裾を少し上げて波際をパシャッパシャッと跳ねるユニコーンが、ちょうど他の艦船<KAN-SEN>達との遊びを終えて近づいたカインに抱きついた。
「・・・・・・・・」
優しい笑みを浮かべるカインは、ユニコーンの頭をソッと撫で、ユニコーンは気持ち良さそうな笑みを浮かべる。
「・・・・・・・・・・・・」
波の前に座り、ゆーちゃんと2人の様子を眺めていたエンタープライズは、ユニコーンに口を開く。
「私に用があるのでは?」
「・・・・うん。あのね、ちゃんとお礼が言いたかったの」
「???」
ユニコーンはエンタープライズは首を傾げる。
「エンタープライズさん! 助けてくれてありがとう!」
「・・・・あぁ、襲撃の時の話か」
「ーーーー!!」
ユニコーンが、うんうん!と頷くが、エンタープライズは砂を払いながら立ち上がる。
「礼を言われる事ではない。当然の責務を果たしたまでだ」
「でも・・・・!」
「ユニコーン。見てみなよ」
「え?」
素っ気なく答えるエンタープライズに、ユニコーンはしょげそうになるが、カインの言葉で振り向くと、水平線の向こうに沈む夕焼けに染まったオレンジ色の海原が目に入った。
「綺麗・・・・」
「っ・・・・・・・・」
「エンタープライズさん。海が凄く綺麗だよ! えっ?」
ユニコーンは再びエンタープライズを向くが、彼女は悲しそうにうつむいた。
「皆同じ事を言うんだな・・・・」
「えっ?」
「海が美しいなどと、思えたことが無いんだ。思い出すのは、轟く砲声や硝煙の匂いのみ、燃える炎の熱さ、水の冷たさ、そう言うモノばかりだ」
エンタープライズは夕焼けの海原を見つめる。
「海は戦場だ。それを美しいだなんて・・・・」
「それはただ、“海が怖いだけなんじゃないか”?」
「“怖い”・・・・私が?」
カインの言葉に、エンタープライズが俯く。
「昼間の青い海も素敵だけど、夕日に染まる海も悪くない。夜になれば夜空の燦然と輝く星々を映す。海も、世界はこんなに色鮮やかに輝いている。それを守るために君達艦船<KAN-SEN>の力は存在する。だけど君は、海や世界や、自分自身とも向き合わず、ただ逃げているだけじゃないのか?」
「・・・・あなたに、何が・・・・!」
「指揮かーーーーん! ユニコーンちゃーーーーん!」
エンタープライズがカインに何かを言うが、離れた所にいるジャベリンの声に遮られた。
「っ・・・・!」
「ユニコーン。先に行っておいて」
「・・・・私の事は良い」
「う、うん!」
二人の言葉に、ユニコーンは頷きジャベリン達の元へ向かい、ゆーちゃんも後を追った。
「言っておくぞエンタープライズ、〈ノブレス・ドライブ〉。あれをロイヤルで一番最初に発現させたのは、あのユニコーンだ」
「えっ!?」
エンタープライズは驚いた。まさか、あんなに小さな女の子が、あの『力』を発現させた事に驚いたからだ。
カインは驚愕するエンタープライズの横を通りすぎる際、“ホーネット達から聞いた事を囁いた”。
「“姉である『ヨークタウン』を奪った海を憎んでいるようじゃ、君は『その先』に行くことはできない”」
「っっ!!?」
「君は自分を『兵器』だなんて言ったけど、『兵器』は恐れたりしない。何も感じず、何も考えず、何も生み出さず、ただ『破壊』しかもたらさない。それが『兵器』だ。その事をちゃんと考えろ。『安易な考え方』に逃げるな」
エンタープライズは思わず過ぎ去るカインの背中を見つめるが、直ぐに俯いてしまった。
ーカインsideー
≪俺は、彼女の気持ちが少し分かるよ≫
そんなエンタープライズの様子を見て、タイガが口を開いた。
≪俺も、大事な仲間をトレギアに殺された・・・・! トモユキ。お前も忘れているけど、ヤツはお前の友達を殺したんだ! だから、大切な姉を奪った海を憎むエンタープライズの気持ちが少しは分かるんだ・・・・≫
「(なあタイガ。君もその二人と同じようにトレギアの攻撃を受けて、粒子状になって宇宙をさ迷っている時、偶然幼い僕、海守トモユキと出会って、同化したんだよね?)」
≪えっ? あ、ああ・・・・≫
「君が生きていたんなら、君の二人の仲間達も、生きている可能性が有るんじゃないかな?」
≪あ・・・・!≫
カインの言葉に、タイガはハッとなる。
≪・・・・生きて、いるかな?≫
「(信じてやれよ。大事な仲間なんだろ? 君が生きている事を信じないで、誰が信じるのさ)」
≪・・・・そう、だよな!≫
「(そう言う事。さてと・・・・)」
カインは車に乗って待っていたベルファストに近づく。
「ベル」
「はい」
「雲行きが怪しい。みんなを寮に戻すから、エンタープライズを頼む」
「承知しましたご主人様」
「それとーーーー」
「分かっておりますよ」
ベルファストが淑やかな笑みを浮かべて答えると、カインも口元にフッと笑みを浮かべた。
「苦労をかけるな」
「いいえ」
まるで熟年夫婦のように息のあった会話をする二人。カインはベルファストから離れると、外にいる艦船<KAN-SEN>達に帰投を指示した。
ーベルファストsideー
カインの予想は当たり、少し前まで晴れていた天気が一変して雨が降り注ぎ、視界を閉ざしていた。
ずぶ濡れになりながら寮に戻るジャベリン達。
しかし、エンタープライズは、海を見つめながら雨に濡れていった。そんなエンタープライズに傘を差し出したのは傘を広げているベルファストだった。
「指揮官のそばにいなくていいのか?」
「そのご主人様から、あなた様の事を見ていてくれと命じられたのです」
「そうか・・・・」
エンタープライズは受け取った傘を広げ、ベルファストが口を開く。
「陛下には、それとなく探りを入れるよう仰せつかっているのですが、お恥ずかしながら、私そのような機微には疎いものでして・・・・」
「何が言いたい?」
「これ以上、ご主人様のお心に心配事の種を増やすわけにはいないので、単刀直入にお伺いします。いつまであのような戦い方を続けるおつもりですか?」
「・・・・!」
ベルファストの言葉に、エンタープライズは視線を送る。
「ご主人様があなた様に対して一番危惧しているのはそれです。あなた様は、“戦いを疎んじているようお見受けします”。しかしその一方で、“自らの命を顧みることがない”・・・・あなたの在り方は歪んでいる。このままでは〈ノブレス・ドライブ〉を発現させる以前に、あなた様は、“戦う意味さえ見失ってしまうでしょう”」
「・・・・!」
ベルファストが指摘した『己の中の歪み』。それをエンタープライズは身体をビクッと震わせた。
ーカインsideー
執務室の窓ガラスが風でバンバン、と音が鳴り。さっきまでの快晴が嘘のように、突然の嵐となった。
「まったく。今日の夜辺りに出発するつもりだったのに、間の悪い天気だ・・・・」
「荒れそうね・・・・」
“出向する予定だったカイン”は、天候を睨んで渋面を作り、ウェールズも難しい顔を浮かべると、執務室の扉が大きな音を立てて開け放たれ、クリーブランドが慌てた様子で入ってきた。
「指揮官! ウェールズ! 大変だ!!」
クリーブランドのただ事ではない様子に、二人は嫌な予感を感じた。
ークリーブランドsideー
それからクリーブランドから、この近くに救助信号があった事を報告されたカインは、もしかしたら〈セイレーン〉か、重桜から攻撃を受けているのではと推察し、救援部隊を編成し、直ぐに、ベルファスト。クリーブランド。ハムマンを出撃させた。
が、その中にエンタープライズの姿があった。
「この嵐で遭難したのか?」
「かもね・・・・ってぇ、何で付いてきたのさエンタープライズ!? 艤装まだ直ってないだろう!?」
「っ! そのような状態で出撃なさっているのですか!?」
「また命令違反なのだ!」
ヴェスタルのお陰で多少は修復されたが、まだ戦闘ができる状態なのは明らかであり、クリーブランドとベルファストが戻るように急かすが・・・・。
「少しは修復した。問題ない」
「でも!」
「待って! 前方に何か・・・・!」
ハムマンの言葉により前方を確認する。そこには一隻の艦と〈セイレーン〉の艦が存在していた。
「セイレーン!? こんな時に!」
「いや、よく見ろ」
「・・・・っ、戦闘の後だ」
エンタープライズの言うとおり、戦闘中にしては静かすぎる上に、直前に砲撃した後ではない。
何より、セイレーンの艦が機能停止している。
「まさか! 救難信号を出した艦がセイレーンと戦っている!?」
「大変だ!急いで助けに行かないと!」
機能停止したとしてもまた何時動き出すか分からない。早めに救助すべきだ。
「でも、この嵐じゃ索敵も難しい。慎重に進まなきゃ・・・・」
「周囲の警戒を頼む」
「えっ?!」
エンタープライズは一足先に救助信号を出した艦へと全速力で突っ走っていった。
「な、なななな、ああもう! なんであいつはいつもああなのさーーーー!!」
ついに憤慨するクリーブランドをなだめるハムマン。ベルファストはエンタープライズの後ろ姿を見据え、カメラ付き通信インカムでカインに連絡する。
「ご主人様」
《ベル。もしかして・・・・》
「はい。エンタープライズ様が・・・・」
ベルファストの報告を聞いて、カインが重いため息をもらした。
ーエンタープライズsideー
エンタープライズは機能停止した量産型の〈セイレーン〉の艦の間を走りながら、救助信号を出した艦を探した。
周りには量産型の〈セイレーン〉の艦があり、警戒を怠っていない。
「っ!」
量産型と違った艦を見つけ、その艦に飛び乗ると、二人の艦船<KAN-SEN>を見つけた。
「くっ・・・・!」
一人は気を失っているもう一人を抱きしめ、エンタープライズに対して警戒している。
「(この格好、『東煌<ドンファン>』の艦船<KAN-SEN>か・・・・)安心しろ。わたしは『アズールレーン』に所属するものだ。救助信号を追ってきた」
エンタープライズがそう言うと、警戒していた『東煌』の少女は、嗚咽混じりの声をもらした。
よほど怖かったようだ。
「・・・・周囲のセイレーンは貴女方が倒したのか?」
「(コクン)」
「何があったか教えてくれ」
エンタープライズは警戒を解いてもらうため、所属を聞く。
気を失っているのは、『東煌所属 軽巡洋艦 寧海<ニンハイ>』。
嗚咽をもらしているのはその妹の『東煌所属 軽巡洋艦 平海<ピンハイ>』である。
『東煌』は地形の位置的に重桜に近いが、東煌はアズールレーンに所属している。
すると、警戒心がまだ解かれて無いが、全容を話してくれた。
「平海達、『セイレーン』に追われてて、全部やっつけたけど、姉ちゃんが私を庇ったから・・・・!」
「うっ・・・・うぅっ・・・・!」
「あっ! 寧海姉ちゃん!」
「平海・・・・無事・・・・?」
「うん!」
「・・・・良かった・・・・うぅっ!」
「姉ちゃん!?」
倒れていた寧海が目を覚ましたが、ダメージが残っているようで苦悶の声を上げた。。
「大丈夫だ。私たちが助ける。仲間たちもじきに到着する」
と、その時、ぎこちない機械音がし、咄嗟にその音源に向けて構えるエンタープライズと平海。
ソコには『セイレーン』の艦が動き始め、主砲をこちらに向けた。
「倒し損ねた!?」
「逃げなさい・・・・! 平海・・・・ぅっ!」
「嫌だ! 今度は寧海が姉ちゃんを助ける!」
「ーーーー!」
その光景に、エンタープライズは姉のヨークタウンの顔が脳裏をよぎり、艦から飛び出して『セイレーン』の注意を逸らした。
「こっちだ!」
『セイレーン』は狙いをエンタープライズに変え、すかさず防御しようと攻撃を行おうとするが・・・・。
「くぅ・・・・!!」
出だしが悪かった。ヴェスタルのおかげで攻撃が可能な程修復はしたが、艦載機の具現化がまだ本調子ではなかった。『セイレーン』の主砲が早く、放たれた砲弾が真っ直ぐにエンタープライズに向かった。
「はぁぁぁぁ!!」
しかし、ベルファストの二発の主砲がセイレーンの弾を撃ち消した。
「うふ。少しだけ貴方の事が理解できました」
エンタープライズの前に立ったベルファストは、魚雷をセイレーンに向かって撃った。
魚雷は全弾命中し、『セイレーン』の残りの艦も撃破した。
「(・・・・つ、強い・・・・!)」
〈ノブレス・ドライブ〉を使わなくてもこれほどの強さを見せるベルファストに、エンタープライズは驚く。
「貴方は、ご主人様と同じくお人好しなんですね。エンタープライズ様」
「指揮官と、同じだと・・・・?」
「ええ。ご主人様は、半年前までの記憶がございません」
「なに・・・・!?」
指揮官に過去の記憶がない。その事にエンタープライズは驚くが、ベルファストは構わず続ける。
「記憶を失ったご主人様の指揮能力を陛下が認め、アズールレーンの指揮官としてスカウトされたのです。本来ならば、ご自身の過去を探そうとするのに、あのお方は指揮官として、私達の力になるために、ご自分の過去を後回しにしているのです。そんなご主人様だからこそ、陛下達も私達メイド隊も、信頼を置いているのです」
「・・・・・・・・・・・・」
「おーい! ベルファスト! エンタープライズ! 大丈夫!?」
クリーブランドとハムマンが、二人の元に向かってくる。雨の勢いも弱くなっていった。
「あ、あぁ。こちらは無事だ。早くあの子たちの救助を・・・・」
その時、エンタープライズ達の後方に、“何か巨大な影“が現れた。
『っっっ!!』
その影を見て、エンタープライズ達は驚愕する。
白い色に青い鎧に覆われ、腕や足に金色の刃が装備され、頭から巨大な斧を垂らした竜人を思わせるロボットのようなシルエット、これまで現れた『異常進化生命体・怪獣』とは違ったメカメカしい姿をした怪獣。
『ーーーーーーーー!!!』
『シビルジャッジメンター・ギャラクトロンMK2<マークツー>』が、機械の駆動音を響かせながら姿を現した。
ー平海sideー
「寧海姉ちゃん・・・・」
「平海・・・・」
いきなり現れたギャラクトロンMK2におののく二人。だが、寧海は妹を励ます。
「だ、大丈夫よ平海・・・・私達には、『賢者様』が付いている、から・・・・」
「うん、そうだよね・・・・!」
平海は、懐から取り出した『黄色い星形の宝石』を持って頷いたーーーー。
ー霧崎sideー
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~」
その頃。ウルトラマントレギアの人間体、『霧崎』は、雨の海の上に立ちながら傘を広げて、鼻歌を歌いながらこれから始まる戦いを面白い見世物を眺める心地でニヤついていた。
次回。ムキムキの『賢者』が登場。