アズールレーンT   作:BREAKERZ

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ついに重桜に戻ったカインの運命は?


【重桜】記憶に無い故郷

ーカインsideー

 

朝日が昇る頃。

先日に重桜艦隊に乗り込んだカインと思念体のタイガとタイタス(二人ともカインの肩に乗っている)は、赤城の艦の船首から、漸く見えてきた重桜母港を覆い尽くすほどに咲き乱れる満開の桜を眺めていた。

 

≪ほぉ、あれが重桜。あの桃色に咲き乱れているのが桜と言う樹木か。何とも艶やかで美しい花だな≫

 

≪だろう! トモユキもこの桜を眺めるのが大好きだったんだぜ!≫

 

「(ふぅ~ん。そうだったのか)」

 

「どうですか? 指揮官様」

 

後ろからの声に振り向くと、笑みを浮かべる赤城と冷静な表情の加賀が近づく。

 

「・・・・・・・・」

 

カインは二人を一瞥すると、再び重桜母港を見つめる。

 

「着いたらすぐに、貴女達重桜の旗艦、『長門』と会談を行いたい」

 

カインはそう言うと、背後から優しく抱き締められる。

後方を見ると、赤城の顔があり、背中には赤城の大きな胸部が、フニョンっと押しつけられる。

 

「(うおっ! なんと幸せな感触! これはフッドかアークロイヤルはあるぞ!)」

 

≪おいおい・・・・≫

 

≪しっかりしないか・・・・≫

 

色事に関しては隙だらけでドキドキしているカインに、タイガとタイタスがシャンとしろ、と言わんばかりに声を発する。

 

≪もしかして、記憶を失う前からこうだったのか?≫

 

≪いや、トモユキの頃は嬉し涙を流してたな。「素晴らしい感触だ・・・・!」って言って≫

 

「(えっ? そうだったの?)」

 

「指揮官様・・・・やって帰って来て下さいましたした・・・・赤城は信じていました・・・・指揮官様が、必ず戻ってきてくださると・・・・」

 

背中から抱き締める赤城の手は、もう離さないと言わんばかりに力を込めていた。

 

「・・・・・・・・っ」

 

カインは赤城の腕の力にうすら寒い悪寒を感じながら、隣にやって来た艦・『綾波』と、船首に佇んで自分をジッと見つめる綾波の姿を捉えた。

 

「・・・・・・・・」

 

「(綾波・・・・)」

 

綾波は悲しそうにカインを見つめると、そのまま船首から歩き去っていった。

 

 

 

 

重桜基地の港に到着すると、『重桜所属 重巡洋艦 古鷹』と『重桜所属 重巡洋艦 加古』が出迎えきた。

 

「赤城さん、お帰りなさい」

 

「ご苦労様、加古。古鷹」

 

「留守の間、何事も無かったか?」

 

「はいこれと言っては。それと、『長門様』がお呼びです」

 

「分かっているわ。色々と報告に向かわないとね」

 

古鷹が綾波に近づく。

 

「お帰り綾波!」

 

「ただいま、です。それと・・・・」

 

「えっ?・・・・・・・・あっ」

 

「あ!」

 

綾波が後ろを振り向き、その視線を追った古鷹と加古が目を見開く。

綾波の後方から歩いてきた、ロイヤルの軍服を着た青年に。

肌と髪の色と服装は違うが、間違いなく、いや、見間違いなどする筈もない人物が、歩いてきたからだ。

 

「「し、指揮官・・・・!!」」

 

「・・・・・・・・」

 

≪加古! 古鷹!≫

 

「指揮官よ!!」

 

「本当なのだ!?」

 

「おーい指揮かーーーん!!!」

 

「あ・・・・? (ドンッ!!)ぐぉがっ!!」

 

≪あだっ!?≫

 

≪むっ!≫

 

突然自分の胸に突撃してきた三人の艦船<KAN-SEN>達に、カインは仰向けに倒れるが、突撃してきた三人は構わずカインの顔をジッと見つめ、瞳に涙を溢れさせた。

 

「今までどこに行ってたのよこのアホ指揮官!!」

 

「指揮官なのだーーー!!」

 

「この匂い、間違いねぇ! 指揮官だ!」

 

≪いててて・・・・。時雨に、雪風に、夕立か・・・・≫

 

犬耳としっぽに黒髪をポニーテールにした少女・『重桜所属 駆逐艦 時雨』。銀色の髪に猫耳としっぽの少女・『重桜所属 駆逐艦 雪風』 。白い髪に時雨と同じく犬耳としっぽの少女・『重桜所属 駆逐艦 夕立』。

三人はしっぽも物凄い勢いで振り回していた。喜びを全力で表現しているようだ。

 

「いっつぅ~・・・・あの、その、ね・・・・」

 

後頭部を強かに地面に叩きつけ、目の前がバチバチと火花が飛び散るが、三人の艦船は気に止めずカインの胸元に顔を埋め、中々自己主張のある胸元をフニョンと押し潰す。

 

「・・・・みんな、指揮官が困っているです。早く退くのです」

 

綾波がオロオロしながら時雨達に退けるように言うが、古鷹と加古も、カインに抱きつきたいのか身体をウズウズしているとーーーー。

 

「あらあら貴女達、重桜の女性として、随分とお行儀が悪いわね?」

 

「「「っ!」」」

 

目元に影が差し、ユラリと三人を見下ろす赤城の気配(殺気?)を感じると、三人は瞬時にカインから退き、古鷹と加古も少し身体を震わせながら大人しくなる。

顔は笑っているが目がまったく笑っていない赤城の視線に、三人はガタガタと身体を震わせる。

 

「あ、赤城。そんなに怒らなくていい。僕は気にしていないから」

 

「・・・・指揮官様がそう仰るならば」

 

不承不承ながらも、赤城は物騒な気配を収めた。カインは加賀に手を貸して貰いながら起き上がる。

 

「あれが、『海原の軍者』と謂われた『海守トモユキ指揮官』、なんですか?」

 

「そのようね。どうやら記憶を失っているようだけど・・・・」

 

その様子をニーミは訝しそうにカインを見据え、オイゲンは興味深そうにカインをジットリと見つめる

 

「っ・・・・・・・・」

 

そのオイゲンの視線に気づいた加賀が、カインの姿を隠すようにオイゲン達の間に立った。

二航戦の『重桜所属 空母 蒼龍』と『重桜所属 空母 飛竜』が出迎えにやって来た。

 

「お帰りなさいませ、指揮官」

 

「お帰り、指揮官!」

 

「あ、えっと、蒼龍に飛竜、だね。僕は・・・・」

 

「・・・・翔鶴から連絡で聞いております。記憶を失っているのですよね?」

 

先日からすでに報告を受けていたようで少し表情を曇らせる重桜艦船達。カインは内心、記憶が無くて申し訳ない気持ちで話し出す。

 

「ああ。半年以上前から記憶がない。・・・・もしも僕が、“海守トモユキであった”としても、今の僕はアズールレーン指揮官である『カイン・オーシャン』だ。早速だが、重桜旗艦・長門殿との会談をお願いしたい」

 

「分かっています。ですが、仲間の出迎えの後で宜しいでしょうか?」

 

「ああ。構わない・・・・ん?」

 

急に視線を感じると、先ほどの三人の内、雪風と夕立がカインを見上げていた。

 

「な、何かな?」

 

「・・・・指揮官、雪風様の頭を撫でるのだ!」

 

「俺のお腹も撫でろ! 指揮官じゃないのか判断してやるっ!」

 

「え、ええっ!?」

 

カインが雪風と夕立に迫られている内に、五航戦の翔鶴と瑞鶴を蒼龍と飛龍が出迎えた。

 

「ただいま戻りました」

 

「はいお疲れ様。無事で何よりよ」

 

「もう聞いてくださいよ蒼龍さん。一航戦の先輩方ったら本当に人使いが荒いんですよ」

 

「・・・・・・・・」

 

「どうしたんだい瑞鶴? 浮かない顔をしてるけど」

 

翔鶴が蒼龍に一航戦に対する長くなりそうな愚痴を話し出すと、沈んだ表情をした瑞鶴に飛龍が問いかける。

 

「・・・・ううん大丈夫。何でもないよ飛龍さん」

 

瑞鶴の脳裏に浮かんでいるのは、グレイゴースト<エンタープライズ>と決着をつけられなかった事だ。

 

「・・・・グレイゴースト。次こそは必ず!」

 

それを分かっている翔鶴が心配そうな表情を浮かべる。

 

「(ふむ。どうやら悩める艦船がここにもう1人、か・・・・)」

 

カインも雪風の頭を撫で、夕立のお腹を撫でながら、瑞鶴の方にチラッと視線を向ける。

因みに雪風も夕立も気持ち良さそうな笑みを浮かべながら、カインの手のひらの感触や撫で方で、間違いなくカインはトモユキ指揮官であると確信していた。

それを見て赤城が冷酷な視線を二人に向け、加賀はそんな姉を宥め、時雨と加古と古鷹は赤城に震え、綾波は若干羨ましそうに雪風と夕立を見つめ、ニーミは顔を赤くし、オイゲンは愉快そうにしていた。

 

 

 

ーエンタープライズsideー

 

その頃、エンタープライズは少々参っていた。

朝になればベルファストが起こしに来て、さらに食堂で食事をするようにされ、生活習慣を改善されようとされていた。

文句を言いたくともーーーー。

 

「二度にも渡る『待機命令違反』を行ったエンタープライズ様に拒否権はありません。これはご主人様であるカイン・オーシャン指揮官様からの罰則とお考えください」

 

そう言われればグウの音もでなかった。それ故に『礼節』などを学ばされる事になった。

二人は表へ出ていくと。

 

「・・・・東煌の少女たちの様子はどうだ?姉の方は深手を負っていたが…」

 

「それでしたら・・・・」

 

ベルファストは指し示した浜辺には屋台があった。

そこで、平海と寧海がパンダまんの店を開いており、繁盛しているようだった。

 

「うぅ・・・・なんでハムマンが手伝わされてるのよ!」

 

後、何故かハムマンが手伝わされていた。

 

「加油、頑張って」

 

「平海! 売り物を食べるな!」

 

「商売を始めてる・・・・」

 

「大変逞しいお嬢様方でございます」

 

そこへ平海がパンダまんを持って、ベルファストとエンタープライズに渡しに来た。

 

「はいどうぞ」

 

「いや、私は・・・・」

 

「お代は気にしないで、って姉ちゃんが言ってた」

 

平海がそう言うと、屋台に居た寧海は見ると、寧海も頷いていた。

 

「平海達の事を助けてくれたお礼」

 

「・・・・・・・・」

 

そしてエンタープライズはそのままパンダまんを食べている。

その表情にベルファストは少し微笑んでいた。

 

「ベルファストさん」

 

「はい」

 

「指揮官はいつ戻ってくれるの? 平海達がここで商売するのも、ここにいても良いって許可もしてくれた事にお礼の肉マンをプレゼントしたかったのに・・・・」

 

「ご主人様は出張に出掛けておりまして。しかし必ず戻ってきてくださいますから、ご安心くださいませ」

 

「うん・・・・!」

 

平海はベルファストの言葉に頷くと、商売に戻っていった。

 

 

 

 

ーユニコーンsideー

 

そしてユニコーンも海辺でビーチチェアに座りながら、パンダまんをじっと見ている。普段は食べ慣れていないからか、不思議と思っていた。

だがジャベリンがパクっと食べているのを見て、ユニコーンもそのパンダまんをパクっと食べた。

 

「美味しい・・・・」

 

「うん、美味しいね!」

 

そして口元にパンダまんの餡が少し付いてしまったため、横に居たイラストリアスが口元を拭いてあげた。

その光景をジャベリンは微笑ましそうに見ていると、ラフィーが唐突に話し始める。

 

「次は綾波や指揮官とも一緒に食べたい・・・・」

 

「えっ?」

 

「嫌?」

 

「ううん! そんなことないよ!・・・・そうだね。綾波ちゃんも一緒だといいね・・・・」

 

「???」

 

ジャベリンが空を眺めながら呟き、ユニコーンは首を傾げた。

 

 

ーエンタープライズsideー

 

場所は基地内の会議室。

東煌の二人が商売を切り上げて、これまでの経緯を話していた。

指揮官が不在の為、指揮官代理兼ロイヤル代表としてウェールズとベルファストが。

ユニオン代表として、エンタープライズとホーネット、ヴェスタルとクリーブランドが同席していた。

寧海が経緯を説明する。

 

「私達東煌は、『セイレーン』に怪しい動きが有るのを掴んだの。『大規模交戦』の余丁かも知れない。それを探るため、私達は偵察に出たんだけど。・・・・そこで、『セイレーン』の艦隊と『セイレーンの上位個体』。そして、“青い仮面をつけた不気味な巨人”がいたの」

 

『上位個体』。

それは、謎の艦隊『セイレーン』を従える、女性のような姿をした存在だ。

 

「『セイレーンの上位個体』が動いてるって事? しかも、“青い仮面をつけた不気味な巨人”って私達も遭遇した、確か何だっけ?」

 

「『ウルトラマントレギア』、でしたっけ?」

 

「ああ。だが、ウルトラマンの名を持っているが、これまで現れた2体のウルトラマンとは、敵対関係にあるようだがな」

 

ウェールズはテーブルに置かれたカメラ付きインカムで撮られたタイガとタイタス。

そしてこれまで現れた怪獣、ヘルベロス。ベムラー。ギャラクトロMK2。そしてトレギアの写真を見据えた。

寧海は話を続ける。

 

「その巨人(トレギア)はすぐに消えたんだけど、私達は『セイレーン』の艦隊から逃げながら戦い、その最中に、空から落ちてきた宝石が私達に近づいてきて、その宝石から『賢者様』の声が聞こえて、その声の指示に従いながら何とか戦えたの」

 

「ふぅ~ん。その『賢者様』が、新しく現れたウルトラマンって訳か。結構イカした姿だね。もぐっ・・・・ペロッ」

 

「お行儀悪いですよ、ホーネットちゃん」

 

タイタスの写真を手に取り、パンダまんを食べ終えたホーネットが写真を持ってない手の指を少し舐めると、ヴェスタルが注意し、ウェールズが口を開く。

 

「東煌はアズールレーンに属する陣営の1つだ。我々の為に、この情報を掴んでくれたのだ」

 

「アズールレーンとレッドアクシズが戦ってる隙を突いて、仕掛けるつもりかも・・・・。それに、ウルトラマントレギアだっけ? アイツ、とんでもなくヤバい奴よ。見た瞬間萎縮しちゃったモノ・・・・」

 

「もぐもぐ・・・・。アイツきっと、『賢者様』やタイガって言う『勇者』の敵だと思う」

 

寧海と平海の言葉に、一同は渋面を作る。

『セイレーン』だけでなく、『怪獣』と『ウルトラマントレギア』。さらなる脅威が現れたのだ。

 

「これってさ、指揮官もいないといけない話だと思うけど・・・・」

 

クリーブランドの言葉に、他のメンバーも頷くが、ウェールズが声を発する。

 

「指揮官も、事態は深刻さは理解しておられる。だからこそ、アズールレーンとレッドアクシズなどと人類同士で内輪揉めをしている場合ではないと、重桜の説得の為に向かったのだ」

 

「でもさ、指揮官が無事に戻ってくるの? 私達艦船<KAN-SEN>を1人も連れていかないで・・・・」

 

「いや、我々も一緒に行けば重桜側にも警戒されるとお考えになったのだ。それに、重桜は指揮官に対して手荒な真似はしないだろう・・・・」

 

ウェールズがそう言うと、ベルファストは少し目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

そして会議を終えたエンタープライズは、ベルファストと共に廊下を歩きながら、先ほどの会議の懸念事項について話していた。

 

「『セイレーンの活動』と『重桜の新技術』、量産型のセイレーンを操るあの力・・・・。そして突如現れた怪獣とウルトラマントレギア。無関係とは思えない。少し調べる必要があるな」

 

「それは我々ロイヤルが得意とするところでございます」

 

「なに?」

 

それを聞いてエンタープライズは首を傾げるが、ベルファストは続けて言葉を紡ぐ。

 

「既に私ども『メイド隊』が新しい任務に就いております」

 

「メイドが? 任務だって?」

 

「はい。ご主人様が重桜に現状の重大さを伝えるため、相手に警戒されないように単身で向かいましたが、事前に策を打っております」

 

「策・・・・?」

 

「ふふっ・・・・『クローク&ダガー』、『外套と短剣』でございます」

 

エンタープライズに、ベルファストが優雅にお辞儀をした。

 

 

ー???sideー

 

「扶桑姉様! 殿様が帰って来ましたよ! 早く早く!」

 

「山城。そんなに慌てなくても大丈夫よ」

 

『重桜所属 戦艦 山城』が姉の『重桜所属 戦艦 扶桑』の手を引っ張りながら、カインのいる港に向かい、二人のお面を着けた巫女の横を通りすぎた。

二人の巫女の内、長髪の巫女が遠くの港で『重桜所属 工作艦 不知火』に身体検査をされているカインを眺める。

 

「指揮官、やっぱり来ちゃったわよ」

 

「そのようですね。護衛と諜報活動までやらせるとは、相変わらず仕事を増やす害虫ですね」

 

もう1人の髪をアップさせている巫女が、冷徹な目線でカインを睨んでいた。

 

「あ、相変わらず指揮官に毒舌ね、『シェフィールド』・・・・」

 

「事実を言ったままです。ま、愚痴を言っても仕方ありません。ご主人様が仕事を終えたらすぐに脱出できるように逃走ルートを確保しますよ」

 

「まっかせない! 私ももう〈ノブレス・ドライブ〉が使えるんですから!」

 

「隠密行動中なのですから静かに、『エディンバラ』」

 

そう言って二人の巫女はコッソリと行動を開始した。

 

 

 

 

 

ーエンタープライズsideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「やぁ、エンタープライズさん♪」

 

「っ!・・・・誰だ?」

 

同じメイドの『サフォーク』がサボっていると、ウォースパイトから連絡を受けたベルファストが、少し離れている間に自分の艦に来ていたエンタープライズに、母港で見たことが無いモノクロのブラウスを着用し、不気味な笑みを浮かべた青年が現れた。

エンタープライズは警戒心を露にすると、青年は両手を上げて降参を示してきたが、その顔にはニヤけた笑みを浮かべたままである。

 

「そんなに警戒しないでくれないかな。僕の名は『霧崎』。君の味方だよ」

 

「っ!」

 

『霧崎』と名乗った青年はエンタープライズに向けて『何か』を投げ、エンタープライズはそれを思わず手で掴み取り、『それ』を見る。

それは、『宇宙怪獣ベムラー』の顔があしらわれたリングだった。

 

「これは・・・・?」

 

「それが、君に更なる力を与えてくれるよ」

 

「なに?」

 

「君、〈ノブレス・ドライブ〉だっけ? 自分にアレが使えないと言われて焦っているでしょう?」

 

「っ!」

 

図星を突かれ、エンタープライズは息を飲む。

 

「『気高さ』だとか、『戦う理由』だとか、訳の分からない感情論なんかに捕らわれる必要なんて無いよ。だって、『力』って言うのは、簡単に手に入るモノなんだから・・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

霧崎にそう言われ、改めて『ベムラーリング』を見つめたエンタープライズは、そのリングから立ち上る禍々しい力を感じ、再び霧崎を見ると、霧崎の姿は忽然と消えていた。

 

「・・・・・・・・これを使えば」

 

エンタープライズは、少し不気味に思いながら、『ベムラーリング』を懐に隠した。

 

 

 

ー霧崎sideー

 

先ほどまでアズールレーン母港にいた霧崎はいつの間にか、“重桜母港に来ていた”。

 

「フフフ・・・・」

 

「随分機嫌が良いのね?」

 

ほくそ笑みを浮かべる霧崎の隣に、蛸のような触手をうねらせた色素の無い白髪と生気が全くない青白い肌の女性が現れた。

 

「なに、面白いのがいたからね。少し手助けをしていたんだよ♪」

 

「あら? その子って面白いの、『トレギア』?」

 

「その内わかるよ、『オブザーバー』」

 

霧崎の影がウルトラマントレギアとなり、『セイレーン オブザーバー』と不気味な微笑みを浮かべていた。




トレギアに目をつけられたエンタープライズの運命や如何に?
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