アズールレーンT   作:BREAKERZ

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【脱出】裏切りの一航戦

ー明石sideー

 

明石は驚きに固まったがそれも仕方ない。何故なら、一航戦にしてこの重桜の宰相でもある艦船・赤城が、“人類の敵である『セイレーン』と内通していたからだ”。

 

「にゃにゃ、これは一体どういう事なんだにゃ!?」

 

 

ー赤城sideー

 

『セイレーン』の上位個体・『オブザーバー』が両の手のひらから『黒いメンタルキューブ』が現れ、ソレは赤城に向かって飛んでいった。

 

『『オロチ計画』がもたらすのは、ただの艦ではない。言うなればこれは、あらゆる想いを乗せて海を渡る『方舟』よ』

 

身体を撫で回したオブザーバーは赤城に近づくと、その頬をカプッと甘噛みすると耳元に顔を近づけソッと呟くと、赤城を視線を鋭くする。

 

『“もうすぐ逢えるわよ”』

 

「失せなさい。誰かに見つかると面倒よ」

 

『あら、連れないわね。貴女の大好きで大切で大事な指揮官に、この事を知られるのがイヤなの?』

 

オブザーバーがそう言うと、赤城が目に殺気を滲ませる。

 

「指揮官様に近づくなら、貴女とも関係もこれまでになるわ。それとも、ここまでやって来た貴女の苦労も徒労に終わって良いと?」

 

『ウフっ、こわいこわい♪』

 

 

 

 

 

ー明石sideー

 

「(にゃにゃ! えらいこっちゃにゃ、とんでもにゃい物を見てしまったにゃ! どうするにゃ、赤城がこんな事をやってるのを加賀が知らにゃい訳にゃいから、多分加賀も共犯に違いないにゃ。・・・・そうにゃ! 指揮官にゃ! 指揮官が止めれば赤城と加賀も止まる筈にゃ)」

 

明石はこっそり逃げようとしたその時。

 

「貴様」

 

「にゃにゃにゃ!!」

 

背後の涼やかな声に顔を青くして振り向くと予想通り、加賀が冷酷な視線で明石を見下ろしていた。

 

「見たな?」

 

「にゃにゃ、ここどこにゃ? 明石、道に迷っただけだにゃ(ニュルリ)にゃにゃ!!」

 

惚けようとした明石の身体に蛸の足が絡み付き宙に浮くと、目の前にオブザーバーがいた。

 

『あら見られちゃったわね。仕方ないわ』

 

オブザーバーは異形な艤装の砲身を明石に向ける。

 

『好奇心は猫をも殺す。なんてね♪』

 

「にゃーー! 指揮官助けてにゃーーーー!」

 

「待ちなさい」

 

赤城が待ったをかけた。

 

「トモユキ指揮官様がいるこの重桜の中で、勝手な真似は許さないわよ」

 

『そんな言われてもね。放っておくわけにも行かないでしょ?』

 

「・・・・・・・・」

 

赤城がオブザーバーと睨み合っていると。

 

ドンッ!

 

『「「「っ!」」」』

 

銃声が響くと、明石を絡み取っていたオブザーバーの触手がほどけ、明石は下に落ちていき、銃声が聞こえた方に目を向けると。

 

「「っ!!?」」

 

ソコに立っていたのは、仮面を着け、両手に拳銃を構えた巫女を後ろに控えさせた、トモユキ指揮官こと、カイン・オーシャン指揮官だった。

 

「し、指揮官様・・・・!」

 

「な、なぜ、ここに・・・・!?」

 

「赤城、加賀。これは、どういう事だ!?」

 

驚愕する一航戦の姉妹を、カインは険しい視線で睨んだ。

 

 

 

ーカインsideー

 

隠れて調査していたカイン(&タイガとタイタス)とシェフィールドとエディンバラは、洞窟に入っていった明石を追って、この現場に来た。

 

≪アイツ確か、資料で見た『セイレーン』だ!≫

 

≪あれがこの星の脅威かっ!?≫

 

「ソコにいるのは『セイレーン』の上位個体、識別名称『オブザーバー』。赤城、加賀、なんで重桜母港にソイツがいるんだ!?」

 

「し、指揮官様、これは・・・・!」

 

「ご主人様、下がってください!」

 

赤城がカインに近づこうとするが、2丁拳銃を構えたシェフィールドが巫女服からロイヤルメイド服に早着替えして、カインを守るように赤城達と交戦を開始した。

 

「そのふざけた格好はロイヤルか!」

 

シェフィールドはそのまま真っ直ぐと赤城に向かい、蹴りを入れた。

しかし赤城は一歩後ろに下がり綺麗に避けた。

 

「っっ!!?////////」

 

が、何故か赤面し動きが止まり、その隙にシェフィールドは黒いメンタルキューブを蹴り飛ばし、キューブは下の方に落ちていった。

 

「エディンバラ!」

 

「おっおっお・・・・取りました!」

 

キューブが落ちた先には予め隠れていたエディンバラがキューブを見事に取れ・・・・ずに顔面で受け止めた。

『オブザーバー』が砲身をエディンバラに向ける。

 

「っ! シェフィ、撤退だっ!」

 

「畏まりました!」

 

「明石! 君も来い!」

 

「にゃにゃ! 指揮官!」

 

シェフィールドは煙幕を巻き、煙が辺りを包んだ。

カインは明石のいる方に下りると、明石を背負って逃げようとするがーーーー。

 

「指揮官様! 行かないで! 貴方はずっとずっと私といて下さい! もう離れないで・・・・! 重桜の! 私の側にいて下さい! 指揮官様ーーーー!!」

 

「指揮官! 待て、待ってくれ!!」

 

「うぐっ!」

 

赤城と加賀の声に、一瞬カインの脳裏にノイズが走ったが、カインは煙に紛れながら赤城と加賀に向けて声を発する。

 

「赤城! 加賀! 僕は、アズールレーン指揮官として、『オロチ計画』を否定する! お前達を止める!!」

 

カインはそう言って煙に紛れ姿を消した。

 

 

 

 

ー加賀sideー

 

「くっ! 小癪なっ!!」

 

加賀が煙を払うが、ソコにはカイン達の姿はなかった。

 

「指揮官・・・・!」

 

「・・・・ふふふ・・・・指揮官様・・・・いけませんわ・・・・私から離れては・・・・指揮官様がまた何処かに行ってしまう・・・・それなら・・・・足を切り落としてしまえば・・・・もう何処にも行かないのですよね?」

 

『まぁ大変! 失態ね赤城。指揮官にも否定されちゃって』

 

「・・・・っ」

 

「姉様・・・・」

 

顔を俯かせる赤城を、加賀は悲しそうに見つめた。

 

 

 

ー高雄sideー

 

突如警報が鳴り響いたのを、瑞鶴と高雄が訝しげに眉をひそめる。

 

「何があったの!?」

 

「っ!」

 

高雄はすぐに走り出した。

 

 

 

ー綾波sideー

 

「何なのだ!? 何なのだ!?」

 

「指揮官・・・・!!」

 

戸惑う雪風達を置いて、綾波は駆け出す。

 

 

ー長門sideー

 

「・・・・」

 

長門は警報に眉をひそめる。

 

 

 

ーカインsideー

 

警報が鳴り響き、カイン達は古鷹と加古の前を通りすぎた。

 

「ちょっとゴメンよお二人さん!」

 

「し、指揮官!?」

 

カイン達に戸惑う加古と古鷹を置いて、四人は母港まで走る。

 

「ご主人様。なぜその者を連れて来たのですか?」

 

「この子は赤城達がセイレーンと癒着している事を知る証人だ。このまま母港に連れていく。明石も良いな?」

 

「勿論にゃ! 明石あのままじゃ消されるにゃ! 口封じにゃ! 死人に口にゃしにゃ!」

 

「それで明石。何か脱出する艦とかあるか?」

 

「あるにゃ! 今度指揮官に売り込もうと思って用意していた物が明石の店にあるにゃ!」

 

「良し。シェフィ、エディンバラ。時間を稼いでくれ」

 

「はぁ、畏まりました」

 

「ふぇ~! 何か大変な役を押し付けられましたぁ!」

 

シェフィールドとエディンバラは海に出て艤装を展開させ、カインは明石と共に『明石の店』に向かった。

 

 

ーシェフィールドsideー

 

シェフィールド達が海に出ると、海に設つられた鳥居の上に立っている高雄が、後ろから綾波が、艤装を展開してやって来た。

 

「逃がさん!」

 

「指揮官を、返して貰うです!」

 

「ここは私が引き受けます! ご主人様の元にお行きかさいエディンバラ!」

 

「でもシェフィ!」

 

シェフィールドは2丁拳銃を機関銃の発砲する。が、高雄と綾波はその弾幕を回避する。

高雄の刀と綾波の大剣が振り下ろされるが、シェフィールドも何とか回避する。

 

「流石に、2体1は分が悪いですね」

 

「拙者達は鍛練を積んできたのだ!」

 

「綾波達の力、味わうがいい、です!」

 

武器を構えて隣り合う2人を見て、シェフィールドも目をソッと閉じる。

そしてーーーー。

 

「致し方ありません。少々本気で参りましょう・・・・〈ノブレス・ドライブ〉!!」

 

「「っ!」」

 

シェフィールドがカッと目を開くと、全身を金色のオーラを纏った姿、〈ノブレス・ドライブ〉へと変わった。

 

「あ、あれは・・・・!」

 

「まさか、翔鶴の報告にあった物か?」

 

驚愕する二人の間に、シェフィールドは一瞬で現れ、左右の二人に銃口を向けて放つ。

 

「速っうぁあああああっ!!」

 

「っ! 高雄さん!」

 

ベルファストで見ていたので、一瞬早く大剣で防御した綾波だが、完全に初見の高雄は遅れ、弾丸をマトモに浴びてしまった。

 

「食らうがいい、です!」

 

大剣を振って攻撃するが、シェフィールドは華麗な動きで回避し距離を取ると、綾波がありったけの魚雷を放った。

 

「無駄です」

 

が、シェフィールドは冷静に2丁拳銃で魚雷を全て撃ち破ると、大きな水飛沫が跳ね上がった。

 

「貰ったです!」

 

水飛沫を目眩ましにした綾波が、シェフィールドに接近して大剣で振り下ろすーーーー。

 

「甘いですね」

 

が、シェフィールドは片手の拳銃で大剣を防ぎ、その動きに合わせて流れるように受け流し、綾波にもう片方の拳銃が火を吹いた。

 

「あぁっ!!」

 

ただの拳銃とは思えないほどの重い攻撃と威力に、綾波は高雄の方にまで吹き飛んだ。

 

「あ、綾波!」

 

「だ、大丈夫、です、でも・・・・!」

 

「ああ、まさか、これほど、とは・・・・!」

 

高雄と綾波は、痛む身体に鞭を打って、悠然と構えるシェフィールドに向けて剣を構えた。

 

「お生憎ですが。今の私と戦いたければ艦隊で向かってくる事をお薦めします」

 

余裕の態度のシェフィールドは2丁拳銃を構える。

 

 

 

 

 

ーカインsideー

 

カインと明石は店に着き、近くの港に行くと『小型潜水艦』が置かれていた。

 

「これがそれか?」

 

「そうにゃ! 某イルカの名前の変態刑事が乗る潜水艦をイメージして、仕事から逃げる指揮官に売り込む為に、明石が夜も寝にゃいで昼寝して造った代物にゃ! こう見えて大人三人分は乗れるにゃ!」

 

≪こんな物を造り上げるとは・・・・≫

 

≪明石って、商売の為なら何でもやれるな・・・・≫

 

「まぁ、とりあえず乗り込んで逃げるか」

 

「指揮官。お値段の方にゃけど?」

 

「そんな事言ってる場合かオイ? なんなら君だけ置き去りにして赤城達に三味線の皮にされるかい?」

 

「て、テスト運転と言う事でどうぞにゃ・・・・」

 

≪トモユキ、怖ぇ・・・・≫

 

≪鬼の様相だな・・・・≫

 

明石をジッと睨んでそう言うカインに、明石を目を反らしながらそう言い、タイガとタイタスも少し引いた。

潜水艦に乗り込み、明石が起動させると、レーダーに目を向けた。

 

「にゃにゃ?」

 

「どうした?」

 

「レーダーに反応にゃ! にゃにかトンでもにゃく大きにゃものが母港に接近中にゃ!」

 

「っ! 明石! すぐに発進だ!」

 

 

 

ーエディンバラsideー

 

「うわ~、シェフィったら容赦ないわね~。ん?」

 

少し離れた位置にいるエディンバラは、高雄と綾波を圧倒するシェフィールドに苦笑いを浮かべた。

が、シェフィールド達が交戦している場所に向かって、“緑色の巨大な影”が迫っている事に気づいた。

 

「シェフィ! 2時の方角に不審な影が!!」

 

「「「っ!」」」

 

エディンバラの声に、シェフィールドだけでなく、綾波と高雄もその方向を見ると、突然海面が盛り上がり、その中から巨大な生物が現れた。

 

毒々しい緑色の鱗に全身を覆われ、ヘビとライオンが混ざったような異形、眼は皿のように見開かれ焦点が定まっていないような不気味な面相の怪獣。

 

『ギィャアアアアアアアア!!』

 

『毒炎怪獣 セグメゲル』が雄叫びを上げると、口から毒々しい紫色の火炎『セゲルフレイム』を放った。

 

「っ、くっ!」

 

シェフィールド『セゲルフレイム』が放たれる直前、高速移動で高雄と綾波を抱えて回避した。

『セゲルフレイム』は海面に当たると高い水飛沫をあげ、高い波を起こした。その水飛沫がシェフィールドの艤装に僅かに当たると、シェフィールドは目を細める。

 

「シェフィ! 無事?!」

 

「何とかですが。しかしどうやら、あの怪獣は『毒』を有しているようですね・・・・」

 

エディンバラが高雄達を下ろしたシェフィールドに近づくと、シェフィールドの艤装の一部が腐食していた。

 

「うわぁっ! かなり強い毒みたいですねぇ!」

 

青ざめるエディンバラはセグメゲルを見上げる。

 

「あ、あれが怪獣か・・・・!」

 

「何故、綾波達を助けたです?」

 

高雄と綾波は、自分を助けたシェフィールドの行動の意図を問うた。

 

「このような異常事態に、敵だの何だの言っている場合ではありません。それに、我らがご主人様も、貴女方を助けろと言うでしょうしね。さてエディンバラ。取り敢えず、あの怪獣をどうにかしますよ」

 

「わ、わかってる! 〈ノブレス・ドライブ〉!!」

 

シェフィールドに答え、エディンバラも〈ノブレス・ドライブ〉へとなった。

 

「行きますよ」

 

「ええ」

 

シェフィールドとエディンバラは、残像を残すほどの高速移動で、セグメゲルに接近した。

 

 

ーカインsideー

 

「ヤバいにゃ! ヤバいにゃ! まさかあんなのが出てくるにゃんて!」

 

と、セグメゲルが現れた直後。

初めて見る怪獣に明石は慌てていたが、セグメゲルが『セゲルフレイム』を放った時の高波にまだ潜航していない潜水艦の船体が大きく揺らぎーーーー。

 

「にゃっ!?(ガンっ!!)にぎゃん!!?」

 

「明石?!」

 

大きく揺れた際に明石の小柄な身体が大きく跳ねて、天井に強かに頭をぶつけた。

 

「~~~にゃんかお星さまが見えるにゃ・・・・ガクッ」

 

目を回した明石はそのまま気絶した。

 

「・・・・大丈夫みたいだな。それに、丁度良い。この重桜から奴を追い出す! 頼むぞタイタス!」

 

≪承知した!≫

 

カインはタイガスパークのレバーを動かし起動させた。

 

[カモン!]

 

「力の賢者! タイタス!!」

 

タイタスキーホルダーを左手で掴んで、タイガスパークのついてる右手に持ち替えると、黄色いエネルギーが出てきて、スパークの中心のランプに吸い込まれ、ランプが黄色く光った。

 

『ヌゥゥゥンッ!! フンッ!』

 

「バディーゴー!!」

 

叫び、腕を思いっきり突き上げると、黄色い光が眩く輝き、カインの身体を包み込む。

 

[ウルトラマンタイタス!]

 

七色の光の奔流がマーブルに変化し、その中からウルトラマンタイタスが両腕を振り上げて飛び出していった。

 

「ヌンッ!」

 

ザパァァァァァン!

 

ウルトラマンタイタスがシェフィールドとエディンバラと交戦していたセグメゲルに立ちはだかる。

 

 

 

 

ー長門sideー

 

「うわっ! 何かムキムキな巨人が現れたのだ!」

 

「綾波が言っていたウルトラマン!?」

 

「スッゲェ筋肉!」

 

長門は陸奥と江風を連れて母港の港に着くと、雪風と時雨と夕立の他に、多くのKAN-SEN達が来ており、少し先の海域に現れた怪獣と巨人を見ていた。

 

「あれが指揮官の言っていた、『光の巨人ウルトラマン』と『異常進化生命体・怪獣』か・・・・」

 

「長門様」

 

「瑞鶴に蒼龍に飛龍か、状況はどうなっておる?」

 

長門に話しかけたのは、瑞鶴と二航船の蒼龍と飛龍だった。

 

「現在、高雄と綾波が出撃しております。私達も出撃しようと思いますが、あの怪獣が放つ毒が艤装を腐食させる事を高雄から通信で報告され、海面にその毒が広がっており、下手に動けない状況です」

 

「それだけじゃ、ないわ・・・・」

 

「愛宕?」

 

蒼龍からの報告を聞いていた長門に、翔鶴に肩を貸して貰いながら愛宕がヨロヨロと話しかけてきた。

 

「どうやら、母港に侵入者がいたらしくて、指揮官が、連れて行かれたわ・・・・」

 

「なんじゃと!?」

 

「それに、加古と古鷹からも、明石が指揮官達と一緒にいるらしいようです」

 

「明石までも・・・・」

 

愛宕と翔鶴からの報せに、長門だけでなく、他の重桜KAN-SEN達も動揺したような声が漏れる。

 

「指揮官・・・・」

 

長門は、タイタスとセグメゲルの戦いを見つめながら、カインの身を案じていた。

 

 

ー赤城sideー

 

そして赤城と加賀は、重桜基地で母港を一望できる展望台で怪獣と新たなウルトラマン、タイタスの戦いを一瞥してから、加賀が式神を放ち、カインの捜索をさせていた。

 

 

 

ー綾波sideー

 

「綾波、あれが報告にあったウルトラマンと言う異星人なのか?」

 

「いえ、綾波が知っているウルトラマンは2本の角を付けた銀色の巨人なのです。あんなにムキムキなウルトラマンは知らないのです」

 

初めてタイタスを確認した綾波は戸惑ったような声を漏らす。

 

「あれが、ベルファスト達が遭遇した新たなウルトラマンですか・・・・」

 

「な、なんて逞しいんでしょう!」

 

事前に定時連絡で存在を知っていたシェフィールド達も、タイタスを見上げて呟き、〈ノブレス・ドライブ〉を解除した。

 

 

 

ータイタスsideー

 

『フン! この美しい重桜母港に! 汚い毒を撒き散らすなど! 私のウルトラマッスルが許さん! ヌゥン!』

 

ボディビルポーズを取ったタイタスは、セグメゲルに自慢のパンチを繰り出した。

 

『ギャアアアッ!』

 

セグメゲルはタイタスのパンチの威力に後退する。

 

『マッスル! マッスル! マッスル! マッスル! ハァア・・・・! マッスルっ!!』

 

『ギィャアアアアア!』

 

さらに接近してジャブの応酬を腹部に叩き込み、最後はアッパーカットでセグメゲルをノックアウトする。

 

『「流石タイタスだ!」』

 

『(トモユキ! この間手に入れた怪獣のリングで、一気に終わらせちまおうぜ!)』

 

『「・・・・よし」』

 

怪獣リングに懐疑的なカインは一瞬躊躇うが、意を決して『ギャラクトロンMk2リング』をタイガスパークに翳した。

がーーーー。

 

『「っ、反応しない?」』

 

『(何だって?)』

 

『っ! カイン指揮官!』

 

『「っ!」』

 

リングに反応しない事に訝しんだその刹那の隙、起き上がったセグメゲルは起き上がるとーーーー。

 

『ギボォォォォォウ!!』

 

『ムゥッ!!』

 

何と、セグメゲルは毒々しい緑色の血を吐き出し、タイタスの右腕に浴びせた。

 

ーーーージュゥゥゥゥゥ!!

 

『ヌゥアアッ!!』

 

『「ぐぅああっ!!」』

 

その血を浴びた腕から焼けるような激痛がタイタスとタイタスと一体化しているカインを襲った。

 

『(タイタス! トモユキ!)』

 

『「こ、これは・・・・!」』

 

『この怪獣、血液まで毒を有しているのかっ!?』

 

『ギィャアアア!』

 

セグメゲルはタイタスの腐食し始めた腕に、その凶暴な歯で噛みついてきた。

 

ガブリッ!!

 

『ヌゥウウウウ!!』

 

 

 

ー綾波sideー

 

綾波達も、セグメゲルが吐いた血が海面に入り、そこから浮き上がる煙に口元を塞いで後退した。

 

「なんですかこのイヤな匂い!」

 

「吸ってはいけませんエディンバラ! この煙にも毒が含まれているようです!」

 

「高雄さん、大丈夫なのです?」

 

「あぁ、すまないな綾波。しかし、あれが怪獣か、『セイレーン』だけでなくあのような怪物がいようとは・・・・」

 

高雄は苦々しい視線でセグメゲルを見上げる。

 

「アズールレーンだのレッドアクシズだのと、我々KAN-SENも争っている場合ではない事を理解できましたか?」

 

近くにいたシェフィールドが、ハンカチを口にあてながら話しかけてきた。

 

「今私達の星には『セイレーン』だけではありません。怪獣に異星人、そしてトレギアと呼ばれる得体の知れない巨人もいるのです。各陣営がいがみ合っていては、この星が滅んでしまいますよ」

 

「「・・・・・・・・」」

 

シェフィールドの言葉に、高雄と綾波は顔を俯かせた。

 

 

 

ーカインsideー

 

『「ぐぅっ! タイタス! 噛みついている奴には、側面からの攻撃だっ!!」』

 

『了解した! ヌゥオオオオオ!!』

 

腐食と噛みつきの痛みに耐えながら、タイタスはセグメゲルの顎関節に拳を何発も叩き込んだ。

 

『ギアアっ!!』

 

『今だ! 受けてみよ星の一閃、『アストロビーム』!!』

 

『ギィャアアアアアア!!』

 

顎関節への攻撃に口を離したセグメゲルに向けて、額の星からビームを放ち浴びせると、セグメゲルは吹き飛ぶ。

 

『カイン指揮官! 『エックスレット』を!』

 

『「分かった!」』

 

カインは左腕に、『X字のブレスレット』を取り出すと、タイガスパークに読み込ませる。

 

[エックスレット、コネクトオン]

 

『エックスレット』から緑色の光がタイガスパークに吸い込まれた。

 

『フン! 『「エレクトロバスター」』!!』

 

ボディビルポーズをしたタイタスに、『電子の勇者・ウルトラマンエックス』の幻影と重なり、光球を生成して腕をXの字に組んで緑の稲妻エネルギーが付加した光球をカインと声を合わせて、クロスチョップで打ち出す。

 

『ギィャアアアアアアアア!!』

 

それを受けたセグメゲルは全身に雷が迸り爆散した。

爆散したセグメゲルから緑色の光が飛びだし、タイタスのカラータイマーに入りカインの手に収まると、セグメゲルのデザインの入った『怪獣リング』を手に入れた。

 

『「・・・・また、怪獣のリング、ゴホッ!」』

 

『ぐぅうっ!!』

 

タイタスは皮膚が焼けた腕を押さえ、毒を含んだ煙を吸ったカインは咳き込む。

 

『(トモユキ! 変身を解除するんだ!)』

 

『「いや、まだだタイガ。タイタス、君は休んでくれ・・・・」』

 

[カモン!]

 

『す、すまない・・・・!』

 

カインは苦しい身体を動かして、『タイガキーホルダー』を読み込んだ。

 

『「バディ、ゴー・・・・!」』

 

[ウルトラマンタイガ]

 

タイタスからタイガへとチェンジした。

 

 

ー綾波sideー

 

「『ウルトラマンタイガ』?!」

 

「あれが、報告にあったウルトラマンか?」

 

綾波達はタイタスからタイガに変わった事に驚いた。

 

 

ー長門sideー

 

「翔鶴。あれがウルトラマンタイガか?」

 

「ええそうです」

 

港にいるKAN-SEN達も初めて見るタイガを見据える。

 

 

 

ータイガsideー

 

『「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・!」』

 

『トモユキ! どうするんだ!?』

 

『「今、重桜の周りの海が、毒に汚染されている、このまま無視する訳には、いかないだろう?」』

 

『(・・・・記憶は無くしても、重桜の皆の事を思っているんだな) 分かった! やってやろうぜ!!』

 

タイガは飛び上がると、重桜の周りに広がりそうになっているセグメゲルの毒が入った海の上に立つと、その場で大回転した。

 

『ハァァァァァァァァァァァ・・・・!』

 

タイガが竜巻のように回転すると、毒に犯された海面が巻き上がり、ほとんどの毒を含んだ水が空に巻き上げられた。

 

『トモユキ! 『ブルレット』だ!』

 

『「了解!」』

 

カインは『青い一本角のリング』を取り出してタイガスパークに読み込ませた。

 

[ブルレット、コネクトオン]

 

青い光が迸り、タイガの身体が『兄弟ウルトラマンの弟・ウルトラマンブル』と重なった。

 

『フン! 汚れた水を浄化してやる! 『アクアブラスター』!!』

 

水を纏った光線を放つと、毒々しい緑色の水飛沫が、美しい青色に戻り降り注いだ。

 

『・・・・・・・・』

 

タイガは後ろを振り向くと、港にいる重桜KAN-SENの皆を見据える。

 

『トモユキ。必ず戻ろうぜ。赤城さんと加賀さんが間違った事をしてるんなら、俺達で止めようぜ!』

 

『「・・・・ああ。タイタス、力を貸してくれるか?」』

 

『(無論だ!)』

 

『・・・・シャァッ!!』

 

タイガは夕焼けに染まる重桜の海から、飛び立っていった。

 

 

 

ーカインsideー

 

「にゃ、にゃにゃ・・・・?」

 

カインは潜水艦に戻ると、丁度良いタイミングで、気絶していた明石が目を覚ました。

 

「明石、目を覚ましたか?」

 

「指揮官? にゃにが起きたにゃ? 怪獣はどうしたんだにゃ? って言うか、指揮官顔色が滅茶苦茶悪くなっているにゃ!」

 

「怪獣は、ウルトラマンって、巨人が倒した、それよりも早く、離脱するぞ。シェフィとエディンバラと合流してくれ・・・・」

 

「指揮官・・・・」

 

「急いでくれ・・・・!」

 

少量とは言え、セグメゲルの毒を含んだ煙を吸ってしまい、カインは倦怠感と目眩と息苦しさに耐えていた。

 

 

 

ーシェフィールドsideー

 

「行きますよエディンバラ」

 

「り、了解!」

 

セグメゲルが倒され、タイガが飛び去ってすぐに離脱しようとする二人。

高雄と綾波は追おうとしたが、先ほど〈ノブレス・ドライブ〉したシェフィールドとの戦闘のダメージが響き動けなかった。

シェフィールドとエディンバラの目の前に、小型の潜水艦が浮上し、ハッチが開くとソコからカイン・オーシャン指揮官、いや、海守トモユキ指揮官が顔を出した。

 

「シェフィ、エディンバラ!」

 

「「ご主人様!」」

 

「すぐにここから脱出して・・・・」

 

『指揮官!!!!』

 

「・・・・ぁ」

 

声がする方に振り返ると、重桜KAN-SEN達の大半が港からカインのいる地点に向かって全速力で向かってきていた。

 

「うわわわわ! 大軍で来ちゃいましたよぉ!」

 

「ご主人様、すぐに離脱を・・・・ご主人様?」

 

「・・・・・・・・」

 

カインは、自分に向かってくるKAN-SEN達の顔から、彼女達の想いが伝わってきた。

 

『(行かないで!)』

 

『(ここにいて!)』

 

『(もう、いなくならないで!!)』

 

彼女達の気持ちが伝わった。だが、赤城と加賀の隠し事と『セイレーン』の暗躍をアズールレーンの皆に伝えなければならないと考えたカインは、口元を動かして彼女達に自分の意思を伝えた。

 

「(ゴメンね)・・・・行こう。明石」

 

「・・・・了解にゃ。ポチッとにゃ」

 

明石が潜水艦に搭載されたミサイルを2発発射すると、上空で爆裂し1つは光を、1つは煙を巻き上げてKAN-SEN達の視界を遮り、進軍を停止させた。

そして光と煙が収まるとソコにはもう、指揮官達の姿は無かった。

 

 

 

 

 

ー赤城sideー

 

そしてその夜。

カイン達を追跡していた加賀の式神が戻ってきた。

 

「すみません姉様。指揮官を逃がしてしまいました」

 

「・・・・そう。仕方ないわね」

 

「『黒箱』が指揮官の、アズールレーンの手に渡ってしまいますが?」

 

「追撃隊を編成してちょうだい。指揮官様をお迎えに行かないと。でも、『黒箱』の方はむしろ好都合かも知れないわね・・・・」

 

「姉様?」

 

「アズールレーンが『黒箱』を育ててくれると言うなら、ご厚意に甘えようかしら?」

 

赤城の企みに満ちた声に、加賀は不安そうに見つめていた。

 

 

ー綾波sideー

 

「・・・・・・・・」

 

母港に戻ったKAN-SEN達の顔は沈んでいた。

トモユキ指揮官が帰って来てくれた。

また一緒にいられる。

また一緒に。

そんな淡い希望が、ようやく戻りそうだった光が、その手から離れていってしまった。

 

「・・・・・・・・指揮官」

 

綾波は夜の満月を見上げながら、『大好きな人』の名前を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーオブザーバーsideー

 

『あの怪獣を呼び寄せたの貴方の差し金ね?』

 

「♪~♪~♪~」

 

宙を浮くオブザーバーは、カインを追っていった赤城と加賀と入れ替わるように現れた霧崎<トレギア>が、空中に浮かばせた映像でセグメゲルとウルトラマン、そして〈ノブレス・ドライブ〉を目の当たりにし、カインが去っていく所まで見終わると、オブザーバーが鼻歌を歌う霧崎に話しかけた。

 

『どういうつもりかしら? “私達はある程度の干渉はしても、お互いの作戦行動には触れない事を決めた筈よ”』

 

オブザーバーは少し不機嫌そうにそう言うと、身体の触手を霧崎の身体に近づけるが、霧崎は一瞬で姿を消すと、宙に浮かぶオブザーバーの眼前に現れた。

 

「スパイスだよ」

 

『スパイス?』

 

オブザーバーが聞き返すと、霧崎はオブザーバーの手を取って、宙に浮きながらワルツを踊る。

 

「そう。どんなに美味しい料理でも、スパイスと言った刺激物は必要不可欠。重桜も怪獣のような“脅威”を目の当たりにすれば、より一層の力を求め、『オロチ計画』を進める。“それがどんな結果を生み出すのか知らずに”、ね」

 

「なるほど。だからわざわざ、破壊された『ヴィラン・ギルド』の『オークションステーション』から、『怪獣保管庫』を回収したのね?」

 

「その通り。これで誰も彼もが踊るよ。重桜も、ユニオンも、ロイヤルも、鉄血も、その他の陣営も、そしてタロウの息子とオマケ達も、み~んな僕達の手の平の上で踊り狂うのさ」

 

「ウフフフフ♪ それは確かに面白いわね。『トレギア』」

 

僅かな灯りに照らされた二人の影、オブザーバーの影は亀裂が走ったように笑みを浮かべ、霧崎の影はウルトラマントレギアの姿となっていた。

 

 

 

ーマグマ星人sideー

 

『んでマーキンド。何とかボロボロの宇宙船でここまで逃げてきたけどよ。こんな何にもない廃墟の街に来ちまってどうすんだ?』

 

『う~ん。ウルトラマンタイタスのせいで『オークションステーション』は全壊。『怪獣保管庫』も行方不明。こんなヘマをもしも上層部に知られたら・・・・』

 

『おいおい、俺達の命が危ねぇじゃねぇか!?』

 

『ですから、暫くこの廃墟で野宿しながら船を修理して、その後で『ステーション』が崩れる寸前に宝物庫から掻っ払ってきたこの『お宝の山』や『商品』を売りさばいて、ほとぼりが冷めるまで悠々自適に暮らそうじゃありませんか』

 

『たくっ、元々その『お宝』やらを集めるのに時間掛かっちまったから、脱出した直後に重力に捕まっちまってコントロールを失って、この星に不時着したんだけどな』

 

マグマ星人とマーキンド星人は、『オークションステーション』から脱出する際に回収しておいた『お宝』の中に、“『青い宝石』が光り輝いていた”。




次回の話で『三人目』が登場します。
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