アズールレーンT   作:BREAKERZ

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【苦悩】『答え』は霧の中に隠れて

ーウェールズsideー

 

ウェールズとクリーブランドがカイン達がいるであろう島に眺めていた。

 

「指揮官達と合流する前に、先手を取られちゃったな・・・・」

 

「まぁ良いだろう。この島を合流地点とした時から、予め指揮官がこのような事態を『プランB』として策を練っていたからな」

 

「でもどうやって助けるんだい? あの包囲を突破するのは大変だよ?」

 

「目的はあくまで指揮官達の救出だ。『プランB』の内容から行くと、“彼女”に動いてもらう所だが、ベルファストはどう考えているかな?」

 

主と姉が危機的状況にいる中、ロイヤルメイド隊のメイド長の心境を考えていた。

 

 

 

ーベルファストsideー

 

「・・・・・・・・」

 

「落ち着いているんだな?」

 

「はい?」

 

冷静に島を見据えるベルファストに、エンタープライズが話しかけた。

 

「心配じゃないのか? 島に指揮官と“同僚”がいるんだろう?」

 

「同じ『ご主人様』と『女王陛下』に仕える、メイドでございます」

 

「・・・・・・・・」

 

「?」

 

エンタープライズはベルファストの服装を見る。

 

「奇妙な話だ。『メイド』とか、『女王』とか、まるで『人間』だ・・・・」

 

「『人間の真似事』だと?」

 

「っ」

 

「そのように仰りたいのでしょう?」

 

「・・・・・・・・」

 

エンタープライズは肯定するように頷く。

 

「変わりませんよ」

 

「なに?」

 

「『人』も『艦』も違いはありません。『心』を持つ、『生命』でございます」

 

「・・・・いや、我々は『戦う為』に生まれてきた。違うか?」

 

「はい。強大な力を持つ我々には、『大いなる責務』があります」

 

「そうだ、『敵を倒す事』だ」

 

艦船エンタープライズの甲板に並んだ艦載機を見ながら答えるベルファストに、エンタープライズは肯定した。

が、ベルファストはーーーー。

 

「いえ、私達は、証明しないといけないのです」

 

「証明・・・・?」

 

「はい。『可能性』を、です」

 

「『可能性』、だと・・・・?」

 

「〈ノブレス・ドライブ〉も、その“可能性の一端”に過ぎないのです」

 

「なに・・・・!?」

 

エンタープライズの声に、ベルファストを優雅に微笑みながら続ける。

 

「どんな過酷な世界であっても、人は気高く生きる事が出きるのだと、迷える人々の模範となる為に、私達は優雅でなければならないのです」

 

「・・・・・・・・」

 

「主の優雅な人生を手助けする。それが、『メイド』の仕事でございます」

 

「・・・・ユニオンとは違う考え方なんだな」

 

「当然です。だからこそ、アズールレーンは手を取り合うのです。『ロイヤル』、『ユニオン』、さらに『東煌』、『アイリス』、『北方連合』ーーーー「『鉄血』、『重桜』もか?」・・・・」

 

「かつてはな・・・・」

 

以前は手を取り合っていた相手と砲口を向けあって戦おうとしている。その現象を見て、エンタープライズはまた手を取り合えるのかと聞いていた。

 

「取り合えます。その『鍵』となるのが、ご主人様、カイン・オーシャン指揮官様であると、私は確信しております」

 

そう言ったベルファストの『曇りのない眼差し』に、エンタープライズはそれ以上言えなくなった。

 

「エンタープライズ。ベルファスト」

 

そんな二人に話しかけてきたのは、ユニコーンを連れたイラストリアスだった。

 

「指揮官様が残していた、『プランB』の説明がありますからすぐに来て下さい。“彼女”もすでに来ていますから」

 

「はい」

 

「・・・・分かった」

 

 

 

 

 

 

ージャベリンsideー

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

ジャベリンとラフィーは、エンタープライズ達の近くで重桜の艦隊のある1隻の船を見ていた、『綾波』である。

 

「綾波ちゃん、来てるのかな?」

 

「かもしれない」

 

「次会ったら、私は・・・・」

 

ジャベリンはまだ、綾波と戦う事を躊躇っていた。

 

 

 

 

ー綾波sideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

綾波もまた、遠くいるアズールレーン艦隊の中にいるジャベリン達の事を考えていた。

 

「悩み事?」

 

「愛宕さん・・・・」

 

「悩みならお姉さんが聞いてあげるわよ♪」

 

愛宕は両手を広げて、抱き締めてあげると言わんばりに手を動かす。がーーーー。

 

「っっ! 綾波は、結構です!」

 

「・・・・そこまで警戒しなくても」

 

先ほどの高雄へのセクハラまがいな抱擁を見ているので警戒し、後ろに後退りしてしまった。その様子に愛宕は頭に大きな汗を流すが、すぐに気を取り直して。

 

「戦うのは気が進まない?」

 

「っ!・・・・戦闘は、嫌いじゃないですが」

 

「好きでもないでしょう?」

 

「・・・・綾波は重桜の皆が好きです。大事な仲間なのです。でも・・・・向こうも同じなのです」

 

愛宕は綾波の言葉にウンウンとただ静かに頷く。

 

綾波はアズールレーン母港の偵察に行った時のことを思い出していた。

 

「綾波達と同じように、仲間がいて、笑い合って・・・・」

 

基地にいた艦船<KAN-SEN>達は当たり前のように笑い合い、あの丘の上で指揮官をずっと行方不明だった指揮官を見つけて、ジャベリン達が自分に笑いかけて、握手を求めてきてーーーー。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

思い悩む綾波を、愛宕は優しく抱き締める。

 

「・・・・変な感じなのです・・・・」

 

「綾波ちゃんは、指揮官を取り戻したい?」

 

「勿論、なのです・・・・! でも、指揮官が何故、重桜を離れたのか分からない、です。赤城さんは、ロイヤルが指揮官を拐かした、と言っていたですが、去っていこうとした指揮官の顔・・・・」

 

綾波は重桜から去ろうとした指揮官の顔を思い出した。

あの時の指揮官の顔は、拐かされた顔ではないと、綾波は直感した。

 

「・・・・指揮官が重桜から離れたのには、きっと『理由』がある筈です」

 

「・・・・それじゃ、アズールレーンと戦える?」

 

「っ・・・・!」

 

綾波は愛宕の問いかけに顔を俯かせた。トモユキ指揮官も大事。重桜のみんなも大切。だが、彼女達と戦う事に迷っていた。

 

「(我ながら、意地悪な事を言っちゃったわね・・・・)」

 

愛宕は俯く綾波を見て、内心反省した。

勿論、愛宕自身もアズールレーンとレッドアクシズ。同じ艦船<KAN-SEN>同士。人類同士で戦う事になっているこの現状に思う所はある。

指揮官が重桜から逃げたのにも、きっとやむにやまれない事情がある事は、綾波や愛宕だけではない。おそらく翔鶴や蒼龍、扶桑や長門も理解している。

だが、その僅かな躊躇いが姉妹や、目の前の仲間の命を危険にさらす事になるから敢えて言ったのだ。

 

「(まぁでも、それだけじゃないけどね・・・・)」

 

愛宕はトモユキ指揮官を想っている。それこそ赤城に負けない程にだ。だからこそ、つい綾波に意地悪をしてしまう。

 

ーーーー何故なら綾波は、トモユキ指揮官と“最も絆の強い艦船<KAN-SEN>”だからだ。

 

トモユキ指揮官が重桜にまだいた頃。その隣には常に綾波がいた。

戦う事しか己の存在意義を見いだせない『鬼神』ーーーーそれが綾波だった。

しかし、そんな綾波がトモユキ指揮官と共にいる内に、段々『戦う』以外のモノを見つけ始め、艦船<KAN-SEN>としても、“人間としても”大きく成長し、駆逐艦でありながらも、重桜の『主戦力』の一角を担う程になった。

『海原の軍者 海守トモユキ』と『鬼神 綾波』。重桜軍で知らぬ者無しの二人だった。

重桜艦船<KAN-SEN>の大半は、トモユキ指揮官と綾波が一緒にいるのは、もはや当たり前の光景と言っても良い位だった。周りが羨む程の二人、と言っても過言ではない程、あの二人が一緒にいるのは当然とも言えた。

トモユキ指揮官は女の子大好きなスケベ指揮官だったが、本命は綾波なんじゃないかと噂が立ったほどだ。

そんな中、夕立が綾波に『私闘』が挑んだ。夕立が「綾波が指揮官を独り占めしてズルいぞっ!」と言って、綾波と私闘をした事があった程だ。そのお陰か、綾波が夕立や雪風や時雨と仲良くなるきっかけになったのだが。

だが、表立って騒動を起こしたのは夕立だけだが、赤城も実は虎視眈々と綾波を攻撃する機会を伺っている。

愛宕や他の“トモユキ指揮官への愛が重い艦船<KAN-SEN>達”もそれぞれトモユキ指揮官と綾波の間に思う所はある。

だがひょっとしたら、現在記憶を失ったトモユキ指揮官を取り戻す可能性を持っているのも、また綾波なのだと、愛宕を含んだ重桜艦船<KAN-SEN>達は考えていた。

 

「(でもそれを認めちゃったら、お姉さん、指揮官の事を諦めなくちゃならないからね・・・・)」

 

我ながら難儀な性格だと愛宕は自嘲気味に思った。

 

「(・・・・指揮官。綾波は、綾波はどうすれば良いです・・・・?)」

 

そして綾波自身は、トモユキ指揮官に『答え』を問いかけていたが、霧の中に消えるように『答え』は返ってこなかった。 

 

 

 

 

 

 

ーカインsideー

 

「ご主人様。お加減はどうですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

マーキンド星人から貰った解毒剤を飲んで20分後。カインは身体を苛んでいた頭痛や熱、倦怠感が綺麗に無くなり、今は身体をストレッチさせて状態を確認していた。

 

「うん。さっきまでの不調が嘘のように消えている。感謝するよ、マーキンド星人」

 

『それは良いんですが、私達はこんな扱いのままなんですか?』

 

マーキンド星人はシェフィールドによって再びミノムシ状態に縛られ、マグマ星人と共に明石にその縄を掴まれていた。

 

『なんで俺達こんな扱いなんだよ?!』

 

「君達にはまだまだ聞きたい事がある。申し訳ないが、アズールレーン母港に同行してもらう」

 

『はぁ!? この星の戦争に、俺達を巻き込ぐぅ!!』

 

「静かにするにゃ! 見つかったから大事にゃっ!」

 

『あ、いえ、もう手遅れみたいです・・・・!』

 

大声で文句を言うマグマ星人の口を明石が塞ぎ、小さな声で怒鳴るが、マーキンド星人の言葉に一同が外を見ると、カイン達がいる建物の近くを、重桜の偵察機が飛び交った。

 

「あわわわわわわ!!」

 

「くっ!」

 

急旋回した偵察機がこちらに来たのを見て、エディンバラはアワアワとなり、シェフィールドは建物から飛び降りると、二丁拳銃を機関銃のように弾幕を発射させ、偵察機を撃墜した。

 

≪流石シェフィールドだぜっ!≫

 

≪だが、こちらの位置が知られてしまったがな≫

 

「行くしかないか・・・・」

 

シェフィールドが着地した場所に、エディンバラにお姫様抱っこされたカインとマーキンド星人とマグマ星人を連れた明石が着地した。

 

「女の子にお姫様抱っこされるとは・・・・」

 

『おいもっと丁寧に扱えよ!』

 

『鼻、打っちゃいましたよ!』

 

エディンバラにお姫様抱っこされたカインは複雑な心境になり、顔面から着地した二人の異星人が文句を言った。

 

「見つかってしまいましてね」

 

「しししし指揮官っ! 本当に作戦が上手くいってくれているのでしょうか!?」

 

「島も囲まれてるにゃっ!」

 

「・・・・脱出するには今しかない。シェフィ、エディンバラ、明石を連れて島を脱出。僕はコイツらを潜水艦に連れ込んだら、海底に潜航して通信機で指示を出す。1人だけ安全な所に逃げてすまないな・・・・」

 

「いえ、重桜の目的がご主人様であれば、我々と一緒でない方が撹乱しやすくなります。ご主人様はオマケ達を連れて海の底に避難しておいてください」

 

『『ちょっと! 俺(私)達の扱いホントに雑じゃない?!』』

 

縛り上げた二人を引きずるカインは、近くの瓦礫で隠した潜水艦に向かった。

 

 

 

ーオイゲンsideー

 

そして鉄血の方でも、カイン達の情報が入ってきた。

 

「重桜の偵察機がターゲットを発見しました!」

 

「ん~っ!・・・・じゃあ、真面目にお仕事しましょうか・・・・」

 

「このレーベ様がいれば楽勝だぜ!」

 

ケルンからの報告を受け、ノンビリしていたプリンツ・オイゲンが気だるそうに起き上がり、Z1<レーベ>が行動を開始しようとした時、ニーミが声を発する。

 

「そう簡単には行かないようです」

 

真面目に偵察していたニーミが、島の外に視線を向けると、プリンツ・オイゲンもアズールレーン艦隊に目を向けた。

 

「あら、どうやら向こうも動いたようね・・・・(それにしても、まるでこの島に意図的に連れてこられた感じがしていたけど。もしかして、あの指揮官の采配かしら?)」

 

何か行動を起こし出したアズールレーン艦隊の動きを見ながら、プリンツ・オイゲンは、カイン・オーシャン指揮官の技量を見極めようとしていた。

 

 

 

 

ーカインsideー

 

『どべしっ!』

 

『あべしっ!』

 

潜水艦に無理矢理押し込まれた二人は奇妙な悲鳴をあげながら潜水艦に転がると、カインもすぐに乗り込み、船体を操作しながら通信機にウェールズ達に連絡する。

 

「ウェールズ、聞こえるか?」

 

《指揮官! ご無事でしたか?!》

 

「一応な。これから『プランB』の最終確認だ。『彼女』は?」

 

《はい。この場にいます》

 

《・・・・・・・・・・・・》

 

「良し。まず『彼女』と話をさせてくれ」

 

カインは通信越しにいる艦船<KAN-SEN>に向けて話を始めた。

 

 

 

ーウェールズsideー

 

「全門、斉射!」

 

「狙って~・・・・ボンッ!」

 

「撃てーーーー!!」

 

アズールレーン艦隊から砲撃が放たれ、レッドアクシズ艦隊を攻撃する。

 

 

ー扶桑sideー

 

「仕掛けてきたわね、アズールレーン・・・・!」

 

扶桑がアズールレーンの砲撃に目を細め、山城は砲撃が起こった水飛沫でずぶ濡れになっていた。

 

 

ー綾波sideー

 

綾波も艦首に戻ると、アズールレーンからの攻撃を、高雄と愛宕、翔鶴と瑞鶴と眺める。

 

「牽制だな・・・・」

 

「霧と混乱に乗じて、指揮官達を助けるつもりね」

 

「鉄血に任せっきり、と言うわけにはいくまい。綾波」

 

「っ!」

 

「我々も出るぞ」

 

「・・・・(コクン)」

 

綾波は一瞬躊躇うが、頷いた。

 

「陽動とは言え、敵戦艦も無視できないわよ?」

 

「そっちは私達が行く!」

 

瑞鶴が声を発し、翔鶴も頷く。

 

「向こうにグレイゴースト(エンタープライズ)がいるなら、今度こそ勝って見せる!」

 

「(コクン)」

 

瑞鶴の意を汲んだ高雄が頷くと、愛宕を連れて出撃した。

 

「翔鶴さん。瑞鶴さん」

 

出撃しようとする翔鶴と瑞鶴に、綾波が声をかける。

 

「多分ですが、綾波達はこの島に“連れてこられた”と思うです・・・・」

 

「“連れてこられた”? どういう事?」

 

翔鶴がそう聞くと、綾波は少々難しい顔を浮かべて言葉を紡ぐ。

 

「上手く、言えないですが。向こうには指揮官がいるのです。何か、思惑があると見て良いと思うのです」

 

「「「「っ!!」」」」

 

言われて四人は息を呑んだ。

今アズールレーンの指揮官は、『海原の軍者』と謳われた海守トモユキ指揮官。記憶を失ってはいるが、本質が変化していないなら、きっと何か仕掛けがあると理解したからだ。

 

「分かったわ。確かに指揮官が何の思惑も無しにこんな廃墟に来たとは思えないわ。十分注意しておくわね」

 

翔鶴がそう返事をし、瑞鶴も頷くと、今度こそ5人は出撃した。

 

 

 

 

 

ーベルファストsideー

 

ベルファストはクリーブランドとジャベリンとラフィーは、周りの海の背景に合わせて迷彩シートを被って島に向かっていった。

 

「始まりましたね!」

 

「私達も急ごう!」

 

廃墟の島にたどり着くと、少し離れた場所で砲撃がある事にクリーブランドは気づいた。

 

「不味い!」

 

ソコに向かおうとするクリーブランドの眼前に、高雄が現れ、刀を振り下ろす。

 

「はぁあああっ!!」

 

「くっ!」

 

ギリギリ回避したクリーブランドが距離を空け、ベルファストと合流すると、高雄も愛宕と合流した。

 

「っ、最悪のタイミング・・・・! ラフィー! ジャベリン! 気を付けて!」

 

後方にいる二人に声を発する。

 

 

 

ージャベリンsideー

 

少し離れた位置にいるジャベリンとラフィーは、深い霧によって視界が塞がれ、クリーブランドの。

 

「ん・・・・!」

 

「っ!」

 

背中合わせで周囲を警戒していた二人の前に、霧の中から現れたのはーーーー。

 

「あ・・・・」

 

「綾波、ちゃん・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

綾波は対艦刀を構えた。

 

 

 

 

ー霧崎sideー

 

「♪~♪~♪~♪~」

 

霧崎は砲弾が飛び交うアズールレーン艦隊とレッドアクシズ艦隊の戦闘を、鼻歌を口ずさみなが、まるでオーケストラの指揮者のように身ぶり手振りをしていた。

まるでこの混沌とした戦闘が起こす狂想曲を奏でるようにーーーー。

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