アズールレーンT   作:BREAKERZ

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【黒匣】それは何をもたらす

ーカインsideー

 

「「「姉貴!!」」」

 

「ああ、みんな!」

 

時刻はウルトラマンフーマと出会い、アズールレーンとレッドアクシズ戦闘から翌日の昼頃。

カイン指揮官はアズールレーン母港に戻ってすぐ、クリーブランドを出迎えるように近づく、3人の艦船<KAN-SEN>と出会った。

クリーブランドの妹である艦船<KAN-SEN>、『ユニオン所属 軽巡洋艦 コロンビア』。『ユニオン所属 軽巡洋艦 モントピリア』。『ユニオン所属 軽巡洋艦 デンバー』だった。

 

「クリーブランド。君の妹達かい?」

 

ウェールズを連れて母港に帰還したカインが尋ねると、クリーブランドは自慢気に妹達を紹介した。

 

「うん。指揮官! 私の妹達! みんな、挨拶して!」

 

「『クリーブランド級2番艦 コロンビア』よ! 宜しくね指揮官♪」

 

「『3番艦 モントピリア』。姉貴が世話になった・・・・」

 

「『4番艦 デンバー』です! ロイヤルのみんなが自慢気に話している指揮官に会えて光栄だよ!」

 

「うん。こちらも宜しく頼むよ」

 

「自慢の妹達なんだ!」

 

「いえ、姉貴に比べれば、ボクなんか」

 

「クリーブ姉貴の方こそ、1番だよ!」

 

モントピリアがそう言うと、デンバーもそう言い出し、クリーブランドは頬を赤くする。

 

「なっ! ちょっと! そう言うの良いって、いつも言ってるだろ!」

 

「フフ。仲が良くて大変けっこうな事だね」

 

「えへへ。重桜や鉄血は手ごわいだろうけど! 私達『海上騎士団<ソロモンネイビーキャバリアーズ>』が来たからには! 大船に乗った気持ちになって良いよ!」

 

「心強いよ。・・・・しかし、『海上騎士団<ソロモンネイビーキャバリアーズ>』とは?」

 

「私達仲良し姉妹の総称さ! カッコいいだろ?」

 

「あぁ・・・・確かに君達にピッタリだ。えっと、コロンビア。モントピリア。デンバー。君達も頼りにさせてもらうよ」

 

「「了解!」」

 

「・・・・了解」

コロンビアとデンバーは元気良く挨拶するが、モントピリアは素っ気ない態度で返した。カインは「(まだ信頼されてないんだな)」と察して、苦笑いを浮かべるが、直ぐに顔を元に戻す。

 

「クリーブランド。妹達との再会ついでに、母港を案内してやってくれ。もうすぐ『学園』も始まるからな。他のユニオンやロイヤルの艦船<KAN-SEN>達と顔合わせもしておいてくれ」

 

「うん! 指揮官任せてよ!」

 

そしてクリーブランド姉妹はカインはウェールズを連れて、Q・エリザベスに帰還の報告をしに向かった。

 

「指揮官。ウルトラマン達については・・・・」

 

「・・・・今日は陛下に報告から留守の間に貯まった書類の整理があるから、明日にさせてくれ」

 

「・・・・了解したわ」

 

≪なぁ、後ろにいるウェールズって姉さん、兄ちゃんが俺達ウルトラマンと同化してるって知ってるのか?≫

 

≪イヤ、詳しくは知らないんだ。何しろタイタスと再会した日に、ウェールズさんともう一人、イラストリアスさんって艦船<KAN-SEN>の目の前で変身して行ったからな≫

 

≪ふむ。そうだったのか≫

 

タイガ。タイタス。フーマのトライスクワッドの3人は、小さな思念体となって、カインの肩に座ったり、トレーニング等をしたりしていた。

 

 

 

 

そしてその翌日。戦術や武器の性能。それぞれの国の文化などを学ぶ『学園』の視察し終えたカインは、ウェールズとイラストリアスを連れ、執務室にやって来ると、重桜で潜入調査をしていたシェフィールドとエディンバラ、そして重桜の明石。他にもクリーブランドを含め、エンタープライズにベルファスト、ホーネットとヴェスタルが集まり、保管ボックスに封印している『黒いメンタルキューブ』を見せた。

 

「黒い、メンタルキューブ・・・・!」

 

「セイレーンの技術を応用した、『重桜の切り札』か・・・・」

 

重桜が、と言うよりも重桜の一航戦である赤城と加賀がセイレーンと通じている事を知り、エンタープライズ達も驚きを隠せなかった。

 

「これがあれば、向こうの『量産型セイレーン』を無力化できるんじゃないの?」

 

クリーブランドの問うが、明石は首を横に振る。

 

「『量産型』を操ってるのは『オロチ』の方にゃ。こっちは補助にすぎないにゃ」

 

「あの巨大な軍艦が『オロチ』。・・・・重桜、と言うよりも、赤城が建造しているようだったね」

 

「それも、セイレーンの上位個体が絡んでいるようでした」

 

「本当に凄い大きな軍艦でした!」

 

カインとシェフィールドは冷静だったが、エディンバラはオーバーアクションで『オロチ』の事を話した。

 

「『オロチ』と『このキューブ』、どんな関係があるのでしょう・・・・?」

 

ヴェスタルの問いにも明石は分からないと、首を横に振り、カインが口を開く。

 

「今分かっている事は、“このキューブはセイレーンが与えた物"。そして、“赤城がそのセイレーンと手を組んでいる事"」

 

『・・・・・・・・』

 

カインの言葉に、全員が神妙な顔になる。

 

「それが確かなら、重桜自体が騙されていると言う事になります」

 

「赤城・・・・何を考えているにゃ・・・・?」

 

そんな中、エンタープライズは『黒いメンタルキューブ』を見据えると、指先でそれに触れた。

その瞬間ーーーー。

 

「・・・・っ!」

 

エンタープライズの意識が、ブラックアウトした。

 

 

 

 

ーエンタープライズsideー

 

エンタープライズは、満天の星空を映す海原の上に立っていた。

 

『なっ!?』

 

エンタープライズは驚き、辺りを見渡すと、海面に映った自分の姿に驚愕する。

 

それはまるでーーーーセイレーンのような容貌だったからだ。

 

『ギャァアアアアアア!!』

 

『キシャァァァァァァ!!』

 

『ガアアアアアアアア!!』

 

すると、海面に映った自分が、紅蓮に燃える炎の海で、“怪獣達を率いて進軍する姿"が映った。

 

ーーーーエンタープライズ? エンタープライズ!

 

しかし、そんな自分の名を呼ぶ声にエンタープライズの意識がホワイトアウトしたーーーー。

 

 

 

ーカインsideー

 

カインは、突然茫然自失していたエンタープライズに声を掛けると、エンタープライズは、ハッとなった。

 

「どうしたんだ?」

 

「心ここに有らずと言った様子でしたが?」

 

「い、いや、何でもない・・・・」

 

エンタープライズは、『黒いメンタルキューブ』を一瞥した。

 

≪この真っ黒のメンタルキューブに触ったら、ボ~っとなってたぜ≫

 

≪しかし、セイレーンがもたらした物とは言え、中々に興味深いな≫

 

≪おいおいダンナ。変な気を起こさないでくれよ?≫

 

「(・・・・みんな、遊ぶなよ・・・・)」

 

フィギュア位の大きさの思念体になったタイガがエンタープライズの帽子の上に胡座をかき。タイタスが『黒いメンタルキューブ』に近づき興味深そうに眺め、フーマが明石の猫耳に寄りかかりながらそう言った。

 

「・・・・それはそうと、もう1つ問題点があるだろう。指揮官」

 

「ん・・・・?」

 

エンタープライズが指揮官を見据え、それが何なのかすぐに察した一同が、カイン指揮官をジッと見据える。

 

「カイン・オーシャン指揮官。貴方が重桜司令官、『海原の軍者』と謳われた、海守トモユキ指揮官である事だ」

 

既にシェフィールドとエディンバラと明石から、カイン指揮官が、重桜のトモユキ指揮官と同一人物であったと知らされている一同を代表して、エンタープライズがカイン指揮官に聞く。

 

「本来重桜の人間である貴方は、これからどうするおつもりですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

エンタープライズの言葉を聞いて、カインは少し思案をすると、明石に目を向けた。

「明石。もう一度聞いておく、僕は、本当に海守トモユキ指揮官だったんだよね?」

 

「(コクン)間違い無いのにゃ。指紋から網膜、明石達が持っている指揮官の生体情報を何度も照合させて、95%以上の照合率で、トモユキ指揮官のデータと一致したにゃ」

 

「・・・・僕がトモユキ指揮官だとして、アズールレーンと今の重桜の関係をどう思っている?」

 

「にゃ。トモユキ指揮官は重桜がアズールレーンを脱退する事に反対だったにゃ。それこそ、その反対派の筆頭とも言えるほどにゃ。【セイレーンと言う脅威があるのに、人類同士でいがみ合うのは馬鹿馬鹿しい】って何度も言ってたにゃ」

 

「・・・・そうか。僕も同意見だ。セイレーンだけじゃない。僕達の星で『怪獣オークション』などをおこなっている宇宙人の犯罪組織・『ヴィラン・ギルド』。そして何よりも、『ウルトラマントレギア』の存在もある」

 

ホーネットが挙手して声を発する。

 

「指揮官。ウルトラマンタイガの他に現れた二人のウルトラマン。彼らは?」

 

「あぁ、この間捕まえたが逃げられた『ヴィラン・ギルド』の構成員の二人から聞いたが、筋肉ムキムキなウルトラマンは『ウルトラマンタイタス』。青いウルトラマンは『ウルトラマンフーマ』。彼らは『トライスクワッド』と言うチームで行動しているらしい」

 

本当の事を言うわけにもいかないので、宇宙人達から聞いた事にする。

 

「彼らは私達アズールレーンに協力してくれないの?」

 

「それも構成員達から尋問してみたが、ウルトラマンはその星の戦争に加担する事はできないみたいだ。あくまでも怪獣や侵略者から守る為に、彼らは戦うんだ。いずれにしても、こんな脅威がこの星にある中、アズールレーンとレッドアクシズがいがみ合っている場合じゃない。しかも、重桜の切り札がセイレーンからもたらされた物であるならば、尚更放っておく訳にはいかない」

 

カイン指揮官の言葉に、ベルファストが声を発する。

 

「では、ご主人様。如何なさいますか?」

 

「重桜を止める、必ずな。これは重桜の人間としてだけじゃない。元重桜指揮官として、そしてアズールレーン指揮官として、重桜の、赤城の暴走を止める。その為にも・・・・皆の力を貸して欲しい」

 

その真っ直ぐな眼差しに、その場にいた(一部を除いた)艦船<KAN-SEN>達が頷く。

 

「勿論です」

 

「承知しました」

 

「私も出来る限り力になります!」

 

「私も妹達も! 力を貸すよ!」

 

「そこまで頼まれちゃ、やるしかないね!」

 

「私達ロイヤルメイド一同。ご主人様のご意志に従います」

 

「「(コクン)」」

 

ウェールズ、イラストリアス、ヴェスタル、クリーブランド、ホーネット、ベルファスト達ロイヤルメイド隊も頷いた。

ちなみにこの事はQ・エリザベス達にも伝えており、彼女達も了承を得ていた。

がーーーーエンタープライズは。

 

「・・・・私は正直に言って、まだ指揮官に対して半信半疑だ」

 

「ちょっ、エンタープライズちゃん!」

 

「姉ちゃん・・・・」

 

エンタープライズの言葉に、ヴェスタルとホーネットが渋面を作る。

 

「エンタープライズの気持ちは当然だ。だからもう少し僕と言う指揮官が信頼に足る人物か、見定めて欲しい」

 

「・・・・・・・・・・・・失礼させてもらう」

 

エンタープライズは真っ直ぐに見つめてくるカインの目を見ようとせず立ち上がり、その場を去ろうとする。

 

「あ、姉ちゃん!」

 

「エンタープライズちゃん!」

 

ホーネットとヴェスタルが追いかけて行く。

 

「・・・・今日はここまでだね。クリーブランド、饅頭達が明石の店を作っているから、明石を連れていってくれ。シェフィとエディンバラも仕事に戻って良いよ。ベルは少し待ってくれ」

 

「了解。明石、案内するよ!」

 

「宜しくにゃ。さぁこれから商売にゃ♪」

 

「「はい」」

 

「承知しました」

 

クリーブランドが明石を連れ、シェフィールドとエディンバラも退室したのを確認したカインは、執務机の椅子に座りながら、執務机の前に移動したベルファストに問いかける。

 

「ベル。エンタープライズのこの処の様子はどうだい?」

 

「今朝のご様子では、朝食は他のユニオン艦船<KAN-SEN>の皆さまと共に摂り、最低限ですが、コミュニケーションを取る努力をしています。初めてお会いした時よりも、雰囲気が少々変わったと言えます」

 

「そうか。それは良いことだ。・・・・だが、1つ気になる事がある」

 

神妙な顔となるカインにベルファストは同意するように頷く。

 

「あの廃墟の島で現れた『デアボリック』と言う怪獣と、ウルトラマンタイガが交戦している最中、デアボリックの脇腹を襲った一撃。あれはタイガの技ではなかった。ベルファスト。あの攻撃はまさか・・・・」

 

「ご推察の通り、あれはエンタープライズ様がいた筈の地点から放たれました」

 

「「っ!」」

 

ウェールズとイラストリアスが驚いた貌となる。

 

「あれは、〈ノブレス・ドライブ〉とは違った力に見えたが、エンタープライズ本人はそれの事を知っているのかい?」

 

「・・・・【退避をしていて気づかなかった】、とおっしゃっていました」

 

「・・・・・・・・そうか。ベル。スパイのような真似をさせるようで済まないんだが、エンタープライズの事を良く見ておいてくれ。彼女が本当に知らないのか。それとも隠しているのか」

 

「承知致しました、ご主人様」

 

明らかにエンタープライズは“何か"を隠している。

その事に一抹の不安を感じるカインの心境を察しているのか、ベルファストが優雅にお辞儀すると、執務室を後にした。

ベルファストが退室するのを確認したカインは、執務机の椅子に深く腰を落ち着かせるように座り込む。

 

「ふぅ~・・・・(エンタープライズ。一体何を隠しているんだ?)」

 

「指揮官。彼らの事も、我々に教えて欲しいのだが?」

 

ウェールズとイラストリアスが、他に誰もいない事を確認すると、タイガ達の事を聞いてきた。

 

「あぁ。そうだね。それじゃ・・・・」

 

そこからカインは、トライスクワッドの事を話した。

幼い頃に、海守トモユキであったカインを助けるために、トレギアとの戦いで粒子状に分解され、この平行世界の宇宙に流れ着いたタイガが同化し、それからカイン・オーシャンとしてアズールレーン母港に来てから、タイガと共に戦い。あの嵐の日に同じように粒子状となり、宝石となったタイタスと合流し、さらに先日の戦闘で宝石となったフーマとも合流し、3人のウルトラマンのチーム、トライスクワッドがカインの身体と一体化している事を伝えた。

 

「それで指揮官様。トライスクワッドの皆さまは?」

 

その問いかけに、カインは半眼となって、イラストリアスとウェールズを見据えながら口を開く。

 

「・・・・その前にイラストリアス。左肩、重くないか?」

 

「えっ? ええ。何やら左の肩がいつもよりも重く感じまして・・・・」

 

ロイヤルでもトップクラスの豊満なバストをしているイラストリアスは、足元が見えない事と肩凝りが悩みなのだが、今回は少し違った。

 

「今思念体となったタイタスが、イラストリアスの左肩でスクワットをしているんだ」

 

「えっ?」

 

「さらにウェールズの顔の周りを、フーマが飛び回っているよ」

 

「何と・・・・!」

 

思念体が見えない2人は驚く。

 

≪おっと、これは失礼しました、イラストリアスお嬢さん。トゥ!≫

 

≪ま! これから世話になるぜ! ウェールズの姐さん!≫

 

タイタスとフーマは執務机の上に置かれた書類の束の上に座る、タイガの元に戻った。

 

≪お前らあんまりからかうなよ・・・・。ウェールズさん! イラストリアスさん! 宜しくな!≫

 

「・・・・今ここにいるタイガが、宜しくって言ってるよ」

 

「「・・・・・・・・本当に?」」

 

「本当に・・・・」

 

ウェールズとイラストリアスは、書類の束の上を指差すカインに訝しげに聴くが、カインは苦笑いを浮かべて肯定するしかなかった。

 


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